介護の隙間から(5) 徘徊センシングから眠りへの回帰?

今回から「認知症老人徘徊感知機器」に対する具体例を調べていきたいと思います。まずベッドの会社2社の取り組みを比較してみることにいたしました。何と言っても「特殊寝台」というカテゴリは介護保険適用の「用具」の中では中心的な存在なのでその「付属品」的な扱いでベッド会社は取り扱っているんじゃないかと勝手に想像したためです。しかし、調べてみるとそんな想像を超えたところに進んでいるようでした。

まずは以下に勝手に比較させていただく2社の会社としての規模感を表にしておこうと思います。なにせ、「電子デバイス」業界に身をおいていると「ベッド」業界のことは疎いですから。

社名資本金売上高(H30.3月期)
フランスベッド株式会社56億450万円493億4600万円
パラマウントベッド株式会社65億9132万円772億2000万円

念のため2社のホームページへのリンクを以下に書き添えておきます。

フランスベッド

パラマウントベッド

2社の取り組みの違いを一言でまとめると以下のような感じでしょうか。

「認知症老人徘徊感知機器」に直球勝負のフランスベッド、「その先」に突き抜けたパラマウントベッド

ホームページを見ただけで両者のスタンスの違いが見えてくるようです。まずフランスベッドさん。在宅介護という項目が直ぐに見つかります。そしてそのページへ行くと新着情報のトップ2018/10/18「温度センサー」を搭載する非接触型離床センサー「温度deキャッチ」を発売というお知らせが目につきます。ベット会社なので当然マット型センサやフロア型のセンサの製品があるものと予想して来てみたら、非接触温度センサ応用でジャブを一発お見舞いされた感じです。先行する製品の案内ページにもすぐにたどり着くことができました。2タイプが紹介されています。予想通りのベッド床もしくはベッドサイドに敷くタイプのマット/フロア型センサの応用品はいろいろなタイプがありました。しかし扱いの大きさから言うと、アクティブ型のRFID(車のキーレスエントリのようなもの)応用、「逆転の発想」ということでキーを持たない介護対象者が出入り口の人感センサの前を横切ると通知がでる(キーを持っている人の場合は通報されない)という製品の方が「押し」のようです。以下に3タイプの製品のセンサと無線を整理します。

製品名センサ無線
温度deキャッチ温度センサ<当方推定>小電力無線
おでかけキャッチ人感センサ+アクティブ型RFID<当方推定>センサ子機と親機間は小電力無線、RFIDは微弱
FB離床センサーなどマット(圧力)センサ小電力無線

フランスベッドさんはまさに真正面から徘徊検知に取り組まれていることが理解できました。

これに対してパラマウントベッドさんの方を見てみると、ちょっと予想と違いました。当然、介護に使用できるベッドは充実しています。床ずれ防止用の機能のついたマットレス、ベッド上での姿勢を整えたり、移動を補助する補助具など周辺の用具も実に充実しています。それだけでなく、なかなか勉強になるなと思ったのが「知る・学ぶ」というコーナーで転倒防止から認知症など各種の問題ごとに対策を「提案」(実際にはそれぞれ対策商品の紹介ですが)してくれていることです。ただし、介護保険適用の「認知症老人徘徊感知機器」というカテゴリがないのです。確かに製品としては持たれている筈なのですが。調べていくと病院用の設備として「離床センサ」、予想通りの荷重を検出するタイプはありました。しかし、在宅介護用ではなく、病院用のようで「有線接続」です。(病室とナースステーション間にはナースコールの中継設備がある筈なので、その応用のようです)しかし以外な製品にあたりました。

眠りスキャン

『人に負担をかけず、客観的な睡眠状態と睡眠習慣を手軽に取得することができます。』ということで、睡眠時の動き、呼吸、心拍などを計測し、睡眠状態を評価する装置です。睡眠と覚醒の判別を正確に測定できるとあります。単に起床を検出するだけのマット型のセンサとは一線を画する製品のようです。これですと、「認知症」という範疇を超え(当然介護保険は非適用ですが)、一般の人々にも適用可能です。私も眠りに問題のある人なので、一度試してみたいかも。ま、1週間も試したら十分かな。そのせいかどうか。この装置は販売するのではなく、貸し出して測定をし、その結果を踏まえてベッドを提案、といった合わせ技でのビジネス展開を狙っているようです。それと研究用。パラマウントベッドさんの取り組みは、マットセンサの一周先で本業の「眠り」に回帰したというようにも見えます。

次回は、少し使われているセンサの技術面を掘り起こしたいので、特許関係をあさってみる予定です。

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