介護の隙間から(9) 徘徊感知機器の源流

現在、電子デバイスを使った徘徊感知機器というのは数百種類以上は存在すると推定できます。介護保険適用の装置についてはその登録を調べれば列挙できないこともない(しかし全てが売られているとは限りますまい。電子デバイス屋的言葉で「ディスコン」とか「EOL」もある筈)ですが、施設用の装置については「一品料理」的な装置も多数存在すると思われるのでその数を数えあげることはなかなかできないでしょう。本日は、それら装置の源流はどのあたりにあったのかを探ってみたいと思います。

また手がかりは特許データベースを使わせてもらいます。まさに貧者の調査定番かと。以下の2件の出願は、いずれも特許登録されていますが、既に出願から20年以上経過しているので、既に権利は切れていると思われます。

パラマウントベッド特願平3-225128ベッドサイドの赤外線センサで監視。ナースコール回線で通知。
テクノスジャパン特開平11-213266弾力性の絶縁材と電極からなるマット型センサで検出。床にしくこと想定。

最初の方は、やはり病院用のベッドの老舗、パラマウントベッドさんの特許。出願は平成時代も最初期。センサと見れば赤外線センサです。現役の徘徊検出でも赤外線センサを用いた装置はありますが、皆、通路とか出入り口とかに仕掛けて赤外線を横切る物体を検出するという方式じゃないかと思います。しかし、この特許は赤外線をベッドサイドに仕掛けるのです。ベットの長手方向の端と端の間を見張るわけです。寝ている人が起きれば、枕元側と足元側の短辺方向になんらかの仕切りがあって移動をさまたげるようになっていれば、長手方向の赤外線を横切るに違いありません。原理的には、たしかに「起床」を検出するとは思います。が、いかにもちょっと無理やり。ちょっとベッドに腰かけただけでも、あるいは布団を動かしても、誰かが近寄っても、見張っている赤外線センサは動作しそうです。かなり介護する人がこまめにセンサのON/OFFを制御しないと、ちょっとした事でも誤動作しきりじゃないでしょうか。この手の装置の誤報は想像するにかなり消耗(介護する側の人が)する筈なので、現在の視点からするとちょっと待てよと思うのです。それでも出願され、そして登録までこぎつけています。当時としてはかなり「イケてるソリューション」だったのかもしれません。そこから長い年月を経て進化していくことも「容易」に想像できます。かくしてパラマウントベッドさんが「突き抜ける」のも当然と言えましょう。

2番目は、調べた中では最初期の「マット型」センサが特許査定になった出願です。もしかするともっと前にもあるのかもしれません。出願したのはテクノスジャパン社、バリバリの介護、ケア機器(マイコン応用機器)の会社さんです。しらべていると同名でデータベース、ビックデータメインのソフト会社もあるのですが、こちらは福祉用具とは無関係と思われるので検索時は要注意。マット、フロアなどと呼ばれるセンサの最もプリミティブなタイプじゃないでしょうか。電極の2層の間に弾力性の絶縁材を挟み込んでおいて、荷重がかかったら、絶縁材が変形し、電極がショートして検出する、という装置は今となっては容易に考えつきそうな気もしないでもありません。そのようなマットセンサと警報用の通信でちゃんと特許査定になっているので、この当時はあまり先行するような事例が無かったのだと思います。因みにベッドに敷いて起床を見張ることは考えてなかったのか、出入り口などの床にしいて出入りを見張るような事例で書かれています。先の特許出願とは10年近く離れているのですが、まだまだこなれていない感じを受けます。テクノスジャパン社の嬉しいところは、今でも徘徊検知装置など福祉用具でしっかりビジネスされているところでしょうか。この特許出願からしたら20年は経過しているので、もしかするとこの業界の老舗、といってよいのかもしれません。ついつい、使っているマイコンは何ですか?と聞きたくなるのですが、何でしょう。

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