土木でエレキ(1) 橋梁、トンネル見守りに電子デバイス

現代日本において2つの「見守り」が懸案事項だと言ってよいでしょう。一つは高齢者の方の見守り(介護)ですが、もう一つが社会インフラの見守り(監視、モニタリング)です。高度成長期に建設された橋やトンネルは数多く、その補修や架け替えも予算不足でままならない、という指摘がなされ始めてからすでに大分経過しています。この「2大見守り問題」はこと日本だけの問題でもなく、日本が先頭をきっているだけで、他の多くの国も遅かれ早かれ直面する、ある意味グローバルな問題だと考えます。そこで、デバイスビジネス開拓団としても社会インフラの方にも調査を進めるべく「土木」で1ジャンルをたてることにいたしました。

土木と電子デバイスというと、一般の電子デバイス関係者にはちょっとピンとこない組み合わせかもしれません。しかし、とりあえず本日調査した、橋梁やトンネルの見守りのための新技術登録53件を調べたところ、以下のようなセンシング技術が使われていることが分かりました(複数技術組み合わせあり)。電子デバイスにも多いに出る幕がある、と思えるのですがどうでしょうか。

可視画像12
超音波4
赤外線画像3
光ファイバセンサ3
RFID2
電磁波レーダ2
音響2
その他(比抵抗計測、インピーダンス計測など含む)5

普段、電子デバイスでやっているセンシングとそれほど変わりないように思えます。その上、このような「新技術」の活用を国も推進しているのです。「公共工事等における新技術活用の促進について」という大臣官房技術総括審議官通達の冒頭を引用させていただきます。

“公共工事等に関する優れた技術は、公共工事等の品質の確保に貢献し、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現及びその安全の確保、環境の保全・良好な環境の創出、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであり、優れた技術を持続的に創出していくためには、民間事業者等により開発された有用な新技術を公共工事等において積極的に活用していくことが重要である。”

そういう新技術の情報を活用するために NETISというサイトが開設されています。本日は、土木関係の調査の最初に、以下のジャンルで新技術をリストアップしてみた結果を報告します。(先ほどの表もその一部です。)

橋梁とトンネルの維持管理に関して登録されている新技術

橋梁とトンネルで重複している新技術が多数あり重複を取り除くと53件が登録されていました。この53件について、まずは以下のような3カテゴリに分類してみました。

  1. 計測などをした結果を「データ処理」して問題を発見、管理する技術
  2. 電子デバイスとは直接関係しない、土木的な「工法」そのものの技術
  3. 問題を探査、対象を計測するための「探査計測」技術

 

 

 

 

 

 

 

 

御覧のとおり、約4分の3がなんらかのセンシングをともなう「探査計測」に関するものです。ここの多くに電子デバイスの出番がありそうです。

さらに「探査計測」に分類したもののうち、「非破壊検査」の割合を見てみると以下のように92%が非破壊検査に分類できることも分かります。また、「非破壊」のものも、「破壊検査」とは言いたくないのか「微破壊」(この言い方は電子デバイス屋的には珍しいです)あるいは「サンプリング」という表現でした。実際、巨大な対象のごくごく一部のみの「破壊」なので全部を壊すこともある「破壊検査」とは一線を画したいのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、肝心なのは、なぜそのような新技術が必要になったのか、という動機の部分です。そこは以下のように5つに分類しました。

 

 

 

 

 

 

 

「直接見えない」というのは、例えば、土中、水中に構造物が埋まっているために直接に見ることができない、というものもありますし、コンクリート内部やコンクリートに覆われている鉄筋のように内部にあるので直接に見ることができない、という場合もあります。中には、通行止めにして表面から見れないこともないのだが、通行止めにせず、裏面から探りたい、といったケースも含まれています。このような見えない部分を「非破壊」で検査したいという需要は大きいのだと思います。

次の「遠方から」というのは、ちょっと離れたところから、とご理解ください。例えば、足場を組んで直接調べることは可能だが、足場を組むと、費用も掛かるし、通行を制限しなければならないような期間もできたりするので、直近に人が行かなくても調べられると効率的だ、といったような探査技術です。見える範囲の距離程度の「遠さ」でしょう。遠方から画像を撮影し、その画像を処理して割れ目を見つけるなどの技術がこれにあたります。

その次の「素早く」というのは、通行止めにせずとも走りながら計測できるとか、1点1点に装置を設置せずに探査できるなどの技術です。社会インフラを止めるのはインパクトが大きいので、ともかく使いながら検査する、あるいは、使用できない期間を最小にしたい、というモチベーションが強いことが分かります。そして、工期が短ければ、当然費用も安くなるであろう、という期待もあると思います。

「遠隔地」から、というのは、さきほどの「遠方」とは違い、現場とまったく異なる場所で監視、モニタリングをしたい、という要求にこたえるものです。どこかの山中の構造物を東京でモニタしたい、といった需要。これはネットワークにつながりさえすれば、それほど難しいことではないと思います。どちらかと言えば、データを収集した後の処理の方が重要でしょうか。

「その他」分類の動機は、いろいろあります。電子化することで、正確性を確保したい、客観的にしたい、あるいは工程を自動化したい、といった動機です。

以後、不定期ですが、時々、コンクリートの世界に足を踏み入れていこうと思います。専門外の世界ですので、何かありましたら、ご教示ください。よろしくお願いいたします。

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