鳥なき里のマイコン屋(25) Panasonic セミコンダクターソリューションズ

なんとか世界中のマイコン(マイクロコントローラ)ベンダを網羅すべく活動しておるのですが、まだまだ「大物」なところも列挙しきれておりません。昔に比べるとベンダの数は激減したかにも思えるのですが、マイコン屋は死なず、という感じです。本日、取り上げさせていただくのは、Panasonic セミコンダクターソリューションズ社です。いろいろ変転はあったにせよ、Panasonicの半導体子会社ということで間違いありますまい。略称は、PSCS。(Panasonic Semiconductor Solutions Co. Ltd.なので、何でPSSCにしなかったのか個人的な疑問が残ります。知っている方いらっしゃいましたらお教えください。)

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つまらないことを書いてしまいましたが、正直、ここの製品ラインには、隠し玉も、ゾンビも何もないので、これまた個人的にはちょっと穿るところが無くて面白くありません。(PSCSの人、読まれていたらすみません。)優等生的かつ、最近の典型的なラインナップじゃないかと思います。

    • 8ビット自社コア(AM13) マイコンとしてはMN101シリーズ
    • 32ビット自社コア(AM32) マイコンとしてはMN103シリーズ
    • 32ビットArm(Cortex-M0+/Cortex-M7) マイコンとしてはMN1Mシリーズ

自社コアもAMで始まるのでちと紛らわしく感じますが、昔からこういう型番だと思うので致し方ありますまい。

ローエンドは8ビット、ハイエンドは32ビットで、4ビット、16ビットは無しというのが最近の多くのMCUベンダの定番ですが、PSCSも例外ではないようです。そしてこれまた多くの歴史あるMCUベンダが32ビットでは、自社コアとArmコアを併用していますが、これまた同じです。

ただし、Armに対する力の入り具合、というものはその会社、会社で違っています。上のコアラインナップからは、一瞬、自社コアからArmへ移ろうとしているのかな、と思いましたが、どうもそういう分けでもないようです。

なぜなら、車載向けマイコンの主力は自社コアの32ビットだからです。なんといっても

最近の日本のマイコン屋は車載が命

というくらい、車載シフトが激しいです。PSCSも例外ではないと思います。たしか、PSCSという名前になる前、一時期、「パナソニック・オートモーティブ。。。」とオートモーティブを名前に冠した会社だったこともある筈。その主力製品みれば、自社コアのシリーズで固めている感じです。もしかするとそのうち、Armへシフトする気があるのかもしれませんが、今のところはArmの層の方が薄く見えます。

3つのコアのシリーズとも車載と汎用でざっくり2クラスにわけている製品ラインナップです。車載は売り方やら品質保証やらいろいろ違うのでこれはなるべくしてなった2クラス編成と言えます。用途はいろいろ書いてあるのですが、ぶっちゃけPanasonicの主力マイコンは何に使うマイコンなのか見てみると、

インバータ制御

これに尽きるような感じです。(ただし、非力な8ビットマイコンはインバータには使えないので除きます。)そうすると、Armコアが、M0+とM7の性能的にかけ離れた2機種になっているのも多少納得がいきます。今日、インバータ制御に求められる演算性能はうなぎ上り、と聞きました。今のところ自社のAM32コアでなんとかなっているのでしょうが、そろそろより高速な機種が必要になってきているのではないでしょうか。そこで、ArmのMCU向けコアとしては、最強性能の

Arm Cortex-M7

導入ということになったんじゃないでしょうかね。MCU向けといっても、6段パイプラインのスーパスカラー、キャッシュ搭載、倍精度浮動小数点演算対応可能です。インバータ向けラインナップの最上位に位置付けるには妥当な感じがします。自社コアの32ビット製品ラインの上にスーパスカラー機を継ぎ足す、といった感じでしょうか。これだとボリュームゾーンは自社コアのままだと想像します。

すると同じArmコアでも非力なM0+の立ち位置がちっと微妙に思えます。演算性能が求められるインバータまではカバーできないし、自社コアとポジションもきっと被っているし、と思われるのですがどうでしょう。Armにしてくれ、というお客でもいたんでしょう、きっと。

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