介護の隙間から(26) 冷蔵庫管理、悩みはつきない

在宅、一人暮らしの高齢者の暮らしの上で、問題になりやすいのが冷蔵庫の管理です。ある程度自立して買い物もできるし、自炊もできる、けれど冷蔵庫に何入れたのか記憶できないので賞味期限ぎれどころか野菜などドロドロに溶けてしまう、といった事態です。なんとか電子デバイスで自立した暮らしをサポートできないものかいな、と思っていたのです。すると日立が食材の管理などできる「コネクテッド冷蔵庫」を発売した、という1月24日付のニュースを目にしました。これがあれば高齢者の自立した暮らしをサポートできるのか?ちょっとお高い価格だが?

複数のニュースサイトのタイトルをみると

食材の保存状況を管理 とか 入れたままの食材を警告

といった文言が目を引きます。冷蔵庫内の食材の管理は、別に高齢者に限らず気になっている人がとても多いので、そこにフォーカスしたくなるのだと思います。しかし、発売元の日立のニュースリリースそのものを読んでみると、

食材の管理ができるとかは、ニュースリリースには書かれていない

引き出し毎に、冷蔵、冷凍、野菜を切り替えできる大型冷蔵庫、というのが基本コンセプトで、コネクデッド家電としての売りを引用させてもらうと

スマートフォンと連携し、ドアの閉め忘れの通知や、離れた場所からの運転状況の確認ができるなど、毎日の家事をサポート

としか書いてありません。でも別にニュースサイトが嘘をついているわけではないようです。冷蔵庫発売とともに使用できるようになるらしい「日立冷蔵庫アプリ」の機能の中に食材の写真をスマホで撮って、在庫期間を管理するという機能がついているらしいです。在庫期間の警告などはスマホアプリで行うようですが、入力などは手動。

これって冷蔵庫の機能じゃないじゃん

ニュースリリースを読む限り、日立がミスリードしたわけじゃないようですが、スマホアプリの機能の一つをニュースタイトルにもってきたのに騙された感じです。正直、

「冷蔵庫の食材」を管理するためのスマホアプリは大量に存在

します。そしてそれらは皆似たような在庫管理機能を備えていると思います。そして、在宅、独居の高齢者の暮らしでこのこういうスマホアプリが使えるかというと

使える高齢者が絶無とは言わないが、極めて限られる

だいたい、スマホそのものの使用がこの層では一般的でないと思います。その上、

高齢者でなくても冷蔵庫の食材管理のスマホアプリを運用するのはごく一部

結局、入力その他、手動に頼る部分が多いので、根気がつづく人でないと運用できない、という噂です。(私は使っていないので、あくまで噂です。)食材そのものの出し入れの認識まで自動化できないと、すくなくとも高齢者向けには使える仕組みにはならないでしょう。ちょっと今回、その辺を冷蔵庫側で解決したのかと期待してしまったのですが、肩透かしでした。

しかし、日立は特に高齢者を狙ったわけでもないようですが、使える機能がありました。

冷蔵庫の開け閉め

を知ることができるという機能です。「介護の隙間から」シリーズを読んでいただいていると、日常生活の見守り機能として、冷蔵庫の開け閉めのパターンは重要な要素だということがお分かりだと思います。普段、食事時とか開け閉めしているのに、それが無いと何か異常じゃないかと検知する、といった見守りです。この機能を内蔵しているのは高齢者見守り向けにもOKですね。しかし、お値段がな~。冷蔵庫の開け閉めを検出してインターネット上の何かアプリに通知するだけなら、リードスイッチ一本、磁石1個、ラズパイ1台、全部で数千円の材料費で作れるでしょう。コネクテッド家電、まだまだだな、と個人的な感想です。

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