介護の隙間から(28) 癒しと電子デバイス

今日は、取り上げさせていただくのを躊躇していた話題に突っ込みます。

癒し

です。実際、電子デバイスで「癒せる」ことがあるのだろうか、と自問してしまいます。調べてみると否定的な方も多いです。しかし実際、「ブツ」は各所から出ているし、いろいろ効果ありとの研究結果も「アリ」です。結局のところ、

使う人の気持ち次第

で、癒されるかもしれない、そうでないかもしれない。それでいいのか。

まあ、「癒し」というから懐疑的ですが、「お楽しみ~中毒」という点では電子デバイスには実績があります。実績は

ゲームで廃人になりかかっているそこのあなた

かもしれません。電子デバイスの作り出す世界に深く没入するのか、人間の心の中に食い込むのか。摩訶不思議な人の心と電子デバイスが「つながる」ことはままあり得ると思います。しかし、要介護の高齢者の方、認知症の方などを想像して、現状のゲームやVRの世界に「入っていただく」のはちょっと無理な気がします。刺激強すぎ、あんまりでしょう。介護の世界ではそんな刺激と無縁な、

癒し系のロボット

がいるのです。ほんわかしたぬいぐるみ系の外観。この系統の「代表選手?」が、とても有名な「あざらし」型のぬいぐるみ風ロボット PALO(パロ) です。検索すれば、多数ヒットします。あえて「装置」と言わせていただきますが、この装置の癒しの原理は

アニマルセラピーの応用

です。ペットに「大きな癒し」の力があるのは、これは間違いないでしょう。ペットと人間、生き物同士、生きていくパートナーになり得ます。ただ、ペットを飼うということになかなか高いハードルがあることも事実だと思います。そこで登場してきたのがこのようなアニマルセラピーのロールモデルのロボットだと思います。ただ、誰にでも効果がある、という分けでもなさそうです。ペット好きな人もそうでない人もいらっしゃいますし。その上、結構「お高い」。ペットを飼いずらい施設で、ペット替わりに導入ということであれば、現実的でしょう。ちょっと個人では辛いお値段。それに「電子デバイス屋」としてちょっと気になるのが、すでに登場以来十数年もたっているのに、基本変わっていない、という事実です。悲しいかな「電子デバイス屋」は、盛り上がっている、儲かっているという話が出ると一斉に群がります。そして、皆さん、いろいろ差別化の工夫をやりつくした挙句、値段が崩れて儲からなくなり、大多数が撤退する、という習性があります。通例、10年以上あれば、何世代もの改良品種となり、値段も桁違いにさがっている筈。それが無いというのは「群がる」ようなビジネスにはなっていなかった、ということでありましょう。残念ながら。

でも、需要はあるのだと思います。ネットを調べると、値段的には1桁~2桁違う

ペット系の動きのあるおもちゃ

音声認識、音声合成系の人形

など、介護、癒し系のグッズとして大量ヒットしてきます。効果のほどは分からないです。しかし、「気持ち、心」の問題なので安くて、機能限定でも「癒される」場合や相手がいるような気もしてきます。

さて、有名なPALO(パロ)と似た名前で、PALRO(パルロ)というロボットが登場です。名前は似ていますが、コンセプトは大違いです。

見た目はロボットらしいロボット

です。ぬいぐるみ系の多い中では異色ですが、ロボットがロボットらしいのは嫌悪感をなくすという点では効果的かもしれません。これがクラッシックな人形だったりすると、呪いの人形みたいで怖いかも。当然、「コンテンポラリーなソリューション」、手掛けているのはバリバリのソフト会社の富士ソフトです。人工知能を使い会話ができます。かなりおしゃべりらしいです。最近出てきただけにモダンです。そしてロボットらしく動くことができるわけですが、売りが

高齢者の方が集まっている中でレクリエーションの音頭がとれる

という点です。残念なことに、私は実物がデイサービスかどこかで演じてる現場を見てないですが、これはなかなかな切り口ではないかと思いました。癒しとは違う気もするけれど、楽しくやれるのならOKでしょというところでしょうか。ちょっと電子デバイス的には方向性が出てきたのではないかと思います。ただ、値段的には多少こなれた感はでてきましたが、やはり個人ではキツイかも。一番のネックは、動きのあるロボットらしい機能と形態ですね。メカものなので、そうそう下げられるものでもないと予想します。そこで

いっそのこと、しゃべりかけてくる会話だけの人工知能でいいじゃん

と思うのですが、どう思います? Google Homeとか、Amazon AlexaのようなAIスピーカ形状で十分。ハード安くできそうだし。普通、AIスピーカには「OKグーグル」とか言って語りかけると反応というパターンですが、こちらの「モード」では、どんどん機械の方から話かけてくる。「おはよう、今日の調子はどうですか?」みたいな具合に。相手によっては「関西弁」とか、かなりクダケた口調もありでしょう。しかし、あくまでロボットじゃ、と。気がまぎれるだけでなく、「黙っておれ、テレビをつけろ」と言えばテレビがついて便利、という塩梅。どうでしょうか。癒しかどうかは別にして、「よりそう」ロボットでありたい。

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