介護の隙間から(36) 実証実験「サポート事業」

前回、最近の高齢者対象の実証実験のあれこれを調べていたところ、実証実験に対していくつかユニークな取り組みをしている自治体があることに気付きました。製品なりサービスなりの有用性を証明したい企業などの組織と、それを実証する「場」を繋ぐ取り組みと言っていいでしょう。自治体側としては地域の活性化が狙いであるようなので、必ずしも「高齢者や介護」ばかりが対象ではないのですが、調べてみると「高齢者、介護」関係の実証実験も含まれていることが分かりました。やはり課題分野であるので関心も高く、受け入れられる可能性が高いのではないかと思われます。実証実験の場が欲しい企業、組織によっては要検討項目でしょう。

まずは歴史もあり(といって3年ほどですが)、既に実績のあるところからということで、以下をあげたいと思います。

福岡市実証実験フルサポート事業

この事業では既に数十件の実績があるのですが、そのうち、高齢者、介護、福祉、健康、医療といった切り口で行われているもののみピックアップしてその概要説明を引用させていただきます。

  • 世界初の排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」を開発し、介護の効率化のためのソリューションとして、介護施設等における「DFree」の活用による、自立排泄リハビリテーションに係る効果を検証

  • デバイスを活用し日常的に尿の生化学分析を行い、その結果をスマートフォンに通知するサービスを体験してもらい、効果を検証

  • 大腸がん検診啓発普及アプリ「うんコレ」の体験に合わせ、医療アドバイス等を実施することによる、大腸がん検診への行動変容等を検証

  • IoT技術を活用した「大切なひと」の見守りサービスに関する実証実験を行う。ビーコンを搭載した専用見守り端末を携帯する小学生や高齢者などの位置情報を、保護者などがスマートフォンなどで確認することができるサービスを提供し、IoT技術を活用した「見守りサービス」の有用性について検証する。

  • 街なかの移動に困り、道案内を希望するさまざまな人と、そうした人を手伝いたいというサポーターとをLINEを活用して結びつける実証実験「街なか手助けサポートプロジェクト『たすけっと』」

といったところです。この福岡市の「実証実験フルサポート事業」というのは、福岡市の中の mirai@ という

民間事業者のみなさまと福岡市をつなぐワンストップ窓口

で行われている2つの事業のうちの一つで、「AI・IoTなどの先端技術を活用した社会課題の解決や生活の質の向上などにつながる実証実験プロジェクトを全国から随時募集」しているのだそうです。活発に活動しているようなので、要チェックかと思われます。また、どうもLPWA(LoRaとか)とも親和性高い?ようにも見えます。無線関係者は良くご存知かも。

次は、広島県福山市のICT推進課という部署が窓口になっている

実証実験まるごとサポート事業

をあげたいと思います。「対象事業」から抜粋して引用させていただくと、

IoTやAIをはじめとした先端技術などを活用し,次の分野における地域課題の解決や市民生活の質の向上などをめざす実証実験を募集します。

ということでいくつかテーマが挙げられている中で「高齢者支援」も含まれています。窓口部署名がICTですし、電子デバイス応用とは親和性高そうです。ただ、実績はまだ1件しかないようでした。医療系です。引用させていただきます。

  • 医療機関が管理する患者の情報を,スマートフォンなどで,患者本人が管理できるサービスを提供

    東京から新幹線で行くとちょっと遠い福山ですが、今後に期待したいところです。

 

次に新規2件を検出したので、そちらへのリンクを張っておきましょう。新規らしいので当然実績的なものは見当たりませんでした。

静岡県浜松市実証実験サポート事業

こちらは2019年3月15日の更新で、31年度予算の新規事業のようです。事業内容を引用すると

独自の技術やアイデアを活用した実証実験プロジェクトを全国から公募する。優秀なプロジェクトには実証フィールドを提供し、実験にかかる費用を助成する。

ということです。その対象6分野の一つが「健康・医療」でした。

もう一件はメディア向けの発信が2019年4月9日(おととい)、実際には来週2019年4月15日からということで、まだ市のホームページに窓口の情報など詳細は上がってないようでした。

つくば市に実証実験を提案するワンストップ窓口を開設します!

とのことです。こちらは茨城県内。担当部署は「つくば市政策イノベーション部科学技術振興課」です。部署的にはIoTとかAI狙いみたいですし、場所柄もサイエンス系です。他の実証実験サポート事業などとは異なり健康とか福祉とかは、とくに挙げてないのですが、「市民生活の向上」目的であるようなので、対象にはなりえるのではないですかね。

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