介護の隙間から(40) 高齢者(シニア)向けスマホ?

最近は、鉄道関係もバリアフリー化が進み、昔に比べると足腰の悪い高齢者が利用するのも幾分か楽になったように思えます。駅などの構造物では進展がある一方、急激に縮小しているんじゃないかと思えるのが、対面で人が切符を売る窓口です。特急券でも定期券でも自販機で買えるし、ネット予約でスマホでOK!便利です。今日、駅の窓口の必要性は大分さがって来ているのは事実でしょう。けれど、この夏、窓口が少なくなって(かつ、開いている時間帯もいつの間にか短くなっている)困っていたりする高齢者の方が結構いるのを何度か目撃しました。朝早く駅に来たものの対面窓口が閉まっていて困っているおばあさん、後で駅員さんがやってきて自販機の使い方を教えてくれていて助かったみたい。「どう切符を注文」して良いのか分からない様子で窓口で時間が掛かっているお年寄り、窓口の人は親切に対応しているようですが、窓口の数は少ないなので後にならんだ人々はイライラしています。ようやく切符を買えた後も窓口の前でゆっくりカバンにしまい、身支度をして、足を引きづりながらようやく窓口を後にしました。高齢者相手に、産業的な「生産性」とか「効率」とかを押し付けてはイケないと分かっているつもりですが、ついつい、私もイライラ。鉄道会社にしたらば、ビジネス的合理性から人のいる窓口を減らして機械に転換しているのでしょう。でも、そこに落ちこぼれかける人がいて、ま、現場の駅員さんが走りまわってなんとかカバーしている感じ。

今日の新聞読んでいて思ったんでありますが、多分それは、ケータイ、スマホ、でも確実にある。
携帯電話のキャリアとしては「一億総スマホ」などと時代がかったことをいい、シニア層にスマホをプッシュ。そこで強力に「シニア向けスマホ教育」を推進するわけであります。目の敵にしているのは、

クラムシェル型のガラケー

のようです。20年くらい前にはクラムシェル型が携帯電話会社の花形だったですが、この頃は冷遇著しい。ケータイキャリアにしたら、そんなものは廃止にしたいくらいなのでしょう。しかし、キャリアによって差はあるものの、まだ販売は継続されているようなので良かった。実際は「絶滅危惧種」くらいな感じかもしれません。でも、ある要介護者にしたら

スマホの幅(物理的な)が広すぎる

のが一番の障害かもしれません。幅広の板状なので、クラムシェル型のガラケーのようにお守り替わりにストラップつけてポケットに入らない。それにのっぺりしていて幅が広くて力の入らない手で持ちにくい、その上するっと落としそうで、嫌なのかもしれない。また、単なるガラスの板を触って「入力」するのを受け付けないのかもしれない。押した感触があるメカニカルなキーでないとうまく「押せない」。そういう人にスマホを勧めるのは、極端に言えば、月単価アップを狙った押し売りというべきかと。逆にもっと高齢者、要介護者向けのデバイスがあってもよいと思います。ガラケーよりもボタンが少なく、小さく、使いやすいもの。そう思ったら、既にありましたね。

キッズケータイ

といわれるカテゴリの製品。各キャリアとも「推し」の濃淡の差はあれ、

主として小学生向け

に販売されているもの。ボタンが少なくて予め登録された相手としか通話できなかったりする制限は、「オレオレ関係」撃退にはかえって好都合に思えます。GPS搭載で居場所を調べることができたり、何かのトリガで所在確認用にSMS発信するとか、防犯ブザー的な機能プラス緊急メール送信機能とか、デカ文字でひらがな表示とか、機種にもよりますが高齢者、要介護者向けにも適性ありに思えます。ちょっとネットを調べてみると、この手のデバイスを、高齢者に持たせているという件がすぐ見つかりました。キッズケータイの高齢者利用、事例的にはどのくらいの数なのかは分かりませんが、使われている方はそこそこいそうです。

キッズケータイは子供でなくても買えます、とQ&Aには書かれている

ようですが、各キャリアとも「プッシュ」はしていないようです。理由を考えるに、

12歳までのキッズ割引契約とバンドルで売られるのが基本の商品

だからと想像するのですがどうでしょうか。確かにキッズ割安いです。しかし、将来の「フル課金」ユーザーさん1名確保(中学生になれば普通に課金されるし、当然普通のスマホに乗り換えるでしょう)のプロモーションにも思えます。その上、キッズだけでなく、かならず親のユーザーさんともバンドルせざるを得ないような仕組みになっているようで、各キャリアのビジネス上のメリットも「堅い」商品のようです。ここに利幅の薄い高齢者を引き込むのは、なんだかな~と思っているのかな。でも、公共かつ有限の周波数資源のある部分を占有してビジネスしているのだから、社会全体の課題である「介護」問題にももう少し「プッシュ」あってもよいようにも思いますで。ドコモなどはウチは高齢者向けに「らくらくホン」シリーズやっているというかもしれないが、

らくらくホンは元気に歩けるお年寄り向け

じゃないかと考えます。あれは、毎朝、ラヂオ体操にいっているくらいの人向けでしょう。こちらは、要支援、要介護だけれど一人暮らし、といった人に持たせるのに、キッズケータイ変じて「御達者ケータイ」とでもしたい(裏面にお守り貼り付けると尚善)。

だいたい、ケータイ通信系の費用は介護保険の非対象である今の制度が、介護用具の進歩上は、かなり歪な影響を与えているようにも思えます。たしかに、無暗と電話料金を介護保険でカバーするのはマズイと思いますが、無線インフラを通じてインターネットに接続できれば介護用のシステム構築がより実用的になる部分があるのではないかと考えます。特定用途の装置に限ってはそういう制限を緩められると良いですが(当然、キャリアにもある程度のメリットでるようになれば前向きになる期待もあり)。

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