自動車の不都合な真実(1)

あおり運転や高齢運転者の事故に起因した法律改正の報道が立て続けにありました。これらは、ドライブレコーダーや自動運転装置の普及を促し、売り上げを増大させることを副次的な目的とした自動車産業と政府との協調戦略かと思いきや、必ずしも政府と自動車業界が一枚岩に見えない事案に遭遇しました。
そこで、本件の表題を考えましてGoogleに訊いてみます。

https://www.google.com/search?&q=自動車の不都合な真実

さすがに最大の産業の自動車業界であります。「半導体の不都合な真実」で検索した場合の3倍ほどのヒット件数があります。地球温暖化対策に後押しされたEVのパラダイムシフトが押し寄せている自動車産業は大変な時代を迎えているようです。

私が先月に購入した新車に搭載された安全装備について、メーカーのお客様相談窓口に質問してみました。

(問)2021年11月から販売される自動車について、国際基準の自動ブレーキを義務付ける政府方針であるとの報道がありましたが、衝突軽減ブレーキは、この国際基準に対応してますか。
(回答)国際基準に対応する試験は行っていないので、お答えできかねます。
(問)試験の予定はありますか。
(回答)政府の施策が決定してないので、現在において試験の実施予定はありません。
(問)新しい法律制定がなされた時には、試験や既存顧客への補償を実施しますか。
(回答)仮定の話には回答できかねます。
(問)現在販売している安全装備は、2021年実施の自動ブレーキの基準を満たさない可能性があることを認めますか。その可能性について、インフォームドコンセントとして販売店から顧客に説明を行いますか。
(回答)可能性は否定しませんが、販売店から顧客に説明させることはありません。
(問)どうしてでしょうか。
(回答)法律改正が決定してないので、可能性について説明することはありません。
(問)それでは、法律改正が成立したら、また問合せします。
(回答)お待ちしております。。

すでに想定問答集があるようで、よどみない回答です。政府方針は世の中の反応を知るためのマスコミへのリークで、実際の法律改正は結果をみて検討するのでしょうか。

報道された自動ブレーキの国際基準は、

「時速40Kmで走行中、前方に止まっている車に追突しない」

です。天候、道路状況、タイヤ条件などの限定なしでこの基準を達成するのは非常に困難です。例えば、夏タイヤの車で凍結路面を40Km/Hで走行中に停止車両に追突しないことは、エキスパートドライバーでも不可能かもしれません。かといって、法律で限定条件をつけると完全な自動ブレーキとは言えません。人間であれば、安全に止まれる速度で運転するでしょう。
政府方針として報道された国際基準の自動ブレーキを2021年までに実現することは、技術的に不可能に近いと思われます。とすると、メーカーの回答にも同意せざるを得ません。土壇場でひっくり返された大学入試改革のことを考えると、政府方針の公表にいちいち振り回されてはいけないのかもしれません。法律改正は経過措置がありますから、たとえ自動ブレーキの国際基準が報道のとおり実施されても、既存の自動車が使用できなくなるわけではありません。新車が1回目の車検の前に旧タイプの車となる不運であれば、願わくは、ソフトウェアアップデートで新しい自動ブレーキの基準に対応してほしいものです。

(Arahaの独り言)自動車の法律改正が確定するまでは、新車を買うことはリスクがあるでした。