帰らざるMOS回路(9) M1Kでボード線図

JosephHalfmoon

このところ羊頭狗肉、MOS回路といいつつ、M1K(アナログデバイセズ社の教育用ツールADALM1000)の機能を端から使ってみるシリーズになってしまっております。本日でひと段落かね。ボード線図。遥かな昔を思い出します。落ちこぼれていたんだ、これが。この歳になってグラフを描いて(実際に描いているのはAlice M1K DeskTop様ですが)いるんだ。

さて、Alice M1K DeskTopの主要ウインドウの最後を飾るのはボード線図であります。分かっている人は分かっていますね、ゲインと位相と対数と、なんであります。まあ、ぶっちゃけ、何か「フィルタ」になりそうな回路がないと動かしてみれません。お手軽路線であれば、必定、

RCでローパスフィルタ

に決まっています。ちょうど目の前のブレッドボードに

1kΩの抵抗と1μFのコンデンサ

が刺さっているではありませんか?(ま、この間使ったものがそのまま刺さっていただけですが。)前回もつかったスマホのソフト、ElectroDroidをば起動して上の値のRCでローパスフィルタを作ったときのカットオフ周波数を計算してもらいます。(こういう「電卓」に頼ると手放せませぬ。簡単な計算もできなくなります。)

159.155Hz

無暗と桁数細かく計算してくれるのはご愛敬。どうせ5%の部品をブレッドボードに刺して、長いへろへろの配線でM1Kに繋いでおります。この通りの結果にはなりますまいが目標はここ。

唯一ともいえる日本語資料「Active Learning Program ADALM1000(M1K)使用の手引き」にもAlice使ったローパスフィルタの測定例(やっぱりRC回路)が掲載されており、

その通りにやればうごくじゃん!

などと軽い気持ちで動かしてみました。うごきました。しかし、カットオフ周波数300Hz近い、いくら何でも高すぎる!なにがイケないのか考えました。グラフを描いているところを見ると、時間ウインドウでは周波数低いサイン波から高いサイン波が次々と現れていきます。ボード線図のウインドウではそれにつれ、徐々にグラフが描かれていくのです。見ていて飽きません。飽きませんが、ボード線図の方、信号が0dBVに張り付いていて、なかなか落ちて来ない感じ。どうもCh.Aに与えている電圧が高いような気がしてきました。みれば、前回測定のまま5Vフルに振っていたのです。さきほどの手引きを確認すると、サイン波を与えるCh.Aは下が0.5V、上を4.5Vに設定して「波形確認」を行った後で、ボード線図を描かせています。手引きの通りの電圧に再設定してみました。

ちょっと下がったけど、やっぱりカットオフ周波数高すぎるじゃん!

しかし救いの神はいるものです。M1Kについては教育用ということもあり、「実験」ネタのコンテンツが充実しています。以下のページ。

https://www.analog.com/en/analog-dialogue/studentzone/studentzone-december-2018.html

1文引用させていただきましょう。

Set the AWG Channel A Min value to 1.086 and the Max value to 3.914. This will be a 1 V rms (0 dBV) amplitude centered on the 2.5 V middle of the analog input range.

ボード線図で電圧ゲインはdBV表示しているので、1Vが0dBV。サイン波であれば振幅1.414(ひとよひとよ。。。)の波形を与えて0dBVでした。だから、2.5Vを中心として、

  • 下限:1.086V
  • 上限:3.914V

に設定すると、ちょうど0dBVを上限とするAliceのボード線図に適合するのでした。こういうところ、ちゃんと手動で設定しないといけないのが、「教育用」たるところでしょうか。この時の測定系の回路はLTspiceで描くとこんな感じ。

勿論、シミュレーションで-3dBVとなる周波数を見てみれば、さきほどの計算値とほぼ一致する160Hz付近にカーソルが来ます。

実際に上記のとおりの回路をM1Kに接続してボード線図を描いたものがこちら。

若干周波数低めですが、グラフみると分かるとおり、0dBVより若干低い電圧から始まっているのに、-3dBVのところで周波数を測っているかしらん。。。

ゲインだけではボード線図らしくないので、位相も追加してみます。Ch.BからCh.Aを引いた差の位相ということで

Phase B-A

を追加。

ううむ、2kHz付近までは、いい感じのボード線図ですが、2kHz過ぎるとヤバイ。「DUT」も改良の余地ありそう。でも、設定もFFTのウインドウとか弄ってみるともっとヤバくなります。大体サンプル数の制御なども出来る筈なのだけれど、それはどこ?

まだまだ勉強が足りぬ、と。

ま、M1Kの件はまたおいおい。次回からMOS回路に戻る予定です。

下はLTspiceでトランジェント解析したときの波形。オマケ。

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