帰らざるMOS回路(14) ADALM2000とAnalog Discovery2、他人の空似?

JosephHalfmoon

第11回で、Analog Devices社の実験用部品キットADALP2000が到着と書きました。喜び勇んで蓋を開いたその瞬間に、一つ気付いたことがあったのです。裏ブタに描かれているアナデバ社の実験ツールADALM2000のピン配置、なにか凄く見慣れた配置でないかい。そうです、愛用のDigilent社製Analog Discovery2のピン配とクリソツ。信号端子の色までそっくり。

まず、手元に自分で持っている装置を列挙させていただきます。

  • Digilent社 Analog Discovery 2
  • Analog Devices社 ADALM1000 (M1K)

Analog Discovery 2は、Analogと言う割にはアナログ活用しておらず、どちらかと言うと簡易オシロとして、マイコン関係の工作などやるときに重宝させていただいとります。ADALM1000(略称M1K)は、最近購入させていただき、本連載でI-V特性を測る、といった目的に使わせていただいています。この2機種は手元にありますが、肝心のAnalog Devices社のADALM2000は持っておりません(持っていたら当然気付いていた。)Web上で見られる資料と、部品キットADALP2000の裏ブタのADALM2000のピン配置で比べています。

まずはADALPの裏蓋のADALM2000のピン配を御覧いただきましょう。

そしてDigilent社Analog Discovery 2のピン配図がこちらです。

お気づきでしょう。端子機能、端子の色分け、一緒です。寸分たがわずという感じ。

しかし、実はピン配が「同一」のものがもう一つあることにも気づきました。Digilent社のAnalog Discovery2の兄弟機種、Analog Discoveryです。”2”より無印の製品の方が先行する製品でしょうから、このピン配はAnalog Discovery起源に思えます。Digilent社の2製品が同じなのは販売元が同じなのだから当然としても、アナデバ社も一緒なのは何故でしょう?業界標準?私の頭の中に最初に浮かんだ疑問がこれです。

すると何かい、どちらかが別のどちらかの会社のOEM製品?

まあ、順当なところは、この手の「ツール」ベンダであるDigilent社がAnalog Devices社に供給しているという筋かと。しかし、ちょっと調べてみた感じでは、どこにもそんなことは書かれていない。謎です。

もともとDigilent社の各種文書にはAnalog Devices社のチップを使っていることが明記されており、Analog Discovery 2の回路図も公開されています。まったく無関係に同一端子になることはありますまい。しかし、端子配置や機能がクリソツと言いつつ、調べてみると3機種とも微妙に仕様が違います。その辺、販売ルートや販売価格など「大人の事情」もちょっと見え隠れする感じがするのですが、どうでしょう。

まず、「基本機種?」であるAnalog Discoveryの特徴的なところを列挙します。

Analog Discovery

  • オシロ(ADC)は14Bit 100MSPS で5MHzバンド幅
  • ファンクションジェネレータ(DAC)は14Bit 100MSPS で5MHzバンド幅
  • 電源はMAX50mA

次にこれの「改良」と思われるAnalog Discovery2の同じ機能の比較です。

Analog Discovery 2

  • オシロは14Bit 100MSPS で30MHzバンド幅
  • ファンクションジェネレータは14Bit 100MSPS で20MHzバンド幅
  • 電源はMAX700mAまたは2.1W

ビット幅(レゾリューション)とサンプリングレートが同一にも関わらずバンド幅が向上しているのは、ぶちゃけ前の機種で信号がなまってしまっていた?のを回路改良したようにも思われます。電源についてはUSB電源使用時にはAnalog Discovery2も実はMAX50mAで変わりません。Analog Discovery2の場合、オプショナルの外部電源を接続できるようになって供給可能な電源容量が増加しているのです。違いは外部端子の有無かと。

それでは、アナデバ社のADALM2000を眺めてみましょう。

ADALM2000のチラシ(フライヤーとぞ言うべきか)

  • オシロは12Bit 100MSPS で25MHzバンド幅
  • ファンクションジェネレータは12Bit 150MSPS で30MHzバンド幅
  • 電源はMAX50mA

なにか違いがとても微妙。オシロのバンド幅は気持ちAnalog Discovery2より抑えめ、レゾリューションも2ビット少ないですが、100MSPSであれば4分の1で25MHzという「設定」は順当な感じがします(30MHzの方が挑戦的かも。) 逆にファンクションジェネレータ(DAコンバータ)の方はADALM2000の方が性能良いように見えます。電源はAnalog Discovery 2のUSB接続時といっしょ。しかしよく見るとADALM2000にも外部電源端子があるので、これを使ったら強化できるのかもしれません?

微妙に違いがあるので「まったく同じ」ということは無さそうですが、私にはよく似た「兄弟」に見えます。だいたい使っているアナログICはアナデバ製だし。

まあ、これからして、

ADALM2000でやる実験は、多分、Analog Discovery 2でも出来る

という期待ができます。折角、ADALP2000を手にいれたので、いろいろやってみれば分かるでしょう。なお、ツールを制御するソフトウエアの方は、ほとんど同じ機能を持っていそうなものの、少なくとも両社製の見た目は違うようです。もしかすると機能に違いがあるかも。(久しぶりにAnalog Discovery 2のソフトウエアWaveFormsをアップデートしたら、以前にくらべていろいろ便利でカッコいい機能が増えていました。ハードは同じなのですが、ソフトで出来ることが増えている。)

しかしね、先にあげた3つの機種のお値段の違い、仕様を考えるとなかなか意味深です。どれがとは言いません(自分で調べてね)が、かなりお得感がある機種があります。大人の事情なんでしょうか?

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