お手軽ツールで今更学ぶアナログ(2) OP97をM1Kで動かしてみる

JosephHalfmoon

前回は、Analog Discovery 2を使ってアナデバ社のオペアンプ、OP97をボルテージ・フォロワ構成にしてそのスルー・レートを「測って」みました。Analog Discovery 2は目出度くADALM2000の代替が務まりました。でもね、ADALM1000でOP97動かすことはできないのかしらん?やってみると条件は変えないといけないですが、動かすことができました。意外に簡単、でもできないことはできない。

※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら

まずね、アナログ音痴なので、OP97という石の「立ち位置」みたいなものをよく理解していなかったことを申し上げておきます。OP97を遡ると

OP07

というベストセラーの石があるのです。どうもこの品種はエポックメーキングな品種だったようで、登場以来40年くらいたつようですが、今だ現役で活躍しているようです。そしてこの系統の製品は進化をつづけ、現在の最新版は

OP4177

という機種のようです。その中にあってどうもOP97というのは、偉大な先祖と新鋭に挟まれ、多少「残念な」扱いを受けているように見受けられました(あくまで個人の感想です。)

まあ、しかし、せっかくブレッドボードに刺してあるので、回路を変えず、接続しているお道具だけをAnalog Descovery2から、ADALM1000(M1K)にとりかえて、OP97のボルテージ・フォロワを動作させてみたいと思います。

M1Kで動作させるとき、まず引っかかるのは電源です。Analog Discovery 2の場合、プログラマブルな電源を2チャンネル持っており、マイナス5Vからプラス5Vまで設定することができます。OP97は「典型的」な両電源タイプのオペアンプで、プラスとマイナスの電源を必要とします。そこで、前回は、Analog Discovery2の限界のプラス5Vとマイナス5VをOP97のVPとVNに与え、GND(0V)中心で振幅2Vの入力信号を与えて動作させました。ところが、M1Kにはマイナスの電源というのはありません。5V、2.5V、0V(GND)です。でもね、両電源のオペアンプに0V(GND)は必要ない。入力も出力も0V付近にいるけれども、結局上下の電源の真ん中付近で動いている。M1Kの2.5Vが真ん中なのよ、と読み替えれば、5VがVP、0VがVNとできるではないかい。当然、入力信号は2.5V中心、電源の幅が半分なので振幅も半分にして1Vでどうでしょう。データシートを見ると電源電圧の最小はプラスマイナス2Vとあります。動作する筈。

実は、先に回路をいじってちゃんとボルテージ・フォロワ動作することを確認したてしまったですが、上でダラダラ文字で説明したことを図面に描きたいと思い、

アナデバ社謹製LTspice

を立ち上げたところで気付いたのです。LTspice XVIIの標準ライブラリに

OP97がない

ということに。LTspiceをお使いの方はよくご存知だと思いますが、ライブラリにはアナデバ社(もちろんリニア社製品も含む)のICが多数登録されています。オペアンプには一つのカテゴリフォルダが割り当てられており、何百というオペアンプが登録されています。しかし、OP97は見当たりません。かのベストセラーOP07はそこにあり、シリーズ最新鋭OP4177もあります。そこで、ハタとOP97の微妙な立ち位置に気付くわけです。売られてはいるのだけれど、「推し」が弱いメンバー。ちょっと悲しい。

しかたがないので、OP07で代用させてもらって、前回のAnalog Discovery2での設定と、今回のM1Kの設定をSpiceしてみました。上が今回、下が前回です。

一応シミュレーションしてみるとこんな感じ。

下の緑が前回で、0V中心で振幅2Vでしっかり振れています。赤が今回で、2.5V中心で振幅1V。両電源のアンプでも入力や出力の電圧レベルさえ考えれば普通に動く、と。実際に、M1Kを接続したところがこちら。

上のシミュレーションは1kHzの信号いれていますが、下の実機は100Hzで動作させています。緑の方が入力、オレンジが出力。ボルテージ・フォロワしてますねえ。

しかし、最後に悲しいお知らせを書かねばなりません。前回同様、

  1. 入力信号を方形波にする
  2. 出力信号が台形に見えてくるまで周波数を上げる
  3. そのときの10%点と90%点の電圧と時間の差分からスルーレートを求める

という手順でスルーレートを求めようとしたのですが、駄目です。出力信号が台形になったときには、入力信号も台形に見えています。何を測っているのかわからない!Analog Discovery2では、10kHzの入力方形波はしっかりまだ四角くて、それに対してしっかり傾いた出力波形が観察できました。そしてデータシートと矛盾のない測定値でした。M1Kではどちらもなまっているし、勾配もスルーレートとは違う。M1Kは

100Kサンプル毎秒

オシロも、信号ジェネレータもどちらもAnalog Discovery2のスピードには遥かに及びません。大体、OP97のデータシートのスルーレートを考えてみると、測ろうとする1.6Vの電位差を登ったり、下ったりするのは10μsくらい。100Kサンプルのサンプリング速度が、10μsなので、これはまともに見えるとは思われません。

両電源の件はなんとか誤魔化せたけれど、サンプリング速度に負けた?

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(1) OP97のSlew Rateを測ってみる

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(3) ADALP2000のOPアンプ共、へ進む