特許の失敗学[21] 特許の収益化

特許の失敗学

 特許法の目的は産業の発達に寄与すること(特許法第1条)ですが、個人発明家にとっては「収益化」でしょう。これは当世人気の職業YouTuberと似たところがあります。YouTubeは「収益化」しなくとも、趣味とか主張の発表を目的とするメディアでしょう。とすれば、特許出願も論文発表の場として利用可能ではと妄想する今日このごろ。「特許出願de論文発表」についてはまたの機会に…

◆ 特許の費用

 特許出願が特許査定で登録されたとしても、まだ道半ば、その特許が収益化に結び付かなければ出願権利化の費用が回収できない失敗となります。

 「特許収益化」で検索したら、こちらのサイトの記事が上位にヒットしました。弁理士の先生が書かれた分かり易い解説なので、特許実務経験の少ない方はご参照ください。
(最終更新:2017年2月3日 のため、リンク切れなどがあります。)

 特許権を取ると大儲け? -特許の活用の仕方-

 出典:特許出願ノススメver2
 提供 : 弁理士 磯兼 智生
 http://www.isokanet.com/tokususu/index.html


 特許出願から特許登録までの費用は、日本国特許出願から権利化まで特許事務所に依頼した場合に、約50万円というイメージでした。このサイトの記事でもほぼ同じ金額です。権利化が難航すると、特許審査の拒絶対応(中間処理)の追加費用があります。自分で出願権利化を実施(先行技術調査、明細書自筆、拒絶対応)した場合、特許庁の減免制度を利用して、個人出願の特許登録1件当たり約15万円というイメージです。

 自筆明細書の特許出願で、特許出願の段階で特許売込みに成功すれば、2万円程度に抑えられます。(ただし注意事項あり。上記サイトのFAQを参照。)むやみに特許出願するのは費用効果として失敗でしょう。とはいえ、特許は最先の出願者にしか与えられないので、明細書を書きながら収益化の検討を行い、出願後の審査請求の前に、より詳細な先行技術調査と収益化の検討を行う戦略が考えられます。

◆ 特許(イノベーション)の収益化

 設計者の仕事をしていた頃は「イノベーション」というと「技術革新」という狭い定義(これは一種の誤訳という説あり)しか頭にありませんでした。知財の仕事をするようになって、広い定義のイノベーションを知りました。

 特許の収益化は大きく分類すると、
  (1)特許の発明品を製造・販売して収益を得る。
  (2)特許の発明で、ライセンス収入を得る。
  (3)特許の発明は、無償・低価格で提供し、他の手段で収益を得る。

(1)(2)は通常の特許活用です。(3)はビジネスモデルともいえます。

(注)ビジネスモデルだけでは特許になりません。「ビジネスモデル特許」については、上記の「特許出願ノススメver2」にも解説があります。

特許発明を利用しているビジネスモデルの類型としては、思いつく限りでは

  (3.1) サブスクリプション
  (3.2) フリーミアム
  (3.3) ロングテール
  (3.4) 広告

 (3.1)から(3.3)までは有名ですが、(3.4)の「広告」は何かって?
 それは、例えばGAFAの収益モデルです。特に顕著なのがGoogle社の収益モデルであります。Apple社が「電話」を再発明したように、Google社は「広告」を再発明したといえるでしょう。

 Google社のイノベーションは、優れた検索システムを開発するも検索システムを販売するのではなく、無償で提供するサービスに連動して広告収入を得るというビジネスモデルを構築したことです。

(1)の収益モデルは特許権が切れると独占的な利益は得られませんが、(3)の収益モデルは特許権が切れても収益モデルを維持できているように思います。

 個人発明家が(1)の収益化を目指す場合は、起業となるため「特許の失敗学」で扱う範囲を超えています。特許の収益化において、個人発明家は、もし可能であれば(2)の売込みに加えて(3)の収益モデルを考えて売込み提案したいものです。


◆ Afterword

 Think different

 こないだの増田明美さんの座右の銘「知・好・楽」のこと書いて、うちの座右の銘は「Think different」て思た。うちの場合、高校時代から今日に至るまで優れた人達を周りに見ていて敵わへん思い、せめて「人とちゃうこと考えよう」っちゅう動機ですわ。
 その「人とちゃうこと考えよう」に名前を付けてくれはったんが Steve Jobs やった。

 今思うに「Think different」を最初に学んだのは、中学時代に友人の影響で読んだ星新一のショート・ショート。

 星新一は特許に関心があったようで、特許に関連する作品やエッセイがある。うちが特許について考えるようになったきっかけでもあるんや。

 星新一の作品に「特許の品」っちゅうショート・ショートがある。「ボッコちゃん」っちゅう文庫本でさらぴんを買うて読める。もう半世紀以上も前の作品やのに、星新一が目指したとおり、時代を経ても古びへん作品であるんや。

 「特許の品」には、(3)の収益モデルが書いてある。しかも、未だにこのビジネスモデルで成功した事例を知りまへん。ちゅうのも、この「特許の品」を実施するのは、倫理的にはどうなのよ、ちゅう問題があるためでっしゃろか。実は、うちが知らへんだけで既に「特許の品」のようなことは実施されてるのかもわかりまへん。ある人の説によれば、スマホが「特許の品」であるゆうことやった。

 ほんで「Think different」について近年で最も影響されたのがオタキングこと岡田斗司夫。例えば、こんな記事があるんや。

 本の読み方の理想は「立ち読み」

  出典:岡田斗司夫公式ブログ 【岡田斗司夫アーカイブ】
  http://blog.livedoor.jp/okada_toshio/archives/51553753.html

 今回の「特許の失敗学」記事執筆のため検索しとって、興味深いリストを見つけたで。高校の卒業論文のテーマ。今時の高校生がどんなんに関心を持つかがわかる。

●星新一 特許の品 サブスクリプション  - Google 検索

卒業論文題目リスト2011~2019 中央大学杉並高等学校 PDF 2020/02/20
 http://www.chusugi.jp/feature/downloads/thesis2011-2019.pdf

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