部品屋根性(18) Allegro, ACS712 素晴らしいけど私の机は駄目だ

Joseph Halfmoon

今日は製品は素晴らしいのだけれど、私の机の上じゃその性能が生かせないね、というお話になってしまいました。Allegro MicroSystems社のホール素子応用の電流センサIC、ACS712であります。まあ、お陰でAllegro社の特徴と強みが大変勉強になりましたが。やっぱり産業向けのデバイス屋さんは違うな。

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ちょい前に、完全「コンシュマー向け」な会社さんを見た後で、Allegro MicroSystems社のサイトへ行くと、同じ半導体デバイスといいながら、いっちゃ悪いですがそのスタンスの差が大きいです。どっちが良いも悪いもありません。どちらも必要なデバイス。Allegro社のターゲット市場は、

    • まずAutomotive
    • 次にIndustrial

という感じ。コンシュマー応用も無いわけではないのでしょう。実際、今回、現物を触ってみたACS712には、以下のような注釈がデータシートの最初のページに記載されています。1文引用させていただきます。

The device is not intended for automotive applications.

こういう注釈が冒頭に書かれているあたり、車載やっている雰囲気が半端ないッす。

さて、実際に触ってみるために、購入させていただいたのは、例によって秋月電子通商様より AE-ACS712 というモジュールのキットです。該当ページへのリンクを貼っておきます。

ACS712使用高感度電流センサーモジュールキット

組みたてた後の写真はこちら。組み立てといっても、表面実装部品は全て実装済なので、ポテンシオメータとかターミナル、ピンヘッダといった背の高い部品を半田付けするだけ、私でも出来る簡単さ。AE_ACS712

このボードを購入させていただいた目論見は、

Analog Discovery2で電流計測するのが簡単になるんじゃないか

というものであります。もう一つの「アナログ学習お手軽ツール」であるアナデバ社ADALM1000(M1K)であれば、即座に電流測れるのです。しかし、より高速、より高機能なDigilent Analog Discovery2がちょっとM1Kに遅れをとっている(?)のは電流計測であります。ぶちゃけ測定したいところにシャント抵抗など挿入し、そこの電圧を測って電流に変換しないとなりません。このひと手間が面倒。しかしこのボードがあれば、

    • ホール効果を使った電流センサーICなので被測定系とは絶縁されている
    • 被測定系に挿入される「抵抗」はmΩオーダで影響小に見える
    • 結構大きな電圧(40V)、電流(3A)でも測定可能

という期待であります。そしてこのボードの中心がAllegro MicroSystems社製の電流センサーICであるACS712だ、というわけです。チップのデータシートをダウンロードするついでにAllegro MicroSystems社(米国ニューハンプシャー州、位置的に言えばボストンの郊外という感じでしょうか)のホームページへ行ってみました。しっかりした日本語のページもあります。車載をやっているからでしょうかね。

Allegro MicroSystems

調べてみると、2020年Q2のセールス$114M、4倍して年間の日本円に直すと500億円くらいでしょうか。半導体メーカとしては「中堅どころ」といってよいでしょうか。でも去年から見ると今年は厳しい感じです。COVID-19のせいでしょうか。製品の3本柱は、以下の3つということです。

    1. センサ
    2. レギュレータ
    3. ドライバ

センサは、技術的には磁気センサ(ホール素子)中心のようで、フォトニクス製品も一部あり、という感じです。磁気センサを利用して、今回購入させていただいたACS712のような電流センサ、あるいはポジションセンサ、速度/方向センサといったものから、単純な磁気スイッチまでやられているようです。用途的には、トランスミッション、ホイール(ABS)、カムシャフト、クランクシャフトなどに「取りつく」ものあり、まさに車載です。また、電流センサの応用には太陽光発電もあり、今回購入のACS712よりは一桁デカイやつらが、太陽光発電の制御用に「推し」になっていました。フォトニクスはLiDAR狙いだそうです。やはり車載。

電源まわりのレギュレータなどでは、48V電源対応などうたっているところを見るとやはり車載が念頭にあります。LEDなどのドライバもありますが、ヘッドライト用。ハイブリッド、電気自動車なども当然ねらい目なのでしょう。

ドライバと書かれているところは、モータードライバでした。ブラシレスDC、ブラシDCなどありますが、ねらい目は、データセンターに並んでいるようなサーバー機のファンモーターの制御みたいです。産業用途。

Allegro社のプロフェッショナルな感じをヒシヒシと感じながら、ボードを調整してみます。ボード上にはポテンショメータが2個搭載されており、1個でオフセットを、もう1個でゲインを調整するようになっています。調整方法は、秋月通商殿の付属ドキュメントに書かれています。ただね、

★注意★

という項目があり、磁化されたドライバ使うなと書いてあるのでした。私は自分でドライバを磁化した記憶ないので、何本かある机の中のドライバの1本くらい大丈夫だろ~という甘い考えでおりました。調整用の回路がこちら、5Vの電源と100Ωの抵抗2本で調整するようになっています。

AE_ACS712_ADJ電流0のときのオフセットを2.5V、100mA流したときに2.0Vになるようにゲインを調整するのです。しかし、3本ほどマイナスの精密ドライバ使ってみましたが、どれも近づけるだけで、結構何百mVも電圧が振れてしまうのでした。しかたないので大雑把にドライバで調整した後、最後は自分の爪で(爪は帯磁しておりませんですのよ)微調整、ようやく2.5Vと2.0Vにほぼ合わせ込みました。

しかしです。折角調整できたのに、ちょっとボードの位置をずらしたら値が変わってしまいます。どうも近くに置いて使っているPCに近づけると電圧がフラフラする。それとも机の中にいろいろ入っているモノに磁石的なものがあるのか。気をつけて磁石は遠くにしまっているのだけれど、ホール素子でみたら、私の机の上は磁界がのたくっている場所なのでした。

ちょっとな、こういう環境はACS712を使うべき場所ではないなあ。

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