連載小説 第24回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>上諏訪時計舎あらためサイコーエジソン株式会社7年目のIC営業部海外営業課の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。わけあって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICを海外に売っているんですよ。時代はバブルへGo ! ってな感じなので、時にはボディコン姿で踊ったりもしてたんです(うふ)。

 

 

 

第24話  ステキな新人に慕われていた・・・?

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、文系ですが技術製品(半導体)を販売するIC営業部の4ビットAI内蔵営業レディです。私は同期の富夢まりお(トムマリオ)君とともにアメリカ市場を担当しています。なお、トム君は名前の割に純ジャパです(笑)。もっかの悩みは、私にステキな男子からなかなか声がかからないのは、もしかして私がスーパー過ぎるから?って事です。

この連載大河小説ももう24回。そういう意味ではスーパー? ようやく1986年、入社7年目、主任試験も終わったというのに、まだ24回。そろそろ次の年にいってもいい頃ではないかという議論もあるのですが、次の年にいくととうとう29歳。もう後がなくなってしまうではありませんか(汗)

そんな事を考えながら、いつの間にか、ま、いっかと思って寝てしまいました。そして、翌朝にはすっかりそんな事も忘れ、おっはよー! と一日を開始しました。

そんな調子で、おっはよー! を繰り返しているうちに年は明け、1987年がやってきました。前年に続いて東京の実家でお正月を迎え、母親と会話する元旦の午後。

「ねえ、お母さん、昨夜の紅白でさあ、加山雄三さんが少年隊の歌を仮面舞踏会じゃなくて仮面ライダーって言っちゃったでしょ。あれ、おかしくってさあ、思い出して今朝も笑っちゃったよ、私」

「加山さんもあがっちゃったのかねえ。でも、あれはあれで楽しかったわね」

そんな逸話もあったなあ、と思い出しますが、1987年といえば、俵万智さんの「サラダ記念日」が大ヒットし、アサヒスーパードライがキレッキレのビールとして登場した年です。安田火災がゴッホの「ひまわり」を53億円で落札し、日経平均が25000円を超え、バブルが更に加速していった頃でもあります。

我がサイコーエジソン株式会社といえば、順調に業績を伸ばしていました。半導体事業部も右肩上がりだった時代です。毎年、多くの新人が入社してきました。この年も4月に多くの新卒が営業部に入ってきました。海外営業課に配属となった男子は可愛い少年という感じ。住友直太朗君といって、すぐにニックというニックネームをもらいました。ニックだからニックネームではなく、ニックネームがたまたまニックだったという事です。念のため。

あ、それと、ニックですが18ではなく、22歳でした。あ、すみません、念のため。

女子も一人配配属となりました。小森咲良(さら)さんという綺麗な女子です。サラちゃん(すぐにそう呼ばれました)はヨーロッパを担当したので、私と一緒に仕事する事は少なかったのですが、同じ海外営業課で過ごすうちに、彼女の可愛くてスーパーなところが分かってきました。誰からも愛されるキャラクターで、とても共感するところの多い女子でした。

「ねえ、トム君、サラちゃんと私って似てない?」

「え?」

「だから小森咲良さんと私だよ」

「お、そうだなあ、共通点をあげてみるか」

「はい、どうぞ」

「まず、女子だ」

「そんなの似てるって言わないよ」

「そうか。じゃあ、髪の毛が黒い」

「それも似てるって言わない」

「ボディコンのセンスがある」

ヘンタイ!

「何でだよ」

「何ででも」

「じゃ、ま、美しい

「分かってるじゃん」

「そして、聡明である」

「分かってるじゃん」

「そして、メイクが上手い」

「何よそれ」

「下手よりいいだろ?」

「その他は?」

「そうだなあ、ま、好印象を与えるすべを知っている」

「え、自然に振る舞ってるだけだからね」

「そうか?」

「そうです。他には」

「一方は若い。一方は30近い」

「それ共通点じゃない。それより、もっとあるでしょ、良い点が」

「良い点であるか?」

「早く、言っちゃいなさいよ」

「それは、スーパーである、だな」

「そうなのそうなの、でもただのスーパーじゃないよ」

フレンドリースーパーだろ、分かってるよ」

「それよそれ。サラちゃんも私もフレンドリースーパーだと思うの。だから親近感がわくのよ」

「まあ、サラちゃんは確かにステキだなあ」

「あのねえ、私と共通なんだからね」

「まあ、そういう事にしといてあげるよ」

「サラちゃん、彼氏いるのかなあ?」

「あんなに可愛いんだからいるんじゃないのか? あ、それ、共通点じゃないぞ」

じぇじぇじぇ、そこに行くかトム」

「似ているとか言っておきながら、自分で墓穴を掘ってしまったようじゃのお、舞衣子よ」

「何よ、どうせ私は独り身よ。トム君なんか、さっさと誰かさんと一緒になっちゃってさ、ふん」

「いやいや、わりーわりー、そう怒るなって」

「許さないからね」

「いや、許してくれ、舞衣子さま~」

「ぷんぷん!」

別に怒ってませんでしたが、サラちゃんに似てるって思いながら、何が自分に足りないのだろうと考えると、ちょっと悲しいような、羨ましいような気がしてきました。だって、彼女は22歳。私は29歳。可愛い後輩ながら、若々しさに包まれているタイトスカートの彼女に嫉妬心のような感情も生まれてしまったのです。私だって、ボディコンいけてたんですけどね。

ま、いいや。年の差はどうやったって埋まらないので、私の方が7年分、経験値が高いって事で・・・。

因みに一方でサラちゃんは、私の事を、とても叶わない綺麗でスーパーでステキな先輩だと思って慕ってくれていたようです。それを直接聞いたのは少々あとになってからですが・・・。

ま、そんなこんなで職場はいい雰囲気でした。

 

 

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