部品屋根性(40) McDonald’s にBluetooth LEテーブルロケータ

Joseph Halfmoon

ボーっとして生きてきたので今まで気づいていなかったのです。マクドナルドの「番号立て札」、店内で飲食するときに渡されるあれです。裏側に燦然と「技適マーク」がついていました。私はずっと単なるプラスチックの立て札だと思ってました。久しぶりに店内飲食したお陰です。「ついで」に立て札の裏側の銘板の写真とってみました。BLEモジュールです。

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(2021年10月12日追記:BLEテーブルロケータの無線プロトコルなど「観察」した様子はこちら

まずは現物写真を御覧いただきましょう。立て札の裏側の目につきにくい上部にシールが貼られています。日本の「技適マーク」を始め、EU、米国、韓国、台湾のそれぞれ技適相当のマークが並んでいます。無線モジュールを含むデバイスは最上部に仕込まれているようです。その蓋と思われる部分にQRコード的な表示も見えるのですが、擦り切れているのか判別しずらくなっています。

TableLocator2たまたま「立て札」を横倒しにしたので見えました。慌ててスマホで写真を撮ったのですが、店員の人が素早く注文の品を運んできてくれ、あっと言う間に番号立て札を取り上げられてしまいました。以下に掲げたのが「銘板」のベストショットであります。

TableLocator私は無線素人で、Bluetooth LEもよくわかっちゃいないのですが、先週も別シリーズで BLEサービスを操作するスマホアプリモドキを実験してみたりしているので関心はあるのです。上の銘板に書かれている程の情報を頂ければ、大体どんなものかは推測できます。

まず中央上部に

Table Locator

と書かれており、これが位置情報を得るためのデバイスであることが知れます。立て札立てているお客の場所を店側が把握するためのデバイスでしょう。ま、順当な目的でしょうか。そして左肩には社名とそのロゴが掲げられています。

フランスの ACRELEC 社

でした。私は寡聞にしてこの会社を存じ上げなかったのですが、小売業界などに無線TAGを売っている会社のようです。そういえば、遥かな昔、この会社ではありませんがフランスの小売業向け無線TAGの会社に出張に行ったことがあったのです。空港から相手の会社へ行き、会議して、また空港へ戻ると。往復の車の中から遥か遠くにエッフェル塔が一瞬見えただけのフランス。愚痴はともかく、その時、無線TAGの会社が何社かあり、熾烈な価格競争をやっていると聞きました。もしかするとこのACRELEC社もそういう流れのなかの1社なのかもしれません。

ACRELEC社の Table Service のページ をみれば マクドナルド社のゴールデンアーチのロゴが燦然と輝いています。ハンバーガーチェーンに限っても、他に BurgerKing社、Carl’s Jr.社 と大手が並んでいますから、熾烈な競争を勝ち抜いてフランスから全世界に売っている、ということなのでしょう。

さてどのような無線かは、各国の技適相当の番号が書いてあるのでそこからも辿れます。しかし、何も調べずとも、右側にモジュール名がバッチリ書かれています。

Contains transmitter
module RN4020

言わずと知れた米国のマイコン大手Microchip社製、Bluetooth 4.1 Low Energyモジュールであります。Microchip社の製品ページへのリンクを以下に貼り付けました。

Bluetooth Low Energy Module、RN4020

結構小型のモジュールで内蔵のFlashは64KBしかありません。シンプルなソリューション向け?一応ホストマイコン(データシートの接続例は当然PICマイコンです)とUART接続できます。しかし、一定間隔で発信すればよいだけのシンプルな動作だと思われるのでホスト無でもファームウエアだけで対処できるのかも知れません。

飲食店向けの無線というと「特小」あるいは「微弱」といった日本国の規格がつい思い浮かぶのです。実際「呼び出しボタン」などはそうだと思います。しかし、流石グローバル企業マクドナルド社であります。調達もグローバルかつ、世界各国の店舗で運用するために「ワールドワイドで使用可能」な規格を選択するのですな。それでBLEだと思います。まあ、アベイラビリティから言ってWiFiかBluetooth(でもBLE)の2択でしょう。BLEの方が多分1桁以上電池の持ちが良くなる(度々番号立て札内蔵の電池を交換しないとならないのは作業効率悪くなるので)と思うのでBLEというのは順当な選択だと思います。発信の頻度と送信電力の選択を知りたいところですが不明です。BLEのツールで測定したら分かるかも。

一応モジュールの動作電圧は3.3Vでも1.8VでもOKみたいです。この番号立て札は、多分単4(もしかすると単3かもしれません。大きさと重さを測れたわけでないので手でもった重さから単4と推測)2本で3V。これをレギュレータで1.8Vにして電源供給しているのではと推測します。

まあね、BLEつかってロケーションをとるようなことが出来ることは知ってはいました。またスマホでそれをやるのは「コロナ下」故に一般化したんじゃないですかね。しかし、こんな身近にBLEビーコンというか、ロケーションタグというかが仕込まれて使われていたとは知りませんでした。

今「仕掛」途中になっている BLE サービスを使ったスマホアプリもどき実験の後は、これだな。BLEビーコンで距離やローケーションの推定の実験をやってみますか。RSSI(受信信号強度)を使うのであれば、とりあえず測るだけなら簡単そうに思えます。

以前も駅のホームの屋根の上にGPSアンテナが設置されていたり、屋根の下にWiMAXが設置されていたりと、街中にはいろいろデバイスが仕込まれているところを見つけました。ボーッとして生きていてもたまには見つけるデバイスもある、と。

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