お手軽ツールで今更学ぶアナログ(37) アナログフィルタ・ウイザード、グラフを眺めていたい

Joseph Halfmoon

アナデバ社(ADI社)の記事を読むときに「深いお言葉」あるいは「回路の深淵」を期待してしまう自分がおります。素人の怖いもの見たさ、か。ようやくたどり着いたStudentZone2017年10月号、とおり一遍のWebツールの解説記事に見えたのですが、ツールのスライダーを操作した瞬間に深い闇が現れてくるのでありました。

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アナデバ様の学生向けWeb記事 StudentZoneを学生でもないのに「最初から順番に読む」、なんとか2017年10月号にたどり着きました。実はこの年の12月号到達を心待ちにしております。なんといって、そこからようやく「お手軽ツール」と現物で実験ができるんであります。読み物記事もあと2回か。でも、ここまでの記事の噛み応えを考えると後2回も甘くはありそうにありません。今回は、OPAMPでつくるアクティブなアナログ・フィルタの設計支援用ツールがテーマです。何か深みにハマって帰ってこれないのじゃないかしら?

まずは肝心のStudentZoneの記事へのリンクを張らせていただきましょう。

フィルタ用のアンプはどうやって選べばよい? ――この悩みを解消する「アナログ・フィルタ・ウィザード」

記事を読んだ時点では、ちょっと拍子抜け。お化け屋敷に入るつもりがそうではなかったみたいな。淡々とツールのご説明です。前々回のように、パラメータが多すぎてどうしたものか途方にくれるようなことはありません。結果も見れば分かる、という感じ。一瞬、アクティブフィルタってこんな簡単に設計できるんだ、などと錯覚してしまいます。

今回宿題は2問あります。手作業でやったら考え込みますが、ツールを使えば直ぐに答えがでそうな雰囲気です。先に宿題の解答へのリンクを貼り付けておきます。

October StudentZone Quiz Solution

解答みても正直内容ありません。ツール使え、ってな感じ。以下が本題のWebツールへのリンクです。

アナログ・フィルター・ウイザード

以下はネタバレ含まれますのでご注意を。

宿題1はローパスフィルタを指定の条件で作って、完成したフィルタの静止電力を求めよ、というものであります。「指定の条件」をそのままWebツールの入力画面に入力していけば終わりか?

以下のように、条件入力いたしました。

STOP-40

しかし、問題文をよく読むと設計するのは

2段のバターワース型ローパスフィルタ

です。上のフィルター応答スライダーのデフォルト位置にあるのは、5次バタワース(3段、オペアンプ3個使うやつ、2個ではない)です。ダメじゃん。

このツール、「フィルタの応答」はスライダーで選ぶようになっておるのであります。フィルタの深淵にはまりこまぬよう「1次元」での選択でしょうか。これなら私でもできそう。スライダーを左にズラすならば、チェビシェフ・フィルタとなり、左へ行けばいくほど、ピップルが大きくなります。そして急峻な減衰を示すようにもなります。ほほう。面白い。こんな感じSTOP-40Che

右にズラせばバタワース・ベッセルフィルタということで、ズラせばズラすほど次数が増えていきます。群遅延とか観察するとまた面白いのでしょうが、とりあえずパス。STOP-40Be
しかし、スライダーのどこにも2段のバタワースフィルタ、などは存在しません。どうも

問題文の条件+指定条件以外はWebツールのデフォ

という設定方法では、2段のバタワースフィルタなど登場できない、ということのようです。周波数を落とせば2段も現れてきます。周波数落とすのは問題文から離れてしまうな。一番可能性ありそうだったのが、

ストップバンドのデフォルト -40dB減衰

というところをオマケしてしまうこと。問題文にストップバンドは何dBという指定がないので、デフォルトの-40dBを緩和してみます。素人なので計算も何もなく、「総当たり」です。分かったのは、

  • -38dBであれば、2段のバタワースフィルタが選択可能
  • -39dBであれば、3段となり、2段は選択不可
  • デフォルトは-40dB

結構微妙。出題者の意図がどこにあるのかは不明ですが、ストップバンドの減衰を-38dBとして、デフォルトから2dBオマケして、無理やり解答可能といたしました。STOP-38

ノイズを抑えよ、との問題文なので、「低ノイズ」で部品を選定し、生成した回路がこちら。

STOP-38CIRこのときの静止電力はこんな感じで求まります。

STOP-38Powerなお、低ノイズ志向でなく低電力を指定すると、部品アンプの選択が変わり、そのときの静止電力は以下のようになります。随分少なくなるな。当然、電力値表示だけでなく、ノイズのグラフも出力できるので、ノイズで比較して部品を選定することも可能です。

STOP-38Power2あちこちいじっていると、ああ、こんな感じになるのだ、と感心することしきり。どんどんグラフの海の中に溺れていきます。また、OPAMPだけでなく、抵抗やコンデンサなどの精度の選択もでき、これがまた興味深いです。下は、推奨の部品系列での誤差含むグラフですが、普段使いそうな抵抗5%、などと設定すると「幅」がバンと広がります。げげつ。STOP-38Error

そして、上の「部品の公差」のお隣、「次のステップ」がお約束です。SPICEファイルなどの設計情報各種のダウンロードが可能なんでありますが、

  1. サンプル注文
  2. 評価ボードを注文

あります。ついクリックしてしまいそう。引き込まれるツールか。

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