介護の隙間から(48) 定番555タイマICで睡眠モニタリング?の試み、先は長そうだが

Joseph Halfmoon

セルフ介護?の試みとして「夜間頻尿モニタリング」に取り組んでおります。別シリーズでのソフトの改良も進捗あり、特定対象者(自分)向けには目途が立ちつつあり(本当か?)しかし「眠り」そのものに肉薄しなければトイレに行く回数だけをモニタリングしても意味無いじゃん、という感じもチラホラ。

まずは先行する「夜間頻尿モニタリング」関係の投稿へのリンクを貼っておきます。

3回の実証実験もどき、3週間ほどの運用を経て「私が夜トイレに起きる回数を数える」という目的にはほぼほぼ合致しそうなシステムが構築できそうではあるのです(といって、再度のソフト改良まだだけれど。)スマホでダッシュボードを開けば毎日の情報がグラフと数値で一目瞭然っと。

しかしですね、結局のところ「よく眠れていない」ときに「夜間頻尿」が発動される傾向あり、「眠り」そのものにアプローチしないことには駄目な気がしてきました。

「介護の隙間から」の過去投稿で「睡眠」に関係ありそうなもの

介護の隙間からの過去投稿では「徘徊センシング」について調べていた時期があります。その折に、以下の投稿でベッド会社の睡眠状態の評価装置を取り上げさせていただいたことがあります。

介護の隙間から(5) 徘徊センシングから眠りへの回帰?

まさにそんな装置が欲しいです(セルフ開発で。)また、なぜ「徘徊センシング」と「眠り」が関係するかというと、「ベッドから起き上がって」「徘徊に出る」ことが多いために「離床センサ」というものが存在します。非常に多種多様な技術が応用されております。それら特許についても調べていたのです。

介護の隙間から(6) ざっと特許を

使われているセンサ技術の中で一番多いのがカメラ(イメージセンサ)でした。見れば分かる、当然だな。他にもほとんどありとあらゆるセンサをこれに応用する出願がありました。その中で今回思いついたのが

容量センサ

です。理由は簡単に手元でプロトタイプを作って「実証実験」できそうだったから。また、上記の投稿を見返してみると出願件数も少ないみたい。

とりあえず寝ている/起床が識別できそうか2~3時間で試行してみる

思い立ったら吉日とばかり、とりあえず見込みがありそうか否か、即座に実験してみることにいたしました。「自分が自分のベッドに寝ているか、ベッドを出たか」を識別できるか、という問題設定であります。

そこで取り出しましたのは、定番中の定番、555タイマーであります。シグネティクスNE555が世に出たのは1971年といいますから半世紀を超える長い歴史のあるICです。タイマといいつつデジタルなカウンタでなくRCの時定数で時間を測るアナログタイマ。オリジナルの発売元のシグネティクス社はとっくに無くなっていますが(NXPに買収されたのだっけ?)、555自体は、今だに販売が続いている、それも結構な数量のはず。なんといってもお手頃価格。ベストセラーでロングセラー、半導体業界における金字塔と申せましょう。

今回使用は、オリジナルのバイポーラの555ではなく、CMOS版のLMC555であります。もとはナショナル・セミコンダクタ、いまではテキサス・インスツルメンツ製であります。かなり前に仕入れたデバイスであったのでナショセミのマークを頂く一品(アイキャッチ画像参照。)一応データシートへのリンクを貼っておきます。

LMC555 CMOSタイマ

マルチバイブレータで、キャパシタンスにより周波数が変動する回路とする

作ろうとする回路は身も蓋もないデータシート記載どおりのマルチバイブレータ回路です。555は外付けの抵抗とキャパシタで発振周波数がきまるので、Rを固定、キャパシタの部分にお手製の「センサ」を接続し、出力の周波数を観察すれば容量の変動として人体の在、不在が分かる、はずというのがアイディアです。人体はほぼ水、水の誘電率は空気の80倍くらいだった筈なので、人間がいればわかるっしょ、という単純な図式。原理からすれば「タッチセンサ」と変わりませぬ。作成した回路はこんな感じです。

SleepingPostureSensor_schematic
問題は、タッチパネルの電極にあたる部分です。ベッドをタッチパネルに見立てて、シーツの下に電極を置き、その誘電率の変化を周波数の変化として観察したいです。

とりあえず適当なワイヤでよくね

シーツの下に敷くので、寝汗でショートしないか、背中にワイヤがゴリゴリ当たらないか(寝るのは自分)、体重かかって折曲がって断線しないか、など実用的には要検討事項テンコ盛です。が、とりあえず適当なワイヤをシーツの下に設置すれば、数十ピコから数百ピコくらいの容量変化はきっとあるだろうと予想しました。まさに浮遊容量、頼りない。

以前の投稿で物置から取り出して1度だけ使った昔懐かしい300Ωフィーダ線が所在なさげに目の前に放置されたままになっておったので、これを再利用することにいたしました。と言ってフィーダ線そのままでは「センサ」としては感度悪そうで不適切(そのかわりベッドサイドの計測装置とベッドの間の配線としては適切?)の筈なので、先端の被覆をすこし向いてむき出しにしたケーブル2組の間をセロテープで一応簡易?絶縁しながら貼り付けてみました。ここが「高感度部分」のつもり。555タイマと組み合わせた現物がこちら。

SPsensorDUT

この回路を発振させたときの波形がこちら。このときはAnalog Discovery2から5V電源与えて動作させています。

noPersonWave「高感度部分」を手で握った波形がこちら。

graspWave人間(の静電容量)に反応して周期が遅くなっていることが分かります。でも実際、ベッドに設置したらどうよ。ただね、波形を観察するためのAnalog Discovery2やパソコンを持ってベッドサイドまで行くのはしんどい。555は電池駆動(6V)、周波数はハンディDMMでの測定にあらためて観察してみます。以下がベットのシーツ直下にワイヤを這わせたときの周波数。人間不在のとき。
NoPersonFreqシーツの上に(普通そうだが)あおむけに寝たときの周波数がこちら。
SleepingFreq一応、居る、居ないくらいは識別できそう。しかし、この手の「浮遊容量」は周辺の環境の変化で時に応じてどうとでも変化しそうです。

  • 周波数の絶対値で識別はできない、多分。。。
  • 時系列的に周波数を測定し、その中で相対的に処理すれば居る、居ないは判別できるんじゃないか、多分?

と勝手に期待しています。周波数変化のパターンを「学習」すれば、居る、居ないだけでなく、よく眠っているとか、寝床に入っているけど眠れないでいる、とかまでわかるんでないかい。手前勝手な目論見だな。やっぱり、AIか。ふふ(何が。)

でもその前に、静電容量をもっとメリハリよく検出できて、寝ごこちに影響なく、防水性などもOKな「電極」考えないと。お手頃価格で。そちらが先か。

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