お手軽ツールで今更学ぶアナログ(63) PN接合容量の件、1N4001整流ダイオード

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」は、ようやく2019年10月号到達しました。今回は「普通の」ダイオードに逆バイアスかけてPN接合の容量測れ、という件。デバイス的には「バラクタ」の原理的なところでないかしらん。実験らしい実験ではあるのだけれど、いつもの通りのグダグダな私。

恐れおおいことなんだが、今回も言いたいことはあるのです。でもその前に記事(日本語)のURLを貼り付けておきます。

電圧に依存するPN接合容量

そして上記記事の末尾の課題に対応する解答編は以下です。

October 2019 StudentZone Quiz Solution

解答編の計算、あってます?

今回、恐れ入りつつも申し上げるのは、「解答編のCmの計算、あってます?」という1件。プローブの容量Cmを求めておかないと、測定結果であるダイオードのPN接合の容量計算がそもそもできないので、本文の最後になってCm求めよじゃ遅いでしょ、というツッコミはありつつ、本当のところは

  • 掲げられている公式に、解答編の結果を代入して検算しても元に戻らない?
  • プローブのジャンパ線にしたら妙にデカイ容量じゃね。

という疑問です。まあ、記事のグラフはADALM2000使って測定したものだし、こちらはADALM2000所持しておらないのでDigilent Analog Discovery2使用なので、本当のところは分からんのでありますが。しかし、変じゃね。

そういうことで測定はまずオシロのプローブ(ジャンパ線)の容量測定から

ADALM2000にせよ、AnalogDiscovery2にせよ、「お手軽」ツールなのでBNCコネクタで接続するようなプローブではなく、ジャンパ線で信号を取り出して波形を観察しとります。今回は、その「プローブ」の容量測定から行えとの手順です。

測定は10kHzから5MHzくらいまでのボード線図をとりながら、1MHz超えたあたりの「平らなところ」の「dB」を読み取れ、そして直列に接続した既知のキャパシタンスとdBから「プローブ容量」を計算せよ、との思し召しです。測定したボード線図がこちら。「平らなところ」の「dB」が読み取れるようにマーカおいてあります。

39pBode上記から当方で求めたプローブ容量は、36.5pFとな。Digilent Analog Discovery2のスペックみると 24pF と書かれているのですが、まあ、被測定デバイスを接続したブレッドボードに刺したジャンパ線の容量だし、もともと小さい値で測定難しいしで、5割くらいデカイのは、いいんじゃね、と心に言い聞かせましたです。(前述の解答編の値はこの何倍もデカイっす、納得いかね~ずら。)

参照用のキャパシタをダイオードに取り換えて測定

同じ測定系で、参照用のキャパシタをダイオードに取り換え、逆方向電圧のオフセットを変えながら測定をくりかえぜ、というのが今回実験です。ちょっと見、簡単そう。ご指定のダイオード3種類を用意、さらに「発展課題」でLEDも3色測ってみよなどあり、そのつもりで実験始めたところの写真が以下です。

1N4001_DUT

最初は、整流用のダイオード 1N4001です。まずはオフセットOVの時のボード線図から。ゲインが読み取り易いように、平になるあたりにカーソルを放置してあります。1N4001_0V

しかし、なかなか測定はメンドイです。

  1. ボード線図を測定して、平なところのゲインからキャパシタンスを求める
  2. 測定データをCSVファイルで保存する(後で考察するため用。考察せんけど。)
  3. オフセット電圧を変更して1,2を繰り返す
  4. ダイオードを変更して1,2,3を繰り返す

2重ループですな。ツールがいろいろ数字を出してくれるので、手で書き留めるような作業はほとんど無しなのですが辛いです。昔、この年寄りが「学生実験」などしていたころはそんなツールなど無かったので、ノートで実験データを手書きでした。これより凄い忍耐だね、偉いな昔の自分。

見ているとパソコンのフォルダの中にどんどんファイルが溜まっていきます。こんな感じ。

Files測定したデータの一部と、先ほど求めてあったプローブ容量を使って計算した1N4001の逆方向電圧とキャパシタンスのグラフが以下に。

1N4001_CAP_GRAPH念のため、1N4001のデータシートを見ると、はるかに広い電圧範囲についてのキャパシタンスのグラフが掲載されていました。それをみると、上のグラフは「だいたい雰囲気でてるじゃん」という感じ。だいたいあってる。OKなのか。

しかし測定にも疑問が

一番の問題は、逆方向電圧2.5Vくらいまでは「予定どおり」測定できるのですが、それを超えた電圧、例えば3Vを与えると測定できないことです。まともな波形がでてきませぬ。これはどのダイオードでも同じ。測定系になにか問題あるのか?アナログ素人は、うん~と考え込みつつも、未だ分からず。。。

2番目の問題は、1N4001以外に、1N3064、1N914についても測れとあり、測ったのですが記事と異なることです。当方で測ると両方とも値が小さいことです。記事の書きぶりだと、1N914だけ、1N4001や1N3064よりも「かなり小さい」ということなのですが、当方測定では、1N914も1N3064も「1N4001に比べるとかなり小さい」です。1N914と1N3064のデータシートには1N4001のようなグラフは掲載されていないので本当のところは分からず。

釈然としないのであります。何時ものことでありますが、それでも夜は眠れるのだ。

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(62) OP97、再び登場。いいんだよコマケーことは に戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(64) ダイオード1N914の温特使って温度をセンス へ進む