連載小説 第63回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICを販売する米国現地法人のSS-Systemsへ赴任しちゃいました。食生活の変化で私の見事な肉体は更に水平方向へ成長しつつも、毎日忙しくやっています。Appleの青井倫吾郎さんから、とうとう大事なお話を聞きました。もう大丈夫です。

 

 

第63話 遅ればせながら生涯の伴侶を見つけました

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の11年生。文系ですが技術製品(半導体)を販売するアメリカの現地法人SS-Systemsへ赴任。美味しい食事の連続で、私の見事な肉体(笑)は水平方向へ更に見事な成長をとげつつありましたが、アップル・コンピュータの青井倫吾郎さんから大事なお話を聞いて、私たちの将来に関する一大方針を考える事に?

 

 

前回のお話を読んで頂いた方はご存知だと思いますが、私の大好きな倫太郎さんはとうとう離婚が成立して、やっと私との事を進めてくれる体制ができあがりました。体制とかいうと、堅い言葉かも知れませんが、体制は大事です。

それは、ドラッカーさんも仰っています。マネジメントでやるべき事は5つある。それは、

1 目標を設定する

2 それを達成するための組織・体制を作る

3 メンバーがその気になって頑張ってくれるように効果的なコミュニケーショ  ンをとる

4 うまくいっているか日々チェックしてPDCA(Plan Do Check Action)を回すす

5 これらを継続的に実現できるよう人財を育成する

 

勉強になりますねえ。そして、これを私と倫吾郎さんとの状況に当てはめてみると、

 

1 二人の目標は多分、一緒になって子供も欲しくて、ステキなファミリーになるって事かなあ。

2 それなりの体制ができていないと、それは無理だったんだけど、離婚も成立して体制は整ったようです。あとはお母さんにも報告しなきゃ(うふっ)。あ、でも、プロポーズの言葉を聞いてないじゃん(汗)。倫ちゃん早く言ってよ、その言葉。

3 コミュニケーションはとれてるつもりだったけど、ポロポーズの言葉を聞いていないって事は、とれてないって事? それをクリアすれば、私たち、結構気持ちは通じ合ってる積りです。

4 やっぱ、これはPDCA必要かも。色々上手くいっている積りでも、ちょっと気を抜くとあっけなく破綻する夫婦をよく目にしますからね。

5 そして、将来ずっと楽しくやっていくためには、自分たちが一生をかけて成長しなくてはなりません。

 

うむふむ、流石は経営学の達人、ドラッカーさんの仰る事は理にかなっているようです。結婚はドラッカーさんが言うようにやっていけば、間違いなさそうです。え、違う?

ま、いいでしょう。ここで、私たちの目下のアクションアイテムは、プロポーズのお言葉です。私のお母さんによれば、そんなの自分で言っちゃいなさいよ、なのですが、私はやっぱり、倫ちゃんに言って欲しいんですよね。何故かって? それは、今まで、何となくそう思ってたというのもあるのですが、前回の倫ちゃんの話を聞いて、倫ちゃんの2度目の結婚は生涯素晴らしいものでなければならないので、そのスタートとしては,やはり倫ちゃんが自分の意思で私との結婚という新たな1ページを開いて欲しいと思ったからなのです。一度上手くいかなかった人は、時として、新たなページを開くのに臆病になってしまうかも知れないと思うのです。倫ちゃんには、躊躇して欲しくないのでした。

 

「舞衣子、ちょっとテキーラの力を借りたいと思うのだけれど」

「何、言ってんの、倫ちゃん。Mexican Restaurant も大好きだけど、その言葉はシラフで言って欲しいかな」

「そっか。それもそうだな」

という訳で、私たちはもう実質的に二人とも一緒になろうと決めていたのですが、ちょっと後付けセレモニー的になるかも知れないけれども、プロポーズの機会を作ろうという事になりました。で、サンノゼのダウンタウンのメキシカンレストランを予約し、ちょっとだけいつもよりオメカシして出かけました。今年の春、一緒に行って、テキーラを少々(というかかなりたくさん)頂いた夜に、私たちは急速に仲良くなったという思い出のレストランです。

1991年9月の土曜日の夕方、倫ちゃんは高らかに宣言しました。もちろん今回は素面でです。

「大好きな詠人舞衣子さん、これからの人生をボクと一緒に生きてください!」

と言ったか、

「舞衣子、ボクはバツイチになったけど、その経験値に基づくと、これからの生涯の伴侶は君しかいないと分かる!」

と言ったか、

「舞衣子、君との子どもが欲しい!」

と言ったか、それはここではお話しないことにします。倫太郎さんが、それまでの苦い経験も踏まえた上で、自分の強い意思をもって伝えてくれたその言葉をずっと大事にしていきたいと思います。そして、いつの日か、私たちの子どもから、お父さんは何て言ってプロポーズしたの?とか聞かれた時のために取っておく事にします(うふっ)

青井倫太郎さんは、私と初めて出会った子どもの頃からすると20数年、大人になって会ってから2年半、ホントにお付き合いを始めてからは約半年後のその日、私と新たな人生を歩んでいこうと言ってくれたのでした。

人生って不思議なものですね。

と美空ひばりさんも歌っていましたが、ホントに人生って不思議です。20年以上も前に多摩川で一緒にBBQをした倫吾郎さんが、私の生涯の伴侶にならんとしているのです。母親に何て伝えようかなと、思わずニコニコしながら嬉しくなっている自分がいました。

 

 

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