部品屋根性(58) もうすく合併、リコー電子デバイス、R3111電圧ディテクタ

Joseph Halfmoon

前回、新日本無線とリコー電子デバイスの合併のニュースについて書かせていただいたです。このところ毎週新日本無線のOPアンプにはお世話になっているので、片手落ちにならぬよう?合併するもう一方のリコー電子デバイス社のデバイスを使ってみたいと思います。R3111シリーズ低電圧ボルテージディテクタです。推しじゃないかもですが。

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合併したからといってデバイスの型番が急に変わったり、手に入らなくなるといった事態は無い筈です。特に「納入仕様書」などで決まっている部分は、変更するとメーカもお客もメンドイので、そのままかと。ただ他社の例からみてもデータシートに書かれている社名とかは「おいおい」変更になるんじゃないかと想像します(勝手な想像です。)もっと端的なところでは、ホームページのURL。これは変更になるんじゃないですかね、これまたおいおい。

よって、何時までリンクがあるかは不明ですが、現在のリコー電子デバイス社のR3111シリーズのホームページは以下です。多分「推し」のデバイスは他にいろいろあるのに何でR3111と言われそうな感じですが、「手に入ってしまった」のがこれだった、ということで。

R3111シリーズ 入力10Vボルテージディテクタ

このデバイスの概要を上記ページより引用させていただきます。

R3111 シリーズは10Vまで動作可能なCMOSボルテージディテクタICです。遅延回路を内蔵していないシンプルな電圧検出器です。出力形態をNchオープンドレイン”L”出力、Nchオープンドレイン”H”出力、CMOSの3種類から選択可能です。

というわけで(どういうわけだ)、入手いたしましたデバイスの正式な?型番は以下です。

R3111N211A

シリーズ名R3111は良いとして、NはパッケージがSOT-23-5/SOT-23-3のどちらかを示し、21は検出電圧が2.1Vであることを示し、次の1はパッケージがSOT-23-3以外である(つまり上記のNと組み合わせるとSOT23-5とな)ことを示し、最後のAはNchオープンドレイン出力であることを示し、とこんな具合であります。まあ、デバイス業界では普通な感じのネーミング。型番言えばスペックが一意に決まるので良いネーミングだと思います。しかし、非デバイス業界じゃなんだかなーという感じもしないでもない。

ぶっちゃけこのデバイスは電源電圧が検出電圧を下回ると「ハイ」と手を挙げるためのものです。手を挙げてどうするかと言えば、マイコンなどにRESETをかけたり、電源をバックアップ系に切り替えたりといった「目立たないけれど決定的な」作業をするためです。ただし、RESET-ICと言わず、ボルテージディテクタと控え目な言い方なのは、遅延等を持たない「素」の電圧検出器だから、ということでしょう。

昔風のマイコンを振り返ると、トラブルの多くがRESETとか発振器関係、それも電源立ち上げ時か、電源たち下げ時がらみではなかったかと思います。よってこの手の電源電圧を監視するデバイスは、システムの安定動作に欠かせなかった、ような気がします。しかし、モダンなマイコンを見ると、電源電圧のドロップを検出してRESETかけるような機能を搭載していたりして自前化進んでいるような気もします。まあ、みんながみんなモダンではないからなあ。

このデバイス、検出電圧の設定は工場に注文する必要があります。最低数量は不明ですが、典型的なBtoBのデバイスビジネス。普通は、小分けに1個2個で買えるようなデバイスじゃないと思います。しかし、偉大な秋月電子通商殿のお陰にて、検出電圧2.1V品だけは、なぜだか購入できた、と。

実験用の回路

実験に使った回路は、データシート中に「検出電圧測定回路」として登場する回路に、例によって Digilent Analog Discovery2を接続したもの。こんな感じ。

R3111_DUT_Schematic実際には、オープン・ドレイン出力はVDDへプルアップして使う(ロウで電源低下検出)とするのが普通の使い方だと思うのですが、測定用の回路とて別電源Vp(+5Vに設定)に接続してあります。

VDDには、シグナルジェネレータW1から、オフセット2.5V、振幅2.5Vの三角波を与えてみました。周波数10Hz、ちと速いな。電源周りのトラブルの場合「立ち上がりがだらだらと遅い」時に問題が出やすい筈なので、もっと遅くするべきかとも思ったのですが、測定が面倒で適当なところで手を打ってしまいました。このVDDをオシロのC1、OUT信号をC2で観察する、という塩梅です。

現物の接続は以下に。SOT23のままではブレッドボードに刺さらないので、これまた例によって秋月殿のDIP化基板使ってます。

R3111_DUT

実機動作

まずはオシロで観察した生波形が以下に。

R3111_TIM黄色がVDD、青がOUT出力(オープンドレインだが470kΩの抵抗で5Vに釣り上げてある)です。黄色が落ちてくると2V付近でOUT出力がロウになり、黄色が上昇するとやはり2V付近でOUT出力がハイになっていることが分かるかと思います。

その真ん中に細い山が見えるのは、VDDが低くなりすぎると、このICの動作可能電圧すらも下回り、オープンドレインのトランジスタが電流を引けなくなって、このデバイスそのものがギブアップしている、ためだと思います。流石に0.7V以下では動作は期待してはいけないみたい。これは、しかたない。

その辺の電圧をみるために測定用のカーソルを縦横に置いてみたものがこちら。

R3111_Vmeasure電源電圧のディテクト電圧は、行きと帰りで100mVくらいヒステリシスがついていますな。これはデータシートにあるとおり。また、VDDが0.7Vまでとなっている正常動作は、実力的には450mV付近までいける、それ以下で万歳となるみたい。

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