部品屋根性(59) ルネサス、M51957B、電圧システムリセットIC

Joseph Halfmoon

前回はリセットICというにはチョイと足らない(単機能な)電圧ディテクタでした。今回はリセットICと銘打つM51957B、ルネサスであります。現在の型番で言えばRNA51957B。しかし入手してあったのはM51957Bであります。型番から推察するに元は三菱半導体のデバイス。ステータス、Last Time Buyとな。

※「部品屋根性」投稿順Indexはこちら

ルネサスのRESET ICに見る「合併と買収」の歴史?

まずルネサス殿の製品ページへのリンクを貼り付けておきます。

RNA51957BFP

今のところ、上記からデータシートをダウンロードできましたが、上記ページには小さく悲しいお知らせが書き込まれています。

Last Time Buy

とくに、このデバイスに思入れがある私ではございませぬが、こういうお知らせを見るにつけ、黄昏るんであります。

元々M51597は、合併してできたルネサスの源流の一つ、三菱電機の半導体部門の製品だったと思われます。かなり歴史のあるデバイスなのでしょう。きっと製造工場も古びている(勝手な想像です)し、ディスコンになるのもいたしかたないのでしょう。

それに、ルネサス殿の voltage-supervisor-reset-ics なる以下のページへ行ってみるだけで「合併と買収」のいろいろが見えてくるような気がいたします。

電圧スーパーバイザ、リセットIC

まず、アプリケーションノートが並べられているのですが、これ、どうも米国Xicor起源のアプリケーション・ノート多数みたいです。ルネサス殿がIntersilを買収したら、Intersilが買収したXicorもIntersilのおなかの中に入っていた、という関係なのでしょう。買収のネストね。

ISLチョメチョメみたいな型番がずらりと並んでいるのは、元はIntersil社の製品だったと思われます。後ろの方にはXicor起源らしいXチョメチョメという型番の製品もならんでいます。元々のルネサス製品と思われるM51xxx系(現在の型番RNA51xxx)は真ん中付近にちんまりと。製品数多く、この中のあるものは、ラストバイとかディスコンとか言いながら整理統合されていくのではないかしらん、多分(個人の感想です。)

ひとつ不思議なのは、先頭に鎮座するICL7665S。ICLチョメチョメはMaxim社の製品だったのではなかったか。そしてMaxim社はAnalog Devices社に買収されたのではなかったか。なぜ、このルネサスのページにICLの名を頂く製品があるのか、それを調べるだけでも小説が書ける(嘘です。)

ルネサスくらい大規模に合併や買収を繰り返すと、傍目には地味なRESET-ICにも物語があるのだな~。閑話休題。

M51957Bのテスト回路

前回は、来月、新日本無線と合併するリコー電子デバイスのR3111電源ディテクタでした。M51957Bについても、R3111と同様に電源電圧を上下させて、RESET信号が出てくる様子を観察したいと思います。

観察用の回路は以下です。
M51957B_DUT_schematic
前回のR3111と違う点その1は、検出する電圧の設定の方法です。R3111は工場で設定するキメウチでした。しかし、この51957は入力端子に接続する抵抗で設定できます。上記の回路の場合、暗算にて約2.5Vとな。計算大丈夫か?

違いその2は、出力するRESET信号(購入したのはオープンコレクタ出力品)に遅延を付けられることです。胸を張ってRESET-ICとうたえるのはこの部分が大きいかと。遅延設定用の端子にキャパを接続すれば良いと。

パワーオンRESET時のありがちな問題は、電源が規定電圧まで立ち上がり、RESET信号がインアクティブになったのに、まだ内部回路が安定動作してなかった、というケースではないかと想像します。発振器の発振だったり、内蔵電源だったり。RESETが外れて走れと言われたのに、つんのめって転んでしまう、といった感じ。安定動作まで時間がかかる人達のために、もう少し待ちを入れてよ、というところでしょうか。

今回 0.1μFつけてみました。ぶっちゃけパスコンと同じ。100000pF。データシート記載の式で遅延時間を計算すると34000μs、つまりは34msね。ちょっと付けすぎてる感じもしないでもない。テストだし大盤ぶるまい?

ブレッドボード上の現物はこちら。

M51957B_DUT

動作確認

R3111のときとなるべく同じにしようと思ったのですが、キャパ付けすぎました。入力波形10Hzだと、非常に見ずらいです。振幅2.5V、オフセット2.5V、周波数2Hzを「電源電圧のつもり」の信号としてます。下の画面の黄色C1です。これに対して、RESET信号は電源電圧から100kΩにプルアップしてあるオープンドレイン出力、青色C2です。

M51957B_TIM5V上を見ると、電圧が落ちていくときには、2.5V付近でRESET信号が出ます(LOW)が、電圧が上がっていくときは、2.5V位置よりも時間的にかなり遅れてRESETが解除されることが分かります。

その遅延の様子にカーソルあてたのが以下に。

M51957B_Delayだいたい40msくらい遅れてRESET解除されている感じ。設定34msだけれども。まあいいか(ほんとか。)

R3111でもありましたが、電源電圧が下がりすぎると出力トランジスタ自体が電流を引けなくなるので、RESET信号が浮きます。一応、その時の電源電圧を観察すると、約0.6V弱というところ。仕様は0.7V、Typ.は0.55Vみたいなので、これまた、こんなもんかい。

M51957B_Low
ちゃんと動いておりますぞよ。RESET-IC、最後の砦、ゴールキーパーみたいなもんか。

部品屋根性(58) もうすぐ合併、リコー電子デバイス、R3111電圧ディテクタ へ戻る

部品屋根性(60) エイブリック、S5716、ホールIC へ進む