部品屋根性(60) エイブリック、S5716、ホールIC

Joseph Halfmoon

このところ小さなデバイスをネタに半導体会社の合併やら買収やらの軌跡を辿っております。今回はエイブリック社、ABLICと綴ると何やら外資に聞こえますが日本の会社。元のお名前はエスアイアイ・セミコンダクタ、第二精工舎が起源のセイコーインスツル社の半導体部門が分かれてできた会社です。今ではミネベアミツミ社の子会社とな。

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エイブリック社のお名前の変遷

セイコーインスツル社といえば、1937年創業の歴史のある会社です。セイコーの腕時計を作っていた(2020年に腕時計の生産をセイコーウオッチ社に移管したみたい。)古いお名前は第二精工舎ですが、私らなどの年代だと「セイコー電子工業」あるいは、英文字3文字でSII(エスアイアイ)と呼ぶのがシックリきます。それがセイコーインスツルメンツ社となり、さらにセイコーインスツルと変更されて(今でも不思議なネーミングですが慣れましたな)今に至っています。

さてエイブリック社は、その半導体部門だったのですが、2016年に分離独立してエスアイアイ・セミコンダクター社となり、2018年にエイブリックと改名、そして2020年にミネベアミツミの子会社(多分100%)になったと。数奇な運命?と言わざるを得ません(個人の感想です。)

ミネベアミツミの野望(個人の感想です)

私のような年寄りには、ミネベアは「精密機械」分野の会社だけれども、昔から虎視眈々と半導体分野を狙っていたイメージがあります。2016年にミツミ電機と経営統合を果たし、ミツミの半導体製品を傘下に収めたと。そして2020年にエイブリックもミネベアミツミ・グループ入りと。そして、2021年10月に、子会社化したミツミ電機が、半導体MEMS工場を買収して、MMIセミコンダクターなる子会社を作ったとのこと。元気の無い日本の半導体の中でイケイケですな(個人の感想です。)

しかし、MMIセミコンダクターのお名前を聞いて、年寄りは思い出してしまいました。NMB(エヌ・エム・ビー)セミコンダクター社。ミネベア様には黒歴史かもしれない。一時(10年くらい?)、ミネベア傘下でメモリ(DRAMだったような朧気な記憶がある)を作っていた会社。数十年前に売却、ミネベアはメモリから撤退した筈。それが巡り巡って今や「アナログ系のIC」を傘下に収めておると。結構紆余曲折はあったものの、半導体への執念を感じまする(個人の感想です。)

閑話休題

S5716、ホールIC

さて、エイブリックS5716はホールIC、磁石を近づけるとそれを検出することができるセンサです。今回入手いたしましたのは、以下の型番のもの。

S-5716ACDL0

こういう型番に「萌える」のが部品屋のサガなんでありましょうか。シリーズ名S-5716は良いとして、

    • A:駆動周期 50.50ms(両極検知品)
    • C:CMOS出力
    • D:両極検知
    • L:アクティブ”L”
    • 0:磁気感度 Bop=1.8mT typ.

であります。型番を言えば「分かり合える」、美しい部品屋の姿です(この後にパッケージや梱包仕様、環境コードもあるのですが割愛させていただきました。蛇足ですが、型番と価格、そして納期の3点セットは半導体営業のキホンのキ。)

以下に実験用に組んだ回路の回路図を掲げました。シンプル。

S5716DUT_Schematic
現物をブレッドボードに差し込んで、配線したところが以下に。

S5716_DUT
そして出力信号にオシロのC1を接続(以下のグラフの横軸ご覧ください。1DIV=1秒ですぞ)、手動で磁石(実際には磁化しているドライバの先)をデバイスにゆっくり近づけ離して得た波形です。

S5716TIM
両極検出タイプなので、S極もN極も関係なく、所定の磁束密度を超えるとロウ出力となります。磁石を遠ざければハイに戻ります。ヒステリシスがついているのでチャタリングもなく、また非接触でメカ的にヘタることもない、理想的なスイッチ動作に見えます。磁石を何に取り付けて、何の検出に使うかはあなた次第だと。

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