連載小説 第69回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICを販売する米国現地法人のSS-Systemsへ赴任しちゃいました。お仕事は毎日忙しくやっているんですけど、運命の人、Appleの青井倫吾郎さんと、とうとう結婚しちゃいました。ステキです。うふっ。

(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら

 

第69話 本家ランとスー

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の13年生。文系ですが技術製品(半導体)を販売するアメリカの現地法人SS-Systemsへ赴任。美味しい食事の連続で、私の見事な肉体(笑)は水平方向へ更に見事な成長をとげたものの、アップル・コンピュータの青井倫吾郎さんと遂に結婚しちゃいました!それからもう1年以上ですが、結婚生活順調です。うふっ。

 

「ねえ、お母さん、そろそろ来るよ」

「そうね。倫吾郎ちゃんと会うのも暫く振りね」

「倫吾郎ちゃんはやめてよ。もういい年なんだから」

「だって、倫吾郎ちゃんは倫吾郎ちゃんでしょ(笑)?」

1992年の年末です。私と倫ちゃんはこのクリスマス休暇を利用して日本へ里帰りです。それぞれの実家があるので、いったん別行動でそれぞれの実家へ帰ったあと、二人で互いの実家へ伺うというスケジュールを組みました。今日は倫ちゃんとお母さんの青井蘭(あおいらん)さんが私の実家へ遊びに来るという日です。そもそも私の母親と蘭お義母さんは学生時代の同級生なのでして、ランちゃん、スーちゃんと呼び合う仲です。あ、私の母の名は好子(よしこ)というのですが、好きという字なのでスーちゃんです。

因みに蘭の花は大抵、白やピンクなど暖色系ですよね。青い蘭の花というのは自然界には普通には存在しないので、珍重されています。青井蘭お義母さんも比類ないほどステキです。うふっ。

また、因みに、キャンディーズのランちゃんスーちゃん、ミキちゃんは、私たちの母親世代からはひと世代若いので、お二人はいつも

「私たちがランちゃん、スーちゃんの本家よね

とか言っています。

またまた因みに、お二人と親しい同級生の方でミキさんという方もいらっしゃるかどうかについてはちょっとした疑問ですが、それをお話するのはまた別の機会に譲りたいと思っています(笑)。

 

そうこうしているところで、倫ちゃんとランお義母さんはやってきました。

「久し振り、スーちゃん(うふっ)」

「待ったてたわよ、ランちゃん(うふっ)」

と母親二人は早速楽しげに話し始めました。

「倫吾郎ちゃん、元気だった? よく来てくれたわねえ」

「倫吾郎ちゃんはもうやめて下さいよ、お義母さん(笑)」

「あら、いいじゃない、倫吾郎ちゃんは倫吾郎ちゃんよ。ねえ、ランちゃん」

「ええ、まあ、倫吾郎ちゃんでもいいんだけど、もう36歳よ(笑)」

「それを言うなら、うちの舞衣子も34だけどね」

「いいわね、若いって。お肌もつやつやでしょ、舞衣子ちゃん(笑)」

「もうそんなに若くないですよ、お義母さん(笑)」

「いいの、いいの、若いって言ってらっしゃい(笑)」

「そうですね。そういう事にしておきますね(笑)」

「それでいいのよ、舞衣子ちゃん」

「それにしても、ランちゃん、私たちが家族になっちゃうなんて、不思議よねえ(笑)。あの時、二人を会わせて良かったわ」

「そうよね、もう4年になるかしら」

「そうよ。舞衣子がもう30歳になって、ちっとも彼氏を連れてこないものだから、倫吾郎ちゃんに会ってみるのもいいかな、なんてね(うふっ)」

「そうそう、スーちゃんの方が乗り気だったわよね」

「そんな事ないわよ。最初に、“うちの子、アメリカから帰ってきてるんだ。舞衣子ちゃんと会ってもらいたいんだけど” って言ってきたのはランちゃんの方じゃない」

「そうだっけ?」

「何、とぼけてんのよ、ランちゃん」

「あはははは・・・」

「あはははは・・・」

そこへ倫吾郎さんがようやく口をはさみました。

「あのう」

「どしたの、倫吾郎ちゃん(笑)」

「もしかしてなんですけど」

「なんなの倫吾郎?」

「もしかして、あの時、まだボクが前の彼女と婚姻状態にあるって事はスーお義母さんへは伝わっていなかったのでしょうか?」

「あら、そう言えばそうよねえ。倫吾郎、あなた、まだ離婚できてなかったんだっけ?」

「はい~。だから、ボクも舞衣子に会う時、どんな立場で会ったらいいか、よく分かっていなくて、困ってたんですよ」

「そっか、あなた、舞衣子ちゃんに何て言ったの?」

「だから、どうしたらいいのか、何にも言えずに、困ってたんです」

「え、倫ちゃん、じゃああの時、会話が何だかぎこちなかったのは、婚姻状態を隠して私とデートしたから?」

「いや、舞衣子、デートって訳じゃなかったんじゃないかな。君も何だか分かんないけど、会う事になったって感じだっただろ?」

「え、倫ちゃん、それおかしくない? デートじゃなかったにしても、二人で会うって事は、なんか期待させちゃう可能性もある訳でしょ? 結果的に、実際、こうやって結婚しちゃったんだし」

「うん、まあ、そうかも知れないけど」

「ええ、何か、変だなあ、やっぱ。お母さんだって、ホントは知ってたんじゃない?」

「え、私? どうだったかなあ。まあ、知ってたような、知らなかったような・・・あはは」

何だか、4人の会話が険悪になりそう?なところで、ランお義母さんが言いました。

「まあまあ、みんな、いいじゃないの、結果オーライになった訳だし」

「でも、お義母さん・・・」

「あのね、舞衣子ちゃん。ワタクシ、青井蘭、誓って申し上げますけど、誰かの気持ちをないがしろにしていいなんて絶対思ってないの。4年前のあの時はね、スーちゃんと色々お話している中で、倫吾郎はまだ正式に離婚できていないけれど、あなたたち二人が会う機会だけは作ってあげようかって話になったのね。あとは二人の問題だから、倫吾郎がどんな話をするかも黙って任すことにしたの。あなたのお母さんも一緒よ、ねえ、スーちゃん」

「ええ」

「それでね、舞衣子ちゃん」

「はい」

「倫吾郎もちゃんと聞いといてね」

「ああ」

それからランお義母さんのお話が続きました。

どんなお話だったかは、次の機会にお話しますね。うふっ。

それではまた。

 

 

第70話につづく

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