お手軽ツールで今更学ぶアナログ(79) LTspiceで学ぶ制御理論、tipsの宝庫?

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」は前回につづき2020年9月号の勉強2回目です。LTspiceを使って「制御理論を学ぶの回」なのですが、LTspice素人の私メにとっては、LTspiceのTIPSの宝庫かと。制御理論は身についた気がしないけれど、LTspiceは少し上手になった?

アナデバ様のWeb記事(日本語)へのURLは以下に。

2次システムの電子制御理論――技術者のための実践的な解析

不安定なシステム

今回は前回積み残した記事後半なので、冒頭登場するのは「不安定な」システムです。あちゃ~苦手そう、と引きますが、励ましのお言葉が冒頭にあります。1文引用させていただきます。

多くの電子制御回路は、極が左半面に存在する状態になっており、本質的に安定です。

よかったです。そうでなければ私のような者には扱いできませぬ。しかし、その本質安定な電子回路をシミュレーションするのが主目的のLTspiceで、どうやって不安定なシステムをやるの?その回答は、単刀直入、仰け反って驚きました。

minusR

負の抵抗値とな。負性抵抗ではありませんぞ。真性に値が負なんであります。とんでもございません。私はかって負の値をspiceで書き込んだことないです。でも偉大なるかなspiceは、負の値であっても計算してくれるのでした。こんな感じ。

RminusLCwave

振幅が際限なく大きくなっていく様子が恐ろしいです。上の計測ウインドウは、記事の中の値に極力近づけるようにカーソルを調整してみましたが、多少のズレはあり。でもお陰でカーソルの使い方、大分上手になった気がします(個人の感想です。ホントか?)

主要極(dominant pole)

ここでも1文引用させていただきたいと思います。

支配的ではない極を無視することで状況を単純化することができます。

さらにもう1箇所。

複雑なシステムを単純化するには、虚数軸に近い極を持っている回路に焦点を絞るとよいということです。

複雑な問題を理解できない粗雑な頭の私には、まさに金言。シミュレーションでは、単純な極を持つ回路を2つづつ組み合わせて加算(回路並列)、乗算(回路直接)の場合を計算しているのですが、直列すると後の回路が前の回路の負荷になって単独のときと動作が変わってしまいます。そこでどうするのか?

ビヘイビア電源

登場いたしました。下の回路を御覧じろ。

bPower

動作としては「理想のボルテージフォロワ」みたいな感じですかね。OUT3にはまったく影響を与えずにその電圧の動きを遅延なく引き写し、出力側には無限の電流供給能力を提供する、と。そんな理解で良いの?私はこれを使った記憶ないです。理論的なモデリングとかしない(できない)からだよね。。。

さて、シミュレーション結果の波形が以下に。

DominantPole

ここでもまた学びました(LTspiceの方)、波形画面に表示プレーンを複数分割できるのですな。そういう機能あるのは知っていたけれども使ってなかったです。上記の場合、単独回路の波形が上のグラフ、下のグラフは「仮想的」な合成波形です。下の赤は加算波形(そういう回路は存在せず、トレースに生データ二つの加算を指定しただけ)、下の水色は乗算波形(先ほどのビヘイビア電源で2回路を「仮想」直列接続したもの。)

極が両半面に存在するシステム

最後は、全ての極が左半面にないと不安定になることを示すシミュレーションです。グラフを見れば発散することが明らかなので、記事では下のグラフの上2つの面を描いてしまいにしています。折角、複数グラフも描けるようになったし、トレース間での演算もできるようになったので3つ目のグラフを追加してみました。

Fig10

「泣く子と不安定極には勝てぬ」と。違うか。

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