お手軽ツールで今更学ぶアナログ(80) MOSFETのカレントミラー、過ちは老眼のせい?

Joseph Halfmoon

今回実習は瞬間的に終わるだろ、などと高をくくっていたらドツボにハマりました。私が間違った部品を使っていたのが問題なのですが、「間違った部品」に誘導されるような成り行きでした。結局よく確認しなかった私が悪うございますんですが。でもな~フェイントだよな。まあ、動くことは動きましたが、ガックリして大幅手抜きであります。

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回実習は2020年10月号です。いつになったらリアルタイムに追いつくのか?以下に記事へのリンクを貼り付けておきます。

ADALM2000による実習:NMOSトランジスタで構成したカレント・ミラー

既に「2020年8月号の回」BJTで構成したカレントミラーをやっております。そして今回はその経験があるためか、あるいは扱っているのがMOSFETなので、BJTのようにベース電流を考えなくて済むためか、回路のバリュエーションは2つだけです。これなら直ぐに終わるでしょ、と記事の「準備するもの」を参考に部品をそろえました。といって抵抗2個にトランジスタ2個です(回路は下の方にSpiceのものを貼り付けましたのでそちらご覧ください。)

基本アナデバ様のこのシリーズは、実習にADALM2000というアナデバ様製の測定ツールを使うお約束です。また被テスト対象の部品はアナデバ製ADALP2000という部品キットから選ばれるようになっております。申し訳ないことですが、当方ADALM2000を所持していないので、測定については「似た機能」を持つ、Digilent製Analog Discovery2にて行っております。しかし、部品はちゃんとADALP2000を使っておりますぞ。

さて「準備するもの」には、被テスト対象のMOSトランジスタとして

ZVN2110A

を使え、と書いてあります。小信号用のNMOSトランジスタです。カレントミラーなので2個必要。以前に使用した記憶もあり、ADALP2000の部品箱の中から直ぐに「見つけて」カレントミラーの原理回路をば組みました。しかし動きませぬ。さんざん時間をかけて確認して、ようやく以下のことに気づきました。

片方がZVNじゃねえ、ZVPだ!

動く筈がございません。しかし、ADALP2000のハコに貼り付けてあるお品書きを確認してまたもや驚くのであります。

  • ZVN2110A は1個しか入っていない
  • ZVP2110Aは2個入っている
  • ZVN3110Aも2個入っている

そもそもZVN2110Aの2個はキットに入ってないのでした。そして記事の下の方にある実体回路図を良く見ると

ZVN3110Aを2個使って回路を組んである

ZVN3320Aは、ZVN2210A同様「小信号用のNch MOSFET」であります。まあ微妙に特性は違うもの。つまり、「準備するもの」と実際の記事で試したらしい回路に使った部品は多分違うのであります。ZVN2110Aが2個あるはずだと思い込み、そしてZVN2110Aが2個あるように見えた(老眼のせい?)ために動作せずという顛末。トホホが深い。。。

実機動作確認

ガックリきたせいもあり、2つある回路のうち「シンプルな評価用回路」の方だけZVN3310A使って実験することにいたしました。まずは入力波形の定義です。適当にやり易い波形にしてしまったので、記事のご指定とは似ていますが詳細違います。すみません。

それに記事ではW2を左のトランジスタM1側、W1を右のM2型に接続してますが、以下では、W1がM1側、W2がM2側です。

W1には1msづつ階段状に電圧がステップアップしていく波形を与えました。0Vに始まり、3.0Vまで10段階です。

W2には1ms周期の三角波を与えてみました。

Analog Discovery2の設定は以下のとおり。

W12

実機で観測した波形が以下に。黄色C1が抵抗R1の両端の電位差、青色C2が抵抗R2の両端の電位差であります。抵抗2本はどちらもDMMで989Ωと読めたもの。ほぼほぼ電圧イコールmA的な。

WaveForm000

上記をみると、W1が1.6V付近ではトランジスタがまだONするには微妙に足らない?感じで電流はながれず、2.0V以上でカレントミラーらしい動作をしておるな、と。しかし、黄色と青の頭に大分隙間があるのは何故。トランジスタの特性の差か?そこを考察しないと。。。

LTspiceシミュレーション

LTspiceでもやってみよ、とあったのでやろうとしてこれまた気づきました。手元のLTspiceのインストールライブラリには、ZVN3310AのMOSモデルパラメータが含まれていません。ネットで探したらMOSモデルパラメータでなく、サブサーキット記述のものをみつけました。それを試してみるのはまた後でだな。

なお、MOSモデルパラメータがLTspiceのインストールディレクトリ配下に存在しているMOSFETはパワー系主体です。小信号用はそれほどありません。今回は適当に小信号用のFETをエイヤーで選んでシミュレーションかけてみました。こんな感じ。

SpiceCircuit

シミュレーション結果が以下に。上のグラフが印加した入力波形、こちらの階段波形は0Vから4.5Vまで0.5V刻みになってます。下の波形がR1、R2に流れる電流です。こちらは「バラツキもなく」ちゃんとカレントミラーしている感じです。電流の頭が揃っておりますな。シミュレーションだしあたりまえか。こちらの2N7002使ってもV1が1.5V付近では電流が流れず、2Vくらいからカレントミラーしている感じになるのね。。。

SpiceResults

なお、巻末の問題の解答も今回はあります。拍子抜けする軽いお答えですが。

October 2020 StudentZone Quiz Solution

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(79) LTspiceで学ぶ制御理論、tipsの宝庫? へ戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(81) BJTで構成したゼロゲイン・アンプの実習 へ進む