お手軽ツールで今更学ぶアナログ(83) 定電流源、やっぱりキモはゼロゲインアンプなのよ

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回は2021年1月号です。とうとう2021年までたどり着きました。前回前々回とゼロゲイン・アンプでしたが、今回は「定電流源」、しかしてその実体はまたもやゼロゲイン・アンプです。それだけ大事だ、ということですかね。

まずは、今回、実習してみます日本語記事へのリンクが以下です。

ADALM2000による実習:定電流源

タイトルにありますとおり、本来アナデバ製のアナログ学習ツールADALM2000を使い、アナデバ製ADALP2000学習用パーツキットの部品を対象に行う実習なのであります。当方はADALP2000は所持しとりますが、ADALM2000は所持していおらず、Digilent製Analog Discovery2(中身のチップはほぼほぼアナデバ製)dで代用させていただいております。

また今回は、時々掲載が抜けていることがある末尾問題への解答編も見つかりました。以下です(英語オンリ。)

January 2021 StudentZone Quiz Solution

ターゲット回路をまずはLTspiceでシミュレーション

上記の記事では、最初から現物使って実習に突入しておりますが、凡人はシミュレータを使ってその動作を予習しておきたいと思います。今回、ターゲット回路は2種あり、

  • BJTで構成した定電流源
  • MOSFETで構成した定電流源

です。どちらも「ゼロゲイン・アンプの使い方を理解すること」が目的と書かれています。

まずはBJTの回路から。こちらで使うように指定されているバイポーラトランジスタのうち手元のADALP2000に所蔵のものは 2N3904です。LTspiceにも2N3904のモデルは含まれているので、シミュレーション用の回路はこんな感じとなります。

BJT_DUT_schematic

シミュレーション結果は、X軸W1の電圧に対して、Y軸はR3を流れる電流として表示してみました。Vpは何Vにせよ、との御指定も無かったので、電圧3種類をパラメータにしてみました(V2を.STEPにしてみましたが、.dcシミュレーションなので2個目の電源として設定しても同様なことができた筈。)良く見ればVp異なると微妙にずれるものの、流れる電流はほとんど同じであります。記事の図4のグラフの縦軸はQ2のコレクタ電流ですが、ほぼ同じ形のグラフかと。BJT_DUT_SimIR3

次にMOSFET応用の回路です。MOSFETの回路では、CD4007またはZVN2110Aを使えという御指定ですが、以前にも書いたとおり、ADALP2000部品キットにはZVN2110Aは1個しか入っておりません。同等のNch MOSFETが2個入っているのは、ZVN3110Aです。そこで以下のシミュレーションもZVN3110Aで行っています。

ただし、ZVN3110AのMOSモデルパラメータはLTspiceの傘下には見当たりません。外部サイトから持ってきたSUBCKTモデルを使用します。その設定の仕方は、「SPICEの小瓶(1)」に書いております。

NMOS_DUT_Schematic

BJTのときと同様に、X軸W1の電圧に対して、Y軸はR3を流れる電流として表示してみました。やはりVpは3種類をパラメータにしてみました。こちらのシミュレーションでは、Vpを変化させても電流は一致しているので赤線1本しか見えてないです。

NMOS_DUT_SIMIR3

実機での動作結果

冒頭のアイキャッチ画像に掲げたようなブレッドボードの回路で動作させてみた結果です。まずはBJT 2N3904を使った場合。X軸(C1)はW1の電圧、Y軸(C2)は、Q2のコレクタ電圧です。

BJT_CIR_XY

ほぼ、記事の図3の波形と同等ですかね。電圧から電流を計算すれば、天地がヒックリ返るのでシミュレーションとも近い気がします。

次にMOSFETの回路です。X軸はBJTと同様で、Y軸で観察しているのはM2のドレイン電圧です。

NMOS_CIR_XY

ほぼ、記事の図7と同等(トランジスタは違うけど)な感じのグラフが得られた気がします。しかし、先ほどのシミュレーション結果とは「ちょっと違う」気がしないでもないです。Webで見つけたSUBCKT、挙動がちょっと違うんじゃないか?まあ、文句を言う筋合いでもないですが。

でもまあ、定電流源といいつつピークが狭いです。記事では「ピーキング電流源」と呼ばれる、とあり、「なぜそのように呼ばれるのでしょうか」という問いかけもあるのです。ピーク狭いものな~。改めてそういわれてもな~ 知らんよな~。

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