鳥なき里のマイコン屋(153) ルネサスRX210マイコン、Lチカまでの手続きに心が折れる

Joseph Halfmoon

最近ルネサス様もArmに力を入れているだけでなく、RISC-Vまで始めたみたいです。世界の趨勢に追いついた?しかし、ヒネクレものとしては、「残された」ルネサス独自コアが気になります。今回「お手頃価格」のRX210ボードを入手したので、まずはLチカをやり、ルネサス御家流を復習したいと思います。

このごろArmコアのマイコンが全面に出てきているルネ様の中で、独自コアの32ビットマイコンは以下2シリーズがあります(2シリーズ残っているというべきか。昔、一世を風靡した?SHとかも消えてしまったし。)

  • RXシリーズ、その中に今回お試しの RX210 もいる
  • RH850シリーズ

このうちRH850の方は、車載向けに特化している感じです。車載向けの情報入手はかなり厳しくて、NDA(秘密保持契約)を結ぶだけでなく、車屋さんの関係者なのだよね、とルネ様が認識していないとダメなんじゃないでしょうかね。知らんけど。

そこで今回入手は「車載以外」を引き受けている感じの独自コアの32ビットRXシリーズのRX210であります。製品サイトへは上記のリンクから辿れます。

ルネ様のマイコンに軽々と手が出なかった理由の一つが、評価ボードがそれなりのお値段であったことです。このごろは、相当努力されているようで以前と比べたらお求めやすい価格帯のボードが登場、私のようなものでも買えるようになってきております。千円切る値段で買える中国製のマイコンボードに追いつくのは辛そうですが、今後も低価格評価ボード拡充していただきたいです。

また開発ツール別売という件も敷居が高い理由の一つだったかと。私もE2エミュレータ使わせていただいたことがあります。なかなか良いものです。その昔の、ツールといえば数十万円くらいするのが当たり前の世界を知っているものとしては、お手頃価格のエミュレータ。仕事で使うには何の問題もないと思います。そのうえLite版というスペックダウンして低価格にしたものがあるのも知っています。しかしね、Armコアなどの評価ボードの中にはデバッグインタフェース搭載しているのに千円台で買えるものもありますのじゃ。

お手頃で簡単(安易?)に使えるマイコンばかり扱っている本サイトでは、ルネ様マイコンのお試しは敷居がチト高かったです。

さて今回入手したのは、例によって秋月電子通商殿製の以下のキットです。

RX210マイコンボード開発セット R5F5210BBDFP

ボード単体であれば上記よりも安いものがあるのですが、お試し用の開発ツールDVD-R付きの一品。なんといっても、ソフトが添付されていれば「多分面倒な筈」のいろいろを回避できるんじゃないかという目論見。

AE-RX210-pkg

 

ボードの組み立て

秋月殿はこのボードにピンヘッダ、ピンソケットを必要以上に付属させてくれています。説明書を読む限り、ピンソケットを下向きに取り付ける(ということは下側に上向きにピンヘッダが立っている拡張ボードなどが存在するということ)ようになっています。

しかし、単体ボードで信号を取り出して「工作」してみるような使い方であれば下向きの取り付けは使いずらいです。多めに付属させてくれているピンヘッダを上向きに半田づけすることにいたしました。

別件記事のTSSOPの半田付けに比べたら、老眼と覚束ない手先にも優しい2.54mmピッチのスルーホールで喜びました。しかしね、このマイコン、当然といえば当然ですが端子が多いです。それを取り出せるこのボードの端子も多い。134端子。やっぱり年寄りは半田付けに疲れました。

取り付け終わったものが以下に。なお四隅に開いている穴はM3ネジが通ります。最近のM3通らないマイコンボードや、そもそも穴もない奴らに比べると秋月殿の配慮はありがたいです。

AE-RX210-board

ハードは出来た、と。

開発ソフトのインストール

最近の開発環境、例えばいつもお世話になっている VSCode+PlatformIO などでは、新規のマイコン開発ボードを手に入れてきて、実質数分くらいの作業時間でLチカサンプルをボードに書き込めたりします(実際にはツールチェーンやライブラリのダウンロードとインストールにそれなりのお時間がかかりますが、こちらでやるのはボタンを押すだけ。全自動なのでお茶を飲んでいても終わります。)ArmのMbedなど、このごろ増えているオンラインの開発環境などは、「ノーインストール」とて、即座にサンプルコードをビルドしてホントに数分で書き込みまで終わったりします。

この秋月製のボードの場合どうでしょうかね。ルネ様の開発ツールの評価版がDVDで付属しているのでこれをインストールして使います。インストールでもインストール後でも効いてくるのが、秋月殿が作成したと思われる説明PDFの存在です。

  1. ルネ様のツールは、やたら選択肢が多く、順番に「どうするか」聞かれる。ほんとしつこいくらい聞かれる。
  2. 知識のない輩(私)、デバイスのデータシートやマニュアルを読んでいない、は選択肢のどれをどう設定するのか戸惑う(大体デフォルトで良いのですが、一部それではマズイ部分があるので尚更)
  3. 秋月殿のPDFが、そこを押さえてくれているので、言われたとおりに設定すれば考え込まずに作業できる。

選択肢が多いというのは、マイコンの汎用性が高いということでもあり、悪いことではありません。細かく最適に制御できるので。しかし、自由自在に各種設定をできるのは、そのマイコンに関する知識がないとできまっせん。このRXマイコンの場合、マニュアル類を合わせると2000ページくらいありますかね。本気でこのマイコン使うと決めていれば2000ページ読まないとダメですが、ちょいとお試しではキツイ。

だいたいPlatformIOとか、Mbed環境であれば、何も知らなくてもLチカくらいであればテキトーにやって動いてしまう。このRXマイコンの場合、秋月殿の資料のお陰で(無かったら今頃PDFファイルの山に溺れていた)開発ツールのインストールもOK、そしてLチカのサンプルコードのビルドもOK、オブジェクトコードが出来上がりました。その前に、マイコンボードをUSB接続してちゃんと認識されていることも確認済。

後はオブジェクトファイルを書き込むだけだな。

FDT_ERROR

ここまでうまく行きすぎました。ちゃんとトラップが用意されていました。オブエジェクトファイルの書き込みツールを起動したらまさかの上記のポップアップです。

書き込めないじゃん!

UNLOCKキーなど入力求められていますが、ノーサポート前提のお試し版です。どうしたらよかろう?そういう時は、ググレば一発。以下のルネ様のページを見つけました。

Request a new UNLOCK key and enter it here (Windows 10でフラッシュ開発ツールキット(Flash Development Toolkit)を起動時)

ビンゴというやつ。秋月殿の付属DVDの版はチト古かったのが原因。更新されたバージョンではこの問題解決済みたいです。しかし、ここからが泥沼でしたね、今回は。

    1. フラッシュ書き込みツールのお試し版をダウンロードしたかっただけ
    2. しかし、ルネ様のサイトにログインしないとダウンロード不可
    3. 昔登録した記憶あり、メールアドレスは登録済だった。
    4. パスワード忘れていたのでRESETしようとした
    5. しかし、いつまでたってもRESETメール来ない(なぜ?)
    6. 申し訳ないけれど、別メールアドレス(スマホ)で新アカウント作ろうとした(スマホでのパスワード入力は心もとないです。)
    7. パスワードの強度OKで登録しようとしたらハネラレタ
    8. 文字の組み合わせがダメだった
    9. もう一度やってみた、またダメ
    10. 文字列がダメだった
    11. パスワードが通っても、当然住所とかいろいろ聞かれる。こちらの問題だがうまく入力できなくて度々ハネラレル。すると前の値が消えて最初から入力。
    12. ようやく登録できた。
    13. しかしログインできず。何度やってもできず。まさかのパスワード打ち間違え?(スマホだからねえ、手が滑った?)
    14. しかたが無いのでパスワード再設定
    15. ようやくログインできた
    16. するとプロファイルの設定画面が。まあお付き合いなので入力。かなりメンドイ。
    17. でも実作業はPCなので、今度はPCからアクセス
    18. ログインすると再びプロファイル設定画面が。ううむ、さっき入力した筈なのだが。。。
    19. ようやくログインできた。
    20. フラッシュ書き込みツールのダウンロード画面へ。しかし、多くのバージョンがありすぎてどれを使ったらよいか分からない。リリースノートも大量。いくつか読んだが良く分からない。
    21. エイヤーで一番新しそうな一本をダウンロード
    22. これを展開して再インストール

途中で心が折れそうになりました。ようやく作成してあったオブジェクトコードをマイコンに書き込めましたです。

Lチカしているところが以下に。書き込みできれば動く!

AE-RX210-Blink

ルネ様に限らず、この敷居の高さというか、無駄に入り口を狭くしてある感じ、すべからく日本のマイコンの伝統?だな~

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