お手軽ツールで今更学ぶアナログ(90) NMOS-FETのソースフォロワその1

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回は2021年5月号です。アナデバ様のパターンは、まずBJTで構成した回路を1回、続いて同様な回路をMOSFETで1回という感じであります。当方はLTspiceで当たりをつけてから、実機実験というパターン。継続することに意義がある?

さて今回は、NチャネルMOSFETを使ったソースフォロワ回路であります。前回までのNPN BJTのエミッタ・フォロワ回路に対応するもの。まずは、2021年5月のアナデバ様記事(日本語)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習:NMOSトランジスタで構成したソース・フォロワ

今回の記事には、末尾問題の解答編(英語)もありです。

May 2021 StudentZone Quiz Solution

さて通例にしたがい、今回もまずはLTspiceで回路を予習したいと思います。実機での実験はまた次回、の予定。

シミュレーションを行うにあたって

さてLTspiceでシミュレーションをするにあたってチト問題なのが、NチャネルMOSFETのモデルです。アナデバ様記事では、ターゲットのMOSFETは、

ZVN2110A

ということになっております。このMOSFETはアナデバ製の学習用部品キットADALP2000 に入っておりますので、実機実験には問題ありません。しかし、手元のLTspiceに付属のライブラリではMOSモデルパラメータなどは見当たりませぬ。

ZVN2110AのメーカであるはずDiodes Inc.社の以下ホームページを漁ると

Diodes Incorporated

MOSモデルパラメータではなく、SUBCKT モデルが見つかります。これをダウンロードし、シミュレーション時に以下を行えば

    • ダウンロードしたSUBCKTモデルを .INCLUDE しておく
    • MOSFETをCTRL+右クリックしてアトリビュートを以下のように変更

シミュレーションできると思います。この辺の設定方法については別記事にも書いております。

ZVN2110A_ATTR

ソースフォロワの原理回路

まず最初にソースフォロワの原理回路のシミュレーションです。正負電源使用。アナデバ様の記事にはVP、VN何ボルトにせよと明示されていなかったので、実験しやすい+5V、ー5Vとしております。入力波形は指定通り。SRCFollower1Circuit

シミュレーション結果が以下に。黄緑が入力信号の電圧波形、青が出力信号の電圧波形です。ぱっと見、約1Vくらいシフトしてはいるものの、入力波形と出力波形はほぼ同じ感じ。「フォロワ」してるみたいです。しかしその差を赤色で描いてみると結構揺れてる感じがありあり。SRCFollower1TIM

改良型のソースフォロワ回路

アナデバ様の記事で説明されているとおり、抵抗R1をカレントミラー回路による小電流だけれどもほぼ一定の電流に置き換えることで上記の赤のような波形にならないようにした回路が以下に。

なお、アナデバ様の記事ではカレントミラー部分のM2、M3については、ワンパッケージにNMOS3個、PMOS3個登載のIC CD4007の中からNMOS2個を使うように書かれています(同一ダイなので特性が揃っている筈だから。)しかし、私の手元のADALP2000キットにはCD4007は含まれておりませぬ。しかたが無いので、ZVN2110AをM2、M3にも使うことにしてシミュレーションしてしまいました。シミュレーション上は全て特性「お揃い」なので問題ない筈。

もっと言うとADALP2000キットにはZVN2110Aは1個しか入ってないです。実機で実験するときは他のMOSFETで置き換えるしかありません。ワンパッケージに2トランジスタ入っている小信号用のMOSFETを仕入れておいた方が良いかな?でもGW中だから直ぐには届かないかも、などと思案。SRCFollower2Circuit

上記回路をシミュレーションしたものが以下に。グラフの設定は最初の原理回路と変えていないので上のグラフと見たまま比較できます。赤の差分波形が平らかになっているのが分かります。カレントミラーの効果は絶大。

SRCFollower2TIM

ソースフォロワ回路の出力インピーダンスを測れと

最後、3個目の回路は最初のソースフォロワの原理回路の出力インピーダンスを測れということで以下のような回路が提示されているのです。インピーダンスを測れといわれても電源から電圧が出てくる回路なのでテスタを当てれば測れるというわけではないです。外側からAC波形を与えてその反応をみて計算するみたいっす。

なお信号源VWの電圧オフセットは「うまく釣り合うように」決めれ、という感じ。以下の信号源のオフセット指定1.085Vは、DCでシミュレーションした2+点の波形を見て勝手に決めてます。

SRCFollower3Circuit

このときの、負荷側のVWの波形(黄緑)と、ソースフォロワ回路の出力点2+の電圧波形(青)は以下です。

SRCFollower3TIM

青の2+点の電圧波形を拡大したものが以下に。

SRCFollower3_2PTIM

出力インピーダンスを測れ、という御指示と回路は提示されているのですが、実際に出力インピーダンスの測定(計算例)は示されてないんであります。
弱りました。以下は勝手解釈にて。

    • R2の10kΩに±1V振幅がかかっており、±0.1mAのAC電流が流れている(ピークツーピークでΔI=0.0002A)
    • 上のグラフから、そのとき出力点+2では、ピークツーピークでΔV=0.011VのAC電圧が観測できた

よって(上、下ならした平均では)出力インピーダンス=ΔV/ΔI=55Ω

こういう計算でいいんでしょうか?アナログ素人には分かりませぬ。間違えていたらすみません。こういう事こそ解答編で教えていただけるとありがたいっす。でも書いてない。。。

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(89) バイポーラトランジスタのエミッタ・フォロワ回路その2 へ戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(91) NMOS-FETのソースフォロワその2 へ進む