お手軽ツールで今更学ぶアナログ(92) NPNトランジスタのシンプル差動アンプその1

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回は2021年6月号。前月がMOSFETだったので今月はBJTです。この交互に繰り返すパターンにも慣れました。当方はというと先にLTspiceして「雰囲気」みてから実機実験するというパターン。今回はLTspiceのターンであります。

学生でもないのに勉強させていただいておりますアナデバ様の記事(日本語版)は以下です。

ADALM2000による実習:バイポーラ・トランジスタで構成した差動ペア

BJTで差動増幅回路を作ってみる、の回であります。今回記事にも恒例の巻末問題(その第1問など答えがグラフでモロ見えですが)があり、ちゃんと解答編(英語)も以下に発見できました。よかった(時々見当たらないことがあるので。)

June 2021 StudentZone Quiz Solution

さて今回は久しぶりですが、

恐れ多いことなんでありますが、アナデバ様に申しあげたき儀これあり。

ほんと久しぶりですな。このところ間違いらしい間違いなかったので。今回は2か所回路におかしいところがあるように思われます。

    • 図1のアッテネータとフィルタ、R2が100kΩと書かれてますが、100Ωでしょ。
    • 図5の定電流源用のトランジスタの片割れQ3のコレクタ、ベースの接続が変。

まあ、図1の件は準備する部品のところに100Ωと書いてあるし、図5の方は下のブレットボードの実体配線図には正しく描かれているので問題ないです。コマケー話ではあるのです。すみません。

アッテネータ

毎度オコトワリを入れていますが、アナデバ様の記事はアナデバ製ADALM2000で実験せよ、との趣旨ですが当方Digilent Analog Discovery2での実験です。今回の実験(次回予定)では任意波形ジェネレータを使うことになっているのですが、この出力にアッテネータを接続せよ、とのご指示です。

今回は差動増幅回路なので「増幅率」がそこそこ高いです。そのため入力の振幅は抑える必要があるのですが、ADALM2000のパターンジェネレータ(Analog Discovery2も同様だと思います)ダイレクトのままで振幅を小さくするとS/Nが悪くなりすぎる、とのご指摘です。そこでパターンジェネレータの振幅は大きくしておいてアッテネータで振幅を絞れ、と。

回路が以下に(記事ではR2に100kと書かれてましたが間違いと断定。11:1のアッテネータと明記されとりますので。)

attenuator_circuit

念のため、上記回路のAC特性をシミュレーションしておきました。今回実験する100Hz、200Hzといった周波数では問題ない特性じゃないかと思います。当然か。

attenuator_AC

 

テール抵抗の差動ペア

最初は、差動増幅器のテール電流を流すのに単純なテール抵抗を使うケースからです。入力には上記のアッテネータを噛ませてます。2つの入力に180度位相のずれた三角波を与えよ、という御指示であります。実機で三角波を与えるのは簡単なのですが、LTspiceでは、時間指定で波形を定義しないといけないのでちょいとメンドいです。そんなことのために、以前LTspice用の波形定義Pythonスクリプト作ってありました。こんな感じ。wave

上記をコピペして作成したLTspiceの回路図が以下に。

2021JuneFig2circuit

まずは素の時間波形のグラフです。赤が差動入力、青が差動出力。

2021JuneFig2TIM

差動入力電圧をX軸にとって、差動出力電圧をY軸にとったものが以下に。0V付近の僅かな入力電圧差で出力電圧が大きく変わりますな。グラフからすると線形な関係になるのは出力電圧で±2Vちょっとくらい?

2021JuneFig2XY

 

定電流源でテール電流を生成している差動ペア

次に本命?定電流源で安定した電流を流す回路が以下に。

2021JuneFig5circuit

こちらの時間波形のグラフ。

2021JuneFig5TIM

そして入力X軸、出力Y軸のグラフ。

2021JuneFig5XY

まあ、記事の信号波形のグラフと似た波形は得られてるかな。次回は実機で確認っと。

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