お手軽ツールで今更学ぶアナログ(95) 差動ペア、MOSFET編その1

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回は2021年7月号。前月がBJTで差動ペアであったので、同じことをMOSFETでやってみよ、の回です。MOSFET、どのデバイスを使うべきか迷います。いつものパターンでまずはLTspiceしながら何を使うか検討したいと思います。

アナデバ様の記事(日本語版)へのリンクを以下に貼り付けさせていただきます。

ADALM2000による実習:MOSトランジスタで構成した差動ペア

上記記事では即実機使って実習しておりますが、当方実機での実習は次回にまわし、今回はLTspiceで感触をば確かめさせていただくつもりです。

毎度記事末に問題があり、それに対する解答編がある(たまに見つからないこともある)のです。今回は以下です。

July 2021 StudentZone Quiz Solution

手元のADALP2000部品キット

今回、実習をやるにあたって最大の問題は、アナデバ様の記事で指定されている以下の小信号用Nch MOSFETです。どちらかを使えと。

    • ZVN2110A
    • CD4007(Nch,Pch、各3トランジスタ含む)

基本、アナデバ製の学習用部品キットADALP2000所蔵のデバイスを使えば実習できる筈の記事なのですが、手元のADALP2000部品キットの内容は以下のようです(キットのお品書きにちゃんとパーツのQTY書かれていますから私が無くしたわけじゃないですよ。)

    • ZVN2110Aは1個
    • CD4007は含まれてない(記載がない)

Nch MOSFETとしては ZVN3310が2個含まれているので、ZVN2110AをあきらめてZVN3310に変更すれば「1ペア」はあるのですが、2番目の回路では定電流源としてもう「1ペア」のNch MOSFETが必要です。キットの部品では実験に不足であります。

そこで手元在庫の中の Nch MOSFET で代替しないとならないデス。候補は以下です。

    • BSS138 (ただしPanjit製)
    • 2N7002DW(デュアルNch MOS FET、On Semicondutor製)

そこで、記事の最初の一番シンプルな差動ペア回路を、もともとのご指定のZVN2110Aと上記2つでLTspiceのシミュレーションして比べてみようと。

ZVN2110Aの場合

まずは アナデバ様記事でご指定の ZVN2110A の場合です。しかしこのデバイスのMOSFETパラメータは手元のLTspice(Mar 24 2022の日付あり)には含まれとりません。そのためNETで拾ってきた(Diodes.comからのダウンロードだったと思うので多分信用できそうなやつ)サブサーキットモデルを差し替えて使っています。回路が以下に。MOSモデルをサブサーキットに置き換える方法はココに。

ZVN2110A_DIFFAMP0_circuit

 

上記回路の「1+」「1-」間の電圧V(1+, 1-)を入力信号(黄緑)、「2+」「2-」間の電圧V(2+, 2-)を出力信号とした場合に、入力に三角波を与えたときの時間波形が以下に。

ZVN2110A_DIFFAMP0_tim

上記の時間波形から、X軸を入力信号、Y軸を出力信号として描いたXYプロットが以下に。ZVN2110A_DIFFAMP0_xy

結果は、第92回のBJTで行ったものと基本同様な感じですな。

BSS138の場合

BSS138 (ただしPanjit製)は、別シリーズのために結構な数の在庫があります。DIP化基板に半田付け済の現物も多数ありです。表面実装パッケージですが3端子なので、半田付け苦手の年寄りでも比較的楽にDIP化できるので調子に乗って作りました。これであれば1ペアでも2ペアでも並べて実験できます。

回路が以下に。やはりLTspiceの手元の版にはMOSモデルパラメータなど含まれてないです。出所がどこだか忘れたのですが、どこぞで見つけてダウンロードしたパラメータがあるので、それを外部ファイルから呼び出してます。

BSS138_DIFFAMP0_circuit

以下同文的な時間波形です。

BSS138_DIFFAMP0_tim

XY波形。ZVN2110Aよりも勾配がちょいとキツイ感じです。

BSS138_DIFFAMP0_xy

2N7002の場合

2N7002は元は老舗フェアチャイルドの製品だった筈ですが、フェアチャイルド社がオンセミコンダクタに買収されたので、現在はオンセミ製品です。今回買ってあるのは、ワンチップに2トランジスタを集積した2N7002DWです。まさに差動ペアとかカレントミラーとか特性の揃ったペアが必要なときに使える一品。

この2N7002については、手元のLTspiceにMOSモデル・パラメータが含まれていました。流石、老舗の定番?LTspiceの選択画面から2N7002を選べばOKです。

2N7002_DIFFAMP0_circuit

時間プロットが以下に。前2つのデバイスに比べると、緩やかな変化に見えます。2N7002_DIFFAMP0_tim

XYプロットが以下に。勾配が緩やかな分、入出力の関係がリニアに見える入力範囲は広くなっている感じがします(当たり前か。)2N7002_DIFFAMP0_xy

これみると、実機は両方のデバイスでやってみるってものかな~。ただ、また、例によって、2N7002は ”Ultra-Small” な表面実装パッケージ(SC70-6; SOT363)であります。半田付け大丈夫か?自分。

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