お手軽ツールで今更学ぶアナログ(103) ディスクリート・トランジスタでアンプ出力段

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2021年11月号はアンプの出力段です。電力を供給する部分。AB級と呼ばれる「プッシュプル・アンプのシンプルなやつ」を実習せよとのお題です。とりあえず今回は「いつもの通り」LTspiceで雰囲気を観察するだけの回、実習はまた来週。

アナデバ様の2021年11月号Web記事(日本語版)へのリンクが以下に。

ADALM2000による実習: アンプの出力段

巻末問題への解答編(英語)もあり、そちらのリンクは以下です。

November 2021 StudentZone Quiz Solution

直ぐ隣に似たようなタイトルの別記事の解答編もあって私はちょっと戸惑いましたです。

もっともシンプルなプッシュプル構成の出力段回路

最初は、ソース用NPN、シンク用PNPの各1トランジスタ構成の原理回路です。ここで1点、お恐れながらアナデバ様に申し上げたき儀これあり。

  1. 「準備するもの」の中ではNPN、PNPともそれぞれ2個入りのDualトランジスタ品を使うように書かれております(その場合、ペアの片方だけ使う感じ。まあ、後でペアで使うのでその準備と思えばよいけれど。)
  2. しかし「図2」の実体配線図ではディスクリート・トランジスタ、2N3904と2N3906で回路を描いてます。

まあ、コマケー話で特段問題ないのですが、つい文句垂れてしまいました。以下のLTspiceの回路は、トランジスタ個々のバラツキなどは含めてないので、ディスクリート・トランジスタでやっつけてしまいました。

PushPullCir

入力波形は、オフセット0,ピークツーピーク6Vの1kHz正弦波でまず実習とのご指定であったので、同条件でシミュレーションしてみました(上の図はピークツーピーク3Vの時。)黄緑色のV(1+)が入力、青色のV(2+)が出力です。この条件でも、課題の意図通り、0V付近で「折れ曲がっている」様子が明らかに見えます。PushPullTim6Vpp
それぞれ片側のみを増幅するB級アンプ2つを合体した形のAB級なので、何もしないと酷いぞ、という感じでしょうか。この様子をさらに明白にすべく、振幅を1.5V(ピークツーピーク3V)にしてみろ、と条件変更したものが以下に。PushPullTim3Vpp

上記をXYグラフにしたものが以下です。X軸が入力V(1+)、Y軸が出力V(2+)です。見事に歪んでます。PushPullTim3VppXY

ゼロクロッシング歪を除去する回路その1

上記の見事な歪を抑制するための回路その1が以下に。Q1、Q3ペアと、Q2、Q4ペアにいよいよマッチングしたDualトランジスタが欲しくなる回路構成であります(以下の回路ではディスクリート・トランジスタですが。)

ABamp1Cir

この時の時間波形がこちら。ほぼほぼ入出力の信号が重なっています。ABamp1_3Vpp

上記をXYグラフにしたものが以下に。見事な?線形(素人の私にはそう見えまする。)ABamp1_3VppXY

ゼロクロッシング歪を除去する回路その2

その2が以下に。こちらの方が分かり易い?

ABamp2Cir

時間波形が以下に。

ABamp2_3Vpp

XY波形が以下に。これまた線形に見えます。ABamp2_3VppXY

まあね、シミュレーションでは予定どおりだと。

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(102) ディスクリート・トランジスタでユニティゲインアンプ へ戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(104) ディスクリート・トランジスタでアンプ出力段その2 へ進む