お手軽ツールで今更学ぶアナログ(111) フラッシュA/Dの実験、デジタル部分気持ち悪いデス

Joseph Halfmoon

前回は、ADコンバータの記事の最初の一歩、フラッシュA/Dのシミュレーションでトホホな間違いをしてました。今回は気を取り直して原理回路の実機動作確認です。しかし、この回路のデジタルなエンコーダ部分がちょっと気持ち悪いです。多分、動作はするのだろうけれども。とりあえずアナログ部分だけの動作確認をいたしました。

アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」は2022年2月の以下の記事の2回目です。

ADALM2000による実習:A/Dコンバータの原理と動作

上記は「12ページもある」大作。1回でADコンバータをいろいろしまう詰め込み主義の記事であります。何回かかけたら一通り読めるのか?第2回の今回は、最初のフラッシュ型のADコンバータの原理回路に引っ掛かっております。

前回のLTspiceシミュレーションではOP07オペアンプをコンパレータに使いましたが、今回の実機動作確認では以下の4回路入りのオペアンプ(ADALP2000学習用パーツキット所蔵)を使用に切り替えてます。

OP482

エンコーダ部分とロジアナでの観察に疑問

前回シミュレーションに使用した回路を以下に再掲載いたします。「気持ち悪い」感じがする部分に書き込みをいたしました。

「電源は±5Vを供給せよ」とのご指定であったので、Vp=5V、Vn=-5Vです。コンパレータとして使われているオペアンプは、レールツーレールではありませんので、出力が電源電圧まで振れることはない筈ですが、ともかく5Vちかくから-5Vちかくまで振れる前提です。図の中では赤丸のところ。

それを右側の74HCシリーズのICでエンコードしているのです。LTspice上での「ロジックデバイス」はLOW=0V、HIGH=1Vを常に出力するような「仮想的」なデバイスなので問題ないのです。しかし、実機で74HCシリーズを電源5V、GND 0Vで動作させた場合、入力電圧は0~5Vの範囲にしておかないとマズイと思います。図の緑の三角の信号。

東芝のTC74HCシリーズのデータシートの絶対最大定格を見ると

      • 入力電圧 VIN -0.5 ~ Vcc + 0.5 [V]
      • 入力電圧の推奨動作条件は 0~Vcc [V]

と書かれております。これを見ると、いくらなんでも入力に-5Vが加わってしまうのはなんだかな~。念のため、TIの74HCシリーズのデータシートを見ると

      • 入力電圧の絶対最大定格の記載なし
      • 入力電圧の推奨動作条件は 0~Vcc [V]

となってました。察するに、TIの考え方は電圧でなく、以下の既定があるからソッチで考えろ、ということみたいです。

      • Input clamp current ±20mA

入力端子にはクランプダイオードが入っていて、低い電圧、高い電圧の印加からデバイスを守ってくれているのでそっちゃを考慮せよ、という感じ?

東芝のデータシートにも入力保護ダイオード電流の絶対最大定格 ±20mAと書かれているので、書き方(考え方)の問題で、結局、両社同等の回路だと思います。

クランプダイオードが頑張ってくれるからそんなに低い電圧にならない

と考えると、アナデバ様の記事で実際にやられているOPアンプの出力を74HCに直結でも多分動くのだ、とは思います。知らんけど。

ヤバイ感じがするのは74HCの入力端子だけではないです。上記回路の紫のDIO信号。アナデバ様の記事では、ADALM2000のロジアナ機能を使ってのデジタル信号として観察しています。しかし、オボロゲな記憶では、ロジアナ端子の仕様はLVCMOSだったような。。。

以下のアナデバ社の仕様ページを見ると

ADALM2000

3.3 V CMOS、1.8 V または 5 V 許容

と書かれてます。5V電源で動作させている74HCの出力を観察するのは「許容」できるけれども。オペアンプから出力される-5V近くまで落ちる信号を印加するのはとてもマズイような気がします。

74HCのエンコーダの「クランプダイオード」が頑張っていれば実際には電圧下がらないからなんとかなるんじゃね

とも思いますケド。なんだかな~。なお、当方ではADALM2000の代わりに Digilent社 Analog Discovery2 使用です。スペックは、

LVCMOS (1.8V/3.3V, 5V tolerant)

でした。ADALM2000とAnalog Discovery2のスペックは一部を除き「ほぼほぼ一緒」なことが多いデス。。

実機実験結果

というわけで「気持ちが悪い」エンコードのためのデジタル回路部分は「とりあえず」おいて、アナログ部分のみOP482使ってブレッドボード上に実装してみました。こんな感じ。

FlashADCdutB

Vin(黄色C1)に2.5V振幅、2.5Vオフセットの100Hz三角波を与えたときの、最上位ビットDIO2(ここでは青色C2)を観察したものが以下に。DIO2waveB

同じVinでDIO1を観察したものが以下に。DIO1waveB

同様にDIO0を観察したものが以下に。

DIO0waveB

一応、動作はOK。でもエンコードしないとADコンバータとしては中途半端な感じがアリアリです。しかし上記をみるとコンパレータ出力はしっかり-5V付近まで振れてます。そのままでエンコーダを取り付けたり、ロジアナに接続したくないです。ここは勝手に「クリッパ」回路などを追加して「大丈夫そうな」信号に変換した上でエンコードしてみますか。それとも5V単電源で動作可能なコンパレータに取り換えてマイナスの電圧が出てこないようにしますか。どちらにせよメンドイな(でもちゃんと実験やれよ、自分。)

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(110) アナログスイッチ消化不良のままA/Dへ進む へ戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(112) フラッシュA/Dの実験、勝手にクリッパ へ進む