お手軽ツールで今更学ぶアナログ(132) ディスクリート・トランジスタでTTLインバータ

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2022年8月号の実習1回目です。この号はデジタル回路の「かっての」代表選手?TTLのインバータをディスクリートのBJTで作ってみる編です。アナデバ様のなされることなので0,1ではすみませぬ。デジタル回路だけれどアナログから見ると。

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前回はマルチバイブレータ(フリップ・フロップ)であり、今回はインバータなのでこの辺ちょいとデジタルづいている感じのStudentZoneです。デジタル回路のアナログ的な土台をみておけ、という思し召しでしょうか?アナデバ様のStudentZone 2022年8月号記事(日本語版)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習:TTLのインバータ、NANDゲート

この頃は「標準ロジックIC」もCMOSデバイス中心で、各種電圧その他でシリーズ増えすぎてロジックIC素人には覚えきれない状態です。しかし、かっては

74LSシリーズのTTL

がまさに「標準ロジック」の代表選手だった時代がありました(古い?年寄です。)今回はLSシリーズじゃないですけれども、TTL(トランジスタ・トランジスタ・ロジック)をディスクリートのバイポーラトランジスタで作ってその回路を「味わう」みたいです。

さて例によって、実習第一回はLTspiceシミュレーションで「お茶を濁す」の回です。いいのか、お茶を濁してばかりな気がするぞ、自分。

さて、今回のアナデバ様の記事を読んでいて、別件ですが「長年の疑問」に一つ解答が得られましたぜ。以下1か所引用させていただきましょう。

「ADALP2000」には、NPNトラジスタとして2N3904が5個含まれています。古いキットには、マッチングのとれたトランジスタ・ペアであるSSM2212が1個含まれているかもしれません。

ほほう!相当前の記事に、ADALP2000の箱のお品書きに2N3904は3個入りと書いてあるのに、実際には5個入っていた。アナデバ様太っ腹、と讃えたことがありました。しかし、それはどうもこういうことだったみたいっす。

    • 古いADALP2000、2N3904が3個とSSM2212が1個入っていた、合計5個のNPNトランジスタ。
    • 手元にある版のADALP2000、2N3904が5個(SSM2212は無し)、合計5個のNPNトランジスタ。

多分、お品書きを改定したときにSSM2212は削除したけれど、2N3904が2個増えた件が伝わっていなかったと想像。なんだ、そういうことか。

2N3904で作るTTLインバータ回路

さて、2N3904で作るTTLインバータの回路が以下に。

TTL_INV_CIR

まずはトランジェント解析の結果から。黄緑w1が入力波形、青色Voutが出力波形です。TTL_INV_CIR_TIM0

遠くから眺める分には、入力電圧がスレッショルドを切ると出力が反転しているのでOK。でも出力立ち上がりのところのピコンと立った鋭鋒がちょっと気になります。

以下はその部分を拡大したもの。黄緑と青色は同じですが、別プレインに赤(ダイオードD1に流れる電流)と水色(D1のアノード、Q4のエミッタ電位)を並べました。TTL_INV_CIR_TIM1

ほんの一瞬だけれどもQ4からD1通って急激に流れ出しているのね。実際の回路でもそういうことは起こるのかしら?まあ、実機動かしてみる次回確認ですな。

インバータのDC解析

やはり必修なのはインバータのDC特性です。Vinに対するVoutの様子。TTL_INV_CIR_DC

DC解析の結果が以下に。目分量だけれども回路のスレッショルド電圧は1.1Vから1.2Vくらいかね。TTL_INV_DC

NAND回路もやってみる

入力トランジスタを1個追加すれば、2入力のNAND回路が得られるのでやってみました。こんな感じ。TTL_NAND_CIR

シミュレーション結果が以下に。黄緑が入力W1、青色が入力W2です。赤が出力Vout。アナデバ様の記事ではW1とW2の位相は90度(25%)ずらせというご指示であったような気がしました。それだとW1とW2が両方ハイに認識される期間が短くて赤がロウに落ちる期間がみずらかったので、勝手に位相差は10%といたしました。TTL_NAND_TIM

まあ、NAND回路してるようです。当たり前だが。

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