OPアンプ大全を読む(6) コモンモード・ダイナミック・レンジ、両電源、単電源

Joseph Halfmoon

前回に引き続き、今回も回路作って実習するとか、計算練習(計算するのはMaxima様ですが)とかする余地がなく、1-4から1-6まで淡々と読ませていただいて終わりました。ただ読むだけではこの忘却力の年寄は瞬時に忘れます。そこで本文にそった特性を実物のオペアンプのデータシートから拾ってみることにいたしました。

※「オペアンプ大全」はアナデバ様の以下のページからダウンロード可能です。

OPアンプ回路の基本から応用まで、OPアンプ大全を無償提供中

原著はOp Amp Applicationsという書物だったらしいです。

今回「読みました」の項目

今回読ませていただいたのは119頁から128頁の以下です。

    • 1-4 OPアンプのコモンモード・ダイナミック・レンジ
    • 1-5 両電源と単電源OPアンプの機能的な違い
    • 1-6 OPアンプの選定条件
    • 第一章末尾のコラム:歴史の一場面

読みましたといって終わってしまったらそれきりなので、1-4, 1-5に書かれている電源電圧±15Vの時代の両電源オペアンプと、電源電圧が3Vを下回る時代の単電源オペアンプのデータシートを見比べて「しみじみ」味わってみることにいたしました。

なお、末尾のコラムを読むとアナデバ様のサイトから以下のアプリケーションノートをダウンロードしたくなります(幸いにも日本語翻訳版が用意されています。)

AN-356 オペアンプの仕様を適用・測定するためのユーザーズ・ガイド

AN-357 オペアンプを使った積分器

著者の Ray Stata (レイ・ステータ)様こそは、アナデバ様の創業者のおひとりにして、「営業とマーケティング」を担当する傍らアプリケーションノートを書かれたのだそうです。そして上記のステータ様著のアプリケーションノートはいまだに生きていると(ダウンロードしたけれど、まだ読んでません。恐れ多くて読めない?)

両電源のオペアンプ2種類、単電源のオペアンプ1種類

実際にデータシートを読んで、該当のスペックを確かめてみるとなるとやはり手元に現物があるやつがうれしいです。そこで選んだのが、以下の3つです。

    1. OP07
    2. AD8542
    3. NJM741

現物写真は冒頭のアイキャッチ画像に掲げましたるとおり。

両電源の電圧が±15Vが一般化したのは、OPアンプ大全によると1960年代中盤のIC化OPアンプ登場のころだったらしいです。それで両電源のOPアンプは手元の中でなるべく「古そう」な奴を選びました。OP07は、アナデバ製ADALP2000部品キット所蔵のもの。NJM741は現在は日清紡マイクロデバイスになった新日本無線殿のICです。「741」という型番からして、有名なデバイスのセカンドソース的な一品ではないかと勝手に想像。ただし既にディスコンではないかと。知らんけど。

一方 AD8542 は電源電圧が下がってしまった昨今の世界向けのデバイスみたいっす。単電源2.7Vで動作の入出力レールツーレールだと。これまたアナデバ製ADALP2000部品キット所蔵のもの。たしか他にも単電源オペアンプが在庫にあったハズ。しかし単電源の奴ら、小さくて表面のマーキングが良くよめない、手元で使うとなるとDIP化のブレークアウト・ボードにはんだ付けせにゃならんと、いろいろメンドイことが多くて見送ってます。大した工作やらんし。

OP07 オペアンプ、超低オフセット電圧

AD8541 オペアンプ、汎用、CMOS、シングル、入出力レール to レール

まずはOP07です。電源電圧範囲 ±3Vから±18Vと、±15Vの両電源使用可能です。でも結構低電圧までうごきますな。あれこれOP07つかった実験のときは、実際±5V電源で動かしているし。

さて入力レンジは、typicalで ±14V でした。そのときの電源電圧の規定は期待通り?の ±15Vっす。それに対して出力レンジは負荷抵抗によっていくつかあり、 RL>=10kΩのtypicalで±13V、RL>=1kΩのminで±10.5Vでした。

さて、対するにNJM741はどうか。 電源電圧範囲 ±3Vから±18Vは同じ、入出力のレンジを規定しているときの電源電圧も±15Vで同じでした。入力レンジは、typicalで ±13V とちょっと狭め。出力レンジは、RL>=10kΩのtypicalで±14Vとち広めだけれど、RL>=2kΩのminでは±10Vと狭めでした。

さて単電源、レールツーレールのAD8541は上の2つとは段違いです。電源電圧 2.7Vから5.5Vという規定で、諸元を規定しているときの電源電圧はVs=2.7V, Vcm=1.35Vです。入力レンジはさらっと 0Vから +2.7V と書いてあります。まあCMOSだし、なんだけれども、レールツーレールですな。出力レンジはというとソース、シンクの電流1mAのときのtypical規定で、ハイが2.65V、ローが35mVであると。

すくなくともデータシートの入出力レンジのところは読めるようになったかな?大丈夫か?

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