お手軽ツールで今更学ぶアナログ(141) Fig.8回路、抵抗1個加えて無理やり動かしたデス

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2022年11月号の実習3回目。前回Fig.8の回路が動かないんですけど、とブー垂れて退却。今回それではいけないと無理やり動作するようにしてみました。でもね回路はCMOSとは言えない、それどころかスタティックですらないっと。いいのか。

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アナデバ様のStudentZone 2022年11月号記事(日本語版)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習: CMOSベースのDラッチ回路

前回の問題点をおさらいすると上記記事のFig.8の回路、CD4007の1個分の6トランジスタ構成でシンプルなのですが、D入力をNch MOSFET1個だけで(対になるPch無)やっつけているのです。そのためD入力をロウに引くときは良いのですが、ハイを入力するときに後段のインバータのスレッショルド電圧まで上がり切れずにひっくり返ってくれないようでした。LTspiceシミュレーションで動かず、実機でも動かず。

そのままにしておくのも気分が良くないので、今回「無理やり」動作させてみました。プルアップ抵抗1個(実機では2個だけれども)追加して。

まずはシミュレーション

前回の問題は、D入力にハイ(5V)を印加したときに、Nch MOSFET単独でハイを通過させようとしているために、I1inというノードが十分な電圧まで登り切らず、結果として後段のインバータがひっくり返ってくれない、という現象みたいでした。

本当はトランジスタレベルで考えるべきなのでしょうが、ここは「できあい」のCD4007チップが目の前にあります。なんとかできないものか?そこで苦し紛れにI1inをプルアップしてハイ側の電圧をアシストしてやることにいたしました。

Dがハイ入力の時はいいです。またハイの後Qからハイが回ってくるラッチ動作の時も良いです。Dがロウ入力の場合、Nch MOSFETに「負ける」程度のプルアップである必要があります。NチャンFETはロウをしっかり駆動できるのでこれは問題ないでしょう。しかし、ロウを保持する場合、Pch MOSFETからまわってくるロウとプルアップ抵抗のハイが引っ張り合いになります。これは問題、ツラソーです。ハイをアシストしてロウを邪魔しない程度のプルアップ抵抗とな。とりあえずの回路は以下に。

DlatchCIR

プルアップ2MΩの回路をシミュレーションしたのが下記です。一番上の水色がD入力、中の黄緑がCLK入力、下の赤がQ出力です。一応、期待通りの動作はしております。しかしI1inノード(一番下の青)を観察すると、プルアップのせいでロウラッチ後はズルズルと電位が上昇していることがわかります。そのうちヒックリ返ってしまうダイナミック回路ね。

2Mオームのプルアップをつけたらば、たまたまこの2kHzクロック動作はOKだけれども、もっとクロックが遅くなったらば確実に誤動作します。大体「レシオレス(古語ですな)」な筈のCMOS回路なのに、レシオで引っ張りあいをさせるとは何事。

ま、2MΩつければ、とりあえず「みたとこ」の動作はしそうだと。でも10Megもつけると今度は反転動作しなくなるっと。微妙。

実機で実験

動きそうな線は分かったので、2MΩのプルアップを実機回路に取り付けてみました。手元に2Mの在庫がなかったので、1MΩ2個直列です。ま、いいか。こんな感じ。DlatchDUT

クロック2kHzでラッチ動作する筈なので、青色のC2に2kHzのクロックを与え、D信号には1kHzの入力信号を与えてみました(以下のグラフにDはなし。AD2はオシロ2チャンしかないので。)黄色のC1がQ信号です。青のクロック信号の立ち上がりで出力信号がラッチされていることがわかります。WaveTIM

まあ、ここだけ見れば「動いている」ように見えるけれども。クロック速度範囲限定で、信号同士がブツカリあう回路です。動いたら八卦よいという感じ?なんだそりゃ。

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