お手軽ツールに今更学ぶアナログ(143) PLL実習の前準備、AD654再び

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2022年12月号の実習1回目です。今回からPLLの実習です。PLLと言われただけでなんだか高級になった感あり。でも今回は不足の部品もあり、VCO部分を「担う」AD654のところだけ。AD654はVFCということで過去にも登場の石。

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アナデバ様のStudentZone 2022年12月号記事(日本語版)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習:PLLの基礎

今回からの実習ではAD654、VFC(電圧周波数コンバータ)をPLL(フェーズ・ロックド・ループ)のVCO(電圧制御発振器)として使用するみたいです。VFC、どちらかというと一種のA/Dコンバータ的なお役目の石としてAD654を何度か使ってきています。ただ過去回に書いてますが、残念なことにこのデバイスは「新規設計非推奨」扱いみたいです。製品ページが以下に。

AD654 VF(電圧 / 周波数)コンバータ、低価格、モノリシック

確かにスペックみると、そんなに尖ったデバイスではない感じもしますが、わびしいなあ。

今回(も)アナデバ様に申し上げたい儀これあり

今回もコマケー話です。今回記事では、最初AD654を使って「VCO部分」を組み立てたあと、徐々に回路を「伸ばして」行く戦略?みたいっす。それでブレッドボード上にAD654部分の回路を組み立てるとき、「ブレッドボードの片端に寄せて」構成せよ、とのご指定があります。後からそのご指示に気が付いて、大汗かいて、一端作成した回路を「右よせ」しましたが。しかしそこで問題に気づきました。

以下の写真を御覧じろ。上が手元にあるアナデバ製の学習部品キットADALP2000所蔵のブレッドボードです。下はソースは不明の「中華」ブレッドボードであります。BreadBoard

今回の回路、ADALP2000付属の片側だけに電源レールがあるタイプだと、ちょっと配線辛そうです。実際、アナデバ様の記事の実体配線図に使われているブレッドボード、下の両側電源レールタイプで、両側のレーン使ってるし。まあ、ブレッドボードだしね、ジャンパ飛ばせばなんとでもなるのだけれども。いいんだよ、コマケー話は。

実機回路

アナデバ様の記事どおりに組み立てたつもりのAD654周りの回路が以下に。以前AD654を使ったときは5V単電源で動作させていた筈。また、データシート的にも5V単電源動作OKな筈。しかし、今回、電源電圧+9Vで使う、とのお言葉で+9Vの電池使うように回路描いてありました(アナデバ様製のADALM2000でも、Digilent AD2でも正電源は+5VMAXの筈、+9Vは対応できないので要別電源。)普段、電池の+9Vをブレッドボードに直接刺して使ったりしないので、大慌てで(9V用のスナップコネクタがなかなか見つからなかったっす)接続してみたのが以下です。

AD654_DUT

しかしな~、なんで今回は+9V電源なんだろ。どっかに理由が書いてあるのか?なお、ここの部分の回路にも+5V電源供給してますが、FOUT信号(デジタル出力)のプルアップに使っているだけなので、ここではIO電源ってことみたいです(次回からの回路は5Vで動かすのでそちらとの整合性もあり。)

実験結果

VINに+1V、+2V、+2.5V、+3V、+4Vを与え、そのときFOUTに出力される周波数を測定してみました。たった1回測っただけの手抜き測定っす。一応、RT、CTは記事どおりの10kΩ、100pFですが、抵抗は±5%のE24系列品、コンデンサは±10%のE12系列品の筈。

以下では黄色C1がFOUT、青色C2がVINです。測定値が右側にあります。

まずはVIN=+1Vに設定した場合。測定値ではVin=0.95Vくらい。1_0V

VIN=2Vのときが以下に。

2_0V

VIN=2.5V設定。2_5V

VIN=3.0V設定3_0V

VIN=4.0V設定。4_0V

上記5つの測定結果をまとめるとこんな感じ。AD654_VFC

5点(手抜きな)の測定値から線形な回帰直線を表計算ソフトに描いてもらったら、これが結構ピッタンコに線形。R2の値など文句なしか。一種のADコンバータとしても使えるくらいなんだから、当たり前か。でも新規設計非推奨なんだよなあ。

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