AppliedPhysics

「そこまでいうなら、間を取って11進法にしましょうか」
 ---ラグランジュ、メートル法に10進法を採用するにあたって12進法を主張する委員に対しての言葉
「すべての時代に、すべての人々にそれは捧げられなければならない」
 ---コンドルセ、メートル法について
「電子スピンは難しいもの、などと言っていられなくなりました。」
 ---伊達宗行
「この相対論という考えほど、20世紀初頭の知識人にショックを与えたものはなかったのである。」
 ---伊達宗行
「物質波になるとそれも見えない。存在確率が見えるのみとなる。」
 ---伊達宗行
「単電子時代となるとスピンはむき出しに出てくる」
 ---伊達宗行
「相手に打撃を与えるには、利器の弾性係数が相手の物質よりかなり高くなければならない。」
 —矢田浩(静岡大名誉教授)

□磁気工学

☆定義と用語
◆電気/磁気の対応表
磁気 電気
記号 パラメータ 記号 パラメータ
Φ 磁束 I 電流
H 磁界の強さ E 電界の強さ
B 磁束密度 J 電流密度
MMF 起磁力 EMF 起電力
μ 透磁率 σ 導電率
R 磁気抵抗 R 抵抗
L インダクタンス C キャパシタンス
LG エアギャップ D 誘電物質
◆磁気双極子
超ミクロな磁気モーメント。N極とS極を同時に所有する最小の”磁石”。それは電子に宿る極小の”磁石”そのもの。
◆量子化された電子
1個の原子に属するZ個の電子は、3つの量子数n、l、mにより、極めて厳格にそのポテンシャルエネルギー準位、運動様式、磁場中における行動領域の多重度を決められている。
n=1,2,3
l=0,1,2…(s,p,d…)
m=…,-1,0,1,…
※さらに歴史的には上記3種の量子に遅れることになったが、さらにもう一種、個々の電子に宿る”固有の磁気量”を規定している2つの量子、上向き(+)、下向き(-)の矢印で示される、正負2つの「スピン磁気モーメント」がある。
※1個の原子に属する電子のひとつひとつには、n、l、m、そして+と-に分かれる2種のスピン磁気モーメントの組み合わせによって、原子内に不連続的に存在する”唯一のエネルギー状態”が与えられている
①1つの電子軌道(電子雲)には、反対のスピンを持つ2個の電子だけが納まる
(パウリの原理、あるいはパウリの排他律)
②近似的な表現として、nで示される主量子数は、原子核と電子の間の距離を量子化したもの(電子のポテンシャルエネルギー準位を示す)
③方位量子数lは、電子軌道のゆがみ具合の大きさ(電子の軌道角運動量を量子化した値。ゆがみのない球対称を成すs軌道を0とする)を示す。
④mは磁気量子数と呼ばれ、nとlで規定された電子軌道が、磁場中において分裂する数を示す
◆磁性体の分類
不対電子の有無による
_◇反磁性
電子対がスピンによる磁気を打ち消しあっている原子や分子等の場合、磁場中におかれると電子は磁場に垂直な面内で微小な円運動(誘導電流)を行い磁場を打ち消す方向に磁気を出す
※異方的反磁性
例)ベンゼン
磁場がベンゼン環に垂直にかけられると分子内電流がながれやすいが、平行のときは流れにくい。よって磁場を打ち消そうとする反磁性も環に垂直なときには大きく、平行では小さい
※反磁性磁場配向
異方性によりねじり力をうけて回転する
⇒グラファイト
_◇常磁性
磁場をかけるとミクロな磁石である不対電子により磁場方向に(正の方向)磁気が生じる。
※化合物になると磁気を失うのは、不対電子を組み合わせて結合することでスピン磁気が消しあってしまうため
例)
水素原子⇒磁性をもつ、水素分子⇒非磁性
_◇強磁性
常磁性と同様であるが、ミクロな磁石間に相互作用があり、全スピンがそろって磁場方向を向く
※3d電子
Fe, Co, Ni
_◇反強磁性
各スピンを反対方向になるようにする傾向のあるもの
例)
MnF2
_◇フェリ磁性体
反強磁性の変形だが、逆向きスピンの大きさがことなり、差の分の強磁性が現れるもの
例)
フェライト
MO(MにはFe, Mn, Ni, Co)とFe2O3の合成物質
Fe2O3は反強磁性だが、Mのスピンが片方と平行になり強磁性を発現する
⇒フェライトは酸化物なので電気を通さないので高周波帯での磁性材料となる
_◇ヘリカル磁性体
スピンがらせん状に配列するもの
※希土類金属
_◇誘起磁気モーメント
磁化
磁場によって誘起された磁気量の大きさ
_◇磁化率
磁化を磁場で割った量
_◇伝導電子と局在電子
電子スピンが原子の磁気そのままで現れるわけではないく、固体を構成した上で他の電子との相互作用を通じて磁気を発現する。
※イオン結晶
原子の磁性は該当イオンに局在する
⇒局在電子
鉄の3価イオン
※金属強磁性体
鉄、ニッケル、コバルト
磁気成分も伝導電子の一部となって流動している
_◇交換相互作用
不対電子でスピンをそろえるスピン間の量子論的働きを見かけの磁場に見立てる
_◇スピンのフラストレーション
反磁性でおこりやすい。各スピン間に何種類かの相互作用があると単純な強磁性、反磁性で収まらない配列が出現する
_◇メタ磁性
反磁性体だが、突然、ステップ状に磁化が現れる。
例)
CsFeCl3
_◇軟材料磁性合金
どの方向に磁場をかけても容易に磁化が生じる材料
※パーマロイ
磁気異方性が逆である鉄とニッケルの合金
◆スピン共鳴
(スピン磁気共鳴)
磁気が特定の周波数、磁場の下で電磁波のエネルギーを吸収して運動する現象
※ラーマー運動(スピン軸のみそすり運動)
周期は磁場に比例⇒周期にあった電磁波をあてるとラーマー回転が共鳴し、回転振幅が増大する
※電子スピンでも原子核スピンでも見られる
_◇ESR
電子スピン共鳴
_◇NMR
核磁気共鳴
◆磁場(magnetic field)
工学分野では、磁界(じかい)という。
※単に磁場と言った場合は磁束密度 Bを表していることが多い。
※BとHを明確に区別する時はHのことを「磁場の強さ」と言う。
※BとHの単位はSI単位系でそれぞれWb/m^2, A/m である
(次元も異なる独立した二つの物理量である)
※磁場、磁束密度 B
磁界が変化するときに電界を発生する能力
T(テスラ)もしくはWb/m^2を単位とする。
空間の各点で向きと大きさを持つ物理量(ベクトル場)であり、電場の時間的変化または電流によって形成。時間の入った概念である。
※磁場の大きさ(強さ)H
A/mを単位とし、磁界が磁極に及ぼす力を示す。
+1[Wb]のN極が受ける力の大きさで表される。1A/mの磁場中にWbの磁場をおくと1Nの力を受ける。実際には磁気モーメントを置くことになるから、回転力が働く
⇒一様な静的磁場中ではHのみ考えればよい
⇒磁場を図示する場合、N極からS極向きに磁力線の矢印を描く。
※磁気モーメント M
磁石の両端の磁荷+m(N極), -m(S極)に極の間の距離lをかけたもの
M=m*l
lには方向があるので、ベクトル量である
単位は Wb*m
_◇WbとT
※ウェーバ
ある閉曲線を通過する磁束の変化とその閉曲線のまわりの電界とを関連づけるファラデーの電磁誘導の法則に基づいて定義することができる。1秒あたり1ウェーバの磁束の変化は、1ボルトの起電力を生ずる(E-B対応の場合)。
※テスラ
1テスラは、「磁束の方向に垂直な面の1平方メートルにつき1ウェーバの磁束密度」(計量単位令による)と定義される。すなわちウェーバ毎平方メートル(Wb/m2)に等しい。
_◇磁束密度(magnetic flux density)
磁束の単位面積当たりの面密度のことであるが、単に磁場と呼ばれることも多い。記号 B で表され、透磁率 μ と磁場の強さ H の積である。磁場はベクトルであるので、磁束密度もまたベクトル量である。単位はテスラ(T)、もしくはウェーバ毎平方メートル(Wb/m2)。
_◇透磁率μ
物質の単位面積を通過することができる磁束量
⇒鉄の透磁率は真空の約1万倍でコイルの中にかなり多くの磁束を収容することができる
<>導体、電流という形でエネルギーを通す
⇒多くの物体で透磁率は線形な特性ではない
⇒たかだか1万倍(導電率なら10の20乗)なので、リーク磁束は無視できない
B=μH
μ0:真空の透磁率4πE-7 [H/m]
_◇帯磁率χ
物質に磁場をかけたとき発生する磁気モーメントを示す量
M=χH
_◇BH曲線
_◇強磁性飽和
磁力線を濃縮していっても通常の鉄芯では約2テスラ程度で飽和する。
_◇カピッツァ限界
コイルにDCを流すと発熱の問題があるので、パルス磁場を作ることで約50テスラまでは磁界を作れる。しかし、このときコイルには上下方向に圧縮、横方向に膨脹力を受けているので、これ以上になるとコイルは爆発する。
_◇反磁場、反磁場係数
強磁性体が磁化した状態
⇒外部に磁力線を生じる
⇒磁性体内部にも磁場を作る=反磁場
μ0*HD = -D*I
D:反磁場係数
磁化方向の形状に依存する
無限に長い棒ではD=0
I: 単位体積あたりの磁気モーメント(磁化)
Wb/m^2
※磁性体を磁化する場合、磁性体内部に働く有効磁場は
Heff = Ha – D*I/μ0
Ha:外部からかけた磁場
_◇化学的カタストロフィー
磁場の強度が大きくなって10^5テスラを越えると、電子スピン磁気エネルギーが化学結合エネルギーと同等になり、化学結合は不安定となる
◆複素誘電率
誘電体に静電場を印加すると分極する。(分極は電子雲の偏りや誘起双極子等によって起こる)
電束密度をD、電場をE、分極をPとすると
(1)D=εE+P
※電場を交流電場(E=E0cosωt)にすると双極子のような重いものは電場の変化にリアルタイムに追随せず、位相の遅れ(δ)を生ずる。
これを反映してDは
(2)D=D0cos(ωt-δ)=D0cosωtcosδ+D0sinωtsinδ
と表される。(2)式右辺の第1項は電場の変化と同相の成分だが、第2項は電場の変化に対し90度位相が遅れた成分ということになり、この2つの成分を複素座標で考えると複素誘電率となる。
※複素誘電率
誘電体に交番電場Eをかける時、電束密度Dの変化に位相的な遅れが出る場合、
DとEの比、ε=D/E=ε’-jε”
εを複素誘電率と言う。μ’、μ”は実数。
※損失係数
ε”/ε’=tanδ
◆複素透磁率
磁性体に交番磁場Hをかける時、磁束密度Bの変化に位相的な遅れが出る場合、
BとHの比、μ=B/H=μ’-jμ
μを複素透磁率と言う。
※μ’、μ”は実数。
※μ’を実数項、μ”を虚数項とよぶ
虚数項は磁気エネルギーの損失分に相当し、高周波では大きいほど雑音抑制効果がある
_◇損失係数
μ”/μ’=tanδ
◆表皮効果:高周波電流または、電磁場が導体の表面層に極限されて、内部に入らない
現象。導体の面が平面で、電場や電流が表面の場所によらず一様な時、透磁率μ、電
気伝導度σ、角振動数ωとすると、電場EはE=E0exp((-1-i)Zμσω/2+iωt)と
なって、深さZと共に、急激に減少する。電磁場の強さが表面の1/εになる厚さ、δ=
(2/μεω)1/2をskin depthと呼ぶ。
◆渦電流
時間的に変化する磁場中に置かれた導体の内部に電磁誘導によって生じる渦状の電流。
◆遷移元素(遷移金属)
最外殻がs軌道で、その内側のd軌道の電子数が10未満であるか、10であっても最外殻に1個の電子しか納まっていない原子
_◇強磁性
鉄などの原子は電子のスピンの向きがそろってマクロ的な磁石になる
◆結晶の磁化
_◇自発磁化
結晶全体の磁化
_◇磁気異方性と磁歪
強磁性体の各原子の磁気モーメントは平行に整列するだけでなく、結晶のある方向を向こうとする
⇒磁気容易化方向
⇒磁化方向がずれるとエネルギー増加
⇒磁気異方性エネルギー
※結晶は磁化方向に歪を生じる
⇒磁歪
_◇磁区と磁化
一方方向への磁化は安定ではない。
磁化が部分的に異なった領域(磁区)を作り、内部で磁力線がつながるようになった方が、エネルギーが下がる
⇒外部にでる磁力線の数が減る
※磁壁
磁区の境界
◆キュリー温度
キュリー温度(Curie temperature、記号Tc)
強磁性体が常磁性体に変化する転移温度、もしくは強誘電体が常誘電体に変化する転移温度
例)鉄では770℃
強磁性体との類推により、キュリー温度は強誘電体(圧電物質)が自発分極や圧電特性を失う温度にも用いられる。
※低温では同一方向に原子の磁気モーメントがそろっていても、温度を上げると熱エネルギーにより方向が揺らぐために起こる。
_◇キュリーワイスの法則
χ=C/(T-θp)
χ:磁化率(帯磁率)
T:絶対温度
C:キュリー定数
θp:常磁性キュリー温度
_◇磁化率(magnetic susceptibility)
磁気分極の起こりやすさを示す物性値
Pm = χm * μ0 * H
χは無次元量
_◇磁気分極(magnetic polarization)
磁化した物体を磁性体に接近させることで、磁化した物体に近い側に、磁化した物体とは逆の磁極(磁荷)が現れる現象。
Pm [A/m]
Pm = B – μ0*H
磁性体の存在によって生じる磁束密度からのずれをあらわす。
◆ホール効果
電流に直角に磁場をかけたとき、電流、磁場双方に垂直方向に電圧が発生する
⇒レンツの法則
◆ゼーマンエネルギー
スピンに外部磁場を加えると、スピンの磁気モーメントと磁場の相互作用のために、スピン磁場の方向成分にあわせてエネルギーが分裂(ゼーマン分裂)する
スピンが±1/2なら2準位だが、鉄の三価イオンのようにスピンが5/2など大きければ、準位間の角運動量の差が1となるように複数の準位ができる
※古典的磁石はS無限大
◆巨大磁気抵抗
GMR
磁性体に磁場をかけると電気抵抗が変化する
⇒磁気抵抗
⇒通常はごくわずか
磁気スピンがバラバラなときは電気抵抗が生じるが、スピンが並ぶと電子の流れがスムースになる
このなかで大きな磁気抵抗を持つもの
◆スピン注入磁化反転
磁場を使わない、NS反転
①2つの磁性素子を短距離導体でつなぐ
②電子流を流す
③導体中では伝導電子のスピンの向きはランダム
④強磁性体中で、交換相互作用によりスピンの向きがそろう
⇒整列スピン流
⑤途中の短距離導体中では崩れない
⑥崩れないうちに次の強磁性体に入る
⇒こんどは伝導電子に引きずられて強磁性体のスピンの向きが変わる
※GaAs, InAsなどにMnを入れて作った強磁性体
◆マグネトバイオロジー
磁場が生体に与える影響を研究する
◆バイオマグネティズム
生物が作る磁気の科学
◆磁場中の原子準位
原子の準位は固体中でバンドになり、それは磁場中でフラクタル構造となる
☆フェライト
<フェライトの項全体は、主としてTDK社のWebによる。参照用に短く編集してしまったが、実際の文章は大変面白くてためになる>
※フェライト
XFe(2)O(4)(Xは鉄以外の金属イオン)という一般化学式で示される金属イオンと鉄イオンの化合物
A格子1つ、B格子2つから成るユニットにおいて、鉄イオンが2つの副格子を占める
1ユニットは電気的に中性とならなければいけない
(金属イオンの総価数は酸素イオン4個の-8と釣り合う)
※Xに鉄イオンが納まると、マグタイトFe(3)O(4)になる
※フェライト
磁性酸化物. フェライトとはFe3+イオンを含む酸化物。フェライトにはスピネル形, 六方晶, ガーネット形などの結晶構造のものがある。六方晶フェライトは結晶構造の対称性が低いことから磁気異方性が大きく高保磁力になるため、主に永久磁石材料に用いられる。
フェライトの特徴は電気抵抗率が高いため高周波で使用できることである。そのため磁気損失については渦電流損失が通常無視され、その損失の大部分がヒステリシス損失、および残留損失とみなされる電子移動に起因する磁気余効や磁気的共鳴損失(スピンの回転共鳴, 磁壁移動の共鳴など) とから成り立つ。限界周波数はごく定性的にいえばμ0 に逆比例するので、高μフェライトほど高周波用として不適当。このような損失を残留損失と呼ぶ。
※透磁率の経年変化
フェライトの磁壁が焼結後時間の経過とともに安定化するため。
◆標準材質特性
Standard Characteristics Of Material
交流初透磁率 Initial permeability [μiac]
相対損失係数 Relative loss factor [tanδ/μiac]
透磁率の相対温度係数 Relative temperature
キューリー温度 Curie temperature Tc
実効飽和磁束密度 Saturation flux density Bms at H=1200 (A/m) [mT]
残留磁束密度 Remanence flux density Br [mT]
保磁力 Coercivity Hc [A/m]
抵抗率 Electrical resistivity ρ [Ωm]
見かけ密度 Density dapp [Kg/m^3]
初透磁率 : 磁性体の磁化のしやすさを示す指標。
tanδ=tanδh+tanδe+tanδr
tanδh: ヒステリシス損失
tanδe: 渦電流損失
tanδr: 残留損失(磁壁共鳴/自然共鳴/拡散・電子余効)
◆ソフトフェライト
酸素イオンが構築する結晶格子点に鉄イオンと他の金属イオンがある規則性を保ちながら整然と納まったイオン結合の結晶体
※基本的な結晶モチーフ、最小結晶単位”単位胞”がある。
※ソフトフェライト結晶粒をグレインと呼ぶ。
※単位胞”ブロック”が規則正しく三次元的に積み上げられ結晶粒グレインが構築される
◆不対電子とフェライト
※孤独な電子を不対電子と呼ぶ
※最外殻ではなく、そのすぐ内側の電子雲に1個、2個と取り残されると、そこに潜在能力が仕掛けられる
⇒そのような電子配置を持つ原子の代表
フェライト組成の骨組=原子番号26の鉄原子
※最外殻は球対称の4s軌道
正負逆のスピン磁気モーメントを持つ電子が2個
定員数2を満足
※すぐ内側=磁気量子数mが5の3d軌道
6個の電子しかない。
※1sから3pまでの軌道は、閉殻となっている
(原子番号18のアルゴンと同じ)
※5つの3d軌道には同じ方位を指し示す不対電子が4個
鉄原子は磁性の均衡を大幅に崩し、電子4個分の磁性を帯びる
※鉄イオン(Fe2+)
4s軌道に納まった電子2個が飛び出した状態。
⇒酸素原子の不足分として囚われる。
※Fe(3)O(4)
正に帯電した2価鉄と負の電荷を帯びた酸素が混在するイオン宇宙が出現
→静電気的な結合力が発生
→同種のイオンは互いに反発し、鉄イオンと酸素イオンは互いに強く引き合う。その結果、正負のイオンは交互に整然と組み合わされ、イオン宇宙は電気的に中性なイオン結晶を構築
※イオン結合の結晶体は、最小ユニットが三次元的かつ連続的につながる構造を持つ。
→それらは”分子”でなくイオン化した原子の連鎖的なつながり
◆最小ユニット・モデル
酸素イオンと金属イオンの比率の違う2つの副格子(単位胞内に規則的に配列している金属イオンの納まる位置)の合体
①酸素イオン4個の中心に金属イオンを収納するA格子
②6個の酸素イオンに金属イオンが取り囲まれたB格子
1対2の割合で組み合わされている。
◆磁気モーメント
不対電子のスピン磁気モーメントを合成したイオン単位の磁気モーメントの意
A格子とB格子で反対方向を向く
※ボーア磁子 Bohr magneton
電子の磁気モーメントの定数。
(SI単位系での定義)
μB=e*h~/2*me
e: 電気素量
h~: 有理化されたプランク定数
me: 電子の静止質量
9.27400915e-24 [J/T]
電子は本来ほぼボーア磁子に等しい磁気双極子モーメントを持つ
有効ボーア磁子数 磁気モーメントの大きさをボーア磁子の大きさを基準で表したもの
μeff = μ/μB
実際の電子の磁気モーメントの大きさ ボーア磁子から少しずれる
μe – μB
を異常磁気モーメントと呼ぶ
※個々の金属イオンに宿る磁性の程度
3d軌道上を孤独に巡る不対電子の員数に依存する(電子1個に固有のスピン磁気モーメント量をボーア磁子1μBとするので、そのまま不対電子の数を反映している。3d軌道の”部屋数”は5つなので、1金属イオンあたりに宿る最大のボーア磁子量は5μBとなる)
◆Zn2+によるMn2+の置換
※3価の鉄イオンがすでにB格子を占拠+A格子に価数は+2でなおかつ3d軌道上に不対電子がひとつも存在しない非磁性イオンがあれば3価の鉄の全μBを活用できるかもしれない。
⇒定員いっぱいの10個の電子を3d軌道に納め、4s軌道に2個の電子を持つ原子番号30の亜鉛(Zn)原子。(亜鉛イオンは鉄イオンより、積極的にA格子に納まりたがる)
※Zn2+で、Mn2+を置換するとある程度までは磁子量は増大するが、増えすぎると、磁子量は見る間に減少してしまい、亜鉛イオンがA格子の全席を占領すると、この物質の磁性は完全に消失する。
※A、B両格子に陣取った金属イオンの3d軌道上に存在する不対電子は、中央に位置する共有酸素イオンの最外殻電子雲を介し相互に量子力学的な交換関係を取り結んでいる。
⇒相互的な交換作用のため。
◆温度と磁気モーメント
温度が実用レベルまで上昇してくれば、A、B副格子間に発生する磁気モーメントのやりとりも単純な理論値から変わって来る。
⇒絶対零度(-273.15℃)に近い極低温では両格子の磁気モーメントは、ほぼ完全な反平行関係を維持していることが推定される
→温度の上昇に伴い原子の振動が次第に活発になり、個々の格子点に宿る磁気モーメントの反平行関係も徐々に崩れる
→さらに温度を上げていくと、それらの方位は三次元的にランダムな状態となる。A、B両格子の厳格な磁性の綱引きの差をマクロ的な磁性として取り出せたフェリ磁性機構も常磁性体と変わらない状態となる
※フェリ磁性(Ferrimagnetism)
結晶中に逆方向やほぼ逆方向のスピンを持つ2種類の磁性イオンが存在し、互いの磁化の大きさが異なるために全体として磁化を持つ磁性のこと
◆グレイン(Grain)とドメイン
直径約5ミクロンほどに成長したフェライト結晶、グレインの中には、約2千億個の一辺8オングストロームの立方体である単位胞が整然と層をなして並ぶ。
→整然と並んでいるが、ミクロ的な磁性のやりとりだけでは説明できない
_◇磁区=ドメイン
グレインが大きなかたまりに育つ過程において、その両端に現れる磁極の力は増大し、同一磁極間では反発し、異磁極間では引き合う。
→超交換相互作用により同じ方向を指し示していた単位胞の磁気モーメントが、いくつかのブロック単位でその方位を反転、磁極に発生したエネルギーを抑え磁区を形成し、エネルギーを最小化する。
※現実のグレインは、多くても4~6個の磁区にしか分割されない
※単位胞に宿る磁気モーメントの方向を平行に保持する力の源泉
A、B格子間に働く強力な超交換相互作用
個々の副格子間に局所的に働く超交換相互作用は、いくらグレインが成長しても増大しない
※磁極に発生する吸引と反発のエネルギー
超交換相互作用を源泉とする異方性の拘束力しのぐ大きさにふくれあがった瞬間に反転する
※磁壁(domain wall)と呼ばれる部分に発生するエネルギーとの和が最小の値をとるように一気に進行し、そこで落ち着く
※磁区形成以前と以後を比べても、グレインの結晶構造は変わらない。
※変化するのは、金属イオンの3d軌道(電子雲)に陣取る電子が示すスピン磁気モーメントの方位
※磁壁の正体は、磁気モーメントの方位を少しずつずらしながら並ぶ単位胞の「列」
◆磁壁移動
グレインの磁性は磁気的な平衡状態
→外部磁界の刺激が与えられれば、バランスが崩れる
→磁壁中の磁気モーメントは、エネルギー的にきわめて不安定
→磁界Hを加えると、その力に一番近い方位を向く磁区に隣接し、頭を少しねじ曲げていた磁壁中の磁気モーメントが、その頭を移動し、安定した隣の磁区の方位に揃えようとする。
※外部磁界の作用は、磁壁中のすべての磁気モーメントに等しく及ぶので、さざ波が伝わるように磁壁全体が移動
◆初磁化曲線
外部磁界Hの増加に伴う磁束密度Bの変化
交流磁界 H~
フェライト内部に発生する自発的な磁界
異方性磁界HA
反磁界Hd
※空孔などの結晶欠陥を選択して磁壁は自分の落ち着く場所を決める
⇒外部磁界Hの力が磁壁の前に立ちはだかる欠陥エネルギーの障壁を超えたとたんに段階的な移動をとげる
※個々のグレインは段階的な挙動だが、フェライト全体のマクロな磁化プロセスを示す初磁化曲線はなめらかなカーブを描く
◆飽和磁束密度Bs
磁界を強めていけば、すべての磁気モーメントが外部磁界Hの方位に揃い、飽和磁束密度Bsに達する
◆残留磁束密度Br
※外部磁界により成長したグレインが磁区に分裂する際の状況と酷似した緊張が発生
→磁界をカットすれば消えた磁壁がにわかに復元され、欠陥エネルギーの障壁を登りながら元の安定位置を目指す
※ただし、欠陥エネルギーの障壁を”自力”でのり越えられず、残留磁束密度Brを残す
◆保磁力Hc
※磁界をゼロにしても残留磁束密度Brが発現
→元どおりの位置に磁壁を戻すには(磁束密度Bをゼロとするには)逆方向に磁界をかけてやる必要
※このときの磁界の強さを保磁力Hcと呼ぶ。
◆磁束密度Bと透磁率μ
※フェライトの磁束密度B
フェライト中の単位面積を貫通する磁力線(磁束)濃密度
→フェライトでなくてもコイルに電流を通せば、その中空部を貫通する磁力線の輪が全方位に向けて広がる
→コイルを取り巻く空間の単位面積を貫通する磁力線の数、すなわちその空間の磁束密度は、コイルに発生する磁界Hの強さに比例して増加する
真空)コイルに発生する磁界Hの強さと磁束密度Bの関係
真空の透磁率μ0を比例定数として、
B=μ0H
※透磁率μとは、磁束の貫通する媒質の磁気的な性質に関わる値である。
※フェライトとは、それ自体がひとつの”磁石”であるスピン磁気モーメントの集積体
→外部磁界にさらされると、その方向にフェライト固有の磁束が誘起される
※その方位と直交するフェライト中の単位面積における磁束密度Bの値、
電流を印加されたコイルに発生した磁束密度μ0H
フェライト固有の磁化I
の和、μ0H+Iとなる
※ソフトフェライトの領域においては、一般にμ0Hはきわめて微小なので、フェライト固有の磁化Iと磁束密度Bはほぼ等価である
※フェライトの透磁率をμとすると
フェライト中における磁束密度Bと外部磁界Hは、
B=μH
となる。Bをμ0H+Iで置き代えると、
μ0H +I=μH
μ=μ0H/H+I/H → μ=μ0+I/H
※μ0 はフェライトの磁気的な特性とは一切かかわりのない定数であるから、フェライトの透磁率μは、単位外部磁界Hあたりの磁化Iの大きさを示すI/H、すなわち磁化率と等価な概念である
◆初透磁率μi
<お言葉>
「忍び寄るかすかな外部磁界の気配で布団ならぬ磁壁をグイと押しのけ、磁束密度Bを一気に持ち上げる。その”寝起きのよさ”こそ、より俊敏かつ繊細な特性を要求される先端磁性部品になくてはならぬ、最も基本的な能力である」
※初透磁率μi
初磁化曲線の原点0と、立ち上がり直後のカーブを結ぶ接線の傾きを求め、それを磁壁の”目覚め具合”を裁定するスケールとする。
※最大透磁率μm
Bが大きく立ち上がった先に現れる2つ目のカーブと原点0を結ぶ接線の傾きを、フェライトが磁気飽和に達するまでの総合的な反応の善し悪しを裁定するためのバロメーターとする。
※初透磁率μiの大きさに影響を与える主要因子
(1)空孔
(2)磁壁の幅
(3)グレイン自体の大きさ
(4)グレイン間にできる境界層(粒界)
(5)基本組成
(6)磁歪エネルギーの大きさ
◆磁壁の幅とエネルギー
※磁壁中の磁気モーメント
結晶磁気異方性エネルギーの障壁により、安定方位a、bを指し示す磁区中の磁気モーメントよりも高いエネルギーを付与されている
※磁壁の幅が広くなる→エネルギーの高い磁気モーメントを抱えた単位胞の数が増加する
※磁壁の幅がせばまる→その間に並ぶ単位胞が減少する→各単位胞に宿る磁気モーメント間のズレ角度θ(磁壁中で均等に分割される)は、逆に大きく開く
※超交換相互作用のエネルギーWa
θの2乗に比例する勢いで増大し、ずれた角度を元の方位に戻そうとする。
※磁壁の幅
その中に取り込まれる単位胞の数が増えるにしたがい増加する結晶磁気異方性エネルギーWkと、反対に単位胞の数が減ると急増する超交換相互作用のエネルギーWaの和が最低となるようなポイントに落ち着く。
→超交換相互作用のエネルギーWaは、物性の根幹にかかわるファクタなので、簡単には操作できない。
※このため、磁壁の幅は広がるほうが、磁壁は早く動く
◆空孔とハイμ制御
※原子の配列方位が、わずかに乱れても、その境界面には微小な磁極、すなわち磁壁移動を妨げるエネルギー障壁が形成される
※空孔
格子レベルの欠陥をはるかに超え、フェライトの感受性に大きなダメージを与える。原子そのものが大量に欠落してしまった空孔。当然μは大幅に低減する。
※空孔抑制
フェライト結晶の感受性、μは、フェライト焼成プロセスモデルの初期段階でほぼ決定的となる。
→「ハイμ材」には1秒のズレ、1℃の変化もおろそかにできない厳格な制御プログラムが不可欠
※空孔の存在しないグレインを生成することは困難だが、焼成プロセスの制御により、グレイン生成過程で生まれた”結晶のすき間”を粒界層へ誘導することが可能
※初透磁率μi
わずかな外部磁界Hをエネルギー源とする瞬発力。
磁壁を身軽にするために太らせ、磁壁のつまづきの元となる不純物を片づけ、空孔を埋める必要がある。
※グレインの大きさとμi
ハイμフェライトの初透磁率μiは、グレインの大きさに比例するが、このような比例関係を成立させるには相応のハイμ制御が不可欠
格子欠陥や空孔を取り込んではならない。
※グレインを締めつける応力
粒界層を形成するために添加した不純物は、冷却過程の初期において、グレイン内部を上回る収縮率でガラス状に固化し、グレインを締めつける応力の源となる。このため、この粒界応力は磁壁移動の制動因子となり、外部磁界が微弱な初透磁率領域における磁壁は、両端を固定された弦のモデルとなる。つまりグレインの大きさ、すなわち磁壁の全長が2倍になれば、磁化変化領域の体積は8倍にふくれあがり、μi は約2倍上昇する
⇒粒界層をなるべく薄く均質に制御し、粒界層に発生する応力を大幅に低減できれば、磁壁はより早く動く。しかし、空孔や不純物などの欠陥因子は、液状に溶解した粒界をパイプ役として、フェライト表面にしみ出る動きを示す。そこで、粒界応力を低減するために、粒界成分を減らしすぎると、そのような空孔、不純物の排出作用が阻害され、逃げ道を失った不純物がグレイン内に取り残されたり、グレイン間に集結したまま動きのとれなくなった空孔がグレインの成長を抑制する働きを示し、結果μiの伸びが頭打ちとなってしまうリスクが高まる。
(制御ノウハウが要求される)
※良く制御されたフェライトの初透磁率領域における磁化は可逆的であり、外部磁界の印加を断ち切れば、磁壁はすみやかに元の安定位置に復帰する。外部磁界の大きさが 初透磁率レベルを上回ると、磁壁は跳躍的な非可逆移動を果たす。
◆異方性
※3価の鉄(Fe3+)、2価のニッケル(Ni2+)、マンガン(Mn2+)、亜鉛(Zn2+)など、フェライト結晶の母材となる代表的な金属イオンの磁気モーメントは、8つの安定方位(対角線方位)のうち、正反対に背をそむけ合ういずれか2つの方位に落ち着く(負の異方性)。ところが、2価の鉄イオン(Fe2+)が格子点におさまると、単位胞の磁化容易軸の方位は、最も高いエネルギー障壁を築いていた単位胞の各面に垂直な方位を指し示す(正の異方性)。
※組成の一部にマグネタイトなど、2価の鉄を含む素材を導入してやれば、磁壁の足にからみつく結晶磁気異方性エネルギーの障壁を大幅に抑制でき、キュリー温度に至るはるか以前に現れるμiの極大ポイントを任意の温度に設定できる。
※正の異方性を内在しないフェライトのμiは、温度の上昇に伴い徐々に増大し、キュリー温度直前で急峻な伸びを示す。
高温下における磁気モーメントの方位は熱擾乱作用のため乱雑となり、磁束密度Bの低減をもたらす⇒μiの値は、むしろ低減しなければおかしい
しかし、温度上昇に伴う結晶磁気異方性定数K1の衰退は、熱擾乱による磁束密度Bの低下をはるかに上回る勢いで進行する⇒このためμi伸びる。
※μiとBs、K1の関係の近似式
μi=飽和磁化 Bs2/αK1+β(αとβは定数)
分子よりも分母の値が急激に減少することになり、μiの値は一気に増大する
◆交流磁界と損失
直流から交流への決定的は変化は、ゴールであったはずのグレイン端が、折り返し点になることである。目に見えない2つの折り返し点の間を右へ左へ動くことになる
※損失(tanδ)
tanδ=tanδh+tanδe+tanδr
tanδh: ヒステリシス損失
tanδe: 渦電流損失
tanδr: 残留損失(磁壁共鳴/自然共鳴/拡散・電子余効)
※周波数があがると磁界の変化に磁束密度Bの変化が追いつかなくなる
→損失因子が一気に顕在化
→交流磁界の周波数がさらに高まると、磁壁はついに単位胞の1個分も動けなくなる
※損失(tanδ)ピークは、磁壁を1本の弦とみなしたときの固有振動数に交流磁界の周波数が一致したときに引き起こされる「磁壁共鳴」という現象による
※異方性磁界HA
交流磁界の作用をより精密に観察するために、磁区内の磁気モーメントを特定の方位に引きつけ、かつ磁壁の安眠にも一役かっている結晶磁気異方性エネルギーWkの”谷間の引力”を、外部磁界と同じ有効な磁界とみなし、異方性磁界HAと呼ぶ
※結晶磁気異方性定数K1
磁気モーメントを引き寄せるWkの”谷間の引力”、すなわちWkの”谷間の深さ”を示す結晶磁気異方性定数K1は、磁化容易軸を指し示す1本の矢印(異方性磁界HA)の長さで示すことができる
※グレインの集積は、単位胞のように規則正しくなく、個々のグレインが示す異方性磁界HAの方位は、全方位に向けてランダムに分散していると見られる。
※磁化容易軸、すなわち異方性磁界HAの方位は単位胞の対角を結んだラインの両端を指し示す。外部磁界の関与を受けない状態においては、磁区中の磁気モーメントのみならず、磁壁中の磁気モーメントも、規則正しく並ぶ各単位胞のXY平面に沿いながらZ軸を回転軸としてその傾きだけを変えている
※微小角θだけ頭を持ち上げた状態で微妙な安定を得ている磁壁最端部の単位胞に宿る磁気モーメントは、外部磁界のパワーを受けるやいなや、竜巻に吸い込まれた木の葉のようにHA方位(このモデルでは加えられた交流磁界の方位でもある)を回転軸とした首振り運動を起こす。(Z軸方向へのベクトルが生じる)その変化は、およそ1億分の1秒~千万分の1秒という時間内に完了する。逆から言えば、磁壁はそれだけの時間をかけてやっと単位胞一列分の移動を果たすので、この時間経過にこそ、疾走する交流磁界に追い越された磁壁が一歩も先に進めなくなる本質的な原理が隠されている。
※1916年、アインシュタインとドゥ・ハースによって確かめられたこの「奇妙な現象」は、まさしく磁化プロセス、すなわち磁気モーメントの方位転換によって引き起こされたとしか、考えようがない。そして、さまざまな考証の結果、この謎の回転現象は、電子固有のスピン磁気モーメントが磁界方位に頭を揃える際、単純な二次平面上の移動をするのではなく、磁界方位を軸とする三次元的な回転運動を起こすことによって生じるものであることが、つきとめられたのである。
※”スピン”磁気モーメント
そうした考察の結果導入された電子固有の運動量、すなわちスピン角運動量に由来している。この角運動量は、電子の持つ他のエネルギー同様、量子化された量として取り扱われ、具体的に目に映る直接的なモデルで表現することは、原則的には意味をなさない。電子に宿る磁気モーメントが、マクロな磁気モーメントと異なる最大のポイントは、電子のそれには、角運動量が共存していることと角運動量の量子化にある。
※回転しながら斜めに着地したコマの首振り運動と、磁気モーメントの首振り運動とは、基本的に同じ原理。コマに働く地球の引力の作用と、交流磁界の”引力”が等価。磁壁中の磁気モーメントは、外から磁界が加えられなければxy平面上に沿っているが、その方位は、印加磁界Hの方位とずれている。そこで、外部から磁界が印加されたとたんに、引力のある地球上に斜めに着地したコマと同じく、この角度の開きに起因して、トルクTが加わり、xy平面に垂直に働くその力に背を押されるようにして、磁壁中の磁気モーメントは一斉に頭をもたげ、印加磁界H方位を中心とした回転運動に移る。制動因子Lが働き、磁気モーメントの頭を磁界方位に向ける。
※dM(磁気モーメントの変化)/dt(時間変化)であるが、これを、x、y、z軸の各成分に分解すると、dMx/dt,dMy/dt,dMz/dtとなる。しかし、球体モデルにおけるy軸は回転軸なので、この系におけるdMy/dtは常に0であり時間的に変化しない。これは、磁壁中のすべての磁気モーメントについて言えることで、残るdMx,dMz成分の「変化量」も、すべての磁気モーメントにおいて同じ値となる。すなわち、xy平面に整然と並ぶ磁気モーメントがトルクTの力を受けて回転を始めてからdt時間後に、どの磁気モーメントも同じ平面内に存在することになり(面的な平行関係は崩れない)、すべての磁気モーメントが同時に磁壁に直交する瞬間も頻発することになる(y軸を中心として回る磁気モーメントの方位が時間変化dtの間にx軸方位からどれくらいずれたかを示す量dφ/dt=角速度が同じなので、こういう結果となる)。つまり、磁壁の両側には、周期的に増減し、極性を転換する磁極が発生することになる。すると、そのエネルギーを低減するために、N極からS極へ向かう反磁界Hdが、磁極の強さに応じて磁壁内部に発生することになり、じつはこの力が、磁気モーメントをy軸に押しつける 制動因子L(つまり、dMy/dt成分を増加させ、dMx/dt,dMz/dt成分を減少させる働き)として機能する。
☆磁性材料
◆金属磁芯
_◇スーパーマロイ
_◇パーマロイ
_◇ケイ素鋼
_◇アモルファス
◆酸化物磁芯
_◇Mn-Zn系フェライト
_◇Ni-Zn系フェライト
◆圧粉磁芯
_◇カーボニル鉄ダスト
_◇モリブデン・パーマロイ
_◇センダスト

□光学

☆光学の基礎とレンズと光学の基礎
◆用語
_◇光軸と主光線
※光軸
光学系の中心を通る軸。通常z軸とし、光の進む方向を正にとる。
※主光線
光束の中心。瞳の中心を通るが、光軸とは傾いていることがある。
※主光線と光軸のなす角が大きいと結像性能が悪くなる。
_◇メリジオナル面、サジタル面
※メリジオナル面(タンジェンシャル面、子午平面)
光軸と主光線を含む面
⇒光軸と主光線の傾斜最大
⇒この面の性能が重要
※サジタル面(球欠平面)
主光線を含み、メリジオナル面に直交する面
⇒光軸と光軸は一致
⇒斜入射の影響なし。
_◇共役と共役距離
※共役
物体と像のように、交換可能な関係を共役という
⇒共役な関係にある点を共役点という
物距離:レンズから物体/光源までの距離
像距離:レンズから像面/光検出器までの距離
物距離+像距離を共役距離という
_◇焦点と焦平面、焦点距離
※焦点
光軸に対して平行な光を凸レンズに入射させた時、その光が集光する位置
⇒物体側から入射させたときの位置⇒像側焦点(後側)
⇒像側から入射させたときの位置⇒物側焦点(前側)
凹レンズの場合は、発散光を逆向きにたどって集光する位置
※焦平面
焦点を含み、光軸に垂直な面
※焦点距離
レンズの中心(主点)から焦点までの距離
※光学では距離に符号をつける。
光の進む方向=正
凸レンズの像側焦点距離は正、物側焦点距離は負
凹レンズでは逆となる。
_◇主平面と主点
焦点にある点光源からでた光線と反対側からくる光軸に平行な光線の交点の集合
⇒主平面
⇒物体側と像側の主平面は一致しないのが普通
※主面(主平面)
複数のレンズの屈折の場合、1点で屈折すると単純化し、この仮想屈折点が形成する面を主面と呼ぶ。
※主点
主平面と光軸の交点=レンズの中心
⇒一般に物側と像側に主点は2つ
※フロントフォーカスとバックフォーカス
⇒主点の位置は作図で(幾何形状から)求めるしかない
⇒実際の光学系での決定は難しい
⇒そこで実際に測定しやすい
物体側焦点の位置から物体側の光学系の先端までの距離=フロントフォーカス
像側焦点の位置から像側の光学系の先端までの距離=バックフォーカス
※節点
物体側と像側の屈折率が等しい場合、節点は主点と一致する
屈折率が異なる場合は異なる
⇒パノラマ写真の場合はカメラをレンズの節点を中心に回転させる必要がある
_◇視野角
※視野角(画角)
カメラで見えている範囲を角度で表した数値
一辺Lmmの撮像素子
焦点距離fmmのレンズ
カメラの視野角θは、焦点距離fにおいた撮像素子の両端の画素に対応する2本の視線がなす角
⇒同じ焦点距離でも撮像素子の大きさが異なると視野角異なる
※視野は範囲を長さで、画角は角度で表現する
画角α、撮像面の大きさd, レンズの横倍率をβ、焦点距離f
α= 2 * atan { d / (2*(1+β)*f) }
(1+β)*f … 実効焦点距離
写真レンズの焦点距離=物体がレンズから無限遠にあるときの値
物体がレンズから有限の距離にある場合=実行焦点距離
⇒遠くにある物体の場合は以下の近似でよい
α= 2 * atan { d / (2*f) }
⇒上記式はマクロ(接写)では使えない
※画角
水平画角
垂直画角
対角線画角=写真レンズで画角といったらこれ
35mmフィルム換算の対角線43.3mmで通常レンズでは110°程度が限界
※35mm換算の焦点距離
35mmフィルムの撮像面36mm x 24 mmに撮像素子の大きさを比例換算した場合の焦点距離。フィルムカメラと同様に、レンズの焦点距離=視野角の指標とするための数値。
※イメージサークル
レンズにより収差の問題なく結像できる円形の範囲
⇒通常は撮像面の画角の外側にある
⇒魚眼レンズでは内側にあることがある
_◇倍率
※像倍率
物体に対する像の大きさの比
※横倍率
もっとも一般的な像倍率
β=y’/y
y’:像の大きさ
y:物体の大きさ
※角倍率
入射主光線が軸となす角θと射出主光線が軸となす角θ’の比
γ=tanθ’/tanθ
⇒軸に垂直な像の大きさの比較なのでtanをとる
⇒望遠鏡の像倍率
⇒対物レンズの焦点距離/接眼レンズの焦点距離
⇒入射瞳径/射出瞳径
※縦倍率
微小物体が立て方向に移動したときの像点の位置
α=Δz’/Δz
通常、像倍率としては使われない
※ズーム倍率
※光学器械の倍率m
肉眼の視角ωと光学器械を通して見た像の視角ω’の比
角倍率とは異なる
焦平面上にある物体の虚像を明視距離dにつくるとして
虚像の大きさをy”、物体の大きさをy、焦点距離をfとすれば
m=tanω’/tanω=(y”/d)/(y/d)=(y/f)/(y/d)=d/f
_◇収差
理想的な結像からのズレ
⇒光学設計の目的は収差を低減すること
※色収差
光学材料の分散⇒波長による屈折率の違い
⇒補正のためのルールあり
①軸上色収差(縦の色収差)
光の周波数の違い⇒屈折率異なる⇒光軸上で色がにじむ
②倍率色収差(横の色収差)
光の周波数の違い⇒屈折率異なる⇒光軸からの離れ具合で色がにじむ
(通常、青色の側が拡大されたように見える)
⇒色により横倍率異なる
⇒焦点から白色光をだすと凸レンズにより平行となる筈だが、横方向に色がわかれる
※単色収差
単色光(レーザー)などでも生じる
⇒光学設計の主眼、万能ルールはない(ここの補正方法は知られている)
⇒光線追跡⇒収差解析⇒提言
※ザイデルの5収差(単色収差)
①球面収差
球面レンズの周辺での屈折のズレ。光軸にあつまるべきものが広がる
⇒軸上で一点に集光しない
②コマ収差
視野周辺の斜めに入射する光が周辺方向に尾を引く
⇒軸外で、点像が尾を引く
③非点収差
点像が縦や横長になる
⇒メリジオナル面とサジタル面での集光位置が異なる
④像面収差
結像面が平面にならず、曲面となる
⇒像面が近似的に球面となる
⑤歪曲収差
像が糸巻状やたる形になる
⇒横倍率が光軸からの距離により異なる
※収差の補正
凸凹組み合わせ
屈折率の異なるガラスの組み合わせ
非球面レンズの使用
画像処理
_◇物体深度、被写界深度
※許容錯乱円
点光源を撮影したときに許容されるボケの限界
フィルム写真では、撮像面の対角線長の1/1000~1/1500
⇒1000万画素デジカメで3.5画素、2000万画素で5画素
※焦点深度
結像に許容錯乱円までのボケがゆるされるので、撮像面とレンズの距離に誤差が許容される。焦点側の値
Δ’≒2*ε*F
εは光学系の分解能
⇒被写体側にもある幅のピントが合っていると見なせる範囲が存在する
⇒被写体側を論ずれば被写界深度(物体深度)
※物体深度
レンズと像面を固定、物体の位置を変化させても結像される範囲
※被写界深度
写真レンズにおける物体深度
①焦点距離が短いほど深い
②口径が小さいほど深い
③物体までの距離が遠いほど深い
Δ≒2*ε*(OA)/{|β|*D}
OA:射出瞳の中心から物体までの距離
β:横倍率
D:レンズ径
_◇パンフォーカス
あらゆる位置にある物体が同一面上に結像されている状態
⇒凸レンズでは不可能だが、物体深度(被写界震度)が深い結像を近似的に呼ぶことがある
_◇共役寸法
物サイズ:物体、光源の大きさ
像サイズ:像面、光検出器の大きさ
※無限共役比デザインでは角度であらわす
_◇開口数とFナンバー
NA, F/#
光学系によって集光あるいは出射できる光の最大推角
開口数が大きいとFナンバーは小さくなる
※Fナンバーは光学系の明るさを表す
⇒望遠鏡やカメラレンズはFナンバー
焦点距離fを有効径Dでわる
⇒カメラでは絞りをFナンバーで表す
⇒光量1/2はF1.4なので、F1.4の倍数系列も使われる
⇒Fの逆数を口径比とよぶ
⇒F<1もありえる
※F値
焦点距離/有効口径
⇒絞り1/2⇒有効口径1/2⇒像の明るさ1/4
⇒焦点距離2倍⇒像縦横2倍⇒明るさ1/4
⇒F値は像の明るさの平方根に反比例する
⇒絞りを絞ると同じレンズでもF値は大きくなる⇒絞り値
(絞りなし=開放F値)
※開口数
Numerical Apertureの頭文字でNAとも
光束の開口角の1/2のsin
⇒大きいほど明るくなる
⇒明るさだけでなく光線の角度を示す
⇒顕微鏡の対物レンズ、マイクロレンズなどの明るさを示すときに使われる
⇒sinをとるので1より大きくなることは通常ない
(液浸レンズで液体の屈折率がかかる場合にありえる)
NA=sinθ
(1/2)F=D/(2*f)=tanθ
※有効口径
レンズ光軸に平行に入射する光束のなかで、絞りによって隠蔽されない直径
_◇絞り
光束を制限するもの
レンズの端、レンズの固定枠なども絞り
⇒レンズが複数枚あれば絞りも複数
⇒もっとも有効に光束を制限している絞りを開口絞りという
※瞳
入射瞳 開口絞りを物体側から見たときに見える絞りの虚像
射出瞳 像側から開口絞りを見たときに見える絞りの虚像
⇒射出瞳を単に瞳という
※斜入射の場合は、開口絞りとは別な絞りがかかる
⇒視野絞り
⇒視野絞りの虚像を窓
⇒斜入射の場合は、メリジオナル面とサジタル面で光束の制限される量が異なる
⇒開口部は楕円=口径食(ビネッティング)
※コサイン4乗則
垂直入射光の照度に対して入射角のコサインの4乗になる
レンズを通過する単位面積あたりの光量がθのコサイン
レンズに入射するトータル光量がコサイン2乗分の1(距離)
集光面の単位面積あたりの光量がコサイン
⇒周辺減光
_◇解像力
倍率や回折限界により上限値が制限される
_◇アッペ数
Abbe Number
※平均分散
長波長の屈折率と短波長の屈折率差
⇒一般に水素の輝線スペクトルの波長
F線486.1nm青緑色
C線656.3nm赤色
nF-nC
※アッベ数
⇒色収差を評価する場合につかう
⇒平均分散の逆数⇒アッベ数が大きいと分散小
νd=(nd – 1) / (nf – nc)
nd: ヘリウムd線 587.6nm(黄色)における屈折率
※分散曲線
屈折率の波長変化を表現した曲線
※分散式
屈折率を波長の関数で表現した式
①コーシーの分散式
②ハルトマンの分散式(光学ガラスでよく使われる)
③セルマイヤの分散式
※屈折率が高くなると分散も大となる傾向がある
⇒理想的なガラスはない
※レンズの屈折力K
K=(n-1)(c1-c2)
n:屈折率
c1:曲率半径
c2:曲率半径
屈折率がΔn変化したときの屈折力変化ΔK
ΔK=Δn*(c1-c2)
ΔK=K/ν
ν:アッベ数
_◇アクロマートレンズとアポクロマートレンズ
色消しレンズ
※アクロマートレンズ
2波長で色収差を補正
⇒波長対焦点位置のズレの関係は2次曲線
⇒設計手順あり
単体レンズでは不可
2枚以上のレンズを使う
⇒白色光下ではアクロマートレンズでないと実用に耐えない
⇒貼り合わせアクロマートレンズ
クラウンガラスの凸(分散小)
フリントガラスの凹(分散大)
⇒ラムスデン型接眼レンズ
レンズ離れている。
同じ材料のレンズ2枚で色消しができる
※アポクロマートレンズ
⇒3波長で補正
⇒3次曲線
⇒異常部分分散特性をもった光学材料必要
昔:蛍石(フローライト)
現在:特殊分散ガラス(EDガラス)
⇒望遠鏡の対物レンズ、望遠レンズ
_◇接眼レンズ
対物レンズ側を視野レンズ
眼側のレンズを対眼レンズとよぶ
①ラムスデン
2枚平凸
②ホイヘンス
2枚平凸
③ケルナ
2群3枚
④オルソスコピック
2群4枚
⑤エルフレ
3群5枚
_◇曲率
半径の逆数
非球面でも微小な球面の集合と考えることで曲率を定義できる
_◇ベンディング
焦点距離を変えずにレンズの形を変えること
_◇色温度
※色の異なる光源(分光分布が異なる)をあらわす方法
※黒体放射⇒プランクの輻射式の波長分布
⇒ある温度の黒体放射と光源の放射が一致⇒そのときの温度を色温度とよぶ
⇒実際には一致しないので、もっとも近い温度で近似
_◇被写体照度と面照度
光源⇒被写体で反射⇒光学系⇒センサ表面
※センサ表面の照度を面照度という
E0 被写体照度
R 反射率
T 撮影レンズの透過率
F レンズF地
m 結像面倍率
Ep 面照度
        R*T*E0       R*T*E0
Ep=-----------------≒------
   4*(F^2)*((1+m)^2) 4*F^2
◆基本原理
_◇フェルマーの原理と光路長
光は最短時間で到達できる経路を進む
⇒光は光路長が最短となる経路を進む
※光路長=距離に屈折率をかけた値
⇒光速が物体の中で遅くなった分を考慮した長さ
_◇虚像と実像
実際に光が集まってできている像を実像
発散光線を逆向きにたどった時に見える像を虚像
⇒光が集まっているわけではないので、実際に像はできないが、人間の目の光学系により結像させることで像が見える
_◇光線可逆進の定理
※元の物体に対する結像位置に像と同じ物体を置くならば、光は逆に進んで元の物体の位置に像をつくる。
_◇結像
※レンズは2つの球面からできている
1枚のレンズ⇒2枚の曲面
※合成光学系
1枚のレンズ=2枚の曲面
複数枚のレンズ
⇒いずれもひとつの合成光学系と考えられる
※薄レンズ
厚さを無視したレンズ
⇒焦点距離を直接パラメータとできる
_◇ラグランジュの不変量
照明光学系を考えるときに重要
_◇アッベの不変量
球面の結像を考える上で重要
◆光線と光束
※光線⇒光の進む道筋を示す線
※点光源から4方8方にひろがる⇒光束
⇒測光量である光束と区別する場合は光線束
bundle of ray
※光束 luminous flux
物理量である放射束を視感度で評価した値
単位はルーメン[lm]
※波面
伝搬する波の位相が等しい面
_◇近軸結像と近軸光線
※近軸光線:光軸からおおきく離れない光線
⇒sinθ tanθをθで置き換えられる程度(10°程度)
⇒良好な結像性能
⇒近軸領域もしくはガウス領域とよぶ
⇒球面レンズによって点に集光
※近軸結像
近軸光線の範囲の結像
_◇薄レンズ近似
レンズの厚さ、表面形状、屈折率を無視
1面で屈折するとみなした近似
⇒焦点距離がパラメータとなる
_◇プリズム近似
頂の異なるプリズムの集合と考える
※プリズムの頂角α
光が屈折する2面のなす角度
※プリズムの振れ角δ
入射する光線と、出射する光線のなす角度
⇒入射角によって異なる
⇒最小となる振れ角からプリズムの屈折率を算出できる
⇒第1面の入射各θ1と第2面の屈折角θ2’が等しいときに最小となる
頂角αとすると
δmin=2θ1 – α
屈折率 n = sin((δmin+α)/2)/sin(α/2)
※レンズの振れ角
◆人間の視覚
※虚像をつくる光学機器でも、人間の眼の光学系により網膜上には実像ができる
水晶体:目のレンズ
小さくて、焦点距離も短い
※視角ω
※距離lにおかれた高さhの物体の視角ωの関係
h=2*l*tan(ω/2)
※両眼視差
両眼で物を見るときの角度の違い=輻輳角(視角ともいうので注意)
◆レンズの光学的評価項目
_◇透過率
外部透過率
反射による損失を含む
内部透過率
材料そのもの
_◇着色度
透過率は波長により異なる
主として短波長が透過しない⇒着色されたように見える
※厚さ10mmの試料の反射損失を含んだ透過率が80%、5%になる波長
⇒10nm単位であらわす
BK7 330nmで80%, 28nmで5% 33/28と表記
_◇屈折率
プリズム分光計による最少振れ角測定による
◆凸レンズ
_◇焦点
凸レンズの軸に平行に入射した光は焦点に集まる。
レンズの中心から焦点までの距離が焦点距離
_◇凸レンズの作る像
※実像(じつぞう)
スクリーンに映る像。凸レンズの場合は物体と上下左右が逆になった倒立の像。
※虚像(きょぞう)
レンズを通して物体側に直接見える像。凸レンズの場合は物体より大きく、正立の像。
⇒焦点より内側に物体をおく
※1点からでる代表的な光線の道すじを作図すると、その交点が像の位置となる
①レンズの軸に平行に進む光線は反対側の焦点をとおる
②レンズの中心に入る光は直進
③物体側の焦点を通る光はレンズの軸に平行
※物体を焦点の外側におくと実像を結ぶ
焦点距離の2倍位置で同じ大きさの実像が反対側の位置にできる
レンズから離れれば実像は小さくなり、像の位置はレンズに近づく
※物体を焦点の内側におくと、物体より大きい虚像が見える。
※焦点上におくと像を結ばない。
_◇レンズの公式
レンズから物体までの距離 a
像までの距離 b
焦点までの距離 f
結像倍率 m
※焦点と像点がレンズより物体側にあることを負の数値であらわす
⇒凹レンズの場合は焦点距離を-fとすればよい
1/f = 1/b + 1/a
m = – b/a
※aが2fのときbも2fとなり、物体と像の大きさは等しくなる
⇒等倍結像
※物側焦点距離をf、像側焦点距離を f’とすると
fは負、aは負なので
-(1/a)+(1/b)=-(1/f)
-(1/a)+(1/b)=(1/f’)
_◇コリメーター
レンズの公式でa=fとおくとbは∞となる
⇒像は無限遠にできる=光は平行
焦点に光源をおいて平行光線を投影
※平行光線を投影している状態=コリメーション
_◇凸レンズのベンディング
※レンズの焦点距離を変えずに面の形状を変える操作をベンディングという
凸メニスカス
平凸
両凸
◆凹レンズ
光を発散させず、単体では実像を作ることはない。
単体での使用⇒近視用のメガネ
※色消しレンズ、収差補正の不可欠
_◇凹レンズの作る像
単体では実像を結像しない。
常に正立虚像で、物体と同じ側
レンズから物体までの距離 a
像までの距離 b
焦点までの距離 f
結像倍率 m
※焦点と像点がレンズより物体側にあることを負の数値であらわす
1/f = 1/b + 1/a
m = – b/a
※凹レンズをとおる光線の道筋
①軸に平行な光線は凹レンズを通った後、入射側にある軸上の焦点から出たように発散する
②レンズの後方の焦点に向かう光線は軸に平行
③レンズの中心を通る光線は直進
_◇凹レンズのベンディング
※レンズの焦点距離を変えずに面の形状を変える操作をベンディングという
凹メニスカス
両凹
平凹
※メニスカスレンズ⇒メガネのレンズ
2面の曲率の方向が同じレンズをメニスカスレンズという
◆回折限界
完璧な形状のレンズを用いても、光を真に1点に集めることはできない
※焦点は有限の大きさを持つ
→これは光が波動であるため
※焦点の大きさΔ
光の波長λとレンズの大きさD 焦点距離fにより
Δ=2.4λf/D
※波長が短いほど焦点は小さく絞れる
※波長程度以下にはできない
※焦点は奥行き方向にも広がるが、同じように波長が短いほうが広がりが小さくなる。短波長の方が長さ方向の分解能も向上する。
◆魚眼レンズ
フィッシュアイレンズ
等距離射影(画面中心からの距離と角度が比例)
撮像面の対角線の画角を180°程度以上にしたもの
◆フレネルレンズ
球の表面だけを切り取って並べたもの
焦点距離を短く、しかし、レンズの肉厚を薄くするためのもの
もともとは灯台用
◆円柱レンズ
かまぼこ型
平行光を線状に集光
◆トロイダルレンズ
直交する方向の曲面の曲率が異なる
⇒トーリックレンズ
⇒乱視矯正
⇒非常に大きな非点収差⇒逆につかえば非点収差補正
◆円錐レンズ
アキシコン
レーザ、暗視野照明などの強度分布の整形用
◆回折型レンズ
屈折を使わず、回折により光をまげる
⇒ゾーンプレート
※屈折と回折の分散の符号は逆
⇒打ち消し合うように設計
⇒色消しレンズとなる
⇒ハイブリッド型色消しレンズ
☆屈折
◆屈折率
物質中の光速度をあらわすパラメータ
※真空中の光速度を1としたときの物質中の光速度の逆数
n = c / v
※屈折率は誘電率と透磁率によりきまる
※屈折率
空気 1.000
水 1.333
石英ガラス 1.459
ダイヤモンド 2.420
ゲルマニウム 4.092
_◇分散
屈折率が同じ物質でも波長によりわずかにことなること
_◇透過率
入射光の強度に対する透過光の強度
_◇スネルの法則
屈折率n1の入射側、入射角θ1
屈折率n2の透過側、屈折角θ2
n1*sinθ1=n2*sinθ2
※光の伝搬速度vと波長λの関係
v1 v2
--=--
λ1 λ2
と屈折面での等位相面が連続であることからスネルの法則が導かれる
※屈折率の高い物質から低い物質に光が入射すると、屈折角は入射角よりも大きい
_◇光学ガラス
屈折率 1.4~2.0
アッベ数 20~100
蛍石 1.4339 95.40
石英ガラス 1.4589 67.84
クラウンガラス BK7 1.5168 64.17
フリントガラス F2 1.6200 36.37
重フリントガラス SF4 1.7552 27.58
※クラウンガラス
通常のソーダガラスの改良
※フリントガラス
クリスタルガラス(鉛ふくむ)
※石英ガラス
⇒水晶
_◇光学プラスチック
※アクリル(PMMA)
※ポリカーボネート
_◇GRINレンズ
分布屈折率レンズ
イオン交換により、レンズの内部の屈折率が部分的に異なる
※アキシアルGRIN
円柱の中心軸の屈折率が高い
⇒セルフォックレンズ(商標)
⇒アキシアルGRINレンズのアレイ⇒広い範囲を等倍結像
⇒1ピッチで正立、1/2ピッチで倒立、1/4ピッチでコリメーターとなる
※スフェリカルGRIN
平板マイクロレンズ
⇒PML(Planar Microlens)
◆プリズム
※プリズムの頂角
α
入射する第1面と出射する第2面のなす角
※プリズムの振れ角
δ
入射する光線と出射する光線のなす角
δ=θ1’+θ2′-α
θ1′ 入射屈折角
θ2′ 出射屈折角
◆複屈折
※天然では方解石などでおこる
※偏光の状態により、屈折率が異なり2つの光線に分けられる。
⇒通常光線、異常光線。
☆反射
◆再帰性反射素材
◆反射の法則
※物体の表面に垂直な法線
入射角:入射光線と法線のなす角を入射角
反射光線は、法線に対して入射光線と対称な方向に反射する
入射角=反射角
_◇正反射と乱反射
正反射:反射の法則にしたがって反射。完全に正反射する物体では光は一方向のみに反射する。物体の色は識別できない。
乱反射:物体表面の細かな凹凸により反射光が拡散してみえる。微小な各部では反射の法則に従う。
_◇反射率
入射光の強度に対する反射光の強度
※反射率は偏光や角度により異なる
※内部反射もある
※反射率や透過率は、内部反射の影響も含めたトータルの値
☆光学系
※光学設計は光線追跡により実現される
◆実像をつくる光学系と虚像をつくる光学系
_◇実像をつくる光学系
結像させる。
①カメラ
像を記録する
写真レンズ→撮像面
ファインダの場合(一眼レフ)
写真レンズ→ミラー→レンズ→ペンタプリズム→レンズ→目
②プロジェクタ
スクリーンに投影
ランプ→集光レンズ→ダイクロイックミラー+ミラーでRGB系統
液晶パネルRGB→ダイクロイックプリズム→投影レンズ→スクリーン
_◇虚像をつくる光学系
目には平行光に近い光が入ればよい。眼球の光学系により網膜上に結像する。
①望遠鏡
対物レンズ+接眼レンズから構成される
遠方の物体像の像倍率を高くする必要⇒焦点距離長い
大口径(明るい)
接眼レンズの焦点距離により像倍率を可変
※ガリレオ式
対物:凸
接眼:凹
接眼レンズで直接虚像をつくる。視野が狭く、像倍率の変更不可。しかし、正立像が得られる。
※ケプラー式
対物:凸
接眼:凹
対物レンズで実像をつくり、接眼レンズでその虚像をつくる。視野が広く、接眼レンズの焦点距離を変えることで像倍率を可変。しかし、倒立像となる。
⇒ポロプリズム、ダハプリズムにより正立像にできる。
②顕微鏡
対物レンズ+接眼レンズから構成される
近くの試料までの像倍率を高く⇒レンズから物体までの距離を短く
⇒口径は小さく
対物レンズの焦点距離を変えることで像倍率を可変
※写真をとる場合は、望遠鏡も顕微鏡も実像をつくる光学系として働く
◆望遠鏡系とテレセントリック系
_◇望遠鏡系
平行光が入射、平行光が出射
⇒焦平面が無限大にある
※ビームエキスパンダ
レーザー光のビーム径を変換する光学系
※望遠鏡系もテレセントリック系の一つ
※平行光を入射させた場合は結像しないが、そうでない場合は結像する
_◇テレセントリック系
瞳(開口絞り)が焦平面にある光学系
⇒主光線が光軸と平行
※像側にテレセントリック
入射瞳が物体側焦平面、射出瞳が無限遠
※物体側にテレセントリック
入射瞳が無限遠、射出瞳が像側焦平面
※両側にテレセントリック
入射瞳が無限遠、射出瞳が無限遠
⇒望遠鏡系
⇒ステッパ
◆アフォーカル系、有限系、無限系
※アフォーカル系
結像しない
焦点距離無限大
望遠鏡
※無限系
レンズから無限の距離に像を結ぶ(結像しない)光学系
※有限系
レンズから有限の距離に像を結ぶ光学系
◆イメージング光学系とコンデンサー光学系
_◇イメージング光学系
物体の像を光を感知する検出体に転送する
アプリケーションが対象物から得ようとする情報が得られるだけの画質でないとならない
※画質の評価
解像力
像コントラスト
パースペクティブエラー
ディストーション(歪曲収差)Distortion
被写界深度
_◇コンデンサー光学系
光をエネルギーとして扱って、集光、発散、コリメート、スポット径の調整を行う
※性能評価
スループット(透過光エネルギー効率)
視野効率
スポットサイズ
角度分解能
◆光学系のデザイン
_◇光線行列
近軸光線の光線追跡
rin:入射光の軸からの距離
r’in:入射光の傾き
rout:出射光の軸からの距離
r’out:出射光の傾き
(rout) = ( 1 0 )(rin)
(r’out) (-1/f 1 )(r’in)
※空間を自由に伝搬する移行過程は
(rout) = ( 1 d )(rin)
(r’out) ( 0 1 )(r’in)
d:距離
_◇単位共役比デザイン
Finite Conjugate Design
有限距離にある物体からの光を光学系を通して別のある一点に集光する
※イメージング用途の大抵のカメラレンズ
※もっともシンプル=凸レンズ1枚
_◇アフォーカル系デザイン
Afocal Design
平行光(コリメート光)を所定の倍率の光学系により異なるサイズの平行光として出射
※望遠鏡
※ビームエキスパンダー
※もっともシンプル=凸レンズ2枚(倒立)
凸レンズ1枚+凹レンズ1枚(正立)
_◇無限共役比デザイン
Infinite Conjugate Design
無限遠にある物体からの光を一点に集光する、あるいは1点の光源を平行光に変換する
※オートコリメーター
※レーザーフォーカシングレンズ
※もっともシンプル=凸レンズ1枚
_◇近軸理論
Paraxial Theory
レンズの光学収差、厚さ、曲率半径、材質、分散の影響を考えず、レンズ位置と直径、焦点距離から、共役点の距離、物高、像高、倍率のおおよその値を幾何学的に決める
◆TIPS
_◇迷光
光学系の有効径の外に入射する光。レンズのコバ面に墨塗り等をして防ぐ
_◇反射防止膜
Anti-Reflection Coating
不要な戻り反射を低減し、透過率を改善する
※フレネル反射
周囲の媒質の屈折率と基板の屈折率で決まる
◆レンズ
_◇アクロマティックレンズ
光学特性の異なる2枚のレンズを樹脂接合して張り合わせ、色収差を補正したもの
※タブレットレンズ
※球面収差、コマ収差も改善する
※クラウンガラス:低屈折率、低分散
※フリントガラス:高屈折率、高分散
_◇トリプレットレンズ
レンズ3枚構成
_◇フレネルレンズ
薄く平らなアクリル樹脂に、階段状かつ同心円状に鋸波型の溝を密に施したもの。全体として1枚の大きなレンズと同じように働く
※溝のピッチが少ない方が画像の品質は良い
※ピッチが多いと集光効率が良くなる
※同じ大きさなら薄くできるので、透過効率が高い
※溝のある面を共役点の長い方に向ける
_◇レンチキュラーレンズ
平凸シリンドリカルレンズをアレイ状に配列した、一軸方向の高効率光拡散用レンズ
※立体視
◆光ファイバ
◆マクスウエル光学系
どこでも焦点を一致させる光学系。焦点深度を深くする
◆ホログラフィ
振幅だけでなく位相情報も記録し、立体像の記録、再生を可能としたもの
☆電気光学、磁気光学
◆カー効果
Kerr effect
※同じ名を「ケル効果」としている文献もある。
_◇電気光学カー効果
Electro-optical Kerr effect
狭義のカー効果
※ある物質に電場が印加されたとき、その物質の屈折率が電場の強さの2乗に比例した複屈折を生じる現象
⇒機械式シャッターでは不可能な高速スイッチングを行うことができる。
※ニトロベンゼンのような等方性物質を強い電場の中におくと、一時的に異方性をおび複屈折を起こす
※光カー効果
カー効果を引き起こす電場が光電場のとき、とくに光カー効果という。
_◇磁気光学カー効果
◆ファラデー効果
※磁気旋光
磁場に平行な直線偏光を物質に透過させると偏光面が回転する現象。

□音響、音声

☆音の性質
◆減衰
①拡散減衰
遠くに行くほど単位面積あたりの音のエネルギーが小さくなることによる減衰
②吸収減衰
媒質そのものによって音のエネルギーが吸収される。一般に周波数が高いほど大きくなる。
◆散乱
波長と同程度かそれよりも大きな障害物により散乱される。
◆抵抗
波長以下の大きさの障害物の場合、粘性が高いほどエネルギー損失が大きい。
◆反射
入射した音のうち、反射されない現象が吸音。壁により吸収され熱エネルギーとなったり、壁を通過してしまう部分。入射エネルギーと反射エネルギーの比を反射率と言う。
◆音響インピーダンス
√媒質密度*弾性率
または
媒質密度*音速
音響インピーダンスの差が大きい媒質ほど反射率は高くなる。音響インピーダンスをそろえると音波のエネルギーは透過する。
◆音圧レベル
ある音の音圧の実効値をP [Pa]とし、基準となる音圧の実効値P0 [Pa]とすると、音圧レベルL P[dB]は次式で表される。ここで、基準音圧は正常聴覚者の1kHzの純音に対する最小可聴値に相当する。
Lp=10 log10 (P^2/P0^2) dB
P0=20mPa=2e-5 N/m^2
20uPa 基準音圧
◆オクターブ
※オクターブ
ある周波数に対して周波数の比率が2倍になる音程
※オクターブバンド
ある周波数を中心として上限と下限の周波数の比率がちょうど1オクターブになる周波数の幅(帯域幅)
※中心の周波数をオクターブバンドの中心周波数という。
中心周波数foのオクターブバンドはfo/√2の下限周波数からfo・√2の上限周波数までの帯域と定められる。その他にもオクターブバンドを分割した、1/2オクターブバンド、1/3オクターブバンドなどがありそれぞれ帯域幅が定められている。
◆ノイズ
_◇ホワイトノイズ
単位周波数帯域(1Hz)に含まれる成分の強さが周波数に無関係に一定の雑音
※周波数を横軸にエネルギーを縦軸にとると
フラットなグラフ
※オクターブバンドパスフィルターで測定した場合
オクターブバンドの中心周波数が高くなるにつれて右上がりの特性になる。
_◇ピンクノイズ
ホワイトノイズに-3dB/oct の低域通過フィルタを通す
※周波数を横軸にエネルギーを縦軸にとると
高い周波数帯域に行くにつれて右下がりのグラフ
※オクターブバンドパスフィルターで測定した場合
どのオクターブでみてもエネルギーが均一でフラット(平坦)な特性になる。どのオクターブの帯域でみても音の大きさが同じ音であるため音響調整や測定ではピンクノイズがよく使用される。
_◇バブルノイズ
背景の人々の声など。
☆音声
◆音声の生成機構と音素
①音源:声帯の振動(周期信号)、声道の狭めに伴う乱流(雑音信号)、声道の閉鎖開放に伴う破裂(インパルス信号)。
②音響的なフィルタ:ハイカラ、声帯、あご、舌、唇等の調音帰還の位置や動き
※音声は、音声言語の最小単位である音素に区分して表記することが可能だが、音声波形を音素に対応する区間に分割できるわけではない。
_◇モデリング
3種の入力信号を調音フィルタに入力した際の出力信号としてモデリングできるが、離散的には調音フィルタは、その伝達関数がIIRフィルタの中でもフィードバックループのみで構成される全極形のフィルタとして
             b0
H(z)=-------------------
     1-a1Z^-1-...-apZ^-p
により与えられる、とするのが音声認識分野における妥当な仮定として受け入れられている。
※全極形フィルタは、特性を可変に実現しようとする場合に優位性がある。
_◇音声認識
音声信号から調音フィルタの振幅伝達特性|H(z)|を抽出し、音素の標準的な音響特徴と比較照合する。
◆ホルマント周波数 (Formant Frequency)
発音するときは、喉頭と気管の境にある声帯(二枚の粘膜)が原音をつくる
声を出すとき、声帯は緊張し閉じた状態となり、呼吸流により断続的な振動を起こす
⇒声帯原音
男声100-150Hz
女声250-300Hz
※これをピッチ周波数と呼ぶ
※声帯で生じた音(喉頭原音)
声道および口は発声する母音に応じて形を変え、共鳴の特性を変化させる。
⇒共鳴周波数をホルマント周波数と呼ぶ
低い周波数から順に第一、第二、第三…ホルマントと名付けられ、第一および第二ホルマントの周波数の組み合わせで、どの母音かが決まる
※ホルマント周波数=声道の共振周波数
第1ホルマント周波数、第2ホルマント周波数をF1、F2のように略して記述する。
※第三ホルマント(F3)の周波数が高く変動も大きいとよく通る
⇒三〇〇〇~四五〇〇ヘルツ域は、人間の耳にもっとも働きかけやすい
※ホルマント周波数は、口の開きの度合いや、舌の狭めの位置等により変化する
例)/a/広母音、/u/狭母音、/i/前舌母音、 /u/後舌母音⇒F1を口の開きの度合い、F2を舌の狭めの位置に、近似的に対応させることができる。
※成人男性アナウンサー10名が発声した日本語5母音のホルマント周波数の平均値
F1=794Hz, F2=1296Hz
母音/a/
母音 第1ホルマント周波数
F1 第2ホルマント周波数
F2 第3ホルマント周波数
F3
/a/ 780Hz 1200Hz 2520Hz
/i/ 310Hz 2300Hz 3080Hz
/u/ 330Hz 1120Hz 2350Hz
/e/ 470Hz 2040Hz 2550Hz
/o/ 420Hz 710Hz 2530Hz
◆ケプストラム
cepstrum
※スペクトラム(spectrum)からのアナグラムによる導出語。
※考え方
音声の場合、調音フィルタの振幅伝達特性と、音源信号のパワースペクトルを比較すると、フィルタの振幅伝達特性は、周波数に対して滑らかに変化するのに対して、音源信号はより微細な構造を持ち、周波数に対して細かく変動する。ここで、音声信号のスペクトル(振幅の)は、音源信号とフィルタの特性を掛けあわせたものとして与えられるが、、対数をとることで、両者の和として考えることができる。そこで、周波数を時間に見立てて、2つのスペクトルを時間信号に置き換えてしまうと、音源信号は高い「周波数」にエネルギーが集中し、フィルタの特性は低い「周波数」に集中することになるので、低次項で打ち切ることでフィルタの特性を抽出することができる。
※ケプストラムとは、フーリエ変換によって求められたパワースペクトルの対数値をさらにフーリエ変換(逆フーリエ変換となる)したもの。(元に戻した形になるので)ケプストラムの横軸は、ケフレンシーと呼ばれる時間の次元の値をとる。
※ケプストラム分析を行なうことで、スペクトル包絡とスペクトルの微細構造を近似的に分離することが可能。つまり、声道の共振特性と、声帯での音源の特徴を分離することが可能。
※周波数に対応する変数をケフレンシ(quefrency = frequencyからのアナグラムによる導出語)と呼ぶ。ケフレンシの単位は秒。 高時間部に現れるピーク位置のケフレンシはピッチ長を表すので、F0を導出することも可能である(スペクトル法に分類)。
※ある系に入力される信号が周期性を持ち、その周期が長いとき、その周期が長ケフレンシー部の線ケプストラムになって現れ、基本周期として抽出することができる。また、短ケフレンシー部には、系の伝達特性を表す情報が集中し、この部分を逆フーリエ変換することにより、パワースペクトルのエンベロープ(包絡線)が求まる。(リフタードエンベロープ)このエンベロープは系特有のもので、入力信号のスペクトルには依存しない。
※応用として、音声波、生体波などからの基本周波数およびスペクトルエンベロープの抽出などがある。
◆音声基本周波数F0とピッチ
_◇音声基本周波数F0
 F0とは、いわゆる「声の高さ」を数値化したもの。単位は Hz。老若男女でダイナミックレンジが大幅に異なるが、おおよそ 50~500Hzの範囲で変動する。声帯振動による。音韻的情報とは独立して変化するとされているが、口腔の形状変化が声帯の変形に影響を与えることから、これらが全く独立しているわけではない。アクセント、イントネーションを生成するのに不可欠である。
F0値の抽出は、波形法、相関法、スペクトル法などの算出方法に分類される。狭帯域スペクトル分析により表出するのはスペクトル法による。
※ピッチとは、
(1) いわゆる「声の高さ」。ただし、ケプストラム分析などによって解析的に求められるF0とは違って、知覚される声の高さを指す。
(2) 有声音声での音声波形の1周期分 (ネジの「ピッチ」に相当)。1ピッチの長さ (単位:秒) の逆数がF0となる
_◇ピッチ周波数
ピッチとは声の高さの事で、声帯の振動周期で決まり声帯の振動周期が短いと声の高さは高くなり、振動周期が長いと声の高さは低くなる。 語頭や語尾において声帯振動が完全な周期性を持たないことなどから、ピッチ抽出は難しく、今なお決定的な方法は確立されていない。これまでの代表的なピッチ抽出法は、「波形処理、相関処理、スペクトル処理」に大別される。
例)自己相関法
音声のディジタル信号処理において最も広く用いられている抽出法である。なぜなら相関処理は波形の位相歪に強く、またハード化においても比較的簡単な構造で表現できるからである。
◆モーラ
モーラとは、仮名文字単位に相当し、音節とはやや異なっている。モーラ情報には、モーラ数、モーラ位置があり、モーラ数とは、モーラの数(単語に含まれる母音とnの個数)、モーラ位置とは、単語中のモーラの位置を表す。 例を表1、2に示す。表1は、音素記号列が「akai」の場合で、音素記号列に含まれる母音とnの数は3つなので、モーラ数は3、モーラ位置は、「a」は1、「ka」は2、「i」は3となる。また、表2の音素記号列が「kimari」である場合は、モーラ数3、モーラ位置は、「ki」は1、「ma」は2、「ri」は3となる。
※音声=音韻+韻律+声質
音韻とは,母音や子音であり,言葉を伝えるために必要な情報である.母子音がはっきりと聞き取れる音声は明瞭性が高い音声と呼ばれる.
韻律は,声の高さの上げ下げによるアクセントやイントネーション(抑揚)と,音韻の長さによるテンポとがある.
声質とは,男性・女性の声の差,個人がもつ声の特徴などである.
◆A特性(周波数補正特性)
人間の聴感特性は、低音域で感度が低下するA特性に近いために、この特性に従って騒音計などの周波数特性を補正することが必要
※超音波
JIS用語辞典(電気編)に定義
「正常な聴力を持つ人に聴感を生じさせないほど周波数(振動数)が高い音波(振動波)」
※境界周波数については、弾力的
通常、人間の耳で聴くことのできる音は20Hz~20kHz位
これより高い周波数の音波を超音波と呼ぶが、工学的には聴くことを目的としない音波という定義も一般的
☆信号処理など
◆サンプリング周波数
 サンプリング周波数(サンプリングレート、サンプルレート)とは、音声など信号を時間的に量子化する際に、1秒間にどれだけの頻度でデータを取得するかを表す値である。
単位は Hz。
音声などでは通常,8kHz~48kHzでサンプリングが行われる。
◆グラニュラ雑音
ADPCM音声では、サンプリング周波数の1/2のグラニュラ雑音が発生
することがあります。もとのPCM音声にきわめて小さいレベルでかつ低周波の
正弦波を重畳した上でADPCMに変換すると、このグラニュラ雑音を軽減でき
る場合があります。
granular noise
granular distortion
※Dither/ディサ法
(Dither:震える、おののく の意味)
アナログ信号のデジタル化において、アナログ信号のレベルが
小さくなった時、量子化雑音が一様な分布でなくなり、入力信号
の高調波成分が目立つようになり、グラニュラ(Granular)雑音
が発生する。この量子化雑音を白色化するための方法。
 グラニュラ雑音と白色雑音を比べると人間の耳には、白色雑音
の方が聞き易く聴感上改善される。
 ディサ法は、信号レベルが小さくなった時、前もってディサと
呼ばれる小振幅の白色雑音を入力信号に重畳して量子化する。
こうすることで、量子化した信号のスペクトルには、広帯域の
ノイズはあっても、高調波成分が表われないことを利用する。
◆μ-law(mu-Law)
音声信号符号化技術の一つである。
ITU-T勧告でG.711として標準化されている。
音声信号では,その分布はほぼ指数分布で与えられることが知られている。従って、音声信号を線形 (リニア) な尺度ではなくその対数値を扱うことにより、効率的に信号情報を表現できるようになる。
定義は以下の通り:
   v = sign(x) * V * log(1 + |x| * μ / V) / log(1 + μ)
   v: 量子化された値
   x: 入力信号の振幅
   μ: 圧縮比.大きいほど圧縮率が高い.
   V: 通信路の許容最大信号振幅
◆隠れマルコフモデル(HMM
Hidden Markov Model
時系列の確率モデルである。複数の定常信号源の間を遷移することで、非定常な時系列信号をモデル化する。
①信号の生成に対して定常と見なされる状態をHMMの状態と呼ぶ。
例)
S0:操作が開始されていない状態
S1:Rの出力確率0.7, Wの出力確率0.3の状態
S2:Rの出力確率0.2, Wの出力確率0.8の状態
S3:操作が終了している状態
②状態ごとに定められた信号が出力される確率は、出力確率と呼ばれる。上の例では、
例)
P(R|S1)=0.7, P(W|S1)=0.3
P(R|S2)=0.2, P(W|S2)=0.8
※状態S0,S3では出力はない。
③状態間の遷移も確率事象であり、状態S1からS2への遷移をP(S1S2)のように表記する。状態間の遷移に関する確率を遷移確率と呼ぶ。例の場合では、
例)
P(SiSj)=4行4列の行列で表現できる。
※遷移確率は遷移元の状態によって異なってよい。
例の場合、出力RとWの任意の並びが生成され得る上に、同一の並びが複数の異なる状態遷移から得られることになる。
⇒信号を観測しただけでは状態遷移の系列を決定できない。
_◇HMM(隠れマルコフモデル)は、モデルの出力シンボルが与えられても、状態遷移系列が唯一つに定まらないモデルの事である。よって、観測できるのはシンボル系列であることだけから隠れマルコフモデルと呼ばれている。HMMには、ある状態から全ての状態に遷移できる全遷移型(Ergodic)モデルや、 状態遷移が一定方向に進む left to right モデルなどがある。
_◇簡単なHMM(left to right モデル)
HMMとはある入力事象Xが、あるマルコフモデルMで起きうる確率を受理確率として表現できるモデルの事である。
HMMは幾つかの遷移状態をもつオートマトンであって、各状態に移る遷移確率と、その遷移時に入力事象が発生する出力確率をもつ。このモデルに入力事象が入力されると、入力事象ごとに状態がさまざまに変化する。最終の事象のときに最終状態となる遷移過程で得られる確率の合計を受理確率と呼ぶ。
認識動作ごとにマルコフモデルを作成し、各マルコフモデルの遷移確率と出力確率を認識すべき事象が入力された時に、最も受理確率が高くなる様に設定する。これにより、ある入力事象が与えられた時、各モデルの受理確率の違いから、入力事象の識別が可能となる。学習過程を通して統計的にパターンを処理でき、データゆらぎに強いが、使用前に予め遷移確率や出力確率を「学習」という形で決定する必要があり、大量のサンプルデータが必要となる。
参考1)マルコフモデル
マルコフモデルとは, 現在の状態が過去のある時点までの状態に依存する確率構造をとるモデルである.
参考2)DPマッチング法(他のパターンマッチ手法)
動的計画法(Dynamic programing)に基づいて各パターン間の距離を定義し、辞書中のパターンと入力パターンの間の距離を計算して最も距離の小さいものを選ぶ方法
_◇HMMの3つの基本問題
モデルλ = (状態遷移確率行列 A, 観測シンボル確率分布 B, 初期状態分布π)、
観測系列Y = (y1y2:::yT )
問題1 モデルλに対する観測系列Yの確率P(Y|λ)の計算
モデルλが観測系列Yに対してどの程度適応しているか
ex. Forwardアルゴリズム
問題2 最適な状態系列q = (q1q2…qT )の発見
観測系列Yがどの状態系列qから生成されたと考えられるか
ex. Viterbiアルゴリズム
問題3 P(Y|λ)を最大とするようなモデルパラメータλの調整
観測系列Yを生成するためのパラメータλの最適化
ex. EMアルゴリズム、Baum-Welchアルゴリズム
◆音声認識アルゴリズム
◆EM(Expectation-Maximization)アルゴリズム
◆Baum-Welchアルゴリズム
EMアルゴリズムをHMMのパラメータ推定に適用したもの
学習データの尤度を最大にするようにパラメータを学習する方法で、基本的にはgradient学習によってパラメータを収束させる方法。
Baum-Welch アルゴリズムは、HMMの初期モデルの再推定に使われる
◆MFCC(Mel. Frequency Cepstral Coefficients)
◆Viterbi アルゴリズム
Viterbi アルゴリズムは、モデルの最適な状態系列(最適経路)と、この経路上での確率を求めるアルゴリズム
※HMMの初期モデルの作成、音素境界位置の計算などに使われる。
観測系列を O=o1,o2,….oTとした時、時間tにおいて各状態がotを出力する確率δt(i)を求める。(1≦t≦T)(状態数をNとすると、1≦i≦N) 次に時刻t、状態iにおける生成確率を最大にする状態遷移確率λt(i)と最適パス St(i)をδt(i)から求める。このときt=T、i=Nの時の状態遷移確率λT(N)、最適パスST(N)が、最適な状態遷移系列とこの経路上での確率となる。
◆音声合成
音声合成には分析合成と規則合成とがある.
分析合成とは,人間の発声した音声を分析し,情報圧縮して蓄えておき,これを再び音声信号へ逆変換する技術である.
規則合成とは,人間の発話をモデル化し,人間が音声を操るように任意の音声を創造する技術である.
◆コーパスベース音声合成
 コーパスベース方式の音声合成では、音声収録した人間の声を音声データベース化し、これを元に音声合成処理を行う。 収録した音声をほぼそのまま使うため、肉声に近い、自然な合成音声を実現できる。
(1)言語解析辞書によるテキストの解析
   読み上げる単語ごとに品詞分解を行い、読み・アクセントの付与を行う。
(2)読みから特定される音韻系列に従って、音声データベースから適切な音声素片を探索し、接続する。
◆連結的合成(concatenative synthesis)
単位選択合成(Unit selection synthesis)は、大きな音声のデータベース(通常一時間以上の録音された音声から成る)を使用する。データベースを作成するにあたっては、録音音声を音、音節、形態素、単語、成句、文節といった単位に分割する。音声をそのような単位に分割するには、そのために調整された音声認識システムを使用し、あとで波形や声紋を見ながら人間の手で調整をする必要がある。それらにデータベースとして検索できるようにインデックスをつける。インデックスとしては音としてのパラメータ、例えばピッチ、持続時間、音節内の位置、隣接する音などを使う。実行時に最も適した音の組み合わせをデータベースから探し出して合成する。この工程は特別な重み付けをした決定木を使ってなされる。これにより録音された音声をデジタル信号処理をほとんど使うことなく極めて自然に合成することが可能となる。デジタル信号処理を施すと音声が不自然となるが、いくつかのシステムでは連結部分にデジタル信号処理を施して波形をスムーズにつなぐようにしている。実際、音の選択が最適化されているシステムの音声は人間の音声と区別がつかない。特にフロントエンドもよく調整されているとその傾向が強い。しかし、自然に聞こえる音声を合成しようとするとデータベースが膨大となる。いくつかのシステムではギガバイト単位の録音音声(数十時間ぶん)をデータベース化している。
◆Diphone合成(Diphone synthesis)
音声データベースにターゲットとする言語のDiphone(音と音のつながり部分)を全て持っていて、それを使用して合成する。Diphoneの個数はその言語の音素配列論で決まっている。スペイン語なら800、ドイツ語なら2500のDiphoneを持つ。Diphone合成では、各Diphoneの音声がひとつだけデータベースに格納されている。実行時にはDiphoneを並べたものに線形予測分析法(PSOLA、MBROLAなど)のようなデジタル信号処理技法を施して韻律を作る。できあがった音声は単位選択合成に比較すると品質が劣るがフォルマント合成よりは自然である。Diphone合成は結合部の欠陥が聞き取れ、フォルマント合成のようなロボット的な発生になってしまう。そのため商用では徐々に利用が減っているが、フリーソフトウェアとして実装されたものがあるため研究用としては使われ続けている。
◆分野限定合成(Domain-specific synthesis)
録音された単語や文節を連結して音声を合成する。これは特定分野のテキスト読み上げに使われる。例えば乗り換え案内の放送や天気予報などである。これは実装が簡単なので商用にも長年使われてきた。例えば、しゃべる時計や電卓などである。この方式は分野を限定しているので自然に聞こえる音声を合成するのが簡単である。しかし、汎用ではないので、利用は限定される。
◆音声認識ソフトウエア、DB
◆HTK: Hidden Markov Model Toolkit
オリジンはケンブリッジ大。米Entropicがマーケティング権を持つソフトだったが、MSがEntropicを買収、但し、コミュニティへの供給を継続する。ケンブリッジ大が無償公開。
◆ATRデータベース
ATRのデータベースには、Aset、Bset、Csetなどがあり、今回実験にはAsetを使用した。 ATRのAsetデータベースは単語発話データベースで、発話単語5240単語を収録している。このデータベースは、波形データとハンドラベリングによって求められた音素境界位置を示すラベルデータからなる。今回実験に使用したのは、Asetデータベースの男性話者MMYと男性話者MAUを使用し、本論文では話者A、話者Bと表現している。
_◇ASR技術のポイント
1-1 不特定話者/特定話者
Speaker-independent ○
Speaker-dependent △
1-2 話者適応
Speaker adaptation △
1-3 発話様式
  連続発話/離散単語/キーワードスポッティング
Continuous speech ○?
Isolated word ○
Keyword spotting  ×->△
1-4 言語
2 Required HW spec.
3 Performance
3-1 認識率 Recognize rate
3-2 対雑音性 Against Noise
3-3 処理速度 Response time
4 Evaluation Kit
5 ASR on the product
6 Mic, amp
7 Japanese
8 Details of ASR spec
8-1 HMM
  Continuous Mixture HMM
  Discrete4 HMM (VQ-HMM)
  Other
8-2 Phoneme model
  Context-dependent Phoneme Model
  monophone/diphone/triphone
トライフォン:前後の音素環境を考慮する。
モノフォン:前後の音素環境を考慮しない。
8-3 特徴分析 Speech analysis
  LPC-Cepstrum
  MFCC
  other
8-4 Database for training
8-5 HMM学習ツール
  HTK
8-6  対雑音処理
  SS(spectrum subtruction)
雑音のスペクトルを非音声区間の複数のフレームのパターンを平均してもとめ、音声区間の各フレームのスペクトルから差し引くことでスペクトルの雑音成分を除去する。
  CMN(Cepstrum Mean normalization)
話者、空間、収録危機等を一括して正規化する方法。発話単位でケプストラム平均値を算出する。
  Weiner filtering
8-7  連続音声の場合の文法
 HTK format
8-8 ASR engine
MFCC with integrated VAD and Weiner filtering + continuous HMM back end.  Language model uses Viterbi.
8-9 特徴
8-10 ESTI DSR
☆音響学会Q&A
※Q: 声の判別
男性の声,女性の声,子供の声は,聞けば区別がつくのですが,具体的にはどこが異なっているのでしょうか?
A:年齢,性別によって発声器官の形状が異なります。例えば一般に,声道の長さは成人男性,女性を比べると女性の方が約20%ほど短く,成人と子供(10歳)を比べると子供の方が約24%ほど短いとされています。硬口蓋の長さは成人と子供(10歳)を比べると子供の方が約10%ほど短いとされています。また,声を発するための声道の形の調整のしかた(調音)も,成人と子供では多少異なるとされています。例えば,“あ””という母音に関しては,一般に成人は咽頭部のほぼ中央を狭めて発声しますが,子供は少し口腔よりを狭めます。
このような発声器官,調音の違いによって,音声波形のスペクトルの形状,声の高さや大きさが異なってきます。スペクトルの形状は声帯から口唇までの形状と調音によって,声の高さは声帯の形状によって決まってきます。スペクトルの形状,声の高さ,大きさをそれぞれ特徴づける物理的特徴量としては,ホルマント(音声波形のスペクトルの中で,特にエネルギーが集中している周波数成分。ホルマントは声道の共振によるもので,普通,有声音,特に母音には4個程度見られ,低い方から順に第1ホルマント,第2ホルマント,?と呼ぶ。),基本周波数(声帯の振動周期の逆数),音声波の音圧レベルがあります。
男性,女性,子供の声の物理的特徴量の違いについては,特に1960~70年代に盛んに検討されました([粕谷 他,“年齢,性別による日本語5母音のピッチ周波数とホルマント周波数の変化,””音響学会誌24,6(1968)],[佐藤,“男女声の性質情報を決める要素,””通研実報24,5(1975)],[古井,ディジタル音声処理(第2章)(東海大学出版会)]など)。それらの検討では上記の基本周波数,ホルマント,音圧レベルの物理的特徴量に注目し,分析的に調べています。以下,年齢,性別による,この三つの物理的特徴量の違いについて紹介します。
まず基本周波数に関しては,成人の男女性については,基本周波数の分布は対数周波数軸上で正規分布となり,男性の基本周波数の平均値と標準偏差はそれぞれ125Hz及び20.5Hz,女性ではそれぞれ男性の約2倍に等しいことが分かっています。また,12歳以下(変声期前)の子供については,男女性の差はほとんどないことが分かっています。基本周波数は声帯長と関係があり,成人男性と子供の識別には有効ですが,成人女性と子供の識別は難しく,それだけで年齢を知ることはできないとされています。
話は少し横道に逸れますが,音声認識の分野では一般に,女性や子供の声の認識は難しいとされています。その原因の1つは,基本周波数が高いことにあります。最近の音声認識では,スペクトルの概形を表す音響パラメータ(ケプストラムなど)がよく用いられます。基本周波数が高いと,その音響パラメータによるスペクトルには調波構造が現れてしまい,スペクトルの概形をうまく表すことができないために認識率が低下します。
次にホルマントに関しては,全体的な傾向としてはホルマント周波数は声道の長さに比例して低くなるとされています。しかし,成人の男女性が発声した5母音を詳しく分析したところ,男性のホルマント周波数に対する女性のホルマント周波数の増加率が,母音の種類ごとに,かつホルマント周波数ごとに異なることが分かっています。また,日本語に関しては,高次のホルマント(特に第3ホルマント)は,母音の種類によって変動することが少なく,声道の長さに対応して,男女性別の識別に有効な特徴であるとされています。
最後に音声波の音圧レベルに関しては,成人の男女性が十数分間に渡って発声した音声波について,その音圧レベルの累積分布を調べたところ,男性,女性ともにほぼ正規分布となり,標準偏差はともに約3.8dBですが,男性の方が女性よりも平均で約4.5dB高いことが分かっています。
執筆者:松井 知子(NTT)
….※Q: 規則合成音声評価実験
※Q: 規則合成音声評価実験
 最近,PCソフトやカーナビなどで,規則合成音声を聞くことが多くなってきていますが,この規則合成音声の評価実験で注意すべき点はどんなことでしょうか?
A:合成音声は大きく録音再生によるものと規則音声合成によるものとに分けられます。また,アプリケーションによっては,これらを組み合わせたものも存在します。従って,はじめに,評価対象の合成音声が規則音声合成方式によるものであることの確認が必要となります。録音再生による音声合成では,物理的な歪尺度で評価できますが,規則合成音声の場合,このような歪で評価することはできず,人間が聞いて評価する主観評価が用いられます。そのため,目的にあった評価方法を選択する必要がありましたが,今まで日本では規則音声合成のための標準的な評価方法が確立されておらず,評価する人が,評価方法から考える必要がありました。2000年3月に(社)日本電子工業振興協会(JEIDA)で「JEIDA-G-24-2000音声合成システム性能評価方法のガイドライン」が制定されましたので,評価方法についてはこのガイドラインを参考にすることができ,評価実験での注意点も述べられています。主観評価を用いるため,合成音声を聴取する評定者については,なるべく人数を多くし,年齢・性別の偏りがないことが望ましいです。また,合成音声の聴取に対する学習効果が大きいため,受聴経験には注意が必要です。了解性の評価では無意味な音節などの単位の試験音声を対象とした明瞭度,有意味な単語や文を単位とした場合の了解度に区別されます。試験する単位によって,音節明瞭度,単語了解度,文章了解度などに分けられます。また,自然性,個々の了解性ではなく音質を総合的に評価すること,利用目的に適合しているかどうかの評価が考えられます。いろいろな方法があるため,何を評価したいのかの目的に応じて,評価方法を選択する必要があり,注意を要する点です。
赤羽 誠(ソニー)
….※Q: 音声認識しくみ
※Q: 音声認識しくみ
Q: 最近,音声入力のできるワープロが市販されておりますが,方言があっても大丈夫なのでしょうか。単語を識別する仕組みと併せて簡単に教えて下さい。
A:代表的な音声認識処理の大まかな流れを図-1に示します。図中の式で示すように、すべての単語の組み合わせについて、ある単語の組み合わせが起こる確率(言語尤度)と、その単語の組み合わせのもと観測された特徴ベクトルが得られるであろう確率(音響尤度)を求め、その積が最大となるような単語の組み合わせを認識結果とします。音声認識の探索処理はこのようにトップダウン的に行われており。一つ一つのベクトルに対して、どのような音素になるか決定して、次にその音素の組み合わせから単語を決定して…というふうにボトムアップに積み上げていくのではないことに注意して下さい。さて、このような処理の中で、方言(ここでは、アクセント、音韻、語彙の違いに注目します)が音声認識にどのように影響するかを音響分析や探索の具体的な方法と併せて見ていきたいと思います。まず、音声認識が人の声のどんな特徴を取り出して認識を行っているかを見てみます。入力された音声は、10ミリ秒程度ごとに20ミリ程度の窓で細切れにした後、短時間フーリエ変換やLPC分析により、対数パワースペクトル列に変換されます。この対数パワースペクトルの形状が音声の特徴を表しています。そこで、形状を比較するために更に直交変換をして12次元程度のケプストラムにします(スペクトルの時間的な変化も重要な情報であることが分かっていますのでケプストラムの変化量も特徴ベクトルに加えます)。さて、実はこの段階で声帯の振動数に由来する声の高低の情報、すなわち日本語のアクセントやイントネーションといった情報は除去されています。ですから、方言のうちアクセント違いで、認識ができなくなるということは原理的には生じないわけです。次に音韻の変形として現れる方言について考えるため、音響モデルに着目します。探索部では音声の統計的な性質を表現する音響モデルに着目します。(ほとんどの音声認識がHMM:Hidden Markov Modelを使っています)を用い特徴ベクトル列との音響的な照合を行います。この音響モデルは、一般に音素(例えば「か」は/K/及び/a/という音素から構成されます)を単位として作成されます(実際には前後の音素にも影響を受けるため前後の音素環境ごとにモデルを作成します)。例えば/a/というモデルはいろいろな人の発声の/a/の部分に対応するベクトル列から、それをうまく表現するような確率分布を学習することで作成されるわけです。そのため認識性能は学習データの量やバラエティに依存すると考えられます。もちろん市販されている音声認識のモデルは大量のデータで学習されており、誰の声でも認識できるように作成されています。とはいえ、「い」を/i/と/e/の間くらいの音として発音される方言等、利用している人の音声が学習に用いたデータの分布からはずれていると認識率が低下する場合があります(このような場合は音声ワープロの追加学習機能を使って、ある程度自分の声に適応させることが可能です)。一方、「い」と「ゐ」を使い分けている人がいたとしても、学習時には一つのモデルとして学習されているため識別はできません。次に、方言の語彙について考えるために言語モデルに着目します。言語モデルには単語と音素列の対応を表す辞書、単語と単語のつながりを表す確率付きの文法というものが書かれています。ここで注意すべき点は、探索部は言語モデルからの情報で順次単語との音響的な照合を行っていくため、辞書にない単語は認識され得ないということです。最近の音声ワープロは4万語以上の単語が登録されていますが、その地方独特の単語等は語彙にないため、やはり登録が必要なようです。また、「敷く」を「ひく」と発音してしまう場合等、音韻として明らかな入れ替えが起こっている場合も辞書に登録した方が良いでしょう。なお、bit誌1998年7月号に最近市場に広く出回っている音声ワープロソフトの開発者の方々による、同ソフトの分かり易い解説記事がありますので参考にしていただければと思います。
黒岩眞吾(KDD研究所)
※Q: スピーカ,ヘッドフォンの特性
Q: スピーカの特性は一般に大型のものほど低域がのびているようですが、スピーカと比べて遙かに小さいヘッドホンの特性が低域までのびているのはなぜでしょうか。
A:スピーカでもヘッドホンでも、振動板が空気を動かす(押しのけ、引き込む)ことで音を出しています。同じ大きさ(音圧)の音を出すために動かす空気の体積は周波数の2乗に反比例します。例えば100 Hzの音と同じ大きさの20 Hz(100 Hzの1/5)の音を出すには25倍(5の2乗)の容積の空気を動かさなければなりません。動かす空気の体積は振動板の面積と振幅の掛け算で与えられますので、大きな振動板の方が小さな振幅で同じ体積の空気を動かすことができて有利です。したがって、一般に低い音を放射するスピーカには大型の振動板が使われます。
しかし、スピーカから放射される音の大きさは原理的にスピーカからの距離におおむね反比例しますので、小さな振動板からの音でも近くで聞けば大きく聞こえます。例えば、同じスピーカから出される音でも、5mの遠方での大きさに比べ、50cm(5mの1/10)での大きさは約10倍になります。ヘッドホンは耳のすぐそば、数mm~1cm位の距離で動作しますので、小さな振動板でも出てくる音は大きく聞こえることになります。
一方、スピーカやヘッドホンで出せる最も低い周波数は、大きさとは無関係に振動板の最低共振周波数で決まります。共振周波数は振動板を支えているばねのスチフネス(剛さ)と振動板の質量の比の平方根に比例します。多くのオーディオシステム用スピーカは丈夫な紙の振動板を用いており、その最低共振周波数は40~80 Hz位で、実際にはこれより少し低い周波数が出しうる限界となります。これに比べ、多くのヘッドホンの振動板はプラスチック成型品で、軽いわりにスチフネスを小さくしにくく、最低共振周波数が高めになります。このため、ヘッドホンのドライバユニットの最低共振周波数は100~200 Hz位が一般的ですが、振動板と耳との間を自由空間にしないで部屋でつなぐと(例えばヘッドホンを耳に接触させると)低い音が大きくなる効果を利用できます。クッションの寸法や軟らかさを調節してこの効果を積極的に利用している製品も見られます。
このように、ヘッドホンは耳との結合の仕方で特性が大幅に変わるので、スピーカに比べいろいろ工夫をこらして設計する余地が大きく、極めて多様な構成のものが商品になっています。
(大賀俊郎:芝浦工大・工)
※Q:mel尺度とBark尺度とERB尺度
Q: mel尺度とBark尺度とERB尺度とはどのようなもので聴覚の周波数軸としてはどれを使えばよいのでしょうか?
A:まずmel尺度ですが,これは人間の音の高さの知覚特性から得られた尺度です。1,000Hz,40dB SPLの純音を基準の音(1,000mel)として,これより2倍の高さあるいは1/2の高さに知覚される音をマグニチュード測定法などで測定し,それぞれ2,000mel,500melと決めました。メル尺度と周波数の関係でよく用いられる式はmel=(1000/log2)log(f/1000+1)です。式を見ても分かるように,対数の関係となっています。これに対して,Bark尺度とERB尺度はどちらもFletcherが提唱した聴覚フィルタの概念から得られた尺度です。Fletcherの言う聴覚フィルタとは,中心周波数が連続的に変化する帯域フィルタで,(1)信号音に一番近い中心周波数を持つ帯域フィルタが信号音の周波数分析を行い,(2)信号音のマスキングに影響を及ぼす雑音成分はこの帯域フィルタ内の周波数成分に限られるようなフィルタです。Fletherはこの帯域フィルタのバンド幅を臨界帯域(CB)と名付けています。Zwickerは様々な方法で聴覚フィルタの中心周波数とバンド幅の関係を測定し,1961年に,聴覚フィルタの中心周波数とその周波数における臨界帯域の関数を表の形で発表しました。zwickerはこの中で臨界帯域は中心周波数の関数となっており,中心周波数が低い場合には臨界帯域は狭く中心周波数が高い場合には広くなっていること,また,中心周波数が500Hz以下では臨界帯域はほぼ一定の100Hzであることを示しました。実際に聴覚フィルタを模擬するフィルタを設計する場合には,中心周波数と臨界帯域の関係が数式で表わされている方が都合が良く,1980年にZwickerとTerhardtが与えた中心周波数と臨界帯域の関係式が多く用いられています。また,周波数軸はしばしば臨界帯域を幅1とする周波数軸に変換されて表示されます。ZwickerとTerhardtは同じ論文で,周波数軸からBark軸への変換式を次のように与えました。Bark=13arctan(0.76f)+3.5arctan((f/7.5)2)これがBark尺度です。一方,ERB尺度も,Fletherが提唱した聴覚フィルタに基づいて はいますが,Patterson,MooreらがZwickerとは異なる方法で測定した聴覚フィルタのパラメータを用いた尺度です。Bekesyによれば,基底膜上の最大振幅の位置と周波数はほぼ対数の関係であり,周波数が高くなるほど周波数間隔は密になります。Greenwoodは,Bekesyが求めた周波数と基底膜上の最大振幅の位置との関係を考慮して,臨界帯域幅は基底膜上で等間隔であるという仮説を立て,MaskedAudiogramを使って臨界帯域を測定した結果からこの仮説を実証しました。仮に,Greenwoodの結果が正しいとすれば,Bekesyの結果と同様に,臨界帯域は周波数が低いときには小さく,周波数が高くなるにしたがって指数関数的に大きくならなければなりません。これは,Zwickerの測定結果から得られる,臨界帯域幅は500Hz以下でほぼ一定であるという結果と異なります。また,Pattersonによれば,聴覚フィルタの特性を測定する場合には,Off-Frequency Listeningにより,特に中心周波数が低い場合に帯域幅が大きく測定されてしまうからです。Zwicherの示したデータの500Hz以下の部分にはOff-Frequency Listeningなどで生じた測定誤差が潜んでいる可能性も否定できません。そこでPattersonらは,ノッチトノイズを用いた新たな臨界帯域測定法を考案し,OFF-Frequency Listeningの影響を考慮しながら聴覚フィルタの周波数特性を測定しました。そして,高さと面積が同じ長方形で聴覚フィルタを近似し,長方形の幅(Equivalent Rectangular Bandwidth:ERB)を古典的な臨界帯域に代わる値としました。また,Mooreは,ERBを幅1として,物理的な周波数との関係を発表しました。ERBS=21.4log(4.37f/1000+1)これがERB尺度です。式を見ても分かるように,ERB尺度もmel尺度と同様に対等の関係となっています。応用としては,メル尺度は,周波数軸をメル尺度で変形した対数スペクトラムから得られるケプストラム(メルケプストラム)が容易に計算できるので,ケプストラムと組合せて音声認識用の特徴量として多く用いられています。Bark尺度は,様々な音知覚現象の説明に用いられている臨界帯域の概念と関係が深いため,音知覚過程の記述に多く用いられています。そして,ERB尺度は基底膜上の最大振動位置との対応関係が良いので,末梢系での処理の記述などに多く用いられています。しかし,それぞれの尺度は何を表現しているかが異なるため,なにを使うかはその応用先をしっかり検討して選んで下さい。詳しくは,赤木:“聴覚フィルタとそのモデル”電子情報通信学会誌77
(9)948ー956を見て下さい。
執筆者:赤木正人(北陸先端大)
☆音ルミネッセンス

□結晶、固体

面心立方格子
最密6方格子
体心立方格子
◆フックの法則
_◇ヤング率
縦弾性係数 E
弾性範囲で単位ひずみあたり、どれだけ応力が必要か
⇒縦軸に応力、横軸にひずみをとった応力ひずみ曲線の直線部の傾きに相当する
※フックの法則で定義される
ε=σ/E
E=σ/ε
σ:応力
ε:ひずみ
※原子間の凝集力が弾性的性質を決める
⇒変形の機構が同じであれば、融点と弾性係数にはある程度の相関がある。
※ヤング率は100%ひずみの応力の値であるが、実際の歪は1%もないので、引張り強さの数百倍となる
※弾性的性質は温度によって変化する
_◇剛性率
G
せん断力による変形のしやすさを決める物性値
せん断弾性係数、ずれ弾性率、横弾性係数
G=(F/A)/(⊿x/l)=(F*l)/(A*⊿x)
F/A:せん断応力
F:せん断力
A:部材の断面積
⊿x/l:せん断歪=tanθ
⊿x:せん断変形量
l:部材の長さ
※等方性材料では
G = E / {2*(1+γ)}
E:ヤング率
γ:ポアソン比
※鉄鋼の剛性率
78-84GPa
_◇ポアソン比
弾性限界内での横ひずみ(荷重垂直方向)と縦ひずみ(荷重方向)の比
ポアソン比=-横ひずみ/縦ひずみ
※無次元数を無次元数で割っているので無次元数
※体積が変化しなければ、断面積は長手方向の2乗で変化する⇒ポアソン比 0.5
※形状が保たれるなら-1
※実際の物質で負の値を示すものは極めて稀
◆基本的な結晶形
_◇結晶形
原子が一種類しかない:A型
2種類:B型
以下、C,D
型の中で単純なものから複雑なものへ番号を打つ
※繰り返しの最小単位をセルで示す
A1 fcc
A2 bcc
A3 hcp
A4 Diamond
B1 NaCl
B2 CsCl
B3 ZnS
B4 ZnO, ウルツァイト
_◇結合力の方向性
イオン結晶=静電気=方向性なし
共有結合=sp2,sp3など方向性あり
◆クラスター
準結晶
◆液晶
※基材の多くは棒状の有機化合物
ベンゼン環2個の上下や中間に他がついている
パラ化合物
※低温で固体
※T1以上で液晶
※T2以上で単なる液体
_◇液晶相
①ネマティック相
長軸のみがそろっている
※変形としてコレステリック相がある
一つの面内に分子がならび、その面がらせん状となるもの
(面内でそろった長軸方向が、面間に一定の角度をもって重なる)
②スメクティック相
長軸がそろっているだけでなく、分子が二次元的に並んだもの
◆不完全結晶
完全な結晶はまずあり得ない
※シリコン純結晶でも、表面はsp3構造をとれないので、7*7構造等の独特な配列や、他の原子を取り込んだりする
※化学的不純物の混入
置換型
格子間への入り込み
※点欠陥(格子点の欠落)
※結晶転位(ディスロケーション)
結晶面のズレ、傾き、双晶
◆アモルファス
整然とした結晶にならずに、原子や分子がランダムな配列で固体を作ったもの
例)ゴム状硫黄、ガラス
※ゆっくり冷却すれば結晶になるが、急冷すると整然とした配列をする時間がない
⇒結晶の方向性がない
◆金属ガラス
※ガラス
固化温度(融点)がはっきりしない
構成原子のサイズが不揃い
価数の異なる原子の共存
※金属ガラス
金属原子でも、サイズの異なるFe, Si, B, Nb等を適当な比率で冷却すると、ゆっくり冷却してもアモルファスとなる
⇒急冷してできるアモルファスより安定で、環境変化に強い
◆結晶構造の解析方法
①電子顕微鏡
②回折
③走査型トンネル顕微鏡
の3方法がある
_◇電子顕微鏡
加速した波長の短い電子を使う
※電子を物質深くに打ち込むのは難しい
_◇回折法
X線、もしくは中性子線の回折像から構造を推定する
※アモルファスなど周期性のない構造には適用できない
_◇共鳴散乱
ある特定の波長付近で反射(散乱)の強さが大きくなる現象
⇒結晶格子のピッチと波長が近づくと相互作用が大きくなり共鳴状態を起こす
_◇ラマン効果
入射波に対する反射波が結晶格子等にエネルギーを一部とられる⇒エネルギーの一部が他の励起にとられ、反射波のエネルギーが減少(波長が長く)する
⇒非弾性散乱
<>弾性散乱
_◇放射光
電子が円運動をすると、接線方向に光子を放出する
⇒Spring-8
_◇走査法
各種の走査型装置をまとめてSPMと称する
(走査型プローブ顕微鏡)
※STM
探針先端と試料表面の原子間のトンネル電流を検出する
※AFM
探針はテコの先についており、探針先端が試料原子に近づくと原子間力(引力、斥力)が働く。このテコの動きを光学的に検出する
⇒探針により試料原子を移動させることも可能
※SNOM
走査型近接場光顕微鏡
◆半導体
_◇バンド構造
半導体のバンド構造は絶縁体と同様であるが、禁止帯(バンドギャップ)の幅が狭い
イオン結晶5eV程度
Si1.2eV
Ge0.7eV
Pbs0.3eV
⇒温度をあげれば熱励起で価電子帯の若干の電子が伝導帯にあがることができる
※半導体と絶縁体をわけるバンドギャップの基準はない。
※電気抵抗で、半導体は10^5Ωから10^-5Ω程度
_◇PbS
方鉛鉱
天然の半導体。金属の針を立てるだけで整流作用がある
_◇ドナー、アクセプタ
ドナーが提供するsp3ボンドからはみ出した電子は、水素原子の1s電子のように回るが、その軌道は複数のSi原子が入るようなサイズとなる。
⇒誘電率が大きいと水素型の電子軌道の半径が大きくなる
※1eVのギャップエネルギーは約1万度の温度に対応
⇒室温でこれに対応する電子励起はすくない
※不純物準位のエネルギーは100度程度
⇒室温で容易にホールや電子を供給する
_◇エキシトン
励起子
半導体中に現れる電子とホールが水素原子のように結合した状態
_◇有効質量
固体内を運動する電子、ホールは、真空中で定義された質量ではなく、物質で定められた独自の質量を持つ。
⇒重くなることも軽くなることもある
※半導体では有効質量が本来の質量の100分の1程度にまで下がる。方向性もある
※希土類、ウラン化合物では有効質量が100倍、1000倍となる。
_◇半導体の種類
①Ⅳ族半導体
単一元素半導体 C, Si, Ge
②ⅢⅤ族半導体
化合物半導体(等比)
InSb, GaAs
③ⅡⅥ族半導体
化合物半導体(等比)
ZnSe, CdTe
_◇エピタキシー
Aの結晶上に、B物質を成長させると、基板の構造に引きづられてAの結晶構造をとる
※モレキュラービーム・エピタキシー
MBE
気化させた分子や原子をビーム化し、そのビームを制御して基板物質上に必要な枚数の原子や分子を重ねる
◆フォトニック結晶
誘電率の異なる物質を、光の波長程度の周期で繰り返す人工格子を作る
⇒光が人工格子内で周期的ポテンシャルによりバンド構造をとる⇒存在できる光とそうでない光が現れる
◆鉄の変態
アルファ鉄
体心立方格子
※771度(キューリー点)以下で強い磁性を示す。
※フェライト組織
※炭素は最大0.02%までしかとけない(純鉄)
※炭素濃度が増えると、炭素はセメンタイト(Fe3C)という化合物になって鉄(アルファ鉄)との混合物になる
※マルテンサイト
急速冷却(焼きいれ)により炭素原子の移動の時間なく、結晶格子の隙間に潜り込んだもの。結晶内にひずみがかかり難くなる。もろくなるので、焼き戻し(マルテンサイトを一部とく
ガンマ鉄(911℃以上)
面心立方格子
※オーステナイト組織(炭素濃度2.14%までであれば)高温でオーステナイト1相にすることができる。
デルタ鉄
体心立方格子
融鉄
_◇製鉄法
①直接製鉄
鉄鉱石を固体状態で還元して鉄(錬鉄)を作る。炭素量0.1%以下。約700度以上で一酸化炭素を使って可能。内部にガング(鉄以外の鉱物)が残るので、叩いて搾り出す工程が必要。(欧州近世まで)
②間接製鉄法
炭素の溶解により融点を下げながら炭素濃度の高い銑鉄を作り、これを脱炭して鋼にする。(高炉転炉法もこれ。中国では紀元前から)
③たたら製鉄
条件により錬鉄から銑鉄まで作れる上、玉鋼も直接作れる。(①、②のいずれにもはっきり分類できない。)
※ローマ帝国が成立して以降の歴史には、鉄の記述がほとんどなくなる。(中略)鉄の供給が安定するとほとんど記述されなくなることは、他の地域の歴史においても同様である。
‐‐‐矢田浩
◆熱電変換
※機械的に動く仕組みを用いずに熱を電力に変える方法
⇒温度差が本質
※ゼーベック効果<>逆現象としての発熱(ペルチェ効果)
_◇熱電素子
単一の熱電変換材料の両端から電流を取り出すのは難しいため、2種の熱電変換材料を対にして電流を取り出す。(熱電対と同じ構造)通常は直列につないで電力を確保する
N型温めた側が電池のプラス極になる
P型電池のマイナス極になる
┌─────────┐
│高温部      │
└┬───────┬┘
 └┬─┬─┬─┬┘
  │N│ │P│
  │型│ │型│
  │材│ │材│
  │料│ │料│
+ ├─┤ ├─┤-
──┤ │ │ ├──
┌─┴─┴─┴─┴─┐
│低温部      │
└─────────┘
※効率5~7%だが、耐久性高い。(ボイジャーの熱電発電機は30年以上も活動を続けている)
効率は低いが、500℃くらいの温度差をつければタバコの箱程度の大きさで60W程度の出力が得られる
※電圧
温度差に比例した電圧がでる。1℃あたり400μV。500℃の温度差でも0.2V程度
※性能指数
Z =S^2/ρ*κ
Z 性能指数
S 熱起電力
ρ 低効率
κ 熱伝導率
Zは温度の逆数になるので、Tをかけると無次元量となる。ZTを無次元性能指数という。現実のZTは1前後。
実用化されているもの
1e-3~3e-3 K^-1
効率は500℃の温度差で10%
熱電発電効率ηは、TH、TL、ZTを用いて
η={(TH-TL)*(√(ZT+1)-1)}
/(TH*√(ZT+1)+TL)
※熱電変換の効率η
η=P/Q
P:電気出力
Q:入熱量
(Th-Tc)/Th … カルノー効率
η={(Th-Tc)/Th}*{√(1+(Z*(Th+Tc)/2)) – 1}/{√(1+(Z*(Th+Tc)/2))+(Tc/Th)}
※従来の発電デバイスのη~5%、ZT(無次元量)≦1
※熱電変換材料
ビスマス(Bi)、テルル(Te)化合物
鉛とテルル化合物
新材料(酸化物セラミックは熱電材料にならない常識をうちやぶる)ナトリウム・コバルト酸化物
NaxCoO2
きれいな結晶であるコバルト酸素ブロックとアモルファス固体のように乱れたナトリウムブロックが交互に積層している。
※2000年前後から高性能熱電材料が多数見つかった
コバルト系酸化物NaCo2O4などは日本発が多い
薄膜熱電物質(2次元超格子・量子ドット)。。。飛躍的に高いZT
※理論的にZTの上限に制限なし。
※熱電変換には、
S大。。。大きな熱起電力
ρ小。。。低い電気抵抗
κ小。。。低い熱伝導率(温度差をつけ、電子系に熱を運ばせる)
_◇電子の運ぶ熱流
q/T = S * j
q 電子の運ぶ熱流
T 絶対温度
S 熱起電力
j 電流
_◇ゼーベック効果
物質の両端に温度差をつけると温度差に比例した電圧が両端に発生する。発生した電圧を熱起電力という。(温度差により電子の分布に偏りが起こるための現象)
ゼーベック効果は1821年にゼーベック(Seebeck)が発見した効果。ゼーベック効果は、異種金属で閉回路を作るとき、 二つの接点の間に温度差があれば熱起電力が発生し、熱電流が流れるというもの。
ゼーベック効果によって生じられる起電力は、冷接点と温接点間の温度差にほぼ比例するので、起電力の単位[V](ボルト)にその熱電対固有の「温度-起電力」特性の係数処理をすれば、温度単位[℃]に変換できます。
例えば、表は銅-コンスタンタン熱電対の冷接点を0℃にしたときの、温接点の温度に対する熱起電力です。
例えば、0℃と100℃において、完全に特性が直線性を有しているならば、1mVが約23.37℃(100/4.279)に相当するので、mV電圧計の目盛りを23.37倍にして描けば、温度計の目盛り[℃]になります。熱起電力が2.5mVなら58.425℃(2.5×23.37)目盛りを示すことになります。
_◇ペルチェ効果
ゼーベック効果の逆の現象でペルチェ効果がある。2種類の異なった金属線、例えば銅とコンスタンタンを接続し、電流を銅からコンスタンタンの方向に流せばジュール熱以外の熱を発生し、 コンスタンタンから銅の方向へ電流を流せば吸熱する。この現象をペルチェ効果(Peltier effect)といい、熱電効果の大きいn形とP形の半導体を多数直列接続し、これに電流を流すことで電子冷却装置として利用されている。発熱はPn接合部、吸熱はnP接合部で行われる。
※熱電素子は電流の向きにより発熱、吸熱を切り替えられ、クーラのような圧縮機を必要としない
応用例)
半導体レーザーの発振波長が温度により変化するのを防ぐ素子(光ファイバの中継)
DNAの複製につかうPCR法用の素子
_◇ゼーベック効果による熱電変換
Thermoelectronic conversion
TEC
電子と正孔の熱拡散(ゼーベック効果)による
※カルノー効率が理論効率
1-(低温側温度K/高温側温度K)
※2014時点では、約1W/cm^2程度
※BiTe系
高温側300℃以下
※シリサイド系
500℃以下
※酸化物系
800℃以下
_◇アルカリ金属熱電変換
Na+の熱拡散を利用
※カルノー効率が理論効率
※2014時点では、約0.73W/cm^2程度
※β^n-アルミナ
高温側1300℃前後
_◇熱電子発電
熱電子放出と電極の仕事関数差
真空管の熱電子放出
※理論効率42%
※空間電荷問題があったが、解決された。
※酸化バリウム、タングステン
高温側2000℃
_◇光励起熱電子放出
光電効果と熱電子放出
※理論効率60%だが実績2.5%
※GaAs, GaNなど
※高温側1100℃~2500℃
◆ピエゾ抵抗効果
応力に比例して抵抗率が変化する。
※ピエゾ抵抗係数
結晶の種類、半導体に添加される不純物の種類およびその濃度、温度などの関数であり、一般に6x6のテンソル量で表されるが、結晶構造によっては独立な係数成分の数は少なくなる。
_◇圧電気(ピエゾ電気)
ある種の結晶に外力を加えると電圧が発生、逆に電圧を加えると変形する
電気石、水晶、ロッシェル塩
◆高温超伝導体
_◇層状銅酸化物(ビスマス系)
80Kで超伝導を示す。
室温での抵抗率は0.2mΩcm
一般の金属同様に温度が下がると抵抗が小さくなる。
_◇層状ニッケル酸化物、層状マンガン酸化物
室温での抵抗率は10mΩcm
半導体的に、温度が下がると、急速に抵抗率があがる。
◆太陽電池
_◇変換効率
10%前後
_◇太陽光のエネルギー密度
晴れた日で1㎡あたり約1kW
-> よって1㎡あたり100W程度
_◇電圧
1.1V
◆相転移
一つ一つでは何も変わったことがないのに、多数の物体を集めると初めて起きる現象
低温にするとさまざまな相転移が生じて電子配置の乱雑さが失われる。
◆蛍光物質
光があたると違う色の光(当てた光よりも波長が長い)を出す物質
◆燐光物質
光を当てるのをやめてもしばらく光を出し続ける物質
◆強誘電体
電気双極子が結晶中で同じ方向にならんだ配列を作るもの
_◇チタン酸バリウム
◆マイクロクラスター
※マジックナンバーがある
◆カーボン科学
_◇グラファイトのインターカレーション
グラファイトの層間に他の物質(インターカラント)を周期的に挟む
※リチウムを侵入分子とする2次電池
_◇フラーレン
※やはりマジックナンバーがある
C60, C70, C76, C78, C82, C84, C90, C96
※内部に各種の原子、イオンが入る
⇒性質が変わる
_◇カーボンナノチューブ
※単巻き SWNT
※多層 MWNT

□ナノテク

大きな材料からの小型化
オングストロームの世界からより大きな世界の解明
2つが出会うあたり=メゾスコピック
⇒サイズ的に「ナノ」だった
◆カンチレバー
アト・ニュートン(10^-18)級
◆量子ドット
ナノサイズの量子の入れ物
※バリスティック伝導
◆量子細線
※コンダクタンス量子化
◆単電子素子
※クーロンブロッケード
◆単分子素子

□放射性物質

◆放射線
_◇アルファ線
_◇ベータ線
_◇ガンマ線
_◇中性子線
◆シンチレーション
放射線が当たると発光する現象
◆ウラン
_◇電子状態
5d以下満杯
5f 3個
6s 満杯
6p 満杯
6d 1個
7s 2個
と一応記述できるが、外殻電子はきっちり当てはまらない
⇒6s, 6pの外側の6個が活性電子として自由に動く
5f, 6d, 7s軌道の組み合わせ
2価から6価まで全てのイオンが実現し、混合原子価として3.5などの半端な原子価も生ずる。磁性も環境により変わる。

□レーザー

◆原理
放射の誘導放出という現象を利用して光を増幅する装置
励起状態になる原子や分子は、低エネルギー状態に遷移する際、両準位のエネルギー差に等しいエネルギーの電磁波を放出するが、その際、外部から同じ振動数の電磁波を入射させると、それが引き金になって、足並みのそろった電磁波を放出する。
※普通の熱平衡状態にある物質
低エネルギー状態にある原子や分子の方が多いため、電磁波を照射しても吸収の方が強く、誘導放出は表に表れない
※ポンピング
低エネルギー状態にある原子や分子を急速に汲み上げ、高エネルギー状態のもののほうが多い反転分布を作る
→誘導放出が起こる
◆半導体レーザー
一方には伝導帯に電子がいる状態
一方には価電子帯にホールがいる状態を作る
全体に電圧をかけ、中間地点で電子とホールを再結合させるが、再結合エネルギーと同じエネルギーの光を入射するとエネルギーは光に移って増幅される
例)
GaAs 波長0.85um

□超伝導

◆現象
通常の金属では温度を下げていくと抵抗もさがるが、ある大きさの残留抵抗以下には下がらない
フォノンとの衝突による電気抵抗⇒温度で現象
不純物原子による散乱⇒残留抵抗
超伝導では、物質によって定まる臨界温度Tcにおいて突然電気抵抗がゼロとなる
※オームの法則、ジュールの法則当てはまらない
_◇Tc
水銀 約4K
_◇完全反磁性
内部に磁力線が入り込まない。
※マイスナー効果
磁力線が入り込もうとするとごく浅いところで円電流が流れ逆向きの磁場が発生して内部の磁場をゼロとする
※磁場が強くなりすぎると超伝導は一揆に崩れて常伝導となる
_◇第1種超伝導体
Hg, Pb, Sn, In
磁場が強くなりある一点Hcを越えると磁場の侵入が起こり常伝導となる
_◇第2種超伝導体
Nbあるいは化合物超伝導体
磁場がHc1を越えると系全体で1点常伝導の細い柱が生じ、磁場が増えると柱が増える、Hc2ですべての領域が常伝導となる
⇒量子化された渦電流
(渦の自己組織化)
◆BCS理論
vと-vで走る逆向きスピンの電子クーパー対がボース粒子となって、物質波の位相をそろえたボース・アインシュタイン凝縮相となることが超伝導の本質だとする。
※電子格子相互作用にやる
※クーパー対は定在波であり、平均速度は非常に遅い
_◇巨大量子化
超伝導を示す電子の物質波の位相は結合されているマクロな超伝導体全体におよぶ
◆ジョセフソン効果
クーパー対のトンネル効果
_◇ジョセフソン電流
物質波の位相が違う塊を接触させると、電圧がゼロでも位相差をなくすための電流が流れる
_◇ジョセフソンダイオード
両端に電圧をかけると電磁波の発信が起こる
◆超伝導エネルギーギャップ
フェルミ準位の上にエネルギーの禁止帯ができる
◆高温超伝導
_◇ランタン系化合物
30K近いTcを持つ
_◇YBaCuO系
液体窒素の沸点77K以上で超伝導となる
_◇フラーレン系
_◇MgB2

□極低温

◆極低温を作り出す方法
_◇断熱消磁
低温では常磁性体も磁場方向にスピンが向くので、熱の流入がないようにして磁場を切る。するとスピンはバラバラとなりエントロピーが増大(断熱)なので試料温度が下がる
◆超低温原子団
_◇光モラセス

□超高圧

◆バンド構造
原子:原子準位は狭い独立した線状
常圧固体:幅をもったバンドを構成する。許容帯と禁止帯
高圧下:格子間隔が狭くなるにつれ、バンドの幅は広がり、バンドが重なりあう⇒バンドに関わらず電子が動ける
⇒金属化

☆参考

◎ギリシャ文字
α  アルファ
β  ベータ
γ  ガンマ
δ  デルタ
ε  イプシロン
ζ  ゼータ
η  エータ
θ  シータ
ι  イオタ
κ  カッパ
λ  ラムダ
μ  ミュー
ν  ニュー
ξ  クサイ
ο  オミクロン
π  パイ
ρ  ロー
σ  シグマ
τ  タウ
υ  ユープシーロン
φ  ファイ
χ  カイ
ψ  プサイ
ω  オメガ
◎デシベル(decibel, DB)
ある基準値に対する比の常用対数の値を10倍した単位。ある基準値Aに対する値Bは、(電力の場合)
10 log (B/A) デシベル
ただし、電力は電圧または電流の2乗に比例するので(電圧または電流の場合)
20 log (B/A) デシベル
※電圧
0 dB…基準と同じ
1-10%程度…1%が0.1dB
3 db…√2(1.41)=出力電力半分
6 dB…2倍
10 dB…約3倍
20 dB…約10倍
※相対利得同士、相対利得と絶対利得の足し算引き算はOKだが、絶対利得同士の足し算引き算は誤り
※B(ベル)はSIに属さないが、SIと併用される単位
◆増幅器の利得の場合
入力xと出力yの比
G= 20 log (y/x)
◆音圧の場合
2 x 10^-5 Paを基準とする比をdBで表現する。
※dBSPL(Sound Pressure Level)
0dB=振幅圧力の実効値が20μP(20μPは人間に聞こえる最小の音圧とされている)の音とした音圧レベル単位。
※騒音環境基準:
幹線道路 昼70dB、夜65dB以下
※Pa = 1 N/m^2
◆音の強さの場合
単位断面積を単位時間に通過する音のエネルギーWm^-2。
I0=10^-12 Wm^-2を基準とする比をdBで表現する。
y = 10*log(10) (I/I0)=10*(log(10)I – log(10)I0)
※phon(フォン)は、同じデシベルでも周波数により人間の耳に感ずる音の大きさが異なるため、dBで表した1000Hzの音と同じ大きさに聞こえる音(周波数に関係なく)をphonとする。
◆dBV
0dB=1Vとした電圧表示。
◆dBm(電力値)
600Ωという条件で0dB=1mWとした電力表示単位及び電圧表示単位(電圧では0dB=0.775Vになるがこれは0dB=1mWと同じ)。電話など600Ω系で使われる。
◆dBW(電力値)
1Wを0dbWとする。
◆dBμ(電圧値)
1μVを0dbμとする。通信機など50Ω系の終端電圧は107dBμ=0dBmになる。
◆dBs
0dB=0.775Vとした電圧表示単位
◆dBμV/m
0dB=1μV/mとした電界強度の単位(1mの高さの標準アンテナが1マイクロボルトの電圧を検出する電波の強さを0dBとした電界強度単位)。
◆dBi, dBd
球形の放射パターンを持つアンテナの利得=0dBi(絶対利得)
基準を半波長標準ダイポールアンテナとした場合は0dBd(相対利得)
0 dBd = 2.14 dBi
◆dB/m
ケーブルなどの減衰量を表す。「0.033dB/m」と表示してあれば「1m当たりの減推量が0.033dB」の意味で、100mでは3.3dBの減衰。
※インピーダンス系
低周波600Ω
高周波50Ω
同じ0dBmでもその終端電圧は、
600Ω系 終端電圧V
V=√(1mW×600)=0.775[v]
50Ω系 終端電圧V
V=√(1mW×50)=0.224[v]
◆dBHL
0dB=0HL(ゼロ hearinng level)とした聴力レベル単位(0HL:正常聴力の成人がもっとも良い条件のもとで聞こえる最小音量の平均値、JIS T1201に規定されている)。オージオメーターによる測定に用いる。聴力レベルの0dBは音圧レベルの4dBに相当。
◎地磁気
◆偏角、伏角
①偏角
地磁気の水平分力の真の北からの振れ角。日本付近では5から10度ほど西を向く。
②伏角
地磁気の3次元的な方向と水平からの振れ角。日本付近では40から60度ほど下を向く。
◎モータ
◆直流モータ
◆交流発電機
◎誤差
①間違えによる誤差
②系統誤差(計測者、計測器)
③偶然誤差
精密さ、正確さ、感度
計測の測定値は、一般に誤差をもっているが、誤差の小さい測定は「正確さ」の良い測定である。また、測定値のばらつきの小さい測定は「精密さ」の良い測定であるといわれている。 正確さと精密さの両方を含めて、「精度」ということがある。正確さを表すにはいろいろな方法があり、誤差の絶対値で表す「絶対正確さ」や、 測定値に対する誤差の比率で表す「正確率」などがある。
「感度」は、測定量の変化に対する指示量の変化の割合である。したがって、感度は、精密さや正確さとは別なものであり、感度の良い測定を行っても、必ずしも正確さは良くならない。正確さを良くするには、 種々の誤差を減少させることが大切である。感度はまた、その測定器の検知し得る最小の量である。一般に、感度の良い測定器は、取扱いが面倒であり、振動等の外部の影響を受けやすいため、目的とする測定に適した感度の測定器を使用することが望ましい。
◆有効数字
測定値のばらつきは、多くの場合、正規分布をとる。測定結果の標準偏差σに対し、測定値は平均値mのまわりに
m-σ ~ m+σ68.3%
m-2σ ~ m+2σ95.4%
のようにばらつく。この物理量の測定結果を
m±σ
とあらわし、σを誤差という。
※誤差があるので、平均値mの桁数をむやみに多くしても意味がない。標準偏差の大きさ相当の桁までを意味のある数字として用いる。測定値は以下の形式で表現するので
a x 10^n
aの絶対値が1以上、10以下の数になるようにした有効数字で表す。
◎単位系
◆MKS単位系
力学にあらわれる物理量の単位は長さ、質量、時間の単位を決めれば3つから全て定まる
長さm
質量kg
時間s
◆MKSA単位系
MKS単位系に電流の単位[A]を加えた単位系
◆SI基本単位系(SI=国際単位系)
MKSA単位系に、[K][cd][mol]を基本単位として加えたもの
長さ メートル m
質量 キログラム kg
時間 秒 s
電流 アンペア A
熱力学温度 ケルビン K
物質量 モル mol
光度 カンデラ cd
※メートル
定義「1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである。」この定義により、光の速さは1秒間に299792458mとなる。
歴史的には、メートルの定義は、地球の子午線の1/4000万の長さ。人工物のメートル原器の長さはクリプトン86からの放射電磁波の波長による定義へと変更された。現在では上記の長さをメートルの定義として、「よう素安定化レーザ」を用いて測定される。
◆組み立て単位
基本単位から組みたてられる物理量の単位
_◇周波数 ヘルツ [Hz]
s^-1
_◇力 ニュートン [N]
m * kg * s^-2
_◇エネルギー、仕事 ジュール [J]
[J] = [N * m] = [C * V]
m^2 * kg * s^-2
_◇仕事率、電力、パワー ワット [W]
[W] = [J/s] = [A*V]
m^2 * kg * s^-3
_◇圧力、応力 パスカル [Pa]
[Pa] = [N/m^2]
m^-1 * kg * s^-2
_◇電気量、電荷 クーロン [C]
[C] = [A*s]
s*A
_◇電位、電圧 ボルト [V]
[V] = [J/C]
m^2 * kg * s^-3 * A^-1
_◇静電容量 ファラド [F]
[F] = [C/V]
m^-2 * kg^-1 * s^4 * A^2
_◇電気抵抗 オーム [Ω]
[Ω] = [V/A]
m^2 * kg * s^-3 * A^-2
_◇磁束 ウエーバ [Wb]
[Wb] = [T*m^2] = [V*s]
m^2 * kg * s^-2 * A^-1
_◇磁場(磁束密度) テスラ [T]
[T] = [Wb/m^2]
kg * s^-2 * A^-1
_◇インダクタンス ヘンリー [H]
[H] = [Wb/A] = [V * s /A]
m^2 * kg * s^-2 * A^-2
_◇放射能 ベクレル [Bq]
s^-1
_◇吸収線量 グレイ [Gy]
[Gy] = [J/kg]
m^2 * s^-2
_◇線量当量 シーベルト [Sv]
[Sv] = [J/kg]
m^2 * s^-2
◆cgs単位系
長さcm
質量g
時間s
◆有理系と非有理系
①有理系:クーロンの法則の係数に1/4πがあらわれる
マックスウエル方程式にはπが現れない
②非有理系:クーロンの法則の係数に1/4πがあらわれない
マックスウエル方程式にπが現れる
※静電単位系他
esu Electrostatic system of units
電気量にかかわるもの(ε0)をまず定義してからその他を決める
emu Electromagnetic system of units
磁気量にかかわるもの(μ0)をまず定義してからその他を決める
Gauss
両方(ε0、μ0)定義する
MKSA
電流を独立量に選んでε0、μ0を与える
※通常、esu, emu, Gauss系は非有理系、MKSA系は有理系で書かれる
※MKSA系では、電流量が独立であり
ε0=10^7/4πC^2 (Cは光速)
μ0=4π10^-7
よって、(ε0*μ0)^(-1/2)=Cとなる。
※E-H対応とE-B対応
①E-H対応:磁気量として磁荷を考え、磁荷に対するクーロンの法則を基本とする。
(電気と磁気を同じ形式で表現できるが、現実には磁荷は存在しない。)
②E-B対応:磁荷を考えず、力はアンペールの力を基本とし、磁束密度をビオ・サバールの法則で与える。
※表記法
①div E ∇・E
②rot B ∇×B (curl B)
②grad φ ∇φ
◆次元
1次元[L]
2次元[L^2]
3次元[L^3]
物理量Yの次元
[L^a M^b T^c]
L: Length
M: Mass
T: Time
①式A=Bの左辺と右辺の次元は常に同じでなければならない。
②次元が異なる2つの量を足し合わせることはできない。
③次元の異なる量の割り算は可能
※次元解析 方程式の具体的な内容に立ち入ることなく、両辺の次元計算のみによって方程式の真贋を論議する。
◎電磁波名称
VLF 3~30kHz
LF 30~300kHz
MF 300~3MHz
HF 3~30MHz
VHF 30~300MHz
UHF 300~3GHz
SHF 3~30GHz
EHF 30~300GHz
赤外線 波長1mm~780nm
可視光線 波長780~380nm
紫外線 波長380~10nm
X線 波長10~0.001nm
ガンマ線 波長0.1nm未満
◎Chaos(カオス)
あるシステムの、ある時点での状態(=初期値)が決まれば、その後の状態は原理的にすべて決定される、という決定論的法則に従っているにもかかわらず、非常に複雑で不規則かつ不安定な振る舞いをして遠い将来における状態の予測が不可能な現象。
例)y=ax(1-x)
aを4程度にとり、xに前ステップのyの値をとると、カオス的振る舞いを起こす。
http://www.sun-inet.or.jp/~khirai/index.html
◎半減期
◆炭素14(14C)
半減期5730年。炭素14は大気上層で宇宙線により窒素から絶えず作られているため、大気中での存在比がほぼ一定。2酸化炭素の循環により生物に取り込まれるが、生物の死とともに循環が絶たれ減少する。

◎参考文献

パリティ物理学コース 一般物理学 上
平成4/9/30 太田著、丸善
鉄理論=地球と生命の奇跡
2005/3/20 矢田浩 講談社
http://www.micronix-jp.com
http://asaseno.cool.ne.jp/tech/bunpu07.html
応用物理の最前線 早大理工学部応用物理学科 2004/7/20 講談社
よくわかる高校物理の基本と仕組み 北村 2004/9/7 秀和システム
http://www.ryoushi-rikigaku.com/
第3版 基礎物理学 原康夫 2006/10/30 学術図書
岩波講座 応用数学17 古典物理の数理 今井功 1994/10/28 岩波書店
高校数学でわかるシュレディンガー方程式 竹内淳 2005/03/20 講談社
光と物質のふしぎな理論 ファインマン 釜江、大貫訳 岩波書店 1987/6/23
基礎からの流体力学! 河村哲也 2006/3/30 山海堂
光速より速い光 ジョアオ・マゲイジョ 青木訳 日本放送出版協会
大人のための「数学・物理」再入門 吉田武 2004/1/25 幻冬舎
IT Text 音声認識システム 鹿野他 オーム社 2001/5/15
http://www.tdk.co.jp/techmag/ferrite/index.htm
テラヘルツ波技術開発のあらまし,寶迫巌,情報通信研究機構,RFワールド,2009/03/01,CQ出版
新しい物性物理 伊達宗行 2005/6/20 講談社
「ものをはかる」しくみ 関根、滝澤 新星出版社 2007/7/25
計測法通論 1974/6/15 眞島、磯部 東京大学出版会
センサ活用ハンドブック 2006/10/1 山本潔 CQ出版
センサ・シンポジウム2009「熱電変換技術の新たな展開」産業技術総合研究所 エネルギー技術研究部門 熱電変換グループ 研究グループ長小原春彦
http://konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/part1/index.html
EDN Japan 2009/9 歪ゲージの落とし穴
なんでも測定団が行く 2004/8/20 武蔵工業大学 講談社
日経エレクトロニクス 2003/11/10 P.117
EO Edmund optics japan 2009年度版マスターソースブック
EDN Japan no.109 2010.3 P.43-P.49「基礎から見直すコイル/トランス」 Sameer Kelkar, Power Integrations
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新しい物性物理 伊達宗行 講談社 2005/6/20
http://www.jst.go.jp/pr/info/info546/yougo.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%9B%E6%80%A7%E7%8E%87
液晶の歴史 2011/8/25 ダンマー、スラッキン 鳥山訳 朝日新聞出版
スッキリわかる!レンズの基本としくみ 2012/05/8 河合滋 ナツメ社
日経エレクトロニクス 2014/2/3