Design_ActiveDevice

◎能動素子

 

◆能動素子
3端子を持ち、第1の電極から第2の電極に向かってながれるエネルギーを第3の電極の働きで制御して、第1の電極から第2の電極に向かって流れるエネルギーに変化を与えることで信号エネルギーを発生する。(直流電流を入力に応じて交流信号に変換しているにすぎない)
3端子の能動素子は被制御電源と考えることができる

 

_◇真空管、FET
VI型の被制御電源として考える

 

_◇トランジスタ
II型の被制御電源として考える

 

◆増幅作用
入力電力と出力電力の比を1より大きくする作用。
※信号源のインピーダンス、負荷のインピーダンスに整合した能動素子の入力インピーダンス、出力インピーダンスを近似的に得られるようにすること。

 

◆ダイオード
Diode
アノードとカソードの2端子を持つ半導体部品
※アノード側の電圧がカソード側の電圧より高いときのみ電流が流れるのが第1義的な動作

 

_◇特性
ダイオードとは電流を片方向のみ流す半導体部品.アノード側からカソード側には電流が流れる.
  ┌─┬─┐
──┤P│N├──
  └─┴─┘
○アノード (Anode) 陽極
↓I
│──
▼ ↑V
┬ ↓
│──
○カソード (Cathode) 陰極
※I-V特性
   I↑ ┃
    │ ┃
    │ ┃
    │ ┃
─┳━━┿━┛─→V
 ┃  │ │
 ┃ →│ │←
 ┃  │シリコンダイオード
 ┃  │順方向電圧降下
 ┃  │0.6~0.7V
※順方向に電圧を掛けた場合、「順方向電圧がある電圧(スレッショルド電圧Vth)を超えたとき」電流が流れはじめる(空乏層が縮まってキャリアが飛び越えるように見える)
⇒順方向電圧(電位障壁、拡散電位)
⇒材料に固有のバンドギャップによりほぼ決まる
⇒ダイオード自体の抵抗成分によって降下する電圧は、シリコン・ダイオードの場合約0.6V。
⇒ゲルマニュームダイオードでは0~0.2Vで電流が流れる
⇒ショットキーバリアダイオードでは0.3V
⇒ダイオードを直列に使う場合は、この電圧降下も考慮する
※電流が流れ始めると、アノードとカソードの間の電圧はほとんど変化しなくなる(電流は電圧に対して指数関数的な特性を示す)
⇒高い電圧をかければ大電流が流れる
※順方向に流せる電流はダイオード毎に規定、整流用途の場合は、順方向許容電流が重要。
※ダイオードのリード線の片側に帯状の印が付いており、これはカソードを示す。
※順方向の特性。。。整流特性
順方向電圧-順方向電流
⇒注意点
①拡散電位より低い電圧を順方向に加えても順方向電流流れない
②順方向に流せる電流には限りがある
③電流は順方向電圧に比例するわけではない
※逆方向
低い逆方向電圧⇒リーク電流による微小な電流
⇒ある電圧(ブレークダウン電圧Vbd)を超えると急激に流れる

 

_◇分類
①汎用周波数帯(一般整流)数MHz以下
スイッチング
整流
一般整流
高速整流
ファストリカバリー
ツエナー(低電圧)
ショットキー
②高周波帯 携帯通信/TV
バンドスイッチ
PIN
検波用ショットキー
※一般整流用ダイオード(小信号用)
40V以下。電流は数100mA程度。
東芝1SS1588ディスコン
→ローム1SS133コンパチ
※整流用ダイオード(電源用)
ダイオードブリッジ。電源用なので100V以上の耐圧あり、電流容量もあり。入力に交流波形を入れると、半波整流される。これを低域フィルタにかけてDCとする。
※ショットキーバリアダイオード
ショットキーバリアダイオードは順方向電圧が小さい(0.2~0.3V<>一般0.6V程度)。逆回復時間も短く、高周波用途にも向く。
東芝1SS154
日立1SS108
※定電圧(ツエナ)ダイオード
Zener diode
逆方向でツエナ電圧になると逆方向の電流が流れる。定電圧の素子として働く。但し、電流は数十mA程度。ツエナ電圧は0.1V単位で細かくある。メーカにより40V程度のものまで。
※定電流ダイオード(CRD)
※可変容量ダイオード
※発光ダイオード
※PINダイオード
p-intrinsic-n Diode
流れる順電流で抵抗値が変化する。
数Ωから数百Ω程度
高周波信号用のスイッチやアッテネータなどに使われる。

 

_◇型番
日本では小信号用のダイオードは1Sから始まるルールがある。
1:ダイオード
S:Semiconductor
最近では各メーカ独自の型番も多い。海外ではもともとメーカ独自型番。

 

_◇仕様
※定格電圧、定格電流に注意
⇒ダイオードに流せる電流には制限がある
⇒流せる以上を流すと焼ききれる
⇒電流制限抵抗により電流を制限する
⇒ツエナーでも大きな電圧を加えるときは電流制限抵抗が必要
⇒小信号用
電圧耐圧100V程度
電流最大200mA程度
※絶対最大定格
逆電圧(VR) 逆方向に電圧をかけてダイオードが壊れるギリギリの電圧。
※電気的特性
順方向電圧(VF) 小さいほど直ぐに電流が流れ始めることになる
逆方向電流(IR) 逆電圧を掛けたときの漏れ電流。小さければ、小さいほど良い。
逆回復時間(Trr) ダイオードにかかる電圧が変化したとき、どの程度の時間で追従できるかを示したもの。
例)1SS133(ローム)
VR=80V
VF=1.2V (IF=100mA)
IR=0.5uA(VR=80V)
Trr=4nS
※ツェナ・ダイオード
ツェナ電圧(Vz)
⇒順方向には電流を流すことを想定していない
⇒定格順方向電流が小さい

 

_◇発熱、温度特性
ダイオードに電流が流れれば、発熱が起きる。
発熱の結果、仕様に定められた温度を超えると機能しなくなったり、破壊したりする
※大電流を流す整流用ダイオードでは注意。
※シリコンダイオードの順方向電圧
-2mV/℃
⇒低温になると、順方向電圧が少し高くなり、電流流れにくくなる。

 

_◇ツエナー
逆方向電圧を加えたときに起こるツエナー効果(5.6V以下ではアバランシェ降伏)により定電圧を発生するダイオード。
※基準電圧を必要とする回路に用いる
※普通、抵抗を直列につないで使う。
電圧変動する電源E,ツエナー電流Iz、とすると
E = R*Iz + Vz(ツエナー電圧:一定)
なお、E>Vzのこと
※微少な電力時の過電圧を「ツェナー電圧」でクランプできる。
※降伏電圧はドーピングによりかなり正確に調整できる。
※上記回路は「シャント・レギュレータ」と呼ばれる
※ツェナーダイオードによるリミット回路
正の入力電圧はツェナ電圧に制限され、負の入力電圧はツェナダイオードのpn接合の順方向電圧降下(約0.6V)となる。次段の入力インピーダンスが低い場合などでは、ツェナーダイオードに流れる電流が変動するため、リミット電圧が変化してしまうので必要ならバッファ回路を入れる。
※ツエナー電圧の規定
1mA以下の微少電流で規定した降伏電圧
※流せる電流は定格電力で規定される。
(通常5mAか10mAで規定)
※カソード側に線がついていることが多い
※ツェナーダイオードは、低い電圧領域で良好な定電圧特性を得るのはかなり難しい
※サージサプレッサーダイオード
順方向のダイオード特性で逆電圧が発生した場合導通して短絡状態を発生させる。
※ツェナーダイオードの破壊
エネルギーの量による。電力量(Wh、J)から求める。
サージの持続時間、繰り返しの回数などにも影響される

 

_◇小信号用シリコンダイオード
汎用。安価。順方向電圧0.6V程度
シリコン特有の熱雑音大きめ⇒ノイズにシビアな用途には向かない

 

_◇ゲルマニュームダイオード
シリコンより高速、順方向電圧0.2V。熱雑音低い。
ゲルマニュームの材料が希少で高価

 

_◇双方向ツエナーダイオード
順・逆方向どちらからも外来サージが印加される場合に使用する。
通常、2素子3ピン外形で対応するが、 1チップ/2ピン外形のルネサス製品あり。

 

_◇ショットキーバリア
金属と半導体の接触で逆方向電圧を阻止するショットキーバリアを利用するダイオード。
⇒シリコンとセレンを接合させてシットキーバリア効果を発生させる
⇒順方向電圧は0.3Vと低め
⇒高速だが、シリコンに比べても雑音多い

 

※高周波帯ではUHF帯、マイクロ波帯の検波、ミキサ用
※一般整流用では、低電圧大電流電源など。
※ダイオードに順方向電流が流れている状態で急に逆方向の電圧をかけると一瞬逆方向に電流が流れる。この逆方向に流れる電流が止まるまでの(逆電流のピークの10%位にまで下がる)時間を逆回復時間と言う。ショットキー・バリア・ダイオードは逆回復時間が短い。

 

_◇スイッチングダイオード
PN接合を利用して回路のON/OFFスイッチングを主として行う。

 

_◇整流ダイオード
平均整流電流1A以上のものを指す(それ以下は小信号ダイオード)
※ブリッジダイオード
予め整流用のブリッジ接続が行われた4ダイオードがワンパッケージになっているもの

 

_◇バンドスイッチダイオード
高周波抵抗を小さく、端子間容量を抑え、高周波チューナーの周波数帯切り替えに使用。

 

_◇定電流ダイオード(CRD)
Current Regulative Diode
入力する電圧が変わっても、常に一定の電流を流す。せいぜい20mA程度。石塚電子。

 

_◇バリキャップ(varicap diode)
varactor diode
variable capacitance diode
Anode│\ ││Cathode
─────┤ >│├───
     │/ ││
ダイオードの一種で、端子に加える電圧によって静電容量が変化する。
⇒可変容量ダイオード
⇒バラクタ
※電圧を逆方向に掛けた場合にダイオードの持っているコンデンサ容量(接合容量)が変化することを利用
⇒電圧の変化により発振周波数を変化させる(VCO)用途
⇒逆方向の電圧を高くすると接合容量は小さくなる。
※空乏層の幅がバイアス電圧で変化することで静電容量が変化する。通常、空乏層の幅は印加電圧の平方根に比例し、静電容量は空乏層の幅に反比例する。このため、静電容量は印加電圧の平方根に反比例する。
⇒アバランシェ降伏や、ツエナー降伏が起こる前の状態
※変化する容量は数pFから、せいぜい20~30pF

 

_◇LED
Light Emitting Diode
電流を順方向に流した時に光るダイオード
※発光ダイオードの極性は、リード線の長い方がアノード側、短い方がカソード側
※基板の円形のシルクでは、平らになっている側がカソード
※一般のダイオードより不純物濃度は高い
⇒順方向に電流が流れるときに不純物の価電子が再結合する際に光を放出する
⇒ダイオードであるので整流作用はあるが、特性は通常のものより劣る
※テスタの低抵抗測定レンジで赤と黒のテスタ棒を発光するようにダイオードのリードにそれぞれつなぐ、光らない場合には逆にする。光っているダイオードにつないでいる黒のテスタ棒側がアノード側。(テスタで抵抗測定モードの場合、黒の方にプラス電圧が出ている。)
※発光ダイオードは順方向の電圧降下(VF)がほぼ2Vで一定
※白色LED
青色LEDもしくは紫外線LEDを、蛍光体(黄色)の励起光源として使用する。この蛍光体の発色との組合せによって白色光を得る。
※電流制限抵抗 (R)
R(Ω) =
(電源電圧E(V)- LEDに加える電圧(V))
/
LEDに流したい電流(A)
①LEDに加える電圧:データシートの「直流順電圧(Typ)」。※赤色では約2.0V,白では約3.6V程度。直列に複数つなげるときは「LED1つにかけたい電圧」×個数。
②LEDに流したい電流:LEDの最大許容電流の半分ぐらい。通常赤色では10mA以下、白・青・緑/色では15mAぐらい。
※通常抵抗のワット数は求められた値の倍以上のものを使用
計算例)
R1=(Vcc-Vf)/If
LEDはローム製SLR-342MG
周囲温度50℃、順方向電流の最大定格22mA
22 * 0.8 = 17.6mA
(ディレーティングにより決めた最大電流)
順方向の電圧電流特性グラフより
If=13mAでVf=2.1V
Vcc=+5Vであるので、式より 223Ωとなる
Rは220Ωに決定
※LEDの個体差を考慮すると、実際のVfの値は実測してみなければ分からない
※抵抗の誤差もある

 

_◇LED駆動回路
LEDドライバ
LEDの順方向電圧降下 Vf は製造時のバラツキや温度で変化
⇒定電圧でなく、定電流で駆動する必要がある
※一般的なスイッチングコンバータと異なる点
①フィードバック電圧が低い
⇒出力電流を検出し、電圧値に変換してフィードバックする
⇒この電流検出抵抗に数百mΩも抵抗をつけると照明用LEDには大電流が流れるので大きな電力損失となる
⇒そこでフィードバック電圧を低くする(0.2V程度)
②より正確な定電流制御
※コンスタント・リップル方式
⇒各種の変動⇒リップル成分の振幅変化⇒LEDの明るさ変動
⇒そこで入出力の両方の電圧を検出し、スイッチング周波数をきめ細かく制御する
※照明用LEDの接続
⇒直列と並列の組み合わせにより多くの接続方法が考えられる
⇒直列のLED列=ストリング
⇒直列のストリングではひとつのストリングのLEDの明るさを均等にできる(電流一定)、回路シンプル、ショート故障では1LEDのみ不良,オープン故障では全消灯
⇒直列であると駆動電圧が高くなる
例)1個の順方向4V 14直だと54V
⇒並列であれば駆動電圧低くて済む
⇒1ストリング故障しても他は点灯可能
⇒ストリングによる明るさのムラを抑えるのが難しい
⇒駆動回路が複雑となる

 

_◇LEDの調光
dimming
①パルス幅変調(PWM)調光
PWM信号のデューティ比で明るさを制御する
あまり低い周波数だと目にちらつきを感じる
⇒200Hz程度が必要
②位相調光
一般照明で使われる。トライアックを使い、入力された交流の一部を切り出す。
⇒交流波形の途中でトリガを与えるとトライアックを構成するサイリスタが導通し、交流波形が0Vになるまでその状態が続く
⇒トリガを与えるタイミング(位相)を調整することで明るさが変化する
⇒明るさが投入電力の実効値で決まるので白熱電球に適し、LEDにはそのままでは使えない
⇒LEDドライバICで、PWMに変換したり、供給電流に反映させる。

 

_◇ダイオード・ブリッジ
ダイオードを4個組み合わせると全波整流を行うことができる。

 

_◇クリッパ
入力波形のある電圧レベル以上を取出す。
E1以上を取出す
   │\│
○──┤ ├─┬──○
   │/│┌┴┐
      │R│
      └┬┘
    E1─┴─
       ┯
       ┴
   ┌─┐
○──┤R├─┬──○
   └─┘ ┴
       △
       │
    E1─┴─
       ┯
       ┴

 

_◇リミッタ
入力波形のある電圧レベル以下を取出す
ある範囲内の出力電圧に抑える
出力波形の上限、下限でカット
※E2以下をとりだす
   │\│   │/│
○──┤ ├─┬─┤ ├─○
   │/│┌┴┐│\│
      │R│
      └┬┘
    E2 ┷
      ─┬─
       ┴
   ┌─┐
○──┤R├─┬──┬─○
   └─┘ ▽  ┴
       ┬  △
       │  │
    E2─┴─ ┷E2’
       ┯ ─┬─
       ┴  ┴
※整流ダイオードによるリミッタ回路
   ┌─┐
○──┤R├─┬──┬─○
   └─┘ ▽  ┴
       ┬  △
○──────┴──┴─○
例)
R:1kΩ
ダイオード:1N4148
Vi:3.0Vpp
Vo:1.4Vpp
⇒出力電圧Voは、整流ダイオードの順方向電圧Vfの
約±0.7Vでクリップする
※ツエナーダイオードによるリミッタ回路
   ┌─┐
○──┤R├─┬─○
   └─┘ │
      └┴┐
       ▲
       │
       ▼
      └┬┐
       │
○──────┴─○
例)
R:1kΩ
ダイオード:HZ2B
Vi:6.3Vpp
Vo:4.6Vpp
⇒出力電圧Voは、
ツエナーダイオードの
ツエナー電圧Vz=1.7V
順方向電圧Vfの
約±0.6V
の和である±2.3Vでクリップする

 

_◇スライサ
入力波形のある電圧レベル以上、かつ、ある電圧レベル以下を取出す
E3~E4をとりだす
   ┌─┐
○──┤R├─┬──┬─○
   └─┘ ▽  ┴
       ┬  △
       │  │
    E4─┴─ ┷E3
       ┯ ─┬─
       ┴  ┴

 

_◇クランパ
信号の直流レベルを変える。
 ┌─┐
○┤C├─┬─┬──○
 └─┘ │ ┴
    ┌┴┐△
    │R││
    └┬┘│
     └─┤
    E1─┴─
       ┯
       ┴

 

◆バイポーラトランジスタ

 

_◇PN接合と、PNP,NPN
端子は3つ
C:コレクタ
B:ベース
E:エミッタ
※PNPとNPNはベースに対して動作が対象
※カマボコ型外形に3端子
⇒型番がかかれている面で端子を下にした状態で左からE,C,B
※PNP型とNPN型は電源の極性により使い分けるが、正電源で使うNPN型の方が一般に多く使われる。
①PNP型
2SAXXX 高周波数用(ラジオ、TV)
2SBXXX 低周波数用(オーディオ)
E┌─┬─┬─┐C
─┤P│N│P├─
 └─┴┬┴─┘
    │B
──\   ────
E  V /  C
  ━━┯━━
    │B
            ┌──┐
           ┌┴┐┌┴┐
           │R││L│
           │2││D│
           └┬┘└┬┘
            │  │6V
  ┌──┐┌──┐│/   ┷
 ┌┤VR├┤R1├┤   ─┬─
 ↓└──┘└──┘│\   ↓
 ┷          ^  │
─┬─1.5V     ↑  │
 └──────────┴──┘
②NPN型
2SCXXX 高周波数用
2SDXXX 低周波数用
E┌─┬─┬─┐C
─┤N│P│N├─
 └─┴┬┴─┘
    │B
──    ────
E ^\ /  C
  ━━┯━━
    │B
            ┌──┐
           ┌┴┐┌┴┐
           │R││L│
           │2││D│
           └┬┘└┬┘
            │  ↑6V
  ┌──┐┌──┐│/  ─┴─
 ┌┤VR├┤R1├┤    ┯
 ↑└──┘└──┘│\   │
─┴─         V  │
 ┯1.5V      ↓  │
 └──────────┴──┘
※多数キャリアの移動度と応答速度
N型半導体 余った価電子がキャリアとなる
不純物:ドナー
P型半導体 不足した価電子が「ホール」としてキャリアとなる
不純物:アクセプタ
移動度は電子の方が速い
⇒N型が高速に応答する
⇒NPNトランジスタの方が高速まで使える

 

_◇増幅のメカニズム
トランジスタは「増幅」というたった一つの機能しかもっていない単機能デバイス
①トランジスタの入力信号は、素子を素通りして出て行ってしまう。(ベース・エミッタ間)
②しかし、トランジスタは入力信号の振幅情報から、電源を使ってあらたに出力信号を作り出す。(ベース・エミンタ間の電流の数十から数百倍の電流がコレクタエミッタ間に流れる。)
※ベース・エミッタ間はダイオードと考えられるので、このベース・エミッタ間に電流が流れるように回路を設計すればよい。トランジスタが動作している(ダイオードに電流が流れている)ときに、ベース・エミッタ間の電圧降下はダイオードの順方向電圧降下と同じ0.6~0.7Vとなる。
(Siバイポーラ・トランジスタの場合、用途に関係なく増幅動作を行っている場合はVBE≒0.6~0.7V)
※トランジスタ回路の回路定数はVBE≒0.6Vとオームの法則だけで求めることができる。
※NPN型はベース「電流」で、コレクタからエミッタに流れる「電流」を制御すると考えれば良い
⇒電流制御素子
※PNP型は、「電流」でなく「電子の流れ(電流とは反対方向)」を制御すると考えれば同じになる。
IE = IB + IC
※ベース・エミッタ電流がカットオフと呼ばれる電流値を超えると、コレクタとエミッタとの電位差により加速されたキャリアがベースを通過して電流として流れる。
⇒ベースが厚いと応答が悪くなり、厚すぎると機能しなくなる。薄すぎるとリークが大きくなったりする。
⇒より高い周波数まで扱えるトランジスタ⇒より薄いベース
_◇利得
エミッタとコレクタとの間に流れた電流 コレクタ電流
------------------=------
ベースとエミッタ間に流した電流    エミッタ電流
この比を hfe とよぶ
hfe = Ic/Ib
※直流電流増幅率

 

_◇周波数特性
※fT:トランジション周波数、利得帯域幅
交流的な電流増幅率が1になる周波数。Vce、Ta一定の条件下でエミッタ電流IEに対してグラフ表示される。
⇒ベースの厚み、拡散濃度、負荷、電流の量などで決まる
⇒ベース電流の変化速度に対して追従できるコレクタ電流には限度がある。
⇒より大きな利得を得ようとすれば、周波数帯が狭くなる
⇒取り扱い可能な周波数帯
f = fT/hfe
⇒増幅度hfeを大きくするとfは小さくなる
⇒必要とする周波数帯域の2倍以上のfを確保するようなhfeに収める
⇒実際に使用する周波数帯域幅はfTの半分以下とするのが実用的
一般にエミッタ電流(≒コレクタ電流)を増すと周波数特性が良くなる傾向がある。(大きく変動する)
※ユニティゲイン
利得帯域幅fTにおいて1となる利得のこと

 

_◇型番
高周波PNP 2SA
低周波PNP 2SB
高周波NPN 2SC
低周波NPN 2SD
※高周波はラジオ、TV、低周波はオーディオ。現在では高周波用のみでも事足りる。
※足の順番は製品によって異なる。

 

_◇仕様
※絶対定格
(これを超えると壊れる危険性のある限界値)
2SC1815の例
コレクタベース間Vcbo60V
コレクタエミッタ間Vceo50V
⇒大体半分が目安
コレクタ・エミッタ間にこれ以上かけると壊れる
増幅した振幅電圧である
⇒電源電圧をこの半分で使えばよいだろう
エミッタベース間Vebo5V
コレクタ電流Ic150mA
直流コレクタ電流
交流信号であってもこの値を超えないこと
⇒この値の半分目安
ベース電流Ib50mA
コレクタ損失400mW
Pc
最大電力を放熱量から求めたもの
仮定:周囲温度25℃、無限大の理想放熱板で
ジャンクション温度が定格温度となる電力
⇒実際には熱抵抗を加味して余裕のある温度で使う
接合温度Tj=125℃
(~150℃ほど)
保存温度Tstg=-55~125℃
※ディレギュレーション
定格に対し、十分に余裕を持つ範囲内でしか動作させないように設計すること
※直流電圧増幅率 hfe
Vce=6V, Ic=2mAのとき
グレードにより、70~700
※トランジション周波数 fT
Vce=10V, Ic=1mAのとき、MIN 80MHz
@Ta=25℃
※hfeが大きいほうが、増幅率は高いが、出力電流の最大値は決まっているし、入力電流があまり小さいと雑音に弱い。手ごろなのは100~300.
※fTを超えると、hfeが低下し使えなくなる。
※Vbe(ベースエミッタ間電圧)は、半導体の特性できまり、ほとんどのトランジスタで0.6~0.7Vという固定した値となる。
※回路特性としてはVce-Ic特性が重要(静特性)
あるベース電流(Ib)が流れたときのVceの変化に対するIcの変化のグラフ
⇒横軸(電源電圧)と縦軸(電源電圧÷負荷抵抗)の間に斜線を引く。(動作線)
⇒動作点
※代表的なトランジスタ
NPN 2SC1815
PNP 2SA1015
※大電流を流したいなら、FETの方が一般的

 

_◇接地方式と入出力インピーダンス
①エミッタ接地回路
入出力とも高い(中程度)
エミッタ接地、ベース入力、コレクタ負荷
増幅度がある。入力と出力が逆の位相となる。
周波数特性があまりよくない
②エミッタフォロア(コレクタ接地回路)
入力は高いが出力は低い
コレクタ接地、ベース入力、エミッタ負荷
③ベース接地回路
入力は低く、出力は高い
ベース接地、エミッタ入力、コレクタ負荷
周波数特性が非常に良いが、入力インピーダンスが低くて出力インピーダンスが大きいため使いにくく、あまり使われない。

 

_◇動作領域
①しゃ断領域
エミッタ、コレクタの両接合が逆バイアス。コレクタ電流非常に小さく、高インピーダンス。
②活性領域
増幅動作に用いられるモード。エミッタ接合は順バイアス、コレクタ接合は逆バイアス。ON/OFFのスイッチング時には負荷線にそって活性領域を通過する
③飽和領域
十分にベース電流が流れてエミッタ、コレクタ接合とも順バイアスで低インピーダンス。

 

_◇発熱
電流が流れれば発熱する
※二次降伏現象
熱⇒チップ接合面の温度上昇⇒抵抗小⇒電流集中⇒発熱
熱溶解に至る
※二次降伏をさけるには電流制限が必要
⇒MOS-FETでは発熱により電流流れにくくなるので起こらない。

 

_◇動作点とバイアス
※IB-IC特性のIBの原点付近で交流波形を加えてもICに波形は半分しかでてこない
⇒歪のない増幅には、ベース電流に直流のオフセット電流を加えてIB-IC特性の直線的な部分に持っていく(バイアス)
⇒トランジスタの動作点
Vbe<0.66V 以下では増幅動作をしない
オフセットを加えすぎると非線形な歪
さらに加えると飽和領域となって出力は飽和する
※入力の電圧変化を電流変化に置き換える必要がある
※出力の電流変化を電圧変化に置き換える必要もある
①固定バイアス回路
 ┬    ┬
┌┴─┐ ┌┴─┐
│Rb│ │RL│
└┬─┘ └┬─┘
 │    │  O
 │    ├──○
I│   ┃/
○┴───┨
     ┃V
      │
      ▽
シンプルで消費電力小
温度変化による特性変化に弱い。ばらつきにも弱い。
バイアス抵抗Rbだけで動作点を決める
Rb=(Vc – 0.6)*(hfe/IC)
<IC=mAなら、Rb=kΩ>
※hfeが既知である必要がある。
⇒hfeの製造バラツキは大きい
⇒量産に使いにくい。1個の特性に合わせて調整すれば使える。
②自己バイアス回路
      ┬
     ┌┴─┐
     │RL│
     └┬─┘
 ┌────┤
┌┴─┐  │
│Rb│  │  O
└┬─┘  ├──○
I│   ┃/
○┴───┨
     ┃V
      │
      ▽
バイアスに使う電源をコレクタから得ている回路
⇒ネガティブフィードバック⇒安定性が増す
⇒温度によるhfeや抵抗の変動を打ち消し安定する
⇒しかし入力に出力が抵抗を介してつながっているので入力インピーダンスが低い
⇒負荷は抵抗でないとうまくいかない(周波数によって変動するとICが変動する)
⇒hfeのバラツキは自己調整できない
⇒電源電圧変動を受けやすい(バッテリなどには不向き)
※通常、負荷抵抗RLによる電圧降下はVceとなるよう設定する
⇒出力の振幅が最大となる
Rb=(Vcc*hfe)/(2*IC)
Vcc:電源電圧[V]
IC[mA]
Rb[kΩ]
③電流帰還バイアス回路
 ┬    ┬
┌┴──┐┌┴─┐
│Rbb││Rc│
└┬──┘└┬─┘O
 │    ├──○
I│   ┃/
○┼───┨
 │   ┃V
 │    │
┌┴─┐ ┌┴─┐
│Rb│ │Re│
└┬─┘ └┬─┘
 ▽    ▽
温度や電源電圧の変動、hfeのバラツキに影響されにくい
⇒実用的なバイアス回路の典型
⇒2個の抵抗でベースの動作点電圧を固定する
上:Rbb 下:Rb
Rbbブリーダ抵抗(Rbbに流れるのがブリーダ電流)
⇒エミッタに抵抗Reを挿入する(ベース電流に負帰還となる)
⇒バイアス電流安定する
⇒Re:安定抵抗(バラスト抵抗)
⇒分圧回路なので入力インピーダンスが低いのが欠点
(IBでなくRBにながれて入力ロスが大きい)
⇒入力損失と安定性は二律背反の関係にある
※動作
出力電圧はコレクタ電流Icにより決まる
温度変化⇒hfe変動⇒Reを流れる電流変化
(Ib<<Icなめ、Ie≒Ic)
⇒エミッタ電圧Veが変化する
Vbe = Vb – Ve
⇒Vbはバイアスに固定されている
⇒Vbeが変化する
(Icが増⇒Ve増⇒Vbeは減りIbが減る)
⇒負のフィードバックがかかってIcが減る
※バラスト抵抗Reが安定度を決める
※Re,Rcも温度変動するが、これら変動はVeの変化につながりIbに影響を与えて変動の効果が抑制される

 

_◇電流帰還バイアス回路の設計1
※小信号の簡略化計算
RcやReを最初から決めてしまって、Rbb,Rbを求める
ひずみの無い出力を最大振幅で振るために
VceがVccの約半分にくるようにする
⇒Ibが無視できるとすると Ic=Ieとおけるので
Vce = (Vcc – Ic*Re) / 2
ここで、
Vcc=Ic*Rc+Vce+Ic*Re
なる関係が成り立つ
Vcc = Ic*Rc + (Vcc – Ic*Re)/2 + Ic*Re
(1/2)*Vcc = Ic*Rc + (1/2)*Ic*Re
Vcc = 2*Ic*Rc + Ic+Re
Ic = Vcc / (2*Rc+Re)
Rc=8.2KΩ, Re=2.2Ω, Vcc=12Vのとき Ic=0.645mA
※Vbe=0.66V(0.6Vと簡略化)とすると
Vb=Vbe+Re*Ic≒2V
hfe=100とすると
Ib=Ic/hfeより 6.45uA
⇒ブリーダ電流をこの15倍流すとする(自分の1を加え16倍)
Vcc-Vb=Rbb*16*Ib
Rbb=96.9kΩより100kΩとする
また
Vb=Rb*15*Ibより Rb=20.7kΩ、すなわち22kΩとする

 

_◇電流帰還バイアス回路の設計2
エミッタ抵抗Re(バラスト抵抗)を先に決める
Ve = Vcc – Ic*Rc – Vce
Re = Ve / Ie
ここでIe=Ic+Ib だがIbは小さいのでIe≒Icとしてよい
Icの許容変動を 温度差、VbeとIcのグラフなどをもとに決める
⇒この電流変動に相当する電圧変化がReの両端に現れる
ここで
ベース電圧>エミッタ電圧でなければベース電流流れない
エミッタの電位がその条件を満たすようにIc決める
⇒Re決まる
これからRcを決める

 

_◇バイアスの方式の違いによる増幅器の回路構成区分
※X軸にVce, Y軸にをとり、Ibを変えた場合の特性のグラフを使ってバイアスは考える
Vce最大、Ic=0と Vce=0 Ic最大の点を結んだ線=交流負荷線
⇒この交流負荷線とIb毎のグラフの交点で考える
※A級増幅回路
入力信号の全部が歪なく出力されるようにバイアスを加える方式
⇒入力が無くとも常にバイアス電流、ブリーダ電流が流れる
⇒電力効率は最大でも50%以下
⇒入力信号の最大値でもトランジスタのカットオフ電圧を下回らないようにVbを設定する⇒動作点
⇒交流負荷線の上でIc, Vceが歪まないように考える
※B級増幅回路
入力信号の片側の極性のみ増幅するようバイアスを加える
⇒反対側の極性は対称な回路をつかってプッシュプルでカバー
⇒ベースとエミッタの間に一定のオン電圧をバイアス
⇒電力効率は最大78%
⇒小信号時にプッシュプルの切替部分でのひずみが大きくなる
⇒反対側のトランジスタがカットオフする際に、小数キャリアが消滅しノイズを発する
※AB級増幅回路
小信号時にA級動作となるよう、A級とB級の中間的なバイアス
⇒原理的にB級と差はないが、電力効率は落ちる
⇒小数キャリアの消滅時のノイズは残る
※C級増幅回路
カットオフより深いバイアスを加えて入力信号の一部のみを増幅
⇒大きな信号のときだけ一部が増幅される
⇒出力信号に高調波を多く含むノイズがのる
⇒フィルタで除去して使う
⇒大電力、狭帯域、電力効率良だが音質悪
※H級増幅回路
入力信号の振幅に応じて出力トランジスタへの供給電圧を切り替える。
<第2次大戦の磁気増幅器「H級アンプ」とは違う>
⇒スムーズな電圧の切替が難しくあまり実現例がない
⇒D級アンプの登場により機会せばまった
※D級増幅回路
スイッチング回路。A~C級とは原理異なる。

 

_◇エミッタ接地(コレクタ負荷)
ベースが入力
コレクタが出力
エミッタがコモン(グラウンド)
Common Emitter Amplifier
※増幅度が必要な部分にはエミッタ接地増幅回路が使われる
⇒電流利得x電圧利得で電力利得が得られる
(他の形式より電力利得大)
※出力波形の位相が入力波形に対して180度反転
⇒反転増幅
⇒エミッタ側から電流利得を取り出す⇒エミッタフォロア
15V
◎┬───┬─────┐
┌┴─┐┌┴─┐+  │
│C3││C4│   │
└┬─┘└┬─┘   │
 ┴   ┴ ┌───┤
       │  ┌┴─┐
     ┌─┴┐ │RC│
     │R1│ └┬─┘┌──┐
     └─┬┘  ├──┤C2├─○
  ┌──┐ │ │/  +└──┘ Vo
○─┤C1├┬┴─┤
Vi└──┘│  │\        ○
    ┌─┴┐   V       │
○   │R2│   │       │
│   └─┬┘ ┌─┴┐      │
│     │  │RE│      │
│     │  └─┬┘      │
┴     ┴    ┴       ┴
C1:10μ(カップリングコンデンサ)
入力信号に加えられた交流成分だけを通過させる
ベースバイアス電圧(DC)をカットする
C2:10μ
C3:0.1マイクロ
C4:10μ
R1:100k
R2:22k
R1とR2がバイアス回路。ベース電圧VbはViに対して約2.6VのDC電圧が重畳した波形となる。
RC:10k
RE:2k
電流帰還用。hfeが多少変動しても安定するように
※VbとVeは交流的には振幅も位相も同じ。(電圧増幅度は1)Vbは+2.6Vの直流にViが重畳しているが、Veはそれより約0.6V低くなる。
※Veが求まると、ieはVe/REである。
⊿ic = ⊿Vi / RE
ie = ic + ib ≒ ic (ib ≪ ic)
ibは非常に小さな値であるので無視すれば
ic = ie
であり、⊿Viが電流変化⊿icに変換されていることになる。さらに⊿icは、コレクタと電源間に接続したRC(コレクタ負荷抵抗)により、抵抗の電圧降下として電圧変化⊿Vcとしてコレクタから取り出される。(Rcの電圧降下は電源に対してなので、Viに対するVcの位相は逆そうとなる)
コンデンサC2によりVcの直流成分がカットされ、交流成分だけが取り出される。
※各部の直流電位
①VB
IBは小さいので無視すれば、
VB = (R2/(R1+R2))*Vcc [V]
②VE = VB – 0.6 [V]
③IE = VE/RE = (VB – 0.6)/RE [A]
④Vc = Vcc – Ic * Rc = Vcc – IE * Rc
※交流利得
ベース端子の交流電位(=Vi)がそのままエミッタに現れることになるので、
⊿ie = Vi / RE
またVcの交流的な変化分⊿cは、コレクタ電流の交流的な変化分を⊿icとすると
⊿Vc = ⊿ic * RC
さらにコレクタ電流=エミッタ電流から
⊿Vc = ⊿ie * RC = (Vi/RE)*RC
交流出力信号VoはC2でVCの直流分をカットしたものなので
Vo = ⊿Vc = ⊿ie * RC = (Vi/RE)*RC
つまり電圧増幅度Avは
Av = Vo/Vi = RC/RE
①トランジスタの直流電流増幅率hFEに関係なく抵抗値の比できまる(iBを無視しなければhFEと関係する)
②REを大きくするとAv減少するのでREにより負帰還がかかっていると考えられる。
→REをエミッタ帰還抵抗と呼ぶ
REはhFEのばらつきやVBEの温度変化によるエミッタ電流の変化を抑える働きがある。

 

_◇入力インピーダンス
※バイアス回路により入力インピーダンスがさがってしまう。
⇒入力信号に損失を生じる
※入力インピーダンス
R1,R2を並列接続した時の抵抗と等しい
Zi=R1*R2/(R1+R2)
⇒62k, 20kの抵抗でバイアス回路を組むならば
15.5kΩ
※一般的なオーディオ機器
47kΩ、22kΩになるように設計されることが多い

 

_◇出力インピーダンス
※後続の回路が電流を取り出しても電圧降下が置きにくい低出力インピーダンスが重要
⇒エミッタ接地増幅回路では、Rcが出力インピーダンスと等しい
※一般的なオーディオ機器
1kΩ以下
※アナログ電話回線機器、業務用オーディオ
600Ω標準
※実用回路では負荷抵抗RLを追加して、後続回路の入力インピーダンスが影響しないようにする場合がある
⇒RLによる損失のため、実質回路利得が下がる
Z0=(Rc*RL)/(Rc+RL)
このZ0と後段の入力インピーダンスがまた、並列の関係となる

 

_◇エミッタ接地回路の設計手順
仕様
電圧利得5(14dB)
最大出力電圧5Vpp
①電源電圧は最大出力電圧+エミッタ抵抗REにかける最低1~2Vの電圧を加えて決定する。例では15V。
②エミッタ電流の動作点を周波数特性fTと雑音特性考えて決める。小信号エミッタ接地増幅回路のエミッタ電流の相場
0.1~数mA程度
ここではIE=1mAとする。
③増幅度からRc:Re=5:1
④VBEは約0.6Vだが、-2.5mV/℃程度の温度特性があり、VBEが変動するとエミッタ電位が変動してコレクタ電流も変化する。そこでRe電圧降下を2Vとって多少の温度変動ではコレクタ電流が大きく変わらないようにする。
⑤②でIE=1mAとしているので、IC≒IEから
RE=VE/IE=RE*IE/IE≒RE*IC/IC
=2V/1mA=2 [kΩ]
③の比より
Rc=10 [kΩ]
⑥Vceは
Vce = Vc-Ve = Vcc – IC*Rc – IE*RE = 3 [V]
よってコレクタ・エミッタ間で発生する電力損失(コレクタ損失Pc)は、
Pc = Vce * Ic = 3[V] * 1[mA] = 3 [mW]
となって最大定格以下となる。
※RCを大きくしすぎると出力振幅を大きくしたときにRCでの電圧降下が大きくなってエミッタ電圧にひっかかり出力波形の下側がクリップしてしまう。
※RCを小さくしすぎると、出力波形の上側がクリップしてしまう。
※一番良いのは、コレクタ電位VcをVccとVeの中点に設定する。
⑦Ve=2V, VBE=0.6VからVB=2.6Vとなる。VBは電源電圧をR1とR2で分圧したものなので、電源電圧15Vから
R2の降下を2.6V, R1の降下を12.4Vとする。
ここで、トランジスタのベースには、コレクタ電流の1/hFEのベース電流が流れるので、仮にhFE=200とすると0.005mA.このベース電流より十分大きく(10倍目処)電流を流すということで、R1,R2に0.1mA流す
これから
R1 = 12.4 / 0.1 = 124 [kΩ]
R2 = 2.6 / 0.1 = 26 [kΩ]
ただし、E24シリーズ抵抗にないので、
R1:100k
R2:22k
とする。
⑧カップリングコンデンサC1,C2
直流分をカットして、交流成分だけを通過させるためのコンデンサであり、C1と入力インピーダンス、C2と負荷抵抗とでハイパスフィルタを形成する。C1,C2をあまり小さくすると低い周波数が通りにくくなり、振幅特性が低下する。
※交流的な入力インピーダンスは、トランジスタの入力インピーダンスを無限大とし、電源は交流的にはGNDと同じインピーダス(0Ω)と考え、R1,R2を並列接続した値となる。ここからカットオフ周波数
fc=1/2πCR
を計算する。

 

_◇エミッタ接地回路の設計手順2
(ディークルー美斎津摂夫氏)
※設計目標
10mVppの入力電圧を1Vppに増幅して出力
①負荷抵抗(コレクタ抵抗)Rcの値を決める
考慮事項
i)次段の回路の入力インピーダンスに対してRcを小さくする
ii)Rcを小さくしすぎると同じ出力の振幅を得るのに必要な電流が増える。
※Vce-Icグラフ上に負荷直線を引く
縦軸コレクタ電流Icの切片は
Vcc/Rc
横軸Vceの切片は
Vcc
傾きは
-1/Rc
となる。この直線上でトランジスタは動作する。
Rcを大きくし過ぎると負荷直線のY切片が小さくなり、バイアス点が下がる。Rcを小さくしすぎるとY切片が大きくなってバイアス点が高くなる。いずれにせよ、バイアス点は最適なVcc/2から大きくずれ、最大の出力振幅は得られなくなる。
⇒Rc=100Ωとする。
1Vppの信号出力なので、
1Vpp/Rc100Ω=10mApp
のIcの変動幅が必要となる。
②バイアス点を決める
Vbe-Ic曲線において、入力電圧変動幅が10mVppのときに10mAppのIcが流れるポイントを見つける。または以下の計算式による
Ic=Is{exp(Vbe/n*Vt)-1}
≒Is * exp(Vbe/n*Vt)
Is:飽和電流(Vbeが0のときのIc)
Vt:K*T/q [V]である熱電圧
K…ボルツマン定数
q…素電荷
T…絶対温度
nは補正値だがとりあえず1でもよい。
Vbeで微分し
dIc/dVbe = (Is/Vt)exp(Vbe/Vt)=Ic/Vt
⇒Ic = 26mAとする。負荷直線にIc=26mAを引くと、そのときのVce=2.4V
③コレクタ電流Icの値を元にベース電流Ibの値を算出する
Ic=電流増幅率β*Ib
⇒β=100と仮定すれば、Ib=260μA
④ベース電圧(Vb)を決める抵抗R1,R2を決定する。
Vbe-Ic曲線よりVbeを860mVと読む。
Ibによるベース電圧の電圧降下の影響を仮に130mVとする(130mVで260μAなのでベース抵抗成分は500Ωとみつもる)
※ホウ・テブナンの定理から
電源V1(Vcc)、バイアス抵抗R1,R2、ベース端子Vbの回路は、Vbからみたときに
V2=Vcc*R2/(R1+R2)
R3=R1*R2/(R1+R2)
と見える。R3=500Ω、V2は860mV+130mVとすれば
R1=2.525Ω
R2=623Ω
が得られる。
⑤前後に1uFのコンデンサを接続

 

_◇エミッタ接地増幅回路(PNP型)
+15V
◎┬───┬─────┐
┌┴─┐┌┴─┐+  │
│C3││C4│   │
└┬─┘└┬─┘   │
 ┴   ┴ ┌───┤
       │  ┌┴─┐
     ┌─┴┐ │RC│
     │R1│ └┬─┘
     └─┬┘  V
  ┌──┐+│ │/
○─┤C1├┬┴─┤
Vi└──┘│  │\  +┌──┐
    ┌─┴┐   ┌──┤C2├─○
○   │R2│   │  └──┘ Vo
│   └─┬┘ ┌─┴┐
│     │  │RE│      ○
│     │  └─┬┘      │
┴     ┴    ┴       ┴
TR:2SA1048
C3:0.1μ
C4:10μ
C1:10μ
R1:22k
R2:100k
RC:2k
RE:10k
C2:10k

 

_◇特性の測定
①入力インピーダンスZi
信号源に直列抵抗Rsを挿入して両端のVsとViの差からZiを求める。
※回路への入力Viは信号電圧VsをRsとZiで分圧した値になる。
Vs┌──┐Vi┌──┐Vo
 ┌┤Rs├┬─┤増幅├─→
 │└──┘│ └──┘
┌┴┐  ┌┴┐
│~│  │Z│
└┬┘  │i│
 │   └┬┘
 ┴    ┴
※バイアス回路のR1とR2の並列接続値R1//R2そのもの
②出力インピーダンスZo
出力端子に負荷抵抗RLを接続して出力振幅Voを測定し、無負荷(RL=∞)のときの出力振幅と比較する。
※Voは無負荷字の出力振幅をZoとRLで分圧した値になる。
Vi┌──┐ ┌──┐Vo
 ┌┤増幅├─┤Zo├─┐
 │└──┘ └──┘ │
┌┴┐        ┌┴┐
│~│        │R│
└┬┘        │L│
 │         └┬┘
 ┴          ┴
※コレクタ抵抗Rcの値そのもの(トランジスタは電流源とコレクタ抵抗Rcを並列に接続した回路(電源のインピーダンスはGNDと同じとみなせる)と等価にみなし、電流源の内部インピーダンスは無限大と考えると残るインピーダンスはRCである)
③増幅度と周波数特性
IC=IEとして計算したRE,RCでは実際の増幅度より低めとなる。これは、hFEが有限値なので
IC=IE+IB
でICがIEより若干小さい値のため。ここで、ゲインの誤差は10%程度となるので、RE,RCの抵抗は±5%(J)で十分。
※カットオフ周波数は使用トランジスタのfTからすると1桁以上低くなる。高周波用トランジスタを使用すれば良くなるが、
高周波用の実装
小さく、グラウンドインピーダンスを下げる
ミラー効果
の2つを考える必要がある。
          C○
       ┌───┤
    ┌──┴┐  │
    │Cbc│  ├──┐
    └──┬┘  │ ┌┴┐
  ┌──┐ │ │/  │C│
○─┤RB├─┼─┤   │c│
B └──┘ │ │\  │e│
    ┌──┴┐  V └┬┘
    │Cbe│  │  │
    └──┬┘  ├──┘
       └───┤
          E○
トランジスタの入力容量CiはCbeとミラー効果により(1+Av)倍されたCbcの和になり、ベース直列抵抗RBとローパスフィルタを形成する。
※トランジスタのデータシートのCob(出力容量)はベース接地での出力容量であるが、おおざっぱにCbcと同等。
※データシートにCbcとRBの積が示されている場合
Cc*rbb [単位sec]
低周波用: 数十ps~100ps
高周波用: 数ps~数十ps
④雑音電圧特性
※THD Total Harmonics Distortion
全高調波ひずみ率
入力した正弦波信号の高調波がどの程度発生するかを表す特性。(入出力特性の非線形性により高調波が発生する)
THD = (√(D2^2 + … + Dn^2) / D1 ) * 100 [%]
D1:基本波周波数成分
D2~Dn:第n次高調波成分
※音声の場合、THDが1%程度でもひずんでいるようには聞こえない。(波形がクリップしているのは分かる)

 

_◇増幅度の改善
直流的な電位関係を崩さずに交流的な利得を改善する。
→エミッタ抵抗REにエミッタバイパスコンデンサCを追加する。Cにより交流的なエミッタ抵抗がさがり、hFEに近い最大増幅度を得ることができる。
①REに並列にRとCを追加する。
②REを分割し、分割後のREとCを並列とする。
※RE=0ΩのときのAv
Av= (hFE * RC)/hIE
hIEはトランジスタの入力インピーダンスを表す定数1k~10kΩ
hIEとRCがほぼ等しいと考えれば、Av≒hFEとなる。
※40dB以上のA級増幅回路
⇒マイクロフォンアンプ想定
⇒各部の直流電位を変えず、交流的な電圧増幅度を高める
例)バイパスコンデンサ
直流で1kΩ,交流で400Ωのインピーダンスを持つ回路
R=1kΩ, コンデンサのインピーダンスZeΩとすると
1K*Ze/(1K+Ze)=400
より
Ze≒660Ω
⇒ただし、周波数によりコンデンサのインピーダンスが変わる変化がそのまま見えてしまう
⇒抵抗を分割する
コンデンサと並列=600Ω
コンデンサと直列=400Ω
に分ける
⇒コンデンサは100uFなど大きい容量で、低い周波数まで低インピーダンスとなるようにする。

 

_◇ベース接地回路
common base
電圧利得あり、電流利得なし
入力電流より出力電流わずかに少ない
⇒入力インピーダンス低い
⇒電力利得を得るには出力インピーダンスをあげる必要あり
⇒扱いにくいが、高い周波数まで動作する
⇒非反転増幅
         ┬ ┬
        ┌┴┐│
        │R││
I ┌─┐   └┬┘│ O
○─┤R├─┐ ┌┴─┼─○
  └─┘┌┴─┴┐┌┴┐
     │EBC││R│
     └─┬─┘└┬┘
       ├───┘
      ┌┴┐
      │R│
      └┬┘
       ┴
電流はコレクタからエミッタへ流れ、エミッタのところに電流制限用抵抗と別電源が必要。
 -Vee┬     ┬+Vcc
    ┌┴┐   ┌┴┐
    │R│   │R│
    └┬┘   └┬┘
  ┌─┐│┌───┐│┌─┐
 ┌┤C├┴┤E C├┴┤ ├○
 │└─┘ │ B │ └─┘↑
┌┴┐   └─┬─┘    │出力
│~│     │      │
└┬┘     │      │
 └──────┘      ┴

 

_◇エミッタフォロワ(エミッタ負荷)
入出力ゲインはほぼ1倍(1未満)
入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスは低い。
回路と回路を結合するバッファとして使える。
⇒非反転増幅
※コレクタ接地
common collector
        ┬VCC
        │
     ───┘
VIN┃/ C
→──┃
B  ┃\
     V──┬→VOUT
      E┌┴┐
       │R│
       └┬┘
        │
        ▽
※DC特性
トランジスタにコレクタ電流やエミッタ電流が流れている状態ではベース端子からエミッタ端子間の電圧は約0.6V程度になる。逆に、トランジスタは約0.6V以下ではカットオフしエミッタ電流を流さない。
よって、入力信号が約0.6V以上で動作する。通常、前段回路の出力は、VCCを超えないので、
Vout≒Vin-1Vbe(約0.6V)
となり、Voutの最大値はVCC電圧より約0.6V下がった電圧になり、かつトランジスタは飽和(sat)しない。(ベース端子の電圧が電源電圧より高くなった場合は、条件によっては飽和する。)
※AC特性
小振幅の信号を入力した場合、入力VINに対して出力VOUTは約0.6V下がった電圧で追従する。(よって、エミッタフォロアと呼ばれる)ただし、入力信号が約0.6V以下のときはトランジスタがオフしてしまうため出力は歪む。(入力出来る信号の電圧範囲は約1Vbe~電源電圧まで)

 

_◇高利得増幅回路(1)
※小信号用トランジスタの hfe 100から1000
100  … 40dB
1000 … 60dB
※マイクアンプ
入力1mV~30mV
→一般的なラインレベルに増幅するには40~60dBの利得必要
※1石マイクアンプ
-40dBVの入力を0dBVまで持ち上げるA級増幅回路
⇒周波数による位相の変化
⇒反転出力なら180°でフラットであるべきだが、低域はオーディオ信号に位相偏差による劣化を及ぼす
※多段増幅回路
トランジスタのカスケード接続により1段あたりの増幅率を抑え、複数段で利得を稼ぐ
⇒hfeや部品のバラツキを考慮すると1段あたり20dB程度が良い
⇒単純な回路で増幅すると1段目のノイズも増幅してしまう
⇒2段目の出力を入力にネガティブ・フィードバックし、ノイズの抑制と安定性を高める。
⇒コンプリメンタリペアを使う

 

_◇負帰還と帰還率
※電流帰還バイアス:エミッタに接続されている抵抗をバランサーとして自身に帰還をかけ安定度を高めている
⇒しかし利得を大きくとると影響が大
※2段回路全体で帰還量を大きくして安定度を高める
エミッタ抵抗による直列の帰還
フィードバック抵抗による並列の帰還
⇒入力>NPN出力(位相180°反転)>PNP(位相180°反転)
⇒PNPの出力を初段のエミッタへ戻せば逆位相となる
⇒同相成分のノイズを打ち消す
⇒負帰還の良が増えれば入力信号を打ち消す
⇒利得下がる
※帰還率β
帰還がかかっていない時の増幅度A0と帰還がかかっている時の増幅度Afの比
⇒正しい帰還量で動作させると帰還量は安定する
⇒A0は帰還抵抗を取り外したときの値
Vout = A0 * (Vin – β*Vout)
Vout:出力、Vin:入力
これを変形し、Afを求める
Af = Vout/Vin = A0/(1+A0*β) = 1/((1/A0)+β)
A0*β:ループ利得
1+A0*βを帰還量という
⇒A0が非常に大きく、βも十分大きく
1/A0 << β
が成り立つなりたつならば
Af≒1/β
⇒A0が温度変化やトランジスタのバラツキで変わっても、Afはほとんど影響をうけず安定
※フィードバック抵抗に表れる信号振幅Vf
Vf=(Re/(Rf+Re))*Vo
⇒このとき帰還率βは
β=Vf/Vo=Re/(Rf+Re)

 

_◇カレントミラー回路
鏡に映されたかのように、入力した電流と同じ向きの電流が出力される回路
※バイポーラトランジスタによるワイドラー型カレントミラー回路
│I1     │I2
↓       ↓
├───┐   │
↓   │   ↓
│   │   │
 \│ │ │/
Q1├←┴→┤Q2
 /│   │\
V       V
↓       ↓
└───┬───┘
    │
Q1: IE1=IC1+IB1
I1: I1=IC1+IB1+IB2=IE1+IB2
Q1とQ2のベース電圧は同一であるので、Q1とQ2の特性が等しければQ1のエミッタ電流IE1とQ2のエミッタ電流IE2は等しくなる。ただし、IB2があるので、I1≠I2である。
IE1: I1-IB2
I2: IE2-IB2
IE1=IE2であれば
I2 = I1 – 2*IB2
Q2のHFEが高く、小さなIB2で大きなI2が得られればI2はI1に近くなる。
Q1をダイオードに置き換えた簡略形。
│I1     │I2
↓       ↓
├───┐   │
│   │   │
│   │   │
│   │ │/
│   └─┤Q2
▽     │\
┬       V
↓       ↓
└───┬───┘
    │
エミッタに抵抗を追加して精度と安定性を高めたもの
温度によるベース・エミッタ間電圧の変化に備え、Q1とQ2の温度条件を同一とする必要がある。モノリシック・デュアルタイプのトランジスタの利用が便利
例)
2SA1349/2SC3381

 

_◇アーリー効果
ベース電流を固定し、コレクタ電圧を増加させると、初めはコレクタ電流が急激にあがり、その後一定となる。一定となったコレクタ電流とベース電流の比をエミッタ接地電流増幅率といい、一定の値をとる。(エミッタ、ベースの不純物濃度とベース幅によって決まる)。しかしPN接合にできる空乏層は順方向に電圧を印加すると狭くなり、逆方向に電圧を印加すると広くなる。よってNPNトランジスタでコレクタ電流が一定になった後、コレクタ電圧を高くしていくと、ベース・コレクタ間は逆バイアスがかかり、空乏層が広くなる→ベース幅が減少→増幅率が増大→コレクタ電流が増加する。この効果をアーリー効果と言う。

 

_◇ミラー効果
トランジスタをスイッチングしたり、高周波信号を増幅する場合、容量により出力から入力への負帰還が起こり、スイッチングスピードが遅くなったり、信号周波数が高くなると増幅度が低下する現象。
 入力(ベース)と出力(コレクタ)の間には構造的に容量がつく、また、外部でも浮遊容量が付加される。この容量のため、ベースに対して逆方向に動くコレクタの高周波成分がベースにフィードバッグされ、スイッチングスピードの低下、高周波信号の増幅度低下という現象を起こす。コンデンサは非常に小さいが、エミッタ接地の場合、コレクタの電圧が増幅されているので増幅されている分ベースに戻る信号が大きくなり、見かけ上、コンデンサの容量が増幅度倍に大きくなったように見える。(入力側からは、等価的に(1+A)倍に見える)また,このC(1+A)をミラー容量という。

 

_◇電力用素子
大きな外形のパッケージにより、素子自体の放熱面積を大きくし、放熱器との接触面積を大きくする
※電力スイッチング用のMOS FETのほとんどが、多数の小さなFETを素子内部で並列接続し、局所的な電流集中を防止し、高周波特性を改善している。

 

_◇小信号用素子
熱があまり出ないので外形が小さい

 

_◇高周波用素子
高周波特性を良くするため、変わったパッケージに入っているものが多い。できるだけリードを短くしてインダクタンスや容量成分を少なくする。インピーダンスを下げるためリードが板状である。
※UHF帯、マイクロ波帯
MES FET (MEtal Semiconductor FET)
HEMT (High Electron Mobility Transistor)

 

_◇雑音特性
雑音がもっとも少なくなるコレクタ電流(≒エミッタ電流)が存在するが、周波数特性が最もよいときの電流値とは異なる。
_◇ダーリントントランジスタ
2つのトランジスタの電流増幅率の積となる大きな電流増幅率が得られる。
        │
    ┌───┤
  ┃/    │
──┨     │
  ┃\  ┃/
    V─┨
      ┃\
        V
        │

 

_◇コンプリメンタリトランジスタ
PNPとNPNで、電源の極性が逆で鏡に映したような同様の動作をさせることが出来るように特性を考慮して作られた石
例)2SC1815<>2SA1015
….._◇バイアス抵抗入りトランジスタ
_◇バイアス抵抗入りトランジスタ
使用頻度の高い入力-ベース間および、ベース-エミッタ間の抵抗を一体化したもの
         │
 ┌──┐  ┃/
─┤R1├┬─┨
 └──┘│ ┃\
   ┌─┴┐  V
   │R2├──┤
   └──┘  │

 

_◇トランジスタアレイ
複数のトランジスタをワンパッケージに収めたもの

 

_◇ペアトランジスタ
トランジスタの特性は温度の影響を受けるが、差動増幅器などでは2個のトランジスタの動作のバランスをとる必要がある、このため2個のトランジスタを同一チップに作りこんでバランスをとったもの
例)
2SA1237

 

_◇パワートランジスタ
※スイッチング用トランジスタに要求される特性。
①ON抵抗が小さい。すなわちコレクターエミッタ間飽和電圧Vce(sat)が小さい。
②OFF抵抗が大きい。すなわちコレクターエミッタ間しゃ断電流Iceo(または、コレクタ-ベース間しゃ断電流Icbo)が小さい。
③スイッチング・スピードが早い。すなわち動作点が活性領域を通過する速度が速い。
④破壊耐量が強く、信頼性が高い。すなわち順バイアス、逆バイアス時の安全動作領域が広い。

 

_◇スイッチング動作
スイッチング時間の各パラメータの意味
①遅延時間 delay time: td
ベースに入力パルスが印加されてからコレクタ電流が最大値の10%に達するまでの時間。動作点をOFFから活性領域境界面に移動するのに要する時間
②上昇時間 rise time: tr
コレクタ電流が最大値の10%から90%までに達する時間。活性領域を通過する時間。
③蓄積時間 storage time: tstg
ベース電圧が0または逆方向に加わってからコレクタ電流が最大値の90%までに減少する時間。飽和領域にあるトランジスタのベースにOFFパルスを印加し、活性領域境界面に移すまでに要する時間。
④下降時間 fall time: tf
コレクタ電流が、最大値の90%から10%に減少する時間。活性領域を通過する時間。
⑤ターン・オン時間 turn on time: ton
td + tr
⑥ターン・オフ時間 turn off time: toff
tstg + tf
※高速スイッチング用バイポーラトランジスタのスイッチング速度は数100kHzくらいが限度。それ以上の周波数帯ではMOS FETやIGBT。

 

◆FET
Field Effect Transistor
電界効果トランジスタ

 

_◇端子
S ソース
D ドレイン
G ゲート
※パッケージの型番面を正面に端子を下に向けたとき
G D S
の順であるものが多いが、そうでないものもあるので
要データシート確認

 

_◇原理動作
電圧制御素子
⇒ゲートに加える電圧によってドレインとソースの間の電流を制御する
※電子または正孔の1つのキャリアしか用いない
Nチャネル:電子
Pチャネル:正孔
⇒Pチャネル、一般的に遅い
           ┌───┐
          ┌┴─┐┌┴─┐
          │R2││RL│
          └┬─┘└┬─┘
        Q┃├┘   │
 ┌───┬──→┃│    │
┌┴─┐┌┴─┐ ┃├┐   │
│R1││VR│   │  ─┴─
└┬─┘└┬─┘   │   ━
─┴─  │     │  ───
 ┯   │     │   ┯
 └───┴─────┴───┘
VRを変化させてゲートにかかる電圧を変化させると
ドレイン、ソース間の電流が追随して変化する
Nチャネル:ドレインからソースに電流流れる
Pチャネル:ソースからドレインに流れる
Nチャネル:+側回路
Pチャネル:-側回路
※増幅のメカニズム
FETは「増幅」というたった一つの機能しかもっていない単機能デバイスである。
FETは、ゲートでかかる電圧に比例するよう制御されたドレイン・ソース間の電流源と考えることができる。

 

_◇特性
デプレッション型 Depletion
ゲート電圧<ソース電圧でつかう
エンハンスメント型 Enhancement
ゲート電圧≧ソース電圧で使う
※Id(Y)対Vgs(X)のグラフを伝達特性という。
※相互コンダクタンス
gm=⊿Id/⊿Vgs [Sジーメンス]
※ドレイン飽和電流 Idss
※ピンチオフ電圧 Vp
※絶対最大定格
ドレイン-ソース間電圧 Vdss
増幅出力の最大電圧。通常は半分以下で使う
ドレイン電流 Id
ドレインに流せる電流の最大。通常半分以下。
電力 Pd
最大電力を放熱量から求めたもの
周囲25℃で理想放熱板でジャンクション温度が<150℃など
温度(動作時、非動作時)
※パラメータ
Idss ゲートに加わる電圧が0Vのときにドレインに流れる電流
Igss ゲートとソース間の漏れ電流
Vp ピンチオフ電圧
⇒ゲート電圧がこれ以下となるとドレイン電流が流れなくなる
⇒Vgs(OFF)あるいはカットオフ電圧
gm 増幅率(相互コンダクタンス)
⇒ gm = Id/Vgs ゲート電圧の変化とドレイン電流の比
⇒Yfs(順方向伝達アドミタンス)単位S(ジーメンス)
Rds ドレイン、ソース間抵抗。ON抵抗
⇒Rds-on
⇒JFETでは大きめ、MOS-FETではほとんどゼロに近いがある
Ciss ソース接地でのゲート-ソース間容量
⇒FETは容量性の負荷が多い
Crss ソース接地でのドレイン-ゲート容量
⇒Crssが大きいと高周波の利得が得られない
F 雑音指数
⇒NF(Noise Factor)
⇒出力信号に対する雑音の量を信号と雑音の比で表す

 

_◇バイポーラトランジスタに対する得失
入力インピーダンスが高い
⇒入力信号の損失が少ない
Vgsの個体差がばらつく
⇒増幅素子としての設計が難しい

 

_◇型番、形式
2SJxxx PチャネルFET
2SKxxx NチャネルFET
※混合(周波数変換)、利得調整などの目的で2個のゲートを持つ品種は3で始まる番号になる

 

_◇JFET
デプレッション型のみ。
Nチャネル、Pチャネルあり。
JFETはゲートチャネル間がダイオードであり、これを逆バイアスしてFETとして動作させる。入力インピーダンスは10^8~10^12ΩD-S間はNチャネルならN型、PチャネルならP型の半導体でジャンクションは無い。
※通常ドレインとソースの区別がない(回路対称)。高周波用やカスケード接続のものは非対称のものがある。
NチャネルJFET
     ○D
 ┌───┼┐
G│ ┠─┘│
○┼→┨  │
 │ ┠─┐│
 └───┼┘
     ○S
PチャネルJFET
     ○D
 ┌───┼┐
G│ ┠─┘│
○┼←┨  │
 │ ┠─┐│
 └───┼┘
     ○S
※JFETはゲートソース間の電圧Vgsが0Vのときドレイン電流Idが最大となる。
⇒ドレイン飽和電流Idss
(実デバイスではIdssの値によりランクづけされている)
※JFETではIdss以上の電流は流せないので、電流制限作用がある。通常、1mA~数十mA。
※NchJFETの場合、Vgsはジャンクションに逆バイアスを与えるように、0Vから負方向に動かしていくとIdは小さくなり、ある点Vpで0となる。
⇒Vp(ピンチオフ電圧)

 

_◇MOSFET
ゲートチャネル間に絶縁膜あり。入力インピーダンスは10^12~10^14Ω。サブストレート、チャネル間にPN接合あり。
※サブストレートは「ソース」端子に接続されている、ソース、ドレインは対称でない。
NチャネルMOSFET
     ○D
 ┌───┼┐
G│┃├─┘│
○┼┨├←┐│
 │┃├─┤│
 └───┼┘
     ○S
PチャネルMOSFET
     ○D
 ┌───┼┐
G│┃├─┘│
○┼┨├→┐│
 │┃├─┤│
 └───┼┘
     ○S
※デプレッション型MOSFETではJFETとことなり、ゲート電圧がダイオードに与えられているわけではないので、Vgsが0Vを超えても電流は流れ続ける。
※デプレッション型MOSFETは高周波増幅回路で使われることが多い。
※パワーMOSではエンハンスメント型
例)代表的なMOSFET(エンハンスメント型)
東芝2SK3205の絶対最大定格
ドレインソース間電圧
Vdss=150V
ドレインゲート間電圧(Rgs=20kΩ)
Vgdr=150V
ゲート-ソース間電圧
Vgss=±20V
ドレイン電流(DC)
Id=5A
ドレイン電流(パルス)
Idp=20A
許容損失(TC=25℃)
Pd=20W
チャネル温度
Tch150℃
電気特性(Ta=25℃)
ゲート閾値電圧(Vds=10V, Id=1mA)
Vth0.8~2.0V
ドレイン-ソース間オン抵抗 Vgs=4V, Id=2.5A
Rds(ON) typ 0.54Ω max 0.75Ω
スイッチング時間
tr10ns
ゲート入力容量 Vdd=120V, Vgs=10V
Qg 12nC

 

_◇MOSトランジスタのW/L
MOSトランジスタの特性はW/Lによる
W:チャネル幅
L:チャネル長

 

_◇CMOSトランジスタの特性
※トランジション(遷移)時間
信号が電源電圧の10%~90%または20%~80%遷移する時間
※スレッショルド電圧Vth
CMOSでは通常、電源電圧の2分の1
※立ち上がり時間 Tplh
入力スレショルドから出力が立ち上がる時間
(スレッショルド電圧まで)
※立下り時間 Tphl
入力スレショルドから出力が立ち下がる時間
(スレッショルド電圧まで)

 

_◇基本回路形式
①ソース接地回路 Source common
   VDD┬
    ┌─┴┐
    │RD│
    └─┬┘出力
      ├─○
入力  │├┘
○─┬→┤│
  │ │├┐
┌─┴┐┌─┴┐
│R1││RS│
└─┬┘└─┬┘
  ┴   ┴
電圧利得(大)-反転出力
A≒-Rd/((1/gm)+Rs)
入力インピーダンス(大)
Zin≒R1
出力インピーダンス
Zout≒Rd
②ドレイン接地回路(ソースフォロワ)
   VDD┬
      │
入力  │├┘
○─┬→┤│
  │ │├┐出力
  │   ├─○
┌─┴┐┌─┴┐
│R2││RS│
└─┬┘└─┬┘
  ┴   ┴
電圧利得(ほとんどない)⇒バッファ向け、非反転
A≒-Rs/((1/gm)+Rs)
ただし,A<1
入力インピーダンス(大)
Zin≒R2
出力インピーダンス(小)
Zout≒(Rs/gm)/((1/g)+Rs)
③ゲート接地回路
        VDD┬
         ┌─┴┐
         │RD│
入力┌──┐   └─┬┘
○─┤RS├─┐ ┌─┴○
  └──┘ ┴─┴  出力
       ─┬─
        ↑
        ┴
電圧利得
A≒-Rd/((1/gm)+Rs)
入力インピーダンス(小)
Zin≒Rs+(1/gm)
出力インピーダンス
Zout≒Rd
⇒高周波特性に優れる
⇒電圧利得も得られる
⇒非反転

 

_◇基本増幅回路の設計例
※バイアス
ゲート電圧を直流的にオフセットしてFETのピンチオフ電圧付近を外し、ゲート電圧の変化に対して直線的にドレイン電流が変化する領域を使う
⇒利得や雑音特性、周波数特性が適切となる動作点を決める
例)ソース接地回路 Nch J-FET
電圧利得4、最大出力電圧振幅4V
⇒電源電圧は最大出力電圧振幅より十分大きくする
ここでは±15Vのオペアンプと併用を考える
⇒電源電圧+15V
⇒FETはゲート、ドレイン耐圧15V以上の定格のものを選ぶ
※ドレイン電流の決定
Idss以下で使う
ばらつきも考慮して余裕を持たせる
⇒小信号用JFETの場合 0.1mA~数mA
⇒Id=1mAとする
※Rd, Rsの決定
利得からRd, Rsを決める. A=4なので
A≒-Rd/((1/gm)+Rs)
とりあえずgmは考慮せず、Rd:Rs=4:1とする
Rs: ソース電圧Vsとソース電流Isで決まる
⇒温度などによるIdの変動をうけないように
Vgs < Rs * Is
となるようにする。
⇒Isが非線形な領域にかからないよう
Rs*Is > 2V
とオフセットを加える
①Rsでの電圧降下を2Vとすると
Id≒Isで、Id=1mAとしたのでRs=2KΩとなる
②Rd:Rs=4:1より Rd=8KΩ
③E24系列から Rs=2K, Rd=8.2K
※Vdsと電力損失Pd
Vds=ドレイン電圧Vdからソース電圧Vsを引いたもの
Vds=Id*Rd-Is*Rs=15V-1mA*8.2k-2V=4.8V
この4.8VとIdの積が電力損失Pdとなる
Pd=Vd*Id=4.8*1mA=4.8mW
⇒FETの最大定格Pdに対して十分な余裕を持って小さければOK
※出力振幅はRdによる
⇒Rdを大きくしすぎるとVds=0となって波形の下側がクリップ
⇒Rdを小さくすると出力波形の上側が電源にかかってクリップ
Vd=Id*Rd
Id=1mA, Rd=8.2k(8.2V)
Vs=2V
最大出力振幅はVd~Vs, 4Vとなるが余裕をみて3Vとする
※ゲートバイアス
Vg=Vs+Vgs
ドレイン電流Idssは、グレードや温度、個体差で異なる
⇒Vgsもばらつく⇒gmも影響をうける
⇒ばらつきのセンター値で設計する
小信号JFETのVgs=-0.3V
Vg=Vs+Vgs=1.7V
バイアス抵抗は、電源電圧を分圧して作る
⇒入力インピーダンスが低くならないようある程度大きい抵抗で
⇒大きすぎるとノイズに弱くなる
※入力と出力のDC成分をカットするコンデンサ
⇒あまり小さいと低周波が通らない
⇒入ってきた信号が3dB低下するfc(カットオフ周波数)
fc=1/(2πCR)
R…入力側では入力インピーダンス,出力では次段の入力インピーダンス(+負荷抵抗Rl分)

 

_◇ソース接地増幅回路
Common Source Amplifier
15V
◎┬───┬───┬─┐
┌┴─┐┌┴─┐+│ │
│C3││C4│ │ │
└┬─┘└┬─┘ │┌┴─┐
 ┴   ┴ ┌─┘│Rd│
       │  └┬─┘┏──┐
     ┌─┴┐  ├──┨C2├─○
     │R1│  │ +┗──┘
     └─┬┘  ↓id
  ┌──┓+│ ┠─┘D      Vo
○─┤C1┠┬┴─┨2SK184GR
Vi└──┛│ G┠─┐S      ○
    ┌─┴┐   ↓is      │
○   │R2│   │       │
│   └─┬┘ ┌─┴┐      │
│     │  │Rs│      │
│     │  └─┬┘      │
┴     ┴    ┴       ┴
C1:10μ(カップリングコンデンサ)
入力信号に加えられた交流成分だけを通過させる
ベースバイアス電圧(DC)をカットする
C2:10μ
C3:0.1マイクロ
C4:10μ
R1:150k
R2:20k
R1,R2=バイアス回路
Viに対してDC電圧を重畳。(1.7V)
Rd:6.2k
Rs:2k
※この回路の電圧利得Av=3
※Vsの交流電圧波形は⊿Viと位相、振幅が同じ(増幅率1)
※バイポーラのエミッタ接地回路に相当する回路であるが、バイポーラと異なり、ソース電位がゲート電位より高くなる。
※ドレイン電流idとソース電流isは同じ
※この回路のFETは⊿Viで⊿idが制御される可変電流源と考えられ、出力は⊿idをドレイン抵抗Rdで電圧変化⊿dに戻して取り出している。

 

_◇JFETをつかったソース接地増幅回路の設計
※JFETをつかったソース接地増幅回路の各部の計算
直流電位
①ゲートバイアス電圧
Vg=(R2/(R1+R2))*Vdd
②VsからからみたVgsは負になるので
Vs=Vg-Vgs
(Vgsは品種により異なる)
③Is(ソース電流isの直流成分)は、
Is=Vs/Rs=(Vg-Vgs)/Rs [A]
④ドラインの直流電位は、
Vd=Vdd-Id*Rd [V]
ここでId=Isなので
Vd=Vdd-Is*Rd [V]
交流的電圧増幅度
⑤Vgsが常に一定値と考えると、ゲートの交流電位viがそのままソースに現れる。
⊿is=Vi/Rs
⑥ここで
⊿Vd=⊿id*Rd=⊿is*Rd=(Vi/Rs)*Rd
⑦VoはコンデンサでVdの直流成分をカットしたものなので
Vo=⊿Vd=(Vi/Rs)*Rd
Av=Vo/Vi=Rd/Rs
※JFETをつかったソース接地増幅回路の設計

 

_◇ソースフォロア
Source Follower
電圧利得は1だが、出力インピーダンスがほとんどゼロになるので、重負荷の駆動に使われる。
15V
◎┬───┬───┬─┐
┌┴─┐┌┴─┐+│ │
│C3││C4│ │ │
└┬─┘└┬─┘ │ │
 ┴   ┴ ┌─┘ │
     ┌─┴┐  │
     │R1│  │
     └─┬┘  ↓id
  ┌──┓+│ ┠─┘D
○─┤C1┠┬┴─┨2SK184GR
Vi└──┛│ G┠─┐S
    ┌─┴┐   │  ┏──┐
○   │R2│   ├──┨C2├─○
│   └─┬┘ ┌─┴┐+┗──┘ Vo
│     │  │Rs│      ○
│     │  └─┬┘      │
┴     ┴    ┴       ┴
C1:10μ(カップリングコンデンサ)
入力信号に加えられた交流成分だけを通過させる
ベースバイアス電圧(DC)をカットする
C2:10μ
C3:0.1マイクロ
C4:10μ
R1:1M
R2:1M
Rs:3.9k
※ソースフォロアはドレイン接地回路とも呼ばれる。(交流的には電源はGNDと同じ)
※カップリングコンデンサの交流的なインピーダンスをゼロと考えれば、負荷抵抗RLはRsと並列に接続されていることになる。一方ソース電位Vsはゲート電位Vgだけできまり、Rs、RLには無関係。ソース電位Vsの交流成分であるVoの大きさはVgだけできまり負荷抵抗RLには無関係となるので、交流的な出力インピーダンスはほぼゼロとなる。

 

◆パワーデバイス
※低耐圧 <200V
※高耐圧 >400V
※出力容量(VA)と動作周波数(Hz)で適用範囲決まる

 

_◇スイッチング回路のロス
OFF期間の漏れ電流によるロスPIを無視すれば以下のようになる
P ≒ Pon + Pton + Ptoff
Pon ON時の飽和電圧による
Vce(sat)コレクタ-エミッタ間飽和電圧の低いもので抑えることができる
Pton ターンオンロス(過渡的)
Ptoff ターンオフロス(過渡的)
一般にtf>trなので、tfを短くするためにターンオフ時にベース-エミッタ間に逆バイアスをかけることがある。ベース-エミッタ間に残るドライブ電流のキャリアを消滅させ、早くOFFするため。しかし逆バイアスのかけかたによっては信頼性を落とすことになる。

 

_◇放熱設計
最大接合部温度Tjmaxは決められているので、いかにTjを低い温度で使うかで、信頼性や寿命が決まってくる。
放熱の等価回路
    Tj ┌──┐Tc┌──┐ ┌──┐
 ───┬──┤θi├┬─┤θs├─┤θc├┐
  ↑ │  └──┘│ └──┘ └──┘│
  │┌┴┐    ┌┴─┐       ┌┴─┐
⊿Tj│↑│Pc  │θB│       │θF│
  │└┬┘    └┬─┘       └┬─┘
  ↓ │      │          │
 ───┴──────┴──────────┘
    Ta
θi:接合部からパッケージまでの内部熱抵抗
θB:パッケージから外気までの外部熱抵抗
θs:絶縁板熱抵抗
θc:接触熱抵抗(放熱板と接触部の間)
θF:放熱板熱抵抗(外気に対する)
接合部からみた外気までの全熱抵抗はθBが比較的に大きいので無視することで
θj-A ≒ θi+θs+θc+θF
θiはトランジスタのカタログから計算式で求まる
θi=(Tjmax – Tc)/Pcmax
トランジスタのTjは
Tj=P*(θi+θs+θc+θF)+Tc
となるので、ロスPを求めることにより必要な放熱板の熱抵抗θfを求めることができる。
※一般に最大接合温度Tjmaxの70~80%ディレーティングでの使用が一般的

 

_◇安全動作領域
スイッチング用トランジスタの破壊の原因
①電力損失大→熱暴走による破壊
破壊時間長い
②異常パルスによる順方向バイアス破壊
破壊時間10ms以下
③異常パルスによる逆方向バイアス破壊
破壊時間10ms以下
▽順方向バイアス安全動作領域
※熱抵抗制限領域
コレクタエミッタ間電圧が小さい間は、Pc一定と考えられ、I=P*V^-1となって、両対数グラフ上では-1の勾配となる。この領域では、ロスによる発熱がさらに温度上昇を引き起こす熱暴走破壊となり、接合温度が200℃を超える。
※S/B(2次破壊)制限領域
高電圧ではPcは一定とはならず、許容電力が小さくなり、I=P*V^-Nの関係となる。平均接合温度が150℃以上にならなくても局部的に450℃以上となり破壊する。
※温度上昇当を計算し、温度ディレーティングして設計することが必要
▽逆方向バイアス安全動作領域
※リアクトル負荷

 

_◇パワーMOSFET
動作周波数 数10kHzから数百kHz
60Vで500A程度は可能
_◇IGBT
Insulated Gate Bipolar Transistor
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ
MOSFETをつけたバイポーラトランジスタ。MOSFETに比べて高耐圧、大電流を流せる。数十A~数百A。

 

_◇サイリスタ(Thyristor)
ゲートからカソードへゲート電流を流すことによりアノード、カソード間を導通させることができる。導通を停止するためにはアノード、カソード間電流を一定値以下にする必要がある。
※SCR Silicon Controlled Rectifier
PNPNの四重構造を無し、PNPトランジスタとNPSトランジスタを組み合わせた回路と等価。
Anode┌─┬─┬─┬─┐Cathode
─────┤P│N│P│N├─
     └─┴─┴┬┴─┘
          │Gate
等価トランジスタ回路
          │
     ┌─┬─┬┴┐
─────┤P│N│P│
     └─┴┬┴┬┘
        │ │
       ┌┴┬┴┬─┐
       │N│P│N├─
       └─┴─┴─┘
※カメラのフラッシュなど、一度導通状態にしたら通過電流が0になるまで導通させる用途に向く。電流0のタイミングでOFFになるため、サージ防止に役立つ

 

_◇SIサイリスタ
Static Induction Thyristor

 

_◇トライアック(TRIAC)
Triode AC switch. 双方向サイリスタ。回路的には2個のサイリスタを逆並列に接続し、双方向に電流を流せるようにしたものと等価(実際はモノリシック)。交流でも直流でも使える。

 

_◇SIT
Static Induction Transistor

 

_◇GTO
Gate Turn Off Thyristor

 

◆スイッチ、リレー

 

_◇タクトスイッチ
基板に実装することを目的とした比較的小さく、安価なスイッチ。

 

_◇ポリスイッチ
過電流保護素子。ヒューズと違い繰り返し使用が可能。導電性ポリマーを材料とするサーミスタ。PTC(正温度特性)をもち、温度が上層すると抵抗が増大する。また、一度高抵抗になると電源ONの間は高抵抗を維持する(ラッチング特性:わずかに電流が流れ、温度が維持される。)

 

_◇検知スイッチ
物体の有無や機構メカの位置などを自動的に検出するために用いられるデバイス。小型のメカニカル接点機構。
3×3.5×0.9mmサイズ程度の製品あり。
パナソニックエレクトロニックデバイス

 

_◇リレー
Relay 電磁石に電流が流れると接点が閉じ、電流が切れると接点が開く
※リードリレー
電子回路で使うようなリレー、直接リードを電磁石で動かす
電磁石、リードはケースに封入。
リードリレーは5V,3.3Vで駆動可。
代表メーカ:オムロン
※接点が金属なので入力された信号はそのまま出力され、遅れもない。
※非常に高い高周波の信号は、リード部分のリアクタンス成分の影響を受ける→高周波用途のリレーを使う。

 

_◇リレー駆動回路
           +12V┬
               │
 ┌───────────┐ ├─┐
 │リレー       ┌┼─┘ ┴
 │MR62-12S  L│   △
 │(NEC)     └┼─┐ │1SS176
 └───────────┘ ├─┘
               ↓42mA
     ┌──┐    ┃/
○→───┤R1├┬───┨ 2SC2458
1mA  └──┘│   ┃\
+5V~    ┌┴─┐   V
0V      │R2│   │
        └┬─┘   │
         ┴     ┴
R1:4.3k
R2:10k
※モータやリレーのコイルのような誘導性負荷をスイッチングする場合、負荷に流れる電流を遮断したとき(トランジスタをOFF)、逆起源力が発生する。このため負荷に並列にダイオードを接続し、逆起電力によりコレクタ電位が
電源電圧+ダイオードの順方向電圧降下
以上になったときに、ダイオードをONさせて逆起電力を還流させる。
⇒フライホイールダイオードと呼ぶ。

 

_◇アナログスイッチ
もっともポピュラーなアナログスイッチ
4066

 

◆ヒューズ
Fuse
定格電圧 その電圧以上では使えない
遮断容量 どれだけの電流が流れたときに切れるか
種類
速動溶断型
タイムラグ溶断型(スローブロー)
モーターなど機械部分がある場合
普通溶断型
形状
ガラス管
面実装タイプ
面実装タイプ主要メーカ:リテルヒューズ

 

◆オプトデバイス

 

_◇フォトカプラ
発光ダイオードを光らせ、その光でフォトトランジスタを導通させる。
①パルス信号を伝達する
②アナログ信号を伝達する
※スイッチ動作
出力のフォトトランジスタにはベースがなく、ベース電流は常にコレクタから流れる。どちらでも同じようにトランジスタを飽和させてスイッチ動作させることが可能(極性は反対)
コレクタ負荷    ─┬─
          ┌┴┐
 ┌───────┐│R│
─┼─┐     │└┬┘
 │┌┴┐   ─┼─┴→ ━┓ ┏━
 ││L│ ┃/ │     ┃ ┃
 ││E│→┃  │     ┗━┛
 ││D│ ┃\ │
 │└┬┘   V├─┐
─┼─┘     │ │
 └───────┘ ▽
エミッタ負荷
 ┌───────┐ ┬
─┼─┐     │ │
 │┌┴┐   ─┼─┘
 ││L│ ┃/ │
 ││E│→┃  │
 ││D│ ┃\ │
 │└┬┘   V├─┬→ ┏━┓
─┼─┘     │┌┴┐ ┃ ┃
 └───────┘│R│━┛ ┗━━
          └┬┘
           │
           ▽
※回路電流容量
出力電流と出力電圧、そのために必要な入力電流および伝達特性の経時劣化を見込む必要がある
①入力電流IFの許容最大値
Ta(℃)対Pd(mW)グラフ
使用温度から発光許容損失(mW)を読む
Vf(V)対If(mA)グラフ
上記のPdとなるIf,Vfを読む
電流定格を超えなければとりあえずこれが最大のIf
さらに、LEDは長時間使うと発光効率が下がるので
温度と使用予定時間からIfの最大値をチェック
②IFの許容範囲で出力できる最大電流
③経時劣化による出力電流ICの減少
④導通出力電流を一定以下にするICの範囲
例)東芝TLP521-1
絶対最大定格@Ta=25℃
発光側
直流順電流70mA
※抵抗や定電流ダイオードなどでこの電流を超えないようにする。
受光側
コレクタエミッタ間電圧Vceo 55V
コレクタ電流Ic 50mA
特性:ダイオードに流れる電流でトランジスタのコレクタ電流が決まるので、Ic-If特性が重要。
⇒必要なIfを流すために、発光ダイオードの順電圧Vfを確認、そのVfを確保できるRfの値を考えること。
※フォトカプラの出力はオープンコレクタなので、プルアップが出力に必要。
 ┬Vcc I┏━━━━━┓ ┌──┐ ┬VEE
 │┌──┐f┃    ┌╂┬┤PU├─┘
 └┤RF├→╂┐   │┃│└──┘
  └──┘ ┃│ │/ ┃│
       ┃▽ │  ┃└─────○
  ┌──┐ ┃┬ │\ ┃
  │ C├─╂┘   >╂┐
○─┤B │ ┗━━━━━┛│
  │ E├┐       │
  └──┘│       │
      ┴       ┴
Rf=(Vcc-Vf-Vce)/If

 

_◇CdS受光素子
光によって抵抗値が減少する。カドミニュームを使用。
例)光が当たらない時には2MΩ→光が当たった時には200Ω。光の強さによって抵抗値はアナログ的に変わる。

 

_◇フォトダイオード
PD
フォトン1個から正負の電荷1個が生じ、これが平均化されて出力としては「直流」に見える。しかし、実際にはフォトン1個一個に対応するパルスの集まりである。(但し、フォトン1個1個が電子1個分の電荷なので、検出は難しい)
①フォトダイオードには逆バイアスがかけられており、PN接合部には空乏層がある。
②ここに光が照射され、光エネルギーがバンド・ギャップエネルギーEgよりも大きいと価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯にはホールが残る。
③逆バイアスかかっているのでホールはN->P、電子はP->N方向に移動する。
④ここでダイオードの両端を短絡すれば光の強度に比例した電流がアノードから外部をとおりカソードへ流れる。
※暗中では通常の整流ダイオードと同様の特性を示す。
※NEP(等価雑音電力)
検出器の雑音の大きさが、センサの出力信号と等しくなる入射光量。逆方向の暗電流により決まる検出限界。
※PNフォト・ダイオード
通常のPN接合によるもの
※PINフォト・ダイオード
p-intrinsic-n
pnフォトダイオードの間に真性半導体(intrinsic)層を挟み、電極間距離をあけて静電容量を低下させ高速化を狙ったもの。
逆バイアスかけて使う。
接合容量が低減されるので、高速パルスにも反応
⇒リモコンの受光素子に使われる。
※ショットキーフォトダイオード
P層の代わりに金メッキなどを使用して空乏層をきわめて薄くつくったもの。短波長の感度が高くなる。
※APD(アバランシェ・フォト・ダイオード)
大きな電界によりアバランシェ増倍を起こして高感度に検出するもの。(高い逆バイアスを印加することにより光電流が増倍される)
⇒微弱光を定雑音で測定できる
※フォトダイオードの出力増幅回路例
          ┌──┐
         ┌┤Rf├┐
         │└──┘│
         │┌──┐│
         ├┤Cf├┤
 ┌──┬──┬─┤└──┘│
┌┴┐┌┴┐┌┴┐│┌──┐│
│▼││C││R│└┤- ││
│┬││t││s│ │  >┴○
└┼┘└┬┘│h│┌┤+ │ Vout
 │  │ └┬┘│└──┘
 └──┴──┴─┤
         ┴
Rf:10M
Cf:10p
Ct:100p
Rsh:100M
※微弱光の検出
金属製の箱にいれてシールド。
アンプの電源を電池にする。
※照度計
OPアンプは、バイアス電流が小さく、単電源で動作するものが良い
※高速光検出
高速PINフォト・ダイオードを使うことで数GHzの検出がおこなえる。50Ωの同軸ケーブルをアノードに接続。50Ωで終端

 

_◇フォトトランジスタ

 

_◇通信用フォト素子
高速応答。。。逆バイアスを加える
端子間容量減少=>キャリアの空乏層走行速度大
暗電流増⇒雑音増
※PINフォトダイオード
高速性や低暗電流特性に優れる。光通信向き。
遮断周波数と最適動作電圧が記載されている。
※端子間容量が受光面積にほぼ比例
⇒光のスポットに対して受光径が必要以上に大きいものは不利となる。