☆代数(行列、ベクトル編)
albebra
◎行列
matrix
◆行列、ベクトル、行列式
数を縦横に長方形状にならべたもの
_ 横の並びを行 ⇒1行とりだせば行ベクトル
_ 縦の並びを列 ⇒1列とりだせば列ベクトル
_ 個々の数を成分
_
※行数がmで列数がnである行列を mxn行列という
※行列に名前をつけるときは通常アルファベットの大文字をつかう
※i行、j列に相当する数を a_ij と書き、行列 A のij成分とよぶ
※行と列の数が等しい正方形の行列を正方行列という。
※ベクトル
_ 空間の中の点、矢印
※行列
_ 空間から空間への素直な写像
※行列式
_ 行列による写像による体積拡大率
_◇束縛ベクトル
位置ベクトルのように、始点を固定したベクトルを束縛ベクトルという
◆線形空間
加算と定数倍が定義された空間
⇒ベクトル空間
※現実世界の機能縮小抽象化版
※ゼロベクトルのみが特別で、他は対等。
⇒原点がある
※長さも角度も定義されていない。
⇒異なる方向のベクトルの大小比較はできず、回転も定義されない
_◇基底と座標
基底:基準となる一組のベクトルのこと
(e1→, e2→)
⇒基底のメンバであるe1→などのベクトルを基底ベクトルとよぶ
あるベクトルv→が基底をつかって
v→= x*e1 + y*e2→
のようにあらわせるとき、(x,y)を座標と呼ぶ
※基底となる条件
u1*e1→ + … + un*en→ = O→
なら
u1=…=un=0
⇒線形独立
⇒u1…unを線形結合の係数とよぶ
※線形結合
以下の形をいう
u1*e1→ + … + un*en→
※e1→ … en→の線形結合で任意のベクトルx→が表せ、しかもその表し方が唯一であるとき、(e1→, … ,en→)を基底と呼ぶ
_◇次元
※基底ベクトルの本数をもってその空間の次元とする
_◇内積空間
「拡張された」線形空間、長さ、角度が定義される
※和と定数倍だけでは、座標系に依存しない内積を定めることができない
※長さを定義し、それをつかって内積を定義
⇒計量ベクトル空間、計量線形空間
◆アフィン空間
線形空間から原点を取り払ったような空間
◆線形代数における正当な演算
ある座標系で = であった演算は、別な座標系で表現しても=。
⇒座標系が変わると変わってしまう演算は、対象そのものの性質ではなく、特定の座標系での見た目の性質
◆行列の和と積
_◇行列の相等
対応する成分がすべて等しい同じ形の2つの行列 A, B を等しいといい
_ A = B
と書く。
⇒すべてのi,jについて
_ a_ij = b_ij
_◇行列の加法・減法
①形の等しい2つの行列A, Bの加法は、対応する成分同士の和
②形の等しい2つの行列A, Bの減法は、対応する成分同士の差
※行列の和
交換法則がなりたつ
A+B=B+A
結合法則がなりたつ
(A+B)+C=A+(B+C)
A+O=A
A+(-A)=O
_◇行列のスカラー倍
分配法則が成り立つ
(a+b)*A = a*A + b*A
a(A+B) = a*A + a*B
結合法則が成り立つ
(a*b)*A = a*(b*A)
0*A = O
1*A = A
_◇行列の乗法
※行列 A と B の 積の行列
行列A の i 行目の行ベクトル
行列B の j 列目の列ベクトル
の内積をij成分とする i x j 行列を積の行列とい、ABと書く
※一般に交換法則は成りたたない
AB ≠ BA
※分配法則は成り立つ
A(B+C)=AB+AC
(A+B)C=AC+BC
※行列Aの列数と、行列Bの行数が一致するときだけ積を求めることが可能
結合法則はなりたつ
(A*B)*C = A*(B*C)
単位行列
A*E = E*A = A
A*A =A であれば、A=E
ゼロ行列
A*O = O*A = O
※行列の積とは、写像の合成である
(B*A)x→ = B*(Ax→)
_◇2次の正方行列の和と積
\(A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \\ \end{pmatrix}\)
\(B=\begin{pmatrix} e & f \\ g & h \\ \end{pmatrix}\)
\(A+B=\begin{pmatrix} a + e & b + f \\ c + g & d + h \\ \end{pmatrix}\)
\(AB=\begin{pmatrix} ae+bg & af+bh \\ ce+dg & cf+dh \\ \end{pmatrix}\)
\(BA=\begin{pmatrix} ea+fc & eb+fd \\ ga+hc & gb+hd \\ \end{pmatrix}\)
※乗法に関して非可換である。
AB≠BA
※交換法則の成り立つ形は可換であるという。
_◇スカラー三重積
A・(B×C)
=
|Ax Ay Az|
|Bx By Bz|
|Cx Cy Cy|
※ベクトルA,B,Cが右手系をなすならば、スカラー三重積は、A,B,Cを辺とする平行6面体の体積に等しい
→スカラー3重積では、3つのベクトルを循環的に順序を変えてもその値は変わらない
_◇ベクトル三重積
一般に
A×(B×C)≠(A×B)×C
である
◆ゼロ行列と単位行列
_◇零行列
すべての成分が0である行列。通常 O で表す
※零行列の掛け算については交換法則が成り立つ
AO=OA=O
_◇正方行列
行の数と列の数が等しい行列。正方形の形
※nxn行列をn次の正方行列という
※対角線上に並んだ成分を対角成分と呼ぶ
※トレース
n次正方行列の対角成分の和
_ a11+a22+…+ann
をAのトレースという。tr(A)で表す
※上三角行列
正方行列の一種で、上方が三角形、それ以外の成分が0
A=(a_ij)n*nにおいて、a_ij=0(i>j)
※下三角行列
下方が三角形、それ以外が0
A=(a_ij)n*nにおいて、a_ij=0(i<j)
_◇対角行列
正方行列の一種、対角成分以外の成分がすべて0
※スカラー行列
対角行列の一種で、対角成分がすべて等しい行列
_◇三重対角行列
対角成分とその上下左右に隣接する成分のみに0以外の値が出現する行列
_◇単位行列
左上から右下にかけての対角線上に位置する成分が1で、他の成分が0である正方行列を単位行列という。通常 E または I であらわす
※単位行列の掛け算については交換法則がなりたつ
AE=EA=A
_◇2次の正方行列のゼロ行列と単位行列
\(O=\begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \\ \end{pmatrix}\)
\(BA=\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix}\)
※ゼロ行列、単位行列は通常の数の「0」および「1」の役割を果たすが、しかし、行列においては
①ゼロ行列でない2つの行の積がゼロ行列になることがある。
②二乗してゼロ行列になるものもある。
_◇直交行列
orthogonal matrix
逆行列と転置行列が等しい実行列
◆行ベクトルと列ベクトル
_◇行ベクトル
1xn行列をn次の行ベクトルという
※行ベクトルについては、成分の間にコンマを書くことがある。(行列として扱う場合は、コンマなしの習慣がある)
_◇列ベクトル
mx1行列をm次の列ベクトルという
◆転置行列
transported
_◇転置行列
a_ij を (i,j) 成分とする (m,n)型の行列 A=(a_ij) に対して,a_ji を (i,j) 成分とする (n,m)型の行列をAの転置行列(transposed matrix)といい,A^T,または tA で表す.
※先行するtは上付き文字
※行と列を交換した行列である
※転置行列を使うと、行列の掛け算表現を簡潔にすることができる。
_◇転置行列の性質
① t(A+B) = tA + tB
② t(c*A) = c * tA
③ t(A*B) = tB * tA
※転置行列の転置は元に戻る
t(tA)=A
_◇対称行列
正方行列で、左上から右下への対角線に関し、成分の値が対称になっている行列
⇒i行j列目の成分と, j行i列目の成分がすべて等しい正方行列
※転置させても同じ行列になる行列。
※実正方行列Aが
Aの転置=A
のとき、対称行列という
_◇交代行列
行列Aの転置行列をtAとするとき
_ tA = -A
となる行列 A を交代行列という
例)
\(A=\begin{pmatrix} 0 & -1 & 3 \\ 1 & 0 & -2 \\ -3 & 2 & 0 \\ \end{pmatrix}\)
※実正方行列Aについて
Aの転置行列=-A
のとき交代行列、または反対称行列という
⇒交代行列では対角要素はすべて0である
_◇エルミット行列
Aの要素a_ijをその複素共役a_ij*で置き換えて得られる行列をA*で表す
※正方行列Aについて、
_ Aの転置行列=A*
のときAをエルミット行列という。
⇒実行列の対称行列を要素が複素数の場合に拡張したもの
⇒エルミット行列で実行列のものが対称行列
※転置と複素共役とを同時に行って得られる行列をエルミット共役行列といい、A†で表す。
A†=(A*)T=(AT)*
⇒エルミット行列は行列とそのエルミット共役行列とが等しい行列
※正方行列AがA†=-Aをみたすとき、反エルミット行列という。
⇒反エルミット行列で実行列のものが交代行列である
_◇ユニタリー行列
正方行列Aが
_ Aの転置=(A*)^-1
をみたすときユニタリー行列という
⇒実ユニタリー行列が直交行列
◆行列の分割
_◇行列の分割
s-1本の横線とt-1本の縦線により、lxm行列
A=(a_ij)lxm
をst個の行列に分割する
_◇行列の分割による行列の積の計算
lxm行列A をst個の行列に分割
mxn行列B をtu個の行列に分割
分割した行列の添え字を行p, 列qであらわすと
AB=
(Σ[q=1:t]A1qBq1 [q=1:t]A1qBq2 … [q=1:t]A1qBqu)
(Σ[q=1:t]A2qBq1 [q=1:t]A2qBq2 … [q=1:t]A2qBqu)
(… … … … )
(Σ[q=1:t]AsqBq1 [q=1:t]AsqBq2 … [q=1:t]AsqBqu)
⇒A,Bを分割してできた行列を”各行列の成分(数)”であるかのように考えて行列の積を実行することより積ABを求めることができる
◆行列の対角化
対称行列Aは固有ベクトルVkから作った直交行列Vによって対角行列Λに変換できる
⇒これを行列の対角化という
※行列Aがエルミット行列の場合にはユニタリー行列Uによって
U†AU
を対角行列にすることができる。
◆正則行列と逆行列
※正則
⇒基底には依存しない
_◇逆行列
inverse matrix
行列の割り算は定義されていないが、逆行列をかけるという計算が割り算に相当する
⇒逆数に相当する
A*X=B なので BをAで割ったものが A^-1 * B に相当する。
n次正方行列Aに対して
_ AX=XA=I
_ ここで、Iはn次単位行列。
となるn次正方行列Xが存在するとき、Aはn次正則行列といい、XをAの逆行列とよび、A^-1と書く。
(エー・インバースと発音する)
※行列 A に対して、その逆行列 A^-1は存在するとはかぎらない
※有限次の行列であればAX=IもしくはXA=Iのどちらかが成り立てばX=A^-1であることが証明される。
※行列ではE÷Aのような表現はしない
_◇2次の正方行列の逆行列
\(A=\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \\ \end{pmatrix}\)
のとき、a*d – b*c ≠0ならばAは正則であり
\(A^{-1}=(\frac {1} {ad-bc}) \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \\ \end{pmatrix}\)
_◇正則行列
regular matrix
逆行列が存在する行列のことを正則行列という
※正則行列であるための必要十分条件は行列式が0でないことである。
※正則行列の各列ベクトルは互いに一次独立である。同様に各行ベクトルは互いに一次独立である。
※正則な行列Aの逆行列はただ1つしか存在しない
※n次正方行列Aに対して
AX=XA=I
となるXが存在すれば
_ Aは正則行列
_ XはAの逆行列
⇒有限の次数であればAX=IであればXA=Iであるので、どちらか一方が証明できればよい
※実数の世界で正則でないものは「0」だけだが、行列の世界では無数にある。
_◇特異行列
逆行列を持たない行列
◆行列の階数と基本変形
_◇r次小行列
mxn行列Aから、r本の行とr本の列を任意に選び、それらの交点にあたる成分を新たな成分とした正方行列
_◇行列の階数
①行列Aのr次小行列の中に少なくとも一つ正則行列がある
②(r+1)次小行列はすべて正則行列にならない
上記の条件を満たすとき、行列Aの階数はrであるという
※Bのような形の行列に変形できれば階数はrである
1 … 0 … a_1n
0 … … … …
0 … 1 … a_rn
0 … … … 0
0 … … … 0
0 … … … 0
左上部分が単位行列
下部分が零行列
※自由度
未知数の数から係数行列Aのrank[A]を引いたもの
⇒未知数2でrank[A]なら自由度は1、解は無数に存在する
_◇行列の基本変形
①ある行(列)をk(≠0)倍する
②2つの行(列)を入れ替える
③行列のある行(列)の何倍かを他の行(列)に加える
※このような基本変形をおこなっても行列の階数は変わらない
※基本変形をおこなって、左上が単位行列、下を零行列となるような形に変形した行列を標準形という
_◇階段行列
0が階段状になっている行列。
行が増えるにしたがって、左端から連続して0の数が同じか増える
ある行で0である列の行の下の行の同列はすべて0.
※「同じか増えている」ので
(3 4 5)
(0 0 4)
(0 0 2)
も階段行列となる
(2 3 4)
(0 5 6)
(0 0 0)
も階段行列
◆連立1次方程式と行列
_◇連立一次方程式の行列表現
例)
(a b)(x) = (p)
(c d)(y) (q)
A*X=B
※Aが逆行列A^-1をもてば
X=A^-1*B
※n個の未知数x1,x2,..,xnの連立一次方程式
a11x1+a12x2+…+a1nxn=b1
a21x1+a22x2+…+a2nxn=b2
…
am1x1+am2x2+…+amnxn=bm
ここで
A=
(a11 a12 … a1n)
(a21 a22 … a2n)
(… )
(am1 am2 … amn)
X=
(x1)
(x2)
(…)
(xn)
B=
(b1)
(b2)
(…)
(bm)
O=
(0)
(0)
(…)
(0)
連立方程式を
Ax=B
と書ける。あるいは
(A|B)(X )=O
(-1)
ともかける
⇒Aを連立1次方程式の係数行列
⇒(A|B)を拡大係数行列という
_◇係数行列と拡大係数行列
例)
(a b)(x) = (p)
(c d)(y) (q)
のとき係数だけの行列
(a b)
(c d)
を係数行列という
※拡大係数行列
係数行列に定数項の行列を加えたもの
(a b p)
(c d q)
_◇掃きだし法
※ガウスの掃きだし法
①行列の基本変形をつかって第1行第1列に1を作る
②これを使って下の行の第1列を全て0に履きだす
③上記の①、②を第n行第n列について適用し対角成分を1にする
⇒拡大係数行列について基本変形を繰り返すことで解を得ることができる。
※解の存在と個数に注意
_◇同次形の連立1次方程式
以下の連立方程式において
_ Ax=b
b=0のとき
_ Ax=0
を同次形の連立一次方程式という。
同次形の連立一次方程式は必ず一つの解x=0を持つ。
⇒自明な解
※x1,…,xkが解ならば、これらの一次結合も解となる
λ1x1+…+λkxk
※同次形の場合、拡大係数行列ではなく、係数行列の簡約化を行えば十分
◆変換
_◇線形変換
n次元のベクトルXをn次元のベクトルYに移す変換式が
n次の正方行列Aを用いて
_ Y=A*X
とかける変換を1次変換(線形変換)という
※変換式が定数項のない1次式でかける変換
⇒正比例をn次元に拡張したもの
※1次変換は線形性をもつ
(1)f(U+V)=f(U)+f(V)
(2)f(λ*U)=f(λ*U)
λは定数、U,Vはベクトル
_◇座標軸の回転
xy直交座標軸に対して座標軸を原点中心にθ回転してえられるXY直交座標軸
X=x*cosθ+y*sinθ
Y=-x*sinθ+y*cosθ
※この関係は、xy直交座標系上で点P(x,y)をθ回転した
点Q(X,Y)に移す場合にもなりたつ
※角θの回転
(cosθ -sinθ)
(sinθ cosθ )
この行列を2回繰り返す(2乗)すれば、2θの回転と等価になるので、
(cos2θ -sin2θ) = (cosθ -sinθ)^2
(sin2θ cos2θ ) = (sinθ cosθ )
=(cos^2θ-sin^2θ -2sinθcosθ)
(2sinθcosθ cos^2θ-sin^2θ)
※倍角公式が得られる。
_◇アフィン変換
_◇ギブンス回転
Givens rotation
detが1の直交行列
(i,k)平面での回転
(1 … 0 0 … 0)
(0 … … 0)
(0 cosθ sinθ 0)
(0 -sinθ cosθ 0)
(0 … … 0)
(0 … 0 0 … 1)
_◇ハウスホルダー変換
Householder transformation
uに直交する超平面に関する鏡映
◆複素共役行列
行列 A=(a_i,j) について,a_i,j の複素共役を(i,j)成分とする行列をAの複素共役行列(complex conjugate matrix)といいA~で表す.
※共役転置行列
行列Aの複素共役行列の転置行列をAの共役転置行列(conjugate transposed matrix)といい,A^* で表す.
◆ユニタリ行列
n次正方行列Uが
_ U・U^*=I
を満たすときUをユニタリ行列と言う
◆行列式
_◇行列式
determinant
正方行列に対して定義される。
※n次の正方行列Aに対し、ある規則に従って数を対応させた、その数を
_ 行列Aの行列式
といい
_ |A|, det A
とあらわす。
⇒|A|をAの絶対値と呼んではならない
⇒n次の正方行列に対応する行列式をn次の行列式という
⇒行列式はスカラー量である。
⇒detAとも書く。
※帰納的定義
1次の行列式)
A=[a]のとき
|A|=|a|=a
2次の行列式)
A=[a b]
[c d]
行列式は
|A|=|a b|=a*d – b*c
|c d|
2次、別記法)
|a11 a12|
|a21 a22| = a11 * a22 – a12 * a21
3次の場合(サラスの公式)
|a11 a12 a13|
|a21 a22 a23| = a11*a22*a33+a12*a23*a31+a13*a21*a32
|a31 a32 a33| -a13*a22*a31-a12*a21*a33-a11*a23*a32
4次以上の行列式
n次正方行列Aに対し、Aの行列式|A|を帰納的に次のように定義する
(i) n=1,2,3の場合は、上で定義
(ii) n≧4で(n-1)次の行列に対し、その行列式が定義されていると仮定する
(iii) n次の正方行列に対し、Aの行列式|A|を
|A|=A(1,j)~A(1,j)+A(2,j)~A(2,j)+…+A(n,j)~A(n,j)
ここでjは1,2,…,nのうちどれか一つでよい
と定義する。
※「ある行(列)のk倍を他の行(列)に加えても行列式の値は変わらない」という性質を繰り返して適用する
⇒三角行列式に変形することができる。
⇒行列式の値は三角行列式の対角成分の積となる。
※歴史的には行列が表す一次方程式の可解性を判定する指標
※幾何的には線型空間上の自己準同型に対して定義され、線型変換によって空間の体積要素が何倍に変わるかという概念を抽象化したもの
※行列の可逆性を判定する指標
_◇行列式の展開
n次正方行列
A=
[ A(1,1) … A(1,j) … A(1,n) ]
[ … … … … … ]
[ A(i,1) … A(i,j) … A(i,n) ]
[ … … … … … ]
[ A(n,1) … A(n,j) … A(n,n) ]
に対して
|A|=A(1,j)~A(1,j)+A(2,j)~A(2,j)+…+(A(n,j)~A(n,j)
ただしjは1..nのどれか一つ
を|A|の第j列による展開
|A|=A(i,1)~A(i,1)+A(i,2)~A(i,2)+…+(A(i,n)~A(i,n)
ただしiは1..nのどれか一つ
を|A|の第i行による展開
という
※展開を」するとき、なるべく0の多い行または列で展開すれば、余因子の計算を減らすことができる。
_◇行列式の性質 ①行と列をすべて入れ替えても行列式の値は変わらない |A|=|t_A| ②行列式の2つの行(列)を入れ替えると符号が替わる |A(1,1) … A(1,n) | |… … … | |A(i,1) … A(i,n) | |A(i+1,1) … A(i+1,n) | |… … … | |A(n,1) … A(n,n) | = -|A(1,1) … A(1,n) | |… … … | |A(i+1,1) … A(i+1,n) | |A(i,1) … A(i,n) | |… … … | |A(n,1) … A(n,n) | ⇒隣り合った行同士でも、離れた行同士の入れ替えでも成り立つ ⇒i行とj行(j>i)を入れ替えるには、隣通し入れ替えが
_ 2*(j-i)-1 回
_ (-1)^(2*(j-i)-1)=-1
③ある行(列)のk倍を他の行(列)に加えても行列式の値は不変
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|A(i,1) … A(i,n) |
|… … … |
|A(j,1) … A(j,n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
=
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|A(i,1)+c*A(j,1) … A(i,n)+c*A(j,n) |
|… … … |
|A(j,1) … A(j,n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
④1つの行(列)が他の行(列)のk倍ならば行列式の値は0
|A(1,1) … A(1,n) |=|X|
|… … … |
|C(1) … C(n) |
|C(1) … C(n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
2つの行を入れかえると符号が変わるから
|X|=-|X|
2*|X|=0
よって
|A|=0
⑤行列式は行(列)に関して線形性を持つ
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|A(i,1)+B(i,1) … A(i,n)+B(i,n)|
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
=
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|A(i,1) … A(i,n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
+
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|B(i,1) … B(i,n)|
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
|c*A(i,1) … c*A(i,n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
=
|A(1,1) … A(1,n) |
|… … … |
c*|A(i,1) … A(i,n) |
|… … … |
|A(n,1) … A(n,n) |
_◇行列式と正則行列
|A|≠0ならばAは正則行列
_◇行列の積の行列式
※定理
|AB|=|A||B|
ただし、A,Bは同じ次数の正方行列
※一般にAB≠BA
しかし、|AB|=|BA|
※n次正方行列Aが逆行列を持つ条件は|A|≠0
_◇行列式による連立方程式の解の表現
例)
(a b)(x) = (p)
(c d)(y) (q)
x=|p b|/|a b|
|q d| |c d|
y=|a p|/|a b|
|c q| |c d|
行列による連立一時方程式の表現
AX=B
X=A^-1 B
それぞれの解は行列式により以下のように表される。
_ 1 |a11 … b1 a1n|
xj=---|a21 … b2 a2n|
_ |A||… … … …|
_ |an1 … … ann|
※行列式を用いて逆行列を表すと
(A B) 1 (D C)
( )=----( )
(C D) |AB|(B A)
_ |CD|
◆余因子、余因子行列
_◇余因子
n次の正方行列Aにおいて、Aの第i行と、第j行を取り除いたn-1次の正方行列をA(i|j)で表す。この時、
_ a_ij = (-1)^(i+j) |A(i|j)|
を成分a_ijに関する余因子と呼ぶ。
※n次正方行列Aに対して、(i,j)成分であるA(i,j)を中心に第i行と第j列を取り除いて(n-1)次の行列式を作り、符号(-1)^(i+j)をつけたものを~A(i,j)と書き、A(i,j)の余因子または、Aの(i,j)余因子という。
例)
A=
[1 2 3]
[4 5 6]
[7 8 9]
~A(2,2)
=(-1)^(2+2)| 1 3 |=1*9-3*7=-12
_ | 7 9 |
_◇余因子行列
(i,j)を余因子としたAの行列式の値を(i,j)の位置にいれた行列。
◆固有値
※基底には依存しない
_◇固有値の定義
n次の正方行列A, n次の列ベクトルv→にたいして
_ Av→=λv→
を満たす数λを行列Aの固有値, v→をλに属する固有ベクトルという(v→はゼロベクトルではない)
例)
(1 5)(1)=6(1)
(2 4)(1) (1)
λ=6が行列Aの固有値。
(1)が固有ベクトル
(1)
※幾何的には
Av→ と v→ が並行であることを意味する
⇒v→ をk倍した kv→も固有値λの固有ベクトル
固有ベクトルは、Aで表される空間の変化により伸びちじみしても方向は変わらない。
伸縮率が固有値
固有ベクトルの方向に斜交座標をとれば、座標軸に沿った伸縮のみとなる
⇒対角化
_◇固有方程式と固有値
※一般のn次の正方行列に対して固有値を考えられる
Av→=λv→
は右辺を左辺に移項しv→を括りだすと
(A-λE)v→=0
と書き直せる(Aと同じn次のE:単位行列)
もし、A-λEが逆行列を持てば、両辺に左からかけることで
v→=0
となってしまい、ゼロベクトルでないv→は存在しないことになる
よって、A-λEが逆行列をもってはならない
ゆえに
|A-λE|=0…①
⇒方程式①を行列Aの固有方程式という
例)
2次正方行列
A=(a b)
(c d)
|A-λE|=(a-λ)(d-λ)-bc=0
※λについてのn次方程式となるので、代数学の基本定理により複素数の範囲でn個の解を持つ。
⇒ひとつの正方行列にn個の固有値(および固有ベクトル)が考えられる
※行列Aの固有方程式
det(A-λE)=0
を未知数λの方程式として解いて固有値λを求める
※固有ベクトル
各々の固有値を連立方程式
(A-λE)x→=0→
に代入して対応する固有ベクトルを求める
_◇対称行列と固有値
①対称行列の固有値はすべて実数
②対称行列のおのおのの固有値に対する固有ベクトルは、どの2つのベクトルも互いに垂直
_◇スペクトル分解
対称行列は固有値と規格化(大きさ1)された固有ベクトルを用いて以下のように展開できる。
⇒これをスペクトル分解という
例)2次の対称行列
A=(a b)
(c d)
A=λ1(p)(p q) + λ2(r)(r s)
(q) (s)
_◇累乗法
対称行列Aの固有値λ、固有ベクトルu→の近似解を求める方法
適当なベクトルv→に行列Aを何度もかけると、行列Aの一番大きな固有値λと、その固有ベクトルu→に平行なベクトルが得られる
※算法
①適当なベクトルv→をえらぶ
②これとAをかける Av→
③ここで得られたベクトルに対し、これとAをかける
A(Av→)
④これを繰り返す
A(..A(A(Av→)))
するとA(..A(A(Av→)))からもとめたベクトルと
ひとつ前のベクトルにある1個の数値をかけたものが
ほぼ等しくなるような数値を見つけることができる
⇒これが固有値の近似値
⇒このときのベクトルを規格化すれば固有ベクトルの近似値を得る
※原理
対称行列Aをスペクトル分解する
⇒固有値と固有ベクトルを使って表現したことになる
また、適当なベクトルv→を固有ベクトルの合成として表現する
⇒適当なベクトルv→も固有ベクトルで表現される
これをかけ続けるが、固有ベクトル相互には垂直で内積は0であるので、各固有ベクトルをかけ続けた項しかのこらず、かつ各項にはλのべき乗がかかる
⇒べき乗によりλの最大の項が他の項にくらべて大きくなり、ほぼ≒とみなせるようになる。
⇒A-λ1U1→tU1→をつくり、再び累乗法を適用するとu2→が求まる
◆行列のランク
写像でうつった先の次元数をランクという。
⇒つぶれる⇒次元が減る⇒detは0
※基底には依存しない
◆次元定理
元の次元数 – つぶれた次元数 = 残った次元数
◆行列分解
_◇LU分解
行列Aを下三角行列Lと上三角行列Uの積
_ A=L*U
と分解すること
_◇QR分解
QR decomposition
直交行列Qと上三角行列Rの正規に分解すること
_◇コレスキー分解
Cholesky分解
_◇特異値分解
singular value decomposition
_◇グラム・シュミット分解
線形独立なベクトルの組を作り出すアルゴリズム
_◇ツイスト分解法
◆ケーリーハミルトンの定理
◎ベクトル
大きさと向きを持つ量
◆ベクトルの成分表示と大きさ
※成分表示
大きさと向きを持つ量ベクトルは、ベクトルの始点を原点にもってきた場合の終点の座標で表現することができる。
⇒n次元ベクトルはn個の数の組で表現できる。
※ノルム
ベクトルの大きさ
|v→|
と書く。
ベクトルの大きさは、各成分の平方和の平方根である。
※v→=(a1, a2, … , an) のとき
|v→|=√(a1^2 + a2^2 + … + an^2)
◆和、差、定数倍
同じ次元の列ベクトル同士、または行ベクトル同士では、加法、減法をおこなうことができる。
※加法
各成分同士の和
※減法
各成分同士の差
※定数倍は、各成分に定数を乗ずればよい
◆内積
2 つのベクトルに対してある数(スカラー)を定める
(a,b)=|a||b|cosθ
⇒θは2つのベクトルの成す角
※内積の成分表示
_ a=(a1,a2), b=(b1,b2)
_ (a,b)=a1*b1+a2*b2
⇒対応する成分同士の積の和
|a|=√(a1^2+a2^2)
※内積の性質
①交換法則
②実数倍
③分配法則
※2つのベクトルのなす角
cosθ=(a,b)/|a||b|=(a1b1+a2b2)/√(a1^2+a2^2)*√(b1^2+b2^2)
n次元では
(a1*b1+…+an*bn)/(√(a1^2+…+an^2)*√(b1^2+…+bn^2))
※ベクトルの垂直条件
内積=0
◆外積
2つのベクトル
_ a=(xa、ya、za)、b=(xb、yb、zb)
に対して、aとbの外積a×bを以下のように定義する。
_ a×b=
_ (yazb-ybza、zaxb-zbxa、xayb-xbya)
※c=a×b、d=b×a とするとき、以下の性質がある。
①c・a=0、c・b=0
②c=-d
③cの向きは、aをbに向けて、180°より小さい方の角の方向に回転させたとき、
_ 右ネジの進む方向に向く。
_ aとbの角が0°または180°のときは、c=0
④|c| は、aとbとで作られる平行四辺形の面積に等しい。
⇒長さと面積がイコールという意味は?
※3次元空間の外積は便利だが、3次元に特有の意味
※n次元の拡張
◆∇:ベクトル微分演算子(ナブラ)
∇=(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂x)=i∂/∂x+j∂/∂y+k∂/∂x
演算子 ∇ をスカラ場 φ に形式的に施したもの ∇ φ
_ スカラ場の勾配 grad φ を表す
ベクトル場 A と ∇ の形式的な内積 ∇ ・ A
_ 場の発散 div A を表す
3 次元空間におけるベクトル場 A と ∇ との形式的な外積 ∇ × A
_ ベクトル場の回転 rot A を表す (curl A)
◆n次元空間におけるベクトル
任意のn個の数の順序集合であると定義