☆集合と論理
◎集合
◆集合
set
※ものの集まり。特定のものが特定の集合に属しているか否か、数学的に厳密に判断できなければならない。
※すべての要素を列挙したリストがあればそれを集合Wとして、ある概念は、集合Wの要素のことである、と定義できる。
※要素が無限にある場合は、条件式により集合Gを定義し、そこである概念は、集合Gの要素のことである、と定義する。
_◇集合の要素もしくは元
element
x∈A
_ ものxが集合Aの要素であることを表す
_◇外延 denotoation
ある概念にあてはまるものの集合を、その概念の外延という。
_◇内包 connotation
ある概念にあてはまるものがみたすべき性質を内包という
※内包を既定して概念を定義するのを内包的定義、外延を既定して概念を定義するのを外延的定義(集合論的定義)という
※集合(set)とは、ものの集まりのことである。ただし、特定のものが特定の集合に属しているかどうかは、数学的に厳密に判定できなければならない。
_◇有限集合 finite set
要素の数が有限であるような集合。要素を網羅することにより記述できる。
※n個の要素x1,…,x2からなる有限集合を
{x_1,…,x_n}
とかく。
_◇無限集合 infinite set
要素の数が無限であるような集合。
※一般に
{ x | … }
によって「…」を満たすようなxの全体からなる集合を現す。この記法は無限集合に対しても用いることができる。
※無限集合には「濃度」の異なる集合が無限にある
_◇集合の等しさ
集合Aと集合Bが等しい、すなわち
A=B
であるとは、AとBが同じ要素からなる集合であることを意味する。
⇒外延的な等しさ
extensional equality
_◇空集合 empty set
要素が一つもない集合を空集合という。
要素が一つもない集合は互いに等しいから、空集合は一つだけ存在する。
空集合をΦで表す。
_◇濃度
※無限集合を扱う場合、集合を比べるのに使われる概念
2つの集合の要素を1対1のペアとできれば、2つの集合の濃度は等しい
_◇部分集合
subset
集合Aの要素が集合Bの要素にもなっているとき、AをBの部分集合という。
A⊂B
とかく
※A=BのときもA⊂Bはなりたつ
※A=Bが成り立つことと、A⊂BかつB⊂Aは同値
{a∈A| … }
によって、…を満たすようなaからなるAの部分集合を表す
※空集合は任意の集合に含まれる
※A\Bで、集合Aに入っているが集合Bには入っていないような要素の集合を表す。特にB⊂AのときA\BをA-Bと書く
_◇集合の大きさ
集合Yが集合Xよりおおきいとは、Xの要素にYの要素を対応させるどんな関数でも、Yのすべての要素をおれなく対応させることはできない
◆結びと交わり
_◇結び union
AとBの結びとは、AとBの両方の要素からなる集合のことである。
_ A∪B
_ A∪B={x|x∈A または x∈B}
_◇交わり intersection
AとBの交わりとは、AとBの両方に共通の要素から成る集合のことである。
_ A∩B
_ A∩B={x|x∈A かつ x∈B}
_◇集合における「互いに素」
2つの集合が交わりを持たない (disjoint) あるいは互いに素( mutually disjoint)とは、それらが共通の元を持たないことを言う。
※A∩B=Φのとき
◆直和と直積
_◇直積
direct product
二つの集合 A, B に対し、
A × B = {(a,b) | a ∈ A, b ∈ B}.
で定義される集合を A と B の直積集合とよぶ。ここで (a,b) は、順序対を表す。つまり一般には (a, b) ≠ (b, a) である。これらは、たとえ a, b (a ≠ b) がともに A にも B にも属していたとしても異なるものとして区別される。したがって、A × B と B × A は集合として相異なる。
※A×B={<x,y>|x ∈ X, y ∈ Y}.
※<x,y,z> = <x,<y, z>>
A×B×C=A×(B×C)
直積演算を 2 つの集合だけでなく、複数個の集合に対しても拡張することが出来る。n 個の集合 A1, …, An に対する直積集合を、
Π(i=1;n) ai = {(a1,…,an)|a1 ∈ A1,…,an ∈ An}
と定義する。Π(i=1;n)Ai を A1 × … × An とも表す。
※A^n
_◇直和
direct sum
集合の直和(disjoint union, 非交和)とは、共通部分が空集合であるような二つの集合の和集合。(互いに交わらない)
※直和 direct sum
※A+B={<0,x>|x ∈ A}∪{<1,y>|y ∈ B}
0,1は要素がどちらの集合から来たかを区別するためのものである。
◆関数空間とベキ
集合Aと集合Bに対して、AからBへの関数の全体から成る集合をB^AもしくはA→Bとかく
A→Bを関数空間(function space)という
※A→Bに属する関数fとgはAの任意の要素aに対して
f(a)=g(a)
となるとき、そして、そのときに限り等しいものとする。
※外延的等しさ extensional equality
※集合Aに対して、Aの部分集合の全体から成る集合をAのべき集合(power set)といい
2^AもしくはP(A)
と書く。
_◇特性関数 (characteristic function)
集合”2”を2={0,1}と定義する。Sを2^Aの要素、すなわちSをAの部分集合としたとき、Aから2への関数
_χs(a)= 1 … a ∈ S
_ 0 … a ∈/ S
※1,0は逆であってもよい。部分集合Sの特性関数
◆集合族、Π、Σ
_◇集合族
family of sets
Iを集合とする。Iの各要素iに集合Aiが対応しているものとする。
i→Ai
はIの要素に集合を対応させる対応。このような対応を集合族という。
{Ai}_i∈I
と書く
※集合I
添数集合(index set)
※集合族に対してその結び∪(Aiの要素を集めてできる集合)、交わり∩(どのAiにも属している要素の集合)を定義できる
※集合Π
集合族
_ {Ai}_i∈I
の結び
_ U=∪[i∈I]Ai
とおき、fをIからUへの関数とする。
_ i∈Iに対してf(i)∈Uが成り立つ
関数f∈U~Iの内でi∈Iに対して必ずf(i)∈Aiがなりたつようなもののみを考え、
そのような関数全体からなる集合を
_ Π[i∈I]Ai
I={0,1,2}とするとΠ[i∈I]Aiの要素は
_ f(0)∈A0,f(1)∈A1,f(2)∈A2
を満たす。逆にf(0)∈A0, f(1)∈A1, f(2)∈A2を定めればΠ[i∈I]Aiに属する関数f
が定まるので、関数fと三組<f(0), f(1), f(2)>を同一視することにより
_ Π[i∈{0,1,2}Ai = A0 x A1 x A2
※集合Σ
Σ[i∈I]Ai = {<i,x> | i∈I, x∈Ai }
I={0,1,2}とすると
Σ[i∈I]Ai = A0 + A1 + A2
◆有界な集合の上限(sup)と下限(inf)
定義:集合Mに対し、ある数Kが存在して、Mに属する点xに対し、つねにx<Kが成り立つとき、Mは上に有界な集合であるという。またある数Lが存在して、Mに属する点xに対し、常にL<xが成り立つとき、Mは下に有界な集合であるという。
定理:Mを上に有界な集合とする。このとき次の性質をみたす実数αが存在する。
(i)x∈Mならば、x≦α
(ii)どんなに小さい正数εをとっても
α-ε<x~
をみたすx~∈Mが存在する
※αをMの上限という
※上に有界な集合Mに対し、その上限を
supM
と表す。 (supremum)
※下に有界な集合Nに対しては、その下限を
infN
と表す。(infimum)
◎形式論理、記号論理
数学の証明の中で使われている推論規則を形式化し、定理や推論規則に関する一般てきな性質を調べるのが形式論理もしくは記号論理である。
◆命題論理
propositional logic
命題を単位とした推論を形式化した論理。それぞれの命題の内部構造にまでは立ち入らない。
_◇命題
proposition
正しいか間違っているかのどちらかであるはずの主張もしくは文
※真偽値 truth value
真(true)または偽(false)
真T
偽⊥
命題Pが正しい P=T
命題Pが間違っている P=⊥
_◇論理記号
logical symbol
※連言 conjunction
命題「PかつQ」
P∧Q
命題P∧Qは、どちらも正しいとき、そのときに限り正しい。
※論理記号∧は、真偽値に対する2項演算として可換的かつ結合的である
※選言 disjunction
命題「PまたはQ」
P∨Q
命題P∨Qは、どちらかが正しいとき、そのときに限り正しい。
※論理記号∨は、真偽値に対する2項演算として可換的かつ結合的である
※∨は∧よりも結合力が小さいとする
※否定 negation
¬P
※¬は∨や∧よりも結合力が強いとする。
※含意 implication
「PならばQである」という命題を
P⊃Q
とかく
P=TかつQ=TならばP⊃Q=Tである
P=T、Q=⊥ならばP⊃Q=⊥である
※P=⊥の場合、Qの真偽に関わらず
P⊃Q=T
「PならばQである」という形の論理は定理の前提であるPが成り立たなければ常に正しい
P⊃Q=¬P∨Q
が成り立つ
※⊃は∨や∧よりも結合力が弱いとする
※同値命題 equivalence
「PならばQであり、QならばPである」
P←→Q
P←→Q=(P⊃Q)∧(Q⊃P)
※←→は⊃より結合力が弱い
※命題変数 propositional variable
※命題変数、真偽値、論理記号を組み合わせて命題論理式が作られる。
propositional formula
_◇トートロジ
tautology
※命題変数にどのような真偽値の組み合わせを代入しても必ず真となるような命題論理式
※排中律 (excluded middle)
PまたはPでない
P∨¬P
⇒典型的なトートロジ
※AとBを命題論理式としたとき A⇔Bがトートロジであるとき、AとBは同値であるという equivalent
※A⇔Bがトートロジであるならば、AとBの中の命題変数にどのような真偽値の組み合わせを代入してもAとBの真偽値は等しい
※どのような真偽値の組み合わせを代入してもAとBの真偽値は等しいならばA⇔Bはトートロジである。
※Wangのアルゴリズム
トートロジの判定
_◇シークエント
sequent
A1,…,AmとB1,…,Bnを命題論理式の並びとしたとき
A1,…,Am→B1,…,Bn
をシークエント、矢式、連鎖、式という
A1,…,Am 前提部 antecedent
B1,…,Bn 結論部 succedent
m=0, n=0でもよい。とくにm=n=0の場合は→のみかかれる
m=0の場合は前提部は真
n=0の場合は結論部は偽
→は T⊃⊥ を意味するがこれは、⊥と同値
※シークエントの意味
A1∧…∧Am ⊃ B1∨…∨Bn
→シークエントがトートロジであるばあい、どのような真偽の組み合わせを代入してもAのどれかが偽となり、Bのどれかが真となることを意味する
→トートロジでなければ、適当な真偽の組み合わせの代入により、Aの全てが真、Bの全てが偽となることを意味する
※イニシャル・シークエント
initial sequent
初式
⇒命題変数のみからなるシークエントで、前提部と結論部の両方に同じ命題変数が現れるもの
⇒イニシャル・シークエントはトートロジ
※任意のシークエントは
Γ→Δ
と書くことができる
※「、」をつかってΓの後ろに命題論理式Aを追加した並びを表す
Γ、A
_◇推論規則
inference rule
既にトートロジと分かっているシークエントから、新たなトートロジであるシークエントを得る規則
※推論規則の形
_ 前提1。。。前提n
_ ――――――――― (規則の名前)
_ 結論
※前提(premise)
シークエント
※結論(conclusion)
シークエント
※すべての前提がトートロジであるとき、結論もトートロジとなる
※イニシャルシークエントから始めて推論規則を有限回的用して得られるシークエントはすべてトートロジである
⇒イニシャルシークエントから始めて推論規則を有限回的用して得られるシークエントを証明可能(probable)であるという
⇒証明可能なシークエントはトートロジである
⇒そのようなとき推論規則の全体は健全(sound)であるという
_◇完全性
任意のトートロジであるシークエントが証明可能であるとき、
推論規則の全体は完全(complete)であるという。
◆述語論理
_◇ストラクチャ
_◇モデル
_◇Herbrand領域
◎証明、論法
◆∀と∃
「∀」は数学的には「任意」という。この記号は単独で使うことはなく「∀x」といったように使う。意味は「すべてのxが」。
「∃」は「特定の・・・」といった意味になる。「∃x」といったように書くと意味は「あるxが」となる。
f(∀x)=0だとxがなんであれ、f(x)=0ということになり、f(∃x)=0だとxがある特定の値を持つとf(x)=0になる。
●∴と∵
∴は「よって」,「したがって」という意味がある。
∵は「なぜならば」という意味がある。
◆数学的帰納法
Mathematical Induction
「数学的帰納法は自然数の性質というよりも、数学的帰納法が使えるシステムが自然数そのものなのである」
—芹沢正三
やってみればわかるように
「n=k-1のときを仮定してn=kの場合を証明する」方式にしておいた方が、結論の式がそのまま現れてずっと計算しやすい
—芹沢正三
◆無限降下法
※数学的帰納法の一種
証明する対象が無数にある場合、ひとつについてだけ証明して、他の数に対してもその証明法で証明できることをあきらかにする。
◆ε-δ論法
関数f(x)の極限値が存在するときに、関数f(x)が極限に近づく過程において、f(x)の値が極限値に近づいたり、遠ざかったりすることもありえる。そのふらつきがどんどん小さくなることを正確に記述するもの。
どんな正数εを指定されても、適当に正数δを選ぶと、次の条件が成り立つ。
0 < | x – a | < δを満たすどんな x についても
| f(x) – b | < ε
◆背理法
例)√2が無理数であることの証明
①√2が有理数であると仮定する
②√2=p/q (p,qは互いに素)とおける
③両辺にqをかけて分母を払う
√2×q=p
④両辺を二乗する。
2q^2=p^2
上の式からp^2は2の倍数であることが分かるので、pも2の倍数である。
⑤上からp=2k(kは整数)と書ける
⑥4k^2=2q^2とおけるので、両辺を2で割ると
2k^2=q^2となる
⑦上からq^2は2の倍数であることがわかり、qも2の倍数となる。
⑧しかし、pとqは互いに素なので、これはありえない。よって、√2が有理数であるという仮定が誤っていたことになる。
よって、√2は無理数である。(証明終了)
◆対角線論法
例)
すべての自然数にすべての実数を対応させることはできない
[証明]
自然数に実数を対応させる任意の関数をhとして、関数値h(n)を十進小数で表し、nの小さい順にならべる。(実際の右辺はどのように数字が並んでいてもよい)
右辺の小数の、小数点より左は無視して、小数点以下の桁数字、特にh(n)の小数点以下n桁目に注目する。この対角線状にならぶ桁数字を並べて先頭に0と小数点をつけると、また一つの実数を作ることができるが、そこで、先頭の0を除き、4以下は7に、5以上は2に書き換える。
この新たに生成した実数は、h(n)のどれとも異なるので、実数側に対応もれがある。
※公理で証明しているのか直感で当たり前と思っているのか
点の代わりにビールジョッキ、直線の代わりに椅子、という言葉を使って見る
公理「2つの相異なるビールジョッキP,Qに対して、その2つのビールジョッキを通る椅子PQがただ一脚だけ存在する」
命題「相異なる3つのビールジョッキP,Q,Rがあって、椅子PQはビールジョッキRを通らないとする。すると、椅子QRはビールジョッキPを通らない」を証明する
証明:
◆コンピュータによる証明
①証明すべきことがらを、反例となりうる有限個のケースからなるリストに還元する
②それをひとつずつ消去していく
◎パラドックス
◆パラドックス
悪しき循環(vicious circle)
病的な文(pathological sentence)
①数学の中で使う分は、その文の中の全ての語句が、その意味を確定できるものでなければならない
②数学の中で使われる分は、自分自身を直接または間接に指示する語句を含んではならない
※
①集合Xを確定するためには、その全ての要素が確定していなければならない
②集合Xの要素の中に、集合Xが確定しないと決まらないものがあってはならない
_◇ラッセルの階型理論(type theory)
①基本的な対象の集合をDとする(1階の対象)
Dの上で次のような集合だけを公認する
②Dの要素の集合(2階の対象)
③2階の集合を要素とする集合(3階の対象)
。。。以下n階の対象というが、nは有限でなければならない。
_◇超言語、メタ言語、metalanguage
2階以上の言葉の体系。もとの言語を対象言語という。
◆カントルのパラドックス
カントルの証明
Xの全ての部分集合の集合をYとすると、YはXより大きい。
よって、全てのものの集合Sを考えると、これより大きなものは存在しない筈なのに、それより大きい集合Yが存在してしまう筈だが、そんな集合はありえない。
◆ラッセルのパラドックス
「自分自身を要素として含まないような集合」を全部集めた集合をRとする。この定義から当然、任意の集合Xについて
_ XがRの要素である。※1
_ とは
_ XがXの要素でない。※2
_ のと同じことである。
では、R自身は、この集合Rの要素だろうか、※1と※2のXのところにRをあてはめると
_ RがRの要素である
_ とは
_ RがRの要素でない
のと同じことである、となってしまい矛盾が発生する。
◆ウソつきパラドックス(エピメニデスのパラドックス)
クレタ人のうちのある預言者が
「クレタ人はいつもウソつき」
といっているが、この非難はあたっている
(新約聖書「テトスへの手紙」第1章)
◆視覚的パラドックス
_◇ペンローズの三角形
◆パラドックスではないがそう呼ばれるもの
_◇バースデーパラドックス
Birthday paradox
あるクラスで誕生日が一致する組が一組以上ある確率
数学的にはパラドックスではないが、以外な結果であるためにパラドックスと呼ばれる。
異なるm個の数から、重複を許してk(≦m)個の数を選んだとき、その中に同一の数が2回以上現れる確率Pとx=k/√(m)の関係
P(%) xの近似値
10 0.459044√(m)
20 0.668047√(m)
30 0.844600√(m)
40 1.010768√(m)
50 1.177410√(m)
60 1.353729√(m)
70 1.551756√(m)
80 1.794123√(m)
90 2.145966√(m)
◎論理学
logic
◆fallacy
_◇量化子交換の虚偽
∀∃のつく前件と∃∀のつく後件を持っているが、∀∃は∃∀を含意しない。
量化子変換の誤り(a quantifier-shift fallacy)
英語での別名: illicit quantifier shift
前提:すべてのPがあるQに対してRという関係を持っている。
結論:あるQはすべてのPに対してRという関係を持っている。
例)
前提:すべての学生はある教師を尊敬している。
結論:ある教師はすべての学生から尊敬されている。
この例の前提の意味は、すべての学生がそれぞれ少なくとも1人の教師を尊敬しているということである。このことから、少なくとも1人の教師がすべての学生から尊敬されているという結論は出せない。