Math_term

☆概念・用語

◆無定義術語
定義しなかった基本的な言葉や述語(predicate)
「議論の根拠は公理系にすべて述べられているはずなので、直感的な定義や説明はいらない」
「無定義術語は、諸公理によって間接的に定義される」

◆QED

quod erat demonstrandum ラテン語
以上が証明すべきことであった

※アメリカの教科書では小さな四角形のこともある。

◆定義

言葉の意味を決める説明

※「定義は、わかりやすさと便利さのためにあるので、公理さえきちんと与えてあれば、なくても原理的にはかまわない」

◆公理

①数学を議論するための前提
②誰もが認めざるを得ない当たり前の事実
(アリストテレス的)

※理論体系の出発点となる公理のリストを公理系という。

※公理主義、数学的構造主義
一般的、統一的な理論を可能にするために公理系を構築する。公理系は特定のモデルを想定していない、抽象的・一般的な体系。個々の公理が「正しいか、否か」ということはまったく意味がない。

※モデル
公理系をみたす世界

◆命題

証明によって公理から論理的に導かれた文章

※命題の候補も単に命題と呼ばれたりする

◆定理

公理を元にして論理的に証明されたもの
証明された命題のうち、解くに重要なもの

※存在定理
「存在する」ことだけを証明し、個別の具体的な要素には踏み込まない論法。

◆予想
おそらく正しいが証明されていないもの

◆ユークリッド「原論」のスタイル
①定義
定義1 点とは大きさの無い位置のことである

定義23 平行線とは同一の平面上にあって、どちらの側に延長しても、けっして交わらない直線のことである。

②公理(公準と公理)
公理1 任意の点から任意の点に直線をひくことができる
公理2 与えられた有限の直線を、どちらの側にもいくらでも延長できる

公理3 任意の点を中心とする、任意の半径の円を描くことができる

公理4 すべての直角は互いに等しい

公理5 ある直線が他の2直線に交わり、その1つの側の内角の和が2直角より小さいとき、それらの2直線をその側に延長すると、いつかは交わる

公理6 同じものに等しいものは、互いに等しい

公理7 等しいものに等しいものが加えられれば、得られる結果は等しい

公理8 等しいものから等しいものが引かれれば、残りは等しい

公理9 互いに重なりあうものは互いに等しい

公理10 全体は部分より大きい

③定理とその証明

◆超数学 metamathematics

対象:
公理系によって記述された、数学の形式的体系

公理系が満たすべき基準

①公理系は、望みの命題をすべて証明できるよう、十分に与えられている。(完全性 completeness)

②公理はすべて必要で、どのひとつも省くことができない
(独立性 independence)

③公理系は自己矛盾を含まず、互いに矛盾するような定理はけっして出てこない (無矛盾性 consistency)

「記号から意味をはぎとって、純粋に形だけについて、記号論理に基づく」

※完全性:恒真文は例外なく、かならず証明できる
※形式的無矛盾性:どんな文Mについても、Mとその否定-Mとが両方とも証明されることは決してない
※内容的完全性と形式的完全性

_◇不完全性定理(第1)
自然数論を含む述語論理の体系Zは、もし無矛盾ならば、形式的に不完全である。
(矛盾を含む公理系はすべて完全)

_◇不完全性定理(第2)
Zがもし無矛盾ならば、Zの無矛盾性をZの中で証明するのは不可能である

◆座標系

_◇右手系
right-handed system
positive-oriented system

右手
親指 x
人差し指 y
中指 z

_◇左手系

左手
親指 x
人差し指 y
中指 z

◎ヒルベルト空間論

◆距離空間
任意の集合Xの2要素を、順序も考慮して組にしたものを要素とする集合
{(x,y)|x,y∈X)
をXのべき集合とよび、XxXあるいは単にX^2と記す。集合xのべき集合X^2から実数の集合
R≡{r|rは有理数または無理数}
への写像
d:X^2 → R
を考え、X^2の任意の要素(x,y)が対応させられる実数をd(x,y)とする。

このとき3条件
d(x,y) ≧ 0
(∀x,y∈X,等号はx=yのときのみ)
d(x,y) = d(y, x)
(∀x,y∈X)
d(x,y) ≦ d(x,z) + d(z, y)
(∀x,y,z∈X)
を満足する写像dを集合X上の距離関数と呼ぶ。最後の条件は3角不等式と呼ばれる。

_◇距離空間の定義
定義1(距離空間)
距離関数が存在する集合を距離空間という

※距離空間となるとなる集合の要素は点と呼ばれる。

_◇距離空間の例
①実数の集合
②複素数の集合
③実数の集合のn次のべき集合
R^n = RxRxRx…xR
距離関数
d(x,y) = √(Σ[j=1:n](xj-yj)^2)

_◇離散距離空間
任意の集合Xは距離関数
d(x,y) = { 0 (x=y)
{ 1 (x≠y)
の存在によって距離空間である。この距離空間は、特に離散距離空間と呼ばれる。

※距離空間とは距離関数の値として、任意の2要素の間に遠近の概念が与えられた集合に他ならない。

◆ベクトル空間

_◇直積
実数の集合Rと集合Xの要素を、この順序で組にしたものを要素とする集合
{(λ,x)|∀λ∈R, ∀x∈X)
をRとXの直積集合とよび、RxXと記す。簡単に直積とも呼ぶ。

_◇スカラー倍
直積集合RxXからX自身への写像
・:RxX → X
でRxXの任意の要素(λ,x)が対応させられるXの要素を・(λ,x)とする。このとき、任意のλ,μ∈Rについて
・(λμ,x)=・(λ,・(μ,x))=・(μ,・(λ,x))
を満足する写像・を集合X上のスカラー倍という。

※・(λ,x)≡λx
λμx=λ(μx)=μ(λx)

_◇ベクトル和
スカラー倍の定められた集合Xのべき集合X^2からX自身への写像
+:X^2→X
でX^2の任意の要素(x,y)が対応させられるXの要素を+(x,y)とする。このとき
+(x,y)=+(y,x)(∀x,y∈X)
+(λx,μx)=(λ+μ)x(∀λ,μ∈R,∀x∈X)
λ(+(x,y))=+(λx,λy)(∀λ∈R,∀x,y∈X)
なる条件を満たす写像+を、スカラー倍の定められた集合Xの上の重ね合わせ、あるいはベクトル和とか単に和という。

※+(x,y)≡x+y

_◇ベクトル空間の定義
定義2(ベクトル空間)スカラー倍とベクトル和が存在する集合をベクトル空間という。

※ベクトル空間となる集合の要素はベクトルと呼ばれる。
※ベクトルのスカラー倍と和の演算の組み合わせを線形結合とか一次結合と呼ぶ
※ベクトル空間の任意のベクトルxに対して実数0をスカラー倍して得られるベクトルは常に単一のベクトルに等しく、零ベクトルと呼び、記号0で表す。

_◇ベクトル空間の例
実数の集合R
複素数の集合C
実数の集合のn次のべき集合R^n
実数の集合Rからそれ自身への写像(関数)を要素とする集合F
F(R)={f|f:R→R}
は、実数と関数の積をスカラー倍、関数と関数の和をベクトル和と考えることにより、ベクトル空間と考えられる。

_◇複素ベクトル空間
スカラー倍を複素数で定めた場合
(スカラー倍が実数で定められた場合は実ベクトル空間)

_◇線形従属、線形独立
任意のベクトル空間Vのベクトルの系列{x1,x2,…}が与えられたとき、あるベクトルy∈Vが
y = λ1×1 + λ2×2 + …
のように系列{x1,x2,…}の中のベクトルについてのスカラー倍とベクトル和によって表されるならば、ベクトルyは系列{x1,x2,…}に一次従属(線形従属)であるという。それ以外を一次独立(線形独立)という。

※ベクトル空間Vのベクトルの系列{x1,x2,…}が一次独立な系列であるとは、系列に含まれる任意のベクトルが、系列のそれ以外のベクトルが作る系列に対して常に一次独立となることをいう。