Semiconductor_Silicon

◎シリコン

◆シリコン原子
Ⅳ族元素
電子14個

※外殻電子4個 (3s)^2(3p)^2
⇒(1s)^2(2s)^2(2p)^。。。イオン核

_◇シリコン格子
4つの結合ボンド=ダイアモンド型結晶構造

基本格子の格子定数 a = 5.4301オングストローム

※単位立方センチメートルあたりの原子の数
=原子密度N
N= 8 / 1.6e-22 = 5e22 [cm^-3]

※代表的な結晶面における面密度
(100) 2
(110) 4/sqrt(2)
(111) 4/sqrt(3)

(100)が面密度がもっとも小さく、対称性もよい
→MOSトランジスタによく使われる

※4つの結合ボンドは共有結合であって、十分低温においては絶縁物となり、伝導電子や正孔は存在しない

_◇真性半導体
intrinsic semiconductor

温度で与えられる一定の伝導電子と正孔が一定の割合で生成消滅し、存在している

温度の上昇⇒シリコン格子の熱振動⇒ボンドが切れるものが出てくる⇒伝導電子
また
電子の抜けた後のSi+の状態も結合電子が共鳴的に動くことで結晶内を動き回る⇒正孔

※伝導電子と正孔は、生成と消滅を繰り返している

※生成されてから再結合するまでの平均時間をlife timeという

※伝導電子と正孔をあわせてキャリアと呼ぶ

※真性キャリア濃度
ni = pi

※実際のダイオードやトランジスタでは真性キャリアによる伝導は利用されず、むしろ損失の原因となる
⇒できるだけ少ない方が良いが、常に存在は避けられない ni=pi=1.5e10 [/cm^3]

※キャリア濃度
シリコンの原子密度=多い方の基準
真性半導体濃度=少ない方の基準
キャリア濃度は両者の間
10^10 ~ 10^22 [cm^3]
で正確に制御される

※半導体を高純度に精製する目安
不純物濃度をその材料の室温における真性キャリア濃度以下にする

◆p型とn型

※ドーピング(異種原子を微量溶かし込む)

_◇水素原子様モデル
ドーピングした原子の周りの電子の軌道モデル
Pの残った1個の価電子

水素原子の周りの電子、誘電率1の空間を運動
Si結晶内の電子、誘電率11.7の結晶内を移動
核の電荷が
Zeff = 1/εsi = 1/11.7
に小さくなったように見える
⇒第1ボーア半径みつもり
a0 = 6.5e-8 [cm]
⇒軌道内に約100個のSi原子が存在
⇒電子のイオン化エネルギー 0.04eV
⇒室温付近での熱振動のエネルギー k*T=0.03eV
⇒熱励起により容易に解離する

_◇p形シリコン
正孔により電気を伝える
(多数キャリアが正孔)

※正孔の軌道運動も水素原子様モデルで取り扱うことができる。

※正孔のイオン化エネルギー 0.04eV
⇒室温で熱的に励起され、ほとんど解離

Ⅲ族の不純物原子(Bなど)濃度によって正孔濃度pが制御されているシリコンをp形シリコンという
⇒acceptor

_◇n形シリコン
電子により電気を伝える
(多数キャリアが電子)

V族元素をドーピング
P, As, Sb
⇒donor

V族の不純物原子濃度によって伝導電子濃度nが制御されたシリコン

◆エネルギー状態
伝導電子も正孔も、ほとんど自由電子に近い振る舞いをするとみなせる

⇒波動としての性質を持っているからこそ、原子を大きな抵抗と感じないし、p-n接合での電子のp領域への注入といったことがおこる。

_◇原子間距離とエネルギー準位

※シリコンの価電子
(3s)^2 (3p)^2 の合計4個

①原子間距離が離れ、孤立している場合
3s < 3p
となるエネルギー準位にいる

②原子間距離が近づくと
3s軌道。。。準位はいったん下がり、格子定数5.43Aで最小となる。それ以上近づけようとすると急激に上昇
⇒ダイヤモンド形構造の結晶
⇒自由原子の状態と結晶状態のエネルギーの平均値の差が、結晶の凝集エネルギーに相当する

3p軌道。。。低いエネルギーの軌道は3s軌道の準位と混じってくる
⇒sp^3混成軌道
⇒温度が低い場合はとりうる状態の全てが電子で満たされている
⇒価電子帯あるいは充満帯⇒電気伝導には寄与しない

一方、高いエネルギーの軌道もある。
⇒伝導帯

間にはギャップがあり、禁止帯と呼ばれる

_◇禁止帯

※光量子による伝導電子の励起
波長の長い光はシリコンを透過する
波長を短くし、光量子のエネルギーがhν=1.1eV以上になると多数の伝導電子が励起される(同数の正孔も生成される)
⇒充満帯より1.1eV以上上に電子の存在を許すエネルギー準位がある
⇒それより下には電子に許されるエネルギー準位は存在しない
⇒禁止帯
⇒禁止帯幅 forbidden energy gap (Eg)
シリコンでは 1.1eV
(温度により僅かに変化するがごく小さい)

※絶縁体と半導体の違いは禁止帯幅の大きさ
例)
水晶 10eV
半導体 3eV以下

_◇不純物元素のエネルギー帯

※V族元素:第5の価電子は伝導帯にあがり伝導電子となる。
⇒V族の不純物準位は伝導体からイオン化エネルギーだけ下にある
⇒ドナー準位(donor level)

※Ⅲ族元素(B):充満帯から電子をとりBからB-になるだけ充満帯の上端より高い
⇒アクセブタ準位(acceptor level)
⇒正孔伝導に対しては充満帯の正孔だけに注目する


Ec 伝導帯の底
Ed ドナー準位
Ea
Ev 充満帯の頂上

_◇シリコンにおけるオームの法則

伝導帯の質量mの電子の電界Eによる加速のときの運動方程式
-q*E = m * dv/dt

-q:電子の電荷
t:時間
v:電子の速度

※電子は自由電子のように振る舞うといっても格子原子とは常に生得し、電界から得た運動エネルギーをジュール熱として格子に与える
⇒試料の温度上昇

※電界の無いときも格子と衝突し、熱平衡状態になる
衝突から衝突までの時間 2τ
平均自由行路 l
室温では
電子の平均の速度 10^7 [cm]
l 10^-6[cm]
τ 10^-13 [s]

※電界Eが働くと、1つの衝突から次の衝突までの2τ時間の間に電界方向に (-q*E/m)*2τだけ加速される。
⇒増加分のエネルギーは次の衝突で格子に渡すとすると
電界による平均速度は
(-q*E/m)*τ
⇒せいぜい数mm/sであり、熱運動の10^7[cm]に比べると極めて遅い

※単位体積[1cm^3]あたりn個の伝導電子により運ばれる電流
電子1個 (-q)^2*E*τ/m
電流密度J <オームの法則>
J=(n*q^2*τ/m)*E
電気伝導度
σ=J/E=(n*q^2*τ/m)

_◇移動度

※流れの速度(drift velocity) vd
vd=-q*E*τ/m=-μE
⇒電界に比例する比例定数μを伝導電子の移動度
mobility
とよぶ
μ=q*τ/m

σ=q*n*μ=1/ρ
(ρは抵抗率)

※オームの法則にしたがってシリコン中を流れる電流は伝導電子の濃度nと移動度μによって特長づけられる
⇒n形シリコンではnはドナー不純物濃度による

※正孔濃度をpとすると同様に
J=p*q*μ*E
とかける
⇒正孔濃度はアクセプタ不純物濃度による

※移動度の値はキャリアが格子の不規則性によって散乱される程度によって決まる
⇒格子の不規則性
イオン化した不純物原子+格子の熱振動
⇒不純物が十分少ないところでは移動度は一定値に近づく(熱振動のみとなる)
電子:μ_n=1450[cm^2/V*s]
正孔:μ_p=500[cm^2/V*s]
⇒電子の方が3倍くらい動きやすい

※移動度の単位
cm^2/V*s

※不純物分布が均一ならば、抵抗率を測定することにより不純物濃度を知ることができる

※移動度の温度変化
低温:不純物散乱が支配的なので、不純物濃度によって差がでる⇒濃度が高い方が低い
高温:熱振動による散乱が支配的。不純物濃度はほとんど影響せず、温度が増加するほど低下。

_◇フェルミ準位

※電子はパウリの排他律に従う
⇒フェルミ・ディラック統計を用いる

伝導電子によってエネルギーEという量子状態が占められている確率f(E)

f(E)=1/{1+exp{(E-Ef)/(k*T)}}

Ef:フェルミ準位
E=Efのとき、分布関数f(E)=1/2となる

※フェルミエネルギーはp-n接合があっても一様

※半導体ではEfは禁止帯の中に位置し、真性半導体では
Ef = Eg/2
禁止帯中央
⇒真性フェルミ準位
Intrinsic Fermi level (Ei)

n形:伝導体の底とEiの間にフェルミ準位がくる
濃度が大きくなると伝導体の底に近づく
p形:充満帯の頂上とEiの間にフェルミ準位がくる
濃度が大きくなると充満帯の頂上に近づく

※シリコン
禁止帯幅が広く |E-Ef|>>k*T とみなせる
⇒近似できる
f(E)=exp(-(E-Ef)/k*T)

※正孔の場合、エネルギーEという量子状態が正孔により占められる割合は
1 – f(E)

※半導体
許された準位密度に比べ、電子や正孔の濃度はごく僅か
⇒熱平衡では、伝導電子は伝導帯の底、正孔は充満帯の頂に近いところにいる
⇒伝導体の底をEcとすると、電子の運動エネルギーは
E-Ec

_◇準位数
不確定性原理から、運動量位置空間の⊿Px⊿x=h内に1つの準位があり、スピンを考慮するとこの準位に2つの電子が入りうる
⇒dPx dPy dPz dx dy dzの体積にある準位数

---dPx dPy dPz dx dy dz
h^3
(球の表面積は4πr^2)
2*4πP^2
-------dPdV
h^3

Pは運動量なのでm*vであるから、(m:電子の有効質量)
P^2/(2*m)はエネルギーであるから
P^2/(2*m)=E-Ec

⇒単位体積あたり E-Ec と (E-Ec)+dE内にある許された準位の数が決まる。状態密度 Nn(E)

⇒エネルギーE以下の状態の数(単位体積あたりに1個あると近似できる)I
1次元:定数*E^(1/2)
3次元:定数*E^(3/2)

Nn(E)*dE = 2*2π*(2*m/h^2)^(3/2)*(E-Ec)^(1/2)*dE