☆光計測
光の測定は、空間、時間、波長にかかわる複合した量の測定となる。
◆放射測定
光の強さを測定する。単位は放射照度[W/m^2]
※光ディスク関係ではWを使う
※もしくはdBm(通信分野)
※人間の目に見えない光ということもある。
※光パワーは dBm だが、ゲインやロスは単なる比率なので dB であることに注意。
◆測光
明るさを測定する。人間の感度に依存。
測光の単位は[lx](照度)
放射量の分光密度Xe(λ)と測光量Xv[lm]の関係
Xv=Km * ∫[360nm:830nm]Xe(λ)*V(λ)dλ
Km:測光量と放射量を結びつける定数 683lm/W
Xe:波長あたりの入射エネルギー[W]
V(λ):標準分光視感効率。555nmでV(λ)=1として正規化された人間の目の感度の関数。
◆輝度
ある特定方向に放出されている光の強度
cd/m^2
◆測色
人間は赤、緑、青を中心とする3つの分光感度を持つが、個人差があり、背景光にも影響される。
_◇色彩
3属性からなる
①色相 H(Hue)
色相環として輪をなす
②明度 V(Value)
色相環がXY平面にあるとするとZ軸。明るさを表す。
③彩度 C(Chroma)
XY平面にある色相環に対して、原点からの距離。鮮やかさ、くすみ具合を示す。
_◇表色系
①マンセル表色系
JIS Z8721
②L*a*b*表色系
エルスター、エースター、ビースター
国際照明委員会(CIE)規定。JIS Z8729
明度をL*, 色相と彩度をa*, b*で表す
a* + 赤方向
a* – 緑方向
b* + 黄方向
b* – 青方向
a,bの数値が大きい方が彩度が大きく、中心に近いとくすんだ色
③L*C*h 表色系
L*a*b*表色系をベースに、a*, b*という直交座標でなく、C* と hという極座標で表したもの
C* 彩度
h a*+を0度として反時計回りの角度
④ハンターLab表色系
主として塗装関係で使われる。L*a*b*と同様だが数値が異なる
⑤XYZ(Yxy)表色系
CIE標準表色系
Y: 反射率 (明度に対応)
xy: 色度
無彩色が中心
_◇色差
⊿E*
表色系の中での各色の間の距離
_◇色温度
照明により、波長分布(分光分布)は異なる
※黒体輻射の波長分布をそのときの温度で呼ぶ
⇒色温度
※ほとんどの光源は黒体輻射と完全には一致しないので、もっとも近い温度で呼ぶ
※太陽や白熱灯は、滑らかな連続分布だが、蛍光灯などは蛍光物質の特定波長の重なりで連続ではない
_◇RGB光センサ
※RGBカラーセンサ
光源の色温度
色検査、色補正、ホワイトバランス
※光源の色温度を測ることにより被写体の色を正確に再現できる
※RGBの3色LEDを混合して白色を作り出す場合、カラーフィードバックシステムが必要
※物体色の識別
反射光をRGBカラーセンサに入力する。
色識別、紙幣鑑別、色管理
※3つのフォトセンサにRGB各色の光学フィルタを組み合わせる
※RGB3チャネルタイプ
外乱光が入射しにくい遮光性パッケージと透明パッケージのタイプがある
フィルタは近赤外に2次透過があるため、赤外吸収フィルタと組み合わせてある
※R/G/B単色タイプ
遮光性パッケージ。赤外成分のカットは干渉フィルタ(入射角依存性がある。垂直入射で使う)
◆人間、人体
_◇人間の視感度ピーク
555nm
_◇人体からの放射赤外線の波長
約5um~20um
◆化学物質、吸収帯
_◇赤外域、吸収帯
二酸化炭素 2.5~3um 4~5um
アルコール 3~4um
◆光の波長と名称
※広義の光
1nm ~ 1mm 波長範囲の電磁波
_◇紫外線
※どこから紫外線かという統一された定義はない
※可視光に近い側からUV-A,B,Cと唱える。
UV-A 315 – 400 nm
地上への照射量多
UV-Bに比べた影響力は百~千分の1
UV-B 280 – 315 nm
地上への照射量小
皮膚ガンや白内障の原因となる
UV-C 100 – 280 nm
地上への照射無し
殺菌光線
皮膚ガンや白内障の原因となる
※オゾンの存在する大気では300nmより短い紫外線は吸収される
_◇オゾンホールとドブソン分光光度計
オゾン量が2.2mm相当量以下にまで減少した場所
※地上でオゾンが0.02ppm以上の濃度だとオゾン臭として人間は感知できる
※ドブソン分光光度計
太陽光を320nmより短い波長域と長い波長域に石英プリズムで分光する。オゾン層のオゾン量に応じて短い波長の光は吸収されるので、両者の光度を光センサで測定し、その比からオゾン濃度が求められる
◆波長と検出器
_◇Siフォトダイオード
紫外光から可視光
①紫外用Siフォトダイオード
@200nm 0.1A/W 高感度素子 浜松フォトニクスS1227-BQ
②補正フィルタ付きSiフォトダイオード
可視光用
例)S7686 浜松フォトニクス
③Siフォトダイオード
近赤外向け
※フォトン1個から正負の電荷1個が生じ、これが平均化されて出力としては「直流」に見える。しかし、実際にはフォトン1個一個に対応するパルスの集まりである。(但し、フォトン1個1個が電子1個分の電荷なので、検出は難しい)
①フォトダイオードには逆バイアスがかけられており、PN接合部には空乏層がある。
②ここに光が照射され、光エネルギーがバンド・ギャップエネルギーEgよりも大きいと価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯にはホールが残る。
③逆バイアスかかっているのでホールはN->P、電子はP->N方向に移動する。
④ここでダイオードの両端を短絡すれば光の強度に比例した電流がアノードから外部をとおりカソードへ流れる。
※暗中では通常の整流ダイオードと同様の特性を示す。
※入射光量に対する出力電流
Psat = (Vbi + Vr)/(Rs+Rl)*Sλ
Psat:直線性上限エネルギー[W]
Vbi:接触電位差[V] 0.2~0.3V
Vr:逆電圧[V]
Rs:負荷抵抗[Ω]
Rl:素子直列抵抗[Ω] 数Ω程度
Sλ:波長λにおける受光感度[A/W]
※NEP(等価雑音電力)
Noise Equivalent Power
雑音電流と等しい電流を発生させる入射光量(S/N=1となるときの入射光量)。逆方向の暗電流等により決まる検出限界。[W/√Hz]
暗電流や光電流によるショット雑音電流is[A/Hz]
<帯域幅 B [Hz]で正規化した値>
is=√(2q(il+id)B)
q:電子の電荷(1.602e-19 C)
il:入射光による光電流[A]
id:暗電流[A]
熱雑音電流ij[A/Hz]
ij=√(4kTB/Rsh)
トータルの雑音電流in[A]
in=√(is^2+ij^2)
Pnep = in / S
S:受光感度[A/W]
※PNフォト・ダイオード
通常のPN接合によるもの
※PINフォト・ダイオード
p-intrinsic-n
pnフォトダイオードの間に真性半導体(intrinsic)層を挟み、電極間距離をあけて静電容量を低下させ高速化を狙ったもの。
※ショットキーフォトダイオード
P層の代わりに金メッキなどを使用して空乏層をきわめて薄くつくったもの。短波長の感度が高くなる。
※APD(アバランシェ・フォト・ダイオード)
大きな電界によりアバランシェ増倍を起こして高感度に検出するもの。(逆バイアスを印加することにより光電流が増倍される)
※アノードにマイナス電源を接続してバイアス
①飽和レベルが上昇、直線性が改善できる
②端子間容量が減少、応答性が改善できる
③暗電流は増える
※500nm~850nm程度の領域の温度依存性は小さい。
※フォトダイオードの直線性は非常によい。ダイナミックレンジも広い。直線性はフォトダイオード自体よりも周辺回路の方が問題となる
※暗電流は素子の面積と温度上昇により増加する
→微弱な光パワー測定では必要最小面積のダイオードを冷却使用する
_◇フォトトランジスタ
通常シリコン。ベースが受光面となり、ベース・コレクタ間で発生した光電流がhfe倍されてコレクタ電流として取出せる。
※等価回路
コレクタ○
┌──┬─────┤
↓Ip│ ↓Ic
┴ ┌┴──┐ │
⇒▲ │CCB│ │
│ └┬──┘┃/
└──┴───┨
┃\
V
│
│
エミッタ○
※2端子で、コレクタとエミッタが出ている。
例)コレクタ-エミッタ間5V
光電流1mA@1000lx
※特性のばらつきが大きく、高速でもないが、感度が高い。
※入力がパルスの場合、周波数が上がると出力電圧が低下する。(エミッタ抵抗が大きいと影響が出やすい)
_◇フォトIC
モノリシック型
受光部と信号処理を同一チップに形成
ハイブリッド型
フォト・ダイオードと信号処理チップを同一パッケージ内で接続。
※照度-周波数変換フォトIC
_◇GaAsPフォトダイオード
①ショットキー型GaAsPフォトダイオード
紫外光用
②拡散型GaAsPフォトダイオード
可視光用
_◇GaPフォトダイオード
感度波長範囲が600~700nm程度までなので、紫外光を中心にとらえ、赤外光の感度を抑えられる。
_◇光導電素子
光電効果を利用した素子。入射する光の強度に応じて素子の抵抗率が変化する。
※可視光用
CdS (高感度だが、環境汚染のため使用不可)
CdSe
⇒照度計、露出計
※赤外
PbS
PbSe
InSb
⇒放射温度計、水分計、ガス分析計
_◇光電子増倍管
紫外光から可視光
非常に高感度。入射窓に入った光により、電子が放出され、それをダイノードと呼ばれる2次電子放出部に導き、ここで何段にも増倍する。フォトン・カウンティングが可能。
※光電増倍管
たった1個の光子でも検出できる。金属板に光子があたると電子が一個はじきだされ、この電子が別のプラスに帯電している金属板に引かれて衝突し、この板から3,4個という具合に10回から12回増幅することで、電流となって普通の増幅器にかかるようになる。
_◇InGaAsPINフォトダイオード
近赤外線
標準タイプで波長1.5um程度まで
長波長タイプで波長2.6um程度まで
※ブルーシフト
温度が下がると分光感度特性上のピークが短波長側にずれる。長波長側では受光感度が急激に変化するので、そこでのズレには配慮が必要
_◇InAs/InSb素子
赤外。これも光導電効果。
InSbフォトダイオード、波長5μmまで
※波長がながい赤外線検出素子は熱の影響を受けやすい。ノイズ低減のため、冷却器つきのものもある。
※赤外レーザ検出
_◇MCT素子(HgCdTe)
赤外。これも光導電効果。
HgTeとCdTeの組成比を変えることにより長波長(10um)以上の検出可能。
素子冷却が必要。
※FTIR(赤外分光光度計の一種)
_◇フォトンドラッグ素子
CO2レーザ検出用
◆比検出能力 D*
光入力が1Wのときの交流的なS/Nを表す
素子面積1cm^2, 雑音帯域1Hzで規格化
単位は cm√(Hz)/W
D*(A, B, C)のように表す。
A:光源の温度[K]または波長[nm]
B:入射光のON/OFFのチョッピング周波数[Hz]
C:雑音帯域幅[Hz]
◆分光感度特性
波長毎の感度の特性。フォトンのエネルギーが、受光素子のバンドギャップエネルギーEgより大きくなると、電子-ホール対が生じて、光起電力が生じる。単位 [A/W]
λh = 1240 / Eg
λh: 波長 [nm]
Eg: バンド・ギャップ・エネルギー [eV]
※シリコンの室温におけるバンドギャップ
Eg = 1.12eV
⇒上式より約1100nm以下の波長で感度を持つ
※In0.53Ga0.47As
Eg = 0.73eV
⇒1.7μm
※短波長
拡散層が薄く、PN接合が表面に近いほどよい
◆量子効率 Qe
入射した光子がどのくらいの割合で光電流に寄与するかを表した割合
Qe = (S * 1240 / λ) * 100
Qe:量子効率
S:受光感度[A/W]
λ:波長[nm]
◆応答特性
_◇上昇時間 tr
tr = √(t1^2 + t2^2 + t3^2)
t1:応答時定数
t1=2.2*Ct*Rl [sec]
Ct:端子間容量 [F]
Rl:負荷抵抗 [Ω]
t2:空乏層外のキャリアの拡散時間
数μS以上
t3:空乏層をキャリアが走行する時間
走行速度Vd [cm/sec]は
キャリアの移動度μ[cm^2/(V*sec)]
空乏層の電界強度E[V/cm]
Vd = μE
空乏層の厚さをW[cm]とすると
E=Vr/W (Vrは逆電圧)
t3=W/Vd=W^2/μVr
_◇遮断周波数 fc
出力が3dB減衰する周波数。
trとは
tr≒0.35/fc
という関係あり。
◆測定回路TIPS
※IV変換の発振を防ぐ帰還抵抗と並列の補償コンデンサ
Cf>Cin(端子間容量、配線容量、入力容量の和)
※対数変換ICを使用すればdBm単位の光パワーをレンジ切替等無しに測定できる
※分光感度特性の補正
レーザ光源と校正データつき光パワーメータによる
※パワー測定=すべての光を受光できるように
ガウス分布のように裾が広がるので余裕を持った大きさが必要になる
→意図的に集光し、小さな面積で受光する方法もある
※受光感度の高い InGaAsなどでは、光パワーが大きな電流に変換され、結果として電圧出力が飽和することが起こりえる。電流バッファをつける、受光素子に光学的アッテネータを付ける。
※帰還抵抗の切替にアナログスイッチなどを使う場合は許容電流に注意
※帰還抵抗の値が小さいときに、アナログスイッチで切替する場合は、ON抵抗の影響に注意
※感度を上げるため、帰還抵抗の値が大きいときには、抵抗の温度依存性や長期安定性に注意。OPアンプはバイアス電流が小さいものを選ぶ
※収束するビームの単位面積あたりのエネルギーに注意。紫外線照射は劣化を招きやすい。
※フォトダイオード表面にはARコーティング(反射防止)が施されている場合あり、有機溶剤は指定されたもの以外は使わない
※測定可能な全波長での校正はまずできないので、特定の波長近辺のみでおこなうことが多い。
※光パワー測定値にセンサの位置や照射角度で測定値が変化する場合、
フォトダイオードの飽和
反射、多重反射の影響
をチェックスルコト
※光の入射角が大きすぎると界面の反射の性質で感度が変化する
※偏光(p偏光、s偏光)により反射の様子が異なる。
→入射角依存性
※表面をつや消し(拡散板)にすれば入射角依存性を減らせるが、受光感度の低下、分光感度特性の変化などが起こる。
※フォットダイオードの受光面内の位置で測定値は変化する(均一性:uniformity)
→なるべく中央でビームを広げると良い
◆光度と照度
_◇光度
光源の明るさを表す。人間の感度特性を加味する。
単位:cd (カンデラ)
※元は蝋燭1本が1カンデラだった
0.9933 [cd]
※550nmの波長の単色光を点光源から1mの球面上においた1m四方の正方形(1ステラジアン)に照射し、受けたエネルギーが1/683 Wになるとき 1cd。550nm以外は視感度特性による係数を乗じる。
※面光源の光度:
cd / m^2
lm / m^2
_◇照度
単位面積が受ける光の量を表す。
1cd の光源から1m離れたところの照度が 1 [lx]
(ルクス)
JIS Z9110-1979 照度基準
防犯 5~2 lx
FIFA基準(サッカー場) 1400 lx
※照明の波長分布
⇒色温度で規定
※被写体照度と面照度
センサ表面の照度を面照度という
E0: 被写体照度
R: 反射率
T: レンズの透過率
F: レンズF値
m: 結像面倍率m(m<<1通常)
Ep: 面照度
Ep=R*T*E0/{4*(F^2)*(1+m)^2}≒R*T*E0/(4*F^2)
_◇光束
※SI
1 [cd]の光源から1ステラジアン内に放射される光束
lm (ルーメン)
※ANSIルーメン
プロジェクタの光源の発する光束の単位。投影面を縦横3つ、計9領域に分割、それぞれの平均照度 [lx]に投影面の面積 [m^2]をかけた値
※光度エネルギーはルーメン秒で表す
※発光効率(ランプ効率)
[lm/W]
◆照度センサ
フォトダイオード+フィルタなどで、人間の目に近い感度特性を持たせたもの
例)
NJL6501R-3 新日本無線
EL7900 インターシル
フォトダイオードが受けた光電流に短絡電流の大きさが比例する。この電流を電圧に変換して照度を読み取る
回路例)
光起電流I
Vout ≒ I * R
┌─┐
┌┤R├┐
│└─┘│
I │┌─┐│
┌←┴┤-││
┌┼┐ │ >┴○
│┴│┌┤+│ Vout
│▲││└─┘ ○
└┬┘│ │
┴ ┴ ┴
Rは1M程度がMax (安定性や精度の問題で)
※真っ暗でも暗電流が流れる(素子によりばらつく)
温度にも依存する
→ノイズ(低照度で問題となる)
→入力電流がセンサの暗電流より小さいCMOS OPアンプが良い
→レール・ツー・レールのOPアンプでも単一電源では出力がGNDそのものにはならずわずかに残る。光がないような状態でも測りたい場合は、正負2電源が適する。
※レンジ
真夏の太陽: 200000 lx
→A/Dの分解能を上回る性能で増幅しても意味がない
測定レンジの分割を考える
Rをレンジで切り替える(Rを小さくしていけば感度が悪くなる代わりより明るい範囲まで測定可能)
※リプル除去
照明器具。。。毎秒100もしくは120回の脈動
→OPアンプ入力にコンデンサを入れるなどして平滑化して対処する。(Rと並列に)
※センサ出力ノードにノイズが入らないようにグラウンドで囲うと良い。
※校正
基準光度の標準電球のもとで、ゲイン調整(Rに直列にいれた可変抵抗による)する
※光源の指向性
※照度計は計量法でいう特定計量器である
_◇照度センサ(フォトIC)
EL7900 Intersil 照度センサ ピーク波長感度550nm, 600uA@1000lx 暗電流typ 0.15uA 電源電圧2.5~5.5V.
◆マイクロボロメーター
_◇ボロメータ(本来)
アブソーバーが放熱器に絶縁性の接続でつながっている
電磁波はアブソーバーに吸収され、温度が上昇、放熱器より高い温度となる。
温度の上昇を測定する。
本来は熱量計。
天文学では、絶対零度付近まで冷却
_◇マイクロボロメータ
非冷却赤外線撮像素子
酸化バナジウム(VOx)やアモルファスシリコンを使用した感熱素子をシリコン基板上い形成したもの。赤外線が感熱素子に照射されると抵抗値が変化するのでそれを検出する。高画素化できる。
◆日射計
ガラスドームの中に白黒に塗り分けられた板がある。白い面と黒い面の温度差を熱電対で測って陽射しのエネルギーを測定する
※ドームを水平におけば全天の輻射エネルギーを測定できる。
☆偏光、干渉計
◆偏光
光は横波なので、振動方向は進行方向と直交している。この振動方向を偏光という。電波では偏波という。
_◇電気光学効果
偏光面に電界、磁界が及ぼす効果。高速シャッターや光変調器として応用される
①ファラデー効果
光の進行方向に磁界を加えると、光の偏光方向が回転する現象
どのくらい回転するかは、材料により異なる。
②ポッケルス効果
電界を加えた場合に直線偏光が楕円偏光になる現象。
③カー効果
電界の2乗に比例して偏光に影響を及ぼす
◆干渉計
a)マイケルソン干渉計
2つの光路が直交しており、距離測定に用いられる代表的な干渉計
b)マッハツェンダ干渉計
2つの光路が並行であり、試料の屈折率測定などに応用される
c)ファブリペロ干渉計
2枚の平行なハーフミラーの間の多重反射を利用した干渉計で、共振ピークが鋭い
FSR(Free Spectrum Range) ピークとピークの間隔
FWHM:半値全幅 ピークの幅を示す。
※高感度な角速度センサである光ファイバジャイロにはサニヤック干渉計が使われている。
※サニヤック効果
※可干渉性
干渉計で二つのミラーの距離差を大きくしていくと、ついには干渉しなくなる。
→光源の質により干渉できる長さが限られている
→可干渉距離あるいはコヒーレント長
※渉の「よさ」をビジビリティといい、干渉信号の最大値と最小値から式のように定義する
ビジビリティ=(最大値-最小値)/(最大値+最小値)
※微弱信号の検出:ロックインアンプ
断続した光を受光素子で検出する場合、その出力と光源を断続している信号との掛け算を行い、その出力にローパスフィルタを通すと、外乱光や雑音の影響を排除して、微弱な光の測定をすることができる
→発生源が同じ信号だけを取り出す鋭いフィルタ
※表面に弾性表面波の振動を起こす
例)
ベアリングの玉の表面にあるわずかな傷を調べるのに弾性表面波を光で励振する方法
①二つの光を斜めに照射すると干渉縞が生ずる
②干渉縞の周期が励振したい弾性表面波の波長に合うように光の角度を調整
③片方の光の周波数をわずかにずらすと、周波数のずれに応じて干渉縞が横に走る
④この速度を弾性表面波の伝搬速度に等しく調整する
⑤高い効率で弾性表面波が起こる
→弾性表面波の走る方向を選べる
→表面に傷があると、弾性表面波が減衰したり反射されたりするので、そのことから表面のようすを知ることができる。
◆ファブリ・ペロー干渉計
Fabry-Perot interferometer
二つの高い反射能力を持った平面板から成る多光束等傾角干渉計
①二つの平面板は、それぞれの面を光波が何回も往復するようにスペーザーによって互いに平行にセット
②与えられた波長の反射光波の干渉は特定の角度、例えば平面に垂直のみ満たされる
→高解像度の分光器として使える。
→レーザー共振器
ミラー表面に垂直に当たる特定の周波数の光のみが連続反射で強められ、発振モードを形成する迄増幅
◆強度変調方式による距離測定
光強度の変調
最も簡単なのは、光をON/OFF
→反射光は往復の伝搬時間だけON/OFFのタイミングがずれるので、このずれを測定する
※EX-ORとローパスフィルタ(LPF)を用いるだけで、距離に比例した出力電圧が得られる
例)
ON/OFFの周波数が30MHzであるとすると、1周期は10m(往復)に相当
1/1000周期のずれまで読み取れる=5mm(片道)の距離変化がわかる
※正弦波で変調する方式や、複数の周波数で変調して精度を向上させる方式もある
◆光ファイバ
光ファイバは、透明度の高いガラスの繊維であるが、二重構造になっている。屈折率が大きいコアを、やや屈折率が小さいクラッドが取り囲んでいる。コアとクラッドの境界で光は反射するので、細いコアの中に閉じ込められて遠くまで光は伝わる。通信用の光ファイバでは普通、クラッドの直径は125μmで、髪の毛ほどの太さである。実用の光ファイバケーブルでは、クラッドの周りに何層かの樹脂製保護層が設けられている。
クラッド(Cladding)…屈折率小
コア(Core)…屈折率大
①光ファイバの中の後方散乱光
光ファイバは非常に低損失な伝送路である。しかし、さまざまな理由で、光の一部が散乱されて、逆方向に戻り、損失となる。これが後方散乱光である。ガラスの屈折率のゆらぎなどによるレイリー散乱は入射光と同じ波長の光が戻る。ブリルアン散乱、ラマン散乱は異なった波長の光が散乱する現象である。光ファイバに光を伝えると、光ファイバ中に微弱な音響波が発生するが、この音響波による散乱がブリルアン散乱である。ブリルアン散乱では、入射した光とわずかに波長の異なった散乱光が生ずる。通信用光ファイバでは、光の周波数で約10GHz程度の差のある光が生ずる。一方、ラマン散乱は、ガラス分子の振動に起因する散乱で、散乱波の波長は大きくずれる。ブリルアン散乱やラマン散乱は、光ファイバに加えられたひずみや温度で波長や大きさが変わるので、センサ応用に役立つ。
②OTDR(Optical Time-Domain Reflectometry)
光ファイバ中の光速を20万km/sとすると、パルス幅は距離換算で、20万[km/s]×5[ns]=1[m] となる。OTDR計測は反射計測なので往復経路を測定するから、距離分解能は半分の50cm。
③BOTDRセンサ
光ファイバに光を通すと微弱な音響波が生ずることが知られている。この音響波で発生する光の散乱がブリルアン散乱である。ブリルアン散乱された光は、入射した光に対して周波数が10GHz程度ずれる。このずれは、ひずみ量に応じて変化するので、ひずみ量がわかる。パルス光を用いれば、光が戻ってくる時間から距離が求められるので、どこでどれだけのひずみが生じているかがわかる。このように、1本の光ファイバによって、それに沿った長大な距離のひずみ分布などがわかるのが光ファイバセンサの特徴である。
④光ファイバ温度センサ
光ファイバのガラス分子の振動によるラマン散乱光は温度による影響を受けるので、温度センサとして利用することができる。光ファイバに沿った温度分布を遠隔測定する。トンネルや建物の火災検知などの応用が考えられている。ラマン散乱光では、入射した光よりも波長が長いストークス光と波長が短いアンチストークス光が発生するが、アンチストークス光は温度により大きく変化する。パルス光を入射してアンチストークス光が戻ってくる時間から場所を割り出すOTDR法を用いれば、どの場所で温度変化がどれだけ生じているのかがわかる。
⑤ファイバグレーティング
光ファイバグレーティングは、光ファイバ・コアの屈折率を長さ方向に周期的に変調した光ファイバである。変調周期が光波長の半分であると、多数の屈折率変化部分からの反射がすべて強めあうブラッグ反射が生ずる。従って、特定の波長だけ反射する光フィルタとして動作する。これをファイバブラッググレーティング(FBG)と呼んでいる。FBGに引張り力を加えたり、温度変化を与えると周期が変化するので、反射波長も変化する。この性質がセンサとして利用されるのである。多数の反射波長の異なるFBGを1本のファイバ中に設ければ、波長によってどのFBGにひずみや温度変化が生じているかを判別できる。OTDRのような時間で分離する時分割多重方式に対して、このような位置判別法を波長分割多重方式という。
Q10-10
ファイバグレーティングはどのように作るか?
A10-10
光ファイバに紫外線を照射して屈折率をわずかに変化させます。周期的に変化させるには、二つの紫外線の干渉縞を用いる方法とマスクを使う方法があります。光ファイバにゲルマニウムを加え、さらに高圧水素で処理することで、紫外線に対する感度を向上し、屈折率変化を長持ちさせます。
Q10-11
光ファイバ同士はどのように接続するか?
A10-11
光ファイバ用のコネクタがあります。光ファイバのコアの直径は10μm程度なので、1μm以下の精度で位置合わせができるようになっています。これを用いると電線と同じような感覚で、光ファイバをつなげたり切り離したりできます。また、放電の熱で光ファイバを溶かして接続する融着接続器が開発されています。これを用いると、コネクタよりも光の反射や損失が少ない良好な接続ができます。
※光ファイバコネクタ
フェルール ferrule … 光ファイバから飛び出している部分
平面(端面にマッチングオイル要)
斜め平面(要マッチングオイル)
PC
APC (Angled PC)
※マッチングオイル。。。屈折率整合剤
※PC Phycical Contact
※フェルール端面には触らない、息を吹きかけない、要防塵キャップ、要クリーニング。
※光コネクタの端面を覗き込まないこと(ハイパワーのレーザ光源が接続されるかもしれない)
※光ファイバ、最小曲げ径あり、曲げると断線する
Q10-13
光ファイバ中の偏光は乱れないか?
A10-13
普通の光ファイバでは、外力などによって偏光面は容易に変化します。そこで、偏光面が保たれる偏波面保存ファイバという特別な光ファイバが作られています。
Q10-4
光ファイバ中の光の速度はどのくらいか?
A10-4
光ファイバに使われているガラスの屈折率は1.5くらいなので、真空中の1/1.5程度になります。すなわち、約2×108m/sです。
Q10-5
光ファイバ中の減衰はどれくらいあるか?
A10-5
光波長によって減衰量は変化しますが、通信で使われるもっとも減衰の少ない1.5μm帯で約0.2dB/kmです。つまり、1km先でも光の強さは5%しか減りません。
※光ファイバ通信回線上の損失
①光ファイバ(シングルモード)
0.3~0.5dB/km (1310nm)
0.2~0.3db/km (1550nm)
②コネクタ
0.5dB
③融着(スプライス)部
0.05dB
※光ファイバの種類
①シングル・モード・ファイバ
長距離通信 1310nm/1550nm
②マルチモードファイバ
近距離通信 850nm/1300nm/1310nm
◆OCT 光コヒーレンス・トモグラフィ
◆メタンガスの光吸収特性と吸収分光法
メタンガスは波長1.6537μm に大きな吸収
(メタンガスの分子振動に起因)
→吸収量を測定することでガス濃度を推定
※吸収分光法
光波長をわずかな幅だけ変調して高感度な測定を行う
例)周波数10kHzで波長変調
吸収の最大値に中心波長が一致したときは、波長変調の2倍の周波数である20kHzの信号が出力される。この出力振幅から吸収量がわかる。
◆音響光学変調器
音は媒質の疎密なので、光の屈折率も変化する
①圧電素子でガラスの中に超音波振動を伝える
②超音波の疎密で周期的な屈折率変化が生じる
③これは光に対して回折格子として作用
④超音波のON/OFFで光の進む方向を切り替える光スイッチに利用
※回折された光は超音波の周波数だけ光周波数がずれる
→光周波数をシフトするために使う
◆音響ルミネッセンス
超音波洗浄器のようなきわめて強い音を出すと、媒質の水が光る
※1気圧に達するような高音圧では、負の半周期でほぼ気圧ゼロになる瞬間があり、このとき小さな空洞、あるいは気泡ができる。正の半周期でこの泡がつぶれる瞬間に1000気圧以上の高圧が発生→この瞬間に発光
◆PAS 光音響顕微鏡
◆共焦点の原理
①光源からの光はハーフミラーを通り、レンズ1で集束して、被測定物に当たる。
②反射光はレンズ1で平行光に戻り、ハーフミラーで進路を直交方向に曲げられる。
③別のレンズ2でピンホール上に集められ、ピンホールを抜けた光が受光素子で電流の大きさに変換される
※レンズ1と被測定物の距離L1が、レンズ2とピンホールとの距離L2に等しいときに出力が最も大きくなる
→レンズ1を前後に動かして、出力が一番大きくなる位置を被測定物の位置として記録
→レンズ移動の精密さと、ピンホールの大きさ、受光素子でどこまで小さな電流変化が読み取れるかで分解能が決定される
☆蛍光X線測定
分析試料にX線を照射した時に発生する二次(蛍光)X線の強度を電気的に測定する分析法。広い含有率領域で高い分析精度が得られる分析方法。
☆表面プラズモン共鳴
◆概要
SPR Surface Plasmon Resonance
生体内で起こるさまざまな分子間の相互作用を検出するのに使われる現象。1990年代に抗原抗体反応のモニタリングを基本にスタート。
金膜表面上約1μmという限られた範囲内で起こる反応を、結合した物質固有の誘電率変化によりモニタリング。
特異的結合反応をリアルタイムに検出することができ、“結合の強さが判かり”、“結合の速さまで判る”解析が可能。
◆表面プラズモン共鳴現象の原理
金属薄膜の裏面の照射光は全反射すると同時に金属膜側に微弱なエネルギー波(エバネッセント波)を生じる。また誘電体に接触した金属表面では粗密波(表面プラズモン)が発生し、両者の波数が一致したときに共鳴して反射光が減衰する現象が生じる。これを表面プラズモン共鳴現象と呼ぶ。誘電率(屈折率の2乗)はエバネッセント波に影響し、センサチップ表面で引き起こされる物質間の相互作用は誘電率に差異を生じるため、これが表面プラズモンに影響し共鳴の変化として捉えることができる。
◆構成
レ-ザ光(半導体レ-ザ:670nm)を光学測定部のプリズム側より金膜へ入射する。この時金膜と金膜表面物質(サンプル固定化膜)との境界面に表面プラズモン(電子の疎密波:以下SP)が発生する。レ-ザの入射角度を45~78°まで変化させていくと、共鳴カ-ブが得られる。横軸はレ-ザの入射角度で、縦軸が反射光強度比(入射光強度に対する反射光強度の比率で1.0の時全反射)。これが表面プラズモン共鳴(SPR)現象である。経時的にSPRをモニタリングして金膜表面上で起こる反応を検出する。
◆エバネッセント波
evanescent
屈折率の高い媒質から低い媒質に電磁波が入射する場合、入射角をある臨界角以上にすると電磁波は全反射する。その際、1波長程度まで低媒質側の内部に電場が浸透する。(Poynting vectorは境界に並行)その浸透した場をエバネッセント場といい、放出する電磁波をエバネッセント波、近接場光という。
※エバネッセント波の強度は界面からの距離に依存し、指数関数的に減衰する。
_◇誘電率の異なる境界における電磁波の反射
誘電率小→大に波が入射
境界が節になる。短絡端反射。
誘電率大→小に波が入射
境界が腹になる。解放端販社。
☆テラヘルツ波
◆周波数
0.1THz~10THzの電磁波
※電波法上の電波~3THzと赤外線に跨る
※ミリ波
100GHz … 波長約3mm
300GHz … 波長約1mm
※サブミリ波
1THz … 波長300um
3THz … 波長100um
※赤外線
10THz … 波長30um
◆特徴
※テラヘルツ波帯のフォトン・エネルギー
0.4meV~41meV
水素結合、ファンデルワールス結合、固体物質の素励起、分子の回転モード、巨大分子の内部振動モードなどのエネルギーに相当。
⇒さまざまな物質が、特有のスペクトル(指紋スペクトル)を持つ。
※室温の熱エネルギーもテラヘルツ帯
26meV@300K, f=6.25THz
①指紋スペクトル
②適度な透過力
③適度な空間分解能
測定器の開口が数十cm以下で数mm程度が得られる
④水分による大きな吸収がある
⑤水分およびコンティニュウム吸収成分(大気の衝突電離錯体)により、伝搬距離が短い
◆THz-TDS
テラヘルツ時間領域分光法
Terahertz Time Domain Spectroscopy
①パルス発生
フェムト秒レーザパルスを
半導体表面(フォト・デンバー効果)
非線形光学結晶(光整流効果)
光伝導スイッチ
に照射⇒サブピコ秒のモノサイクル・パルス電磁波発生
②パルス光をターゲットに通して検出器で計測
③計測された時間波形をフーリエ変換することで周波数成分を得る。
◆連続波発振技術
従来電子デバイスとレーザデバイスの中間で適当な半導体光源が存在しないギャップになっていた。
テラヘルツ量子帯カスケード・レーザ
THz-QCL : Terahertz Qauntum Cascade Laser
☆磁気計測
◆ホール素子
厚さ数マイクロのゲルマニュウム、ガリ砒素などの半導体素子の一面に制御電流を流す。この素子をこの面と直角の向きの磁束密度Bの磁界の中に置くと、電子がローレンツ力をうけ制御電流とは直交する方向に運動方向が曲がる。これにより発生する直交方向の電圧を検出する。
※直流定電流を流せば磁束密度に比例した電圧が得られる。
※1μTから大きな磁場まで測れる
~10k gauss
※磁界検出分解能 0.1 gauss
※応答周波数は数kHzと遅い
※冷蔵庫につけるフェライト磁石で0.4T
※ホール素子は素子を貫通する磁束密度に比例した電圧を出力する(磁電変換素子)
※出力電圧の極性により磁極を判別できる
※2入力2出力の四端子素子
一般的な接続
IN- … GND
IN+ … 抵抗を介して電源
(素子の定格みたすなら抵抗不要)
OUT-, OUT+
基準電位は入力電圧の中点電位で差動アンプで増幅
vout = K1 * Iin * B
vout = K2 * Vin * B
K1: 定数[V/A・T]
K2: 定数[1/T]
B: 素子周辺の磁束密度[T]
※実際には非対称になり、磁束密度が0でも不平衡電圧(オフセット)が発生する。
_◇ホール効果
Hall effect
電流の流れているものに対し、電流に垂直に磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に起電力が現れる現象。
※主に半導体素子で応用
※1879年、米国の物理学者エドウィン・ホール(Edwin Herber Hall, 1855-1938)によって発見
※
p又はn型の半導体試料において、x方向に電流を流し、y方向に磁場をかける。この時試料を流れている荷電粒子(キャリア)は磁場によるローレンツ力を受けてz方向に動く。これによって電流と磁場の両方に直交する方向に電場(ホール電場)が現れる。
※磁場の検出に用いられるほか、半導体の電気的特性の測定などに応用
簡単な古典論では、ホール電場をEH、電流をI、磁場をBとして
EH = RHIB
の関係がある。比例係数RHをホール係数と呼び、材質や温度などで決まる。 一般にキャリア密度をn、キャリアの電荷をeとして
|Rh| = γH / n e
の関係がある。ここでγHは散乱因子と呼ばれる。
電流方向の電場をEjとして、
θH = EH / Ej
をホール角(Hall angle)と呼ぶ。
また、電気伝導度σとホール係数Rの積
μH = | RH | σ = μγH
をホール移動度(Hall mobility) と呼ぶ。ここでμはドリフト移動度
_◇ホール素子の出力電圧VH
材料の移動度μHやホール係数RHに依存
→材料の移動度が大きければそれだけホール出力電圧も大きくなる。(このためホール素子の材料には移動度の大きいⅢ-Ⅴ族化合物半導体が用いられる)
※ホール移動度(Hall mobility)
Hallはholeでないので注意!
ホール移動度は電子移動度とほぼ等しい
[m^2/V*sec]
Si 0.15
Ge 0.36
GaAs 0.97
InAs 3.30
InSb 8.20
※半導体の種類 旭化成電子ラインナップ 電子移動度
(cm2/VS) バンドギャップ
(eV)
InSb HWシリーズ 78000 0.17
InAs HZ,HQシリーズ 33000 0.36
GaAs HGシリーズ 8500 1.4
※InSb
電子移動度78000(cm2/VS).
半導体中最大の電子移動度をもつが、温度依存性が大きい。
※GaAs
電子移動度が8500(cm2/VS)
InSbの1/10程度だが、バンドギャップが大きく温度特性が向上
※InAs
電子移動度、バンドギャップの値がInSbとGaAsのほぼ中間の値を示す。高感度で温度特性良好。
_◇不平衡電圧Vos
ホール素子の基本特性の1つ。磁束密度が0の時に出力端子間に生じる電圧。
ホール素子に電流や電圧を流すだけで発生するので残留電圧とも呼ばれる。
※ホール素子の出力端子間には不平衡電圧とホール出力電圧の和が出る
※不平衡電圧はホール素子を製造する際のパターンのアンバランス、不均一性等をはじめとした各種要因による
_◇ホールIC
ホール・センサ、アンプ、コンパレータ、出力トランジスタを1体化したもの。LED点灯、TTL出力可能。
※応用
流量計、パルスエンコーダ、カレントトランス
ドアの開閉検知、歯車の位置検出
→鉄による磁束の位置の移動を見る
_◇ホールICによるモーター回転検出
ブラシレスモーターの高精度な回転制御
(NとSの極性をもつロータの向きを検出する必要がある)
→ホールセンサでロータから出る磁束を検出
→小型化・損失低減を実現
※ホールICの利点
1. 非接触位置検知→耐久性
2. 磁気検出→塵・埃・油などの汚れに強い
3. 小型化・軽量化・損失低減
※原理
ホールIC
磁界強度に応じたON/OFFのデジタル出力
→ロータの位置検知
→モーターロータの磁極に対峙したステータ側に1~複数のホールICを並べて設置することで、その磁石の配置からロータの位置を検知し、回転を計測する
_◇ホールモータ
ホール・センサを使ったDCブラシレス・モータをとくにホールモータと呼ぶ。
※インナ・ロータ型3相ホール・モータ
①マグネットロータ、N極、S極それぞれ1個
→2極着磁タイプ
②ステータコイル、U,V,W相がそれぞれ120度ずれて配置。120度正方向通電、60度オフ、120度負方向通電、60度オフで1回転
ホールセンサはマグネット・ロータが回転することによって生じる磁束密度の変化を検出して電圧に変換、これを位置検出アンプで増幅し、スイッチマトリックスを介してモータドライバを駆動する。
→通電期間のちょうど中心で、ロータのS極とN極の境がコイルの中心と向き合うように駆動電圧を切り替えると効率が良い。
※ホールセンサの電源接続
ホールセンサの抵抗が全て同じ、各素子に加える電圧も同じとして、同一の電源電圧に対して電流制限抵抗を考えると、
①直列接続
他の2相の磁気抵抗効果(半導体に大きな磁界を与えると素子の抵抗値が大きくなる)の影響をうけ波形がひずむ。素子ばらつきの影響を受けやすい
②並列接続
制限抵抗は小さくなり、消費電力は大きくなる。また、温度の影響を受けやすくなる。
_◇ホールモータのゼロクロス検出回路
マグネットロータのN極がセンサに向いているとき、出力は正、S極ならば負、ホール出力電圧が0となるゼロクロス点がNとSの境目である。これは出力電圧の大小に依存しない。
※チャタリング防止のため、ある程度のヒステリシスを持たせるのが良いが、ヒステリシス幅が精度の悪化をもたらす。
_◇InSbタイプのホールセンサ
市場の80%。温度依存性が大きいが、感度が高く、不平衡電圧も比較的小さい
_◇精密位置検出 – Close Position Sensing –
ホールセンサによる微少な移動量あるいは位置の検出
※アナログ出力のホール素子
物体の「1mm」のストローク(移動距離)に対して、「数μm」オーダーの分解能で検出が可能
※「数mm」オーダーのストローク(移動距離)
2個のセンサを配置しそれぞれの出力を演算することで、「数μm」オーダーの分解能での検出が可能
→2個のセンサの温度特性もキャンセルされ、リニアな出力が得られる
→2センサ内蔵(1パッケージ)の製品を使用すれば、実装ずれを気にする必要がなく扱いが容易
※ホール素子による精密位置検出のメリット
1. 非接触で検出するため耐久性が高い
2. 磁気を検出するため、光センサに比べて塵・埃・油などの汚れに強い
3. 小型化が可能
※原理
ホール素子は、磁束密度に比例した出力を得ることができる。ホール素子位置に対し、測定物の移動量に比例した磁束密度がかかるようにレイアウトを設計することで、移動量に比例したホール出力を得ることができる。
_◇ホール効果電力計
ホール効果電力計のホール素子には、負荷電流I [A] に比例する磁束密度B [T] と電源電圧V [V]に比例する電流I [A] が加わり、ホール起電力V H が発生する。 電力に比例するV H は電圧と電流の積の値である。
Vh= K’ * V * I [V]
◆SQUID
Seperconducting quantum interference device
超伝導量子干渉デバイス
<スキッド>
※地磁気の100億分の1測定可能
※MEG Magnetoence phalograph
脳磁計:脳の神経活動に伴って発生する微弱磁場を計測する装置。
※DC-SQUID
超伝導リングに2個のジョセフソン接合を持つ
_◇原理
量子化された電子渦とジョセフソン効果の応用
直線運動をしている電子に磁場をかけると電子は磁場に垂直な面内で円運動をする
⇒微小な回転では電子が一回りしたとき電子の物質波の位相がピッタリ合わないとならないので、電子軌道は飛び飛びの半径を持つ
⇒周回は単位磁束のn倍の面積単位となる
⇒磁束量子化
◆MR素子
磁気抵抗素子
単体センサは2端子でホール素子より小型化可能。
地磁気による方位検出や、紙幣の磁気インク、磁性体の検出などに使われる。
※そのままでは感度は低い。バイアス磁界を加える
※ニッコーシ
MRS-H-21
※Honeywell
HMC1001, HMC1021S
※10GHzまで周波数に依存しない高周波特性があり、応答性にすぐれる
※磁界検出分解能 0.1 gauss
◆GMR素子
※磁界検出分解能 0.01 gauss
◆MIセンサ
磁気インピーダンス素子
_◇MI効果
Magneto-Impedance effect
アモルファスワイヤにパルス電流を流したときのインピーダンスが、微小な外部磁界によりよって極めて大きな変化を示す効果(毛利)
Z=a/(2√(2ρ))*Rdc*(1+j)*√(ω*μ*Hex)
Z:ワイヤのインピーダンス[Ω]
a:ワイヤの直径[m]
ρ:比抵抗[Ωm]
Rdc:直流抵抗[Ω]
ω:通電電流の角振動数[rad/sec]
μ:周方向の透磁率[H/m]
Hex:外部磁界[A/m]
透磁率μがワイヤ軸方向の外部磁界Hexによって変化するので、Zの変化から外部磁界の強さを検知できる。
※アモルファスワイヤではワイヤ表面のスピンの配列が円周方向にならぶ磁区構造をとり、μの変化が大きくなる
_◇MI素子
磁気インピーダンス素子
※Zから直接は磁界の方向は判断できず、直線性が出ないが、ワイヤにピックアップコイルを巻いて、誘導電圧を検知することで磁界の方向が判別でき、出力特性も直線的となる。
ピックアップコイルに発生した電圧をピークホールドし、差動アンプで増幅する
※アモルファスワイヤ(例
外径20μm
長さ1.5mm
◆地磁気センサ
_◇MR(magneto-resistive)素子
外部次回の強度変化とともに抵抗値が変わるパーマロイ(NiFe)など金属軟磁性体のMR効果を利用する。
_◇ホール素子
_◇AMI201
http://aichi-mi.com
ワンチップ電子コンパスIC
MIセンサ2個を直交配置
3.1×3.4×0.8mm 6mW, 10kHz
±3gauss (0.3mT)
200mV/gauss
直線性=フルスケールの1.3%
X,Y切り替えてアナログ信号を出力。
10ビットのA/Dで1°の分解能が可能
※方位角θ
tan(θ) = Hy / Hx
X軸とY軸の磁界から求められる。θが45°を超える場合は、cotから求めたほうが計算精度の低下が少ない。
※偏角、日本では西に7°
※キャリブレーション
地磁気中で水平に一回転させることでサインカーブを計測し、オフセットとゲインを求めてソフトウエア的なキャリブレーションに使用できる。
※2Dなので傾けると誤差がでる
※エレベータ内などは磁気シールド効果で地磁気が弱い
※鉄道の架線付近では外乱磁界強い
_◇HM55B
X,Y2軸のホールセンサ, 11ビットA/D変換器内蔵。シリアル出力。X,Yの地磁気の強度を出力する。3V電源。
http://www.hitachi-metals.co.jp/
_◇方位についての情報
http://www.kakioka-jma.go.jp/
気象庁地磁気観測所
http://wwwl.kaiho.mlit.go.jp/
海上保安庁
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/
国土地理院
_◇地磁気計測
機器ないの電流や磁性体部品から発生する地場の影響をいかに抑えるか。(オフセット磁場の補正)
◆サーチコイル
コイルに鎖交する磁束が変化すると誘導起電力が生じることを利用しているセンサ
コイル断面積:πr^2
コイルに鎖交する磁束密度:B
コイル巻き数
Vout = -n*π*r^2*(dB/dt)
※直流磁界は検出できない。交流磁界のみ。
◆リードスイッチ
2本の強磁性体リードが適当な接点距離で相対した状態でガラス管に封入されたもの。外部からリードの軸方向に磁界が加わるとリードが磁化して接点が閉じる。外部磁界を消せば、リードの弾性により回路が開く。
※接点寿命は1000万回程度
※NECトーキン
◆着磁状態可視化シート
磁性流体(界面活性材の相互反発とブラウン運動によって磁性超微粒子が媒体中で凝集しないようにした複合材料)の層をつくったもの
◆フラックスゲート磁束計
高感度。励磁コイルとピックアップコイルがトロイダルコイル・コアに巻かれている。励磁コイルに、コアが飽和するのに十分な電圧振幅の矩形波を加える。コアが不飽和な領域では、伝ry風は直線的に増減するが、コアが飽和すると、大電流のスパイクが流れる。外部磁界により、このスパイクの流れる位置が変化する。
※磁界検出分解能 10^-6 gauss
◆プロトン磁力計
NMRの周波数が、外部磁界に比例することを利用した高精度磁気センサ。
プロトンを多く含んだ、ケロシンあるいは水をいれた非磁性の容器の周囲に巻かれたコイルに直流電流を流して励磁、プロトンのスピンを同じ向きに揃える。励磁用磁界が消失すると、プロトンは外部磁場の方向に沿ってラーモア歳差雲度を行いながら減衰し、ランダムな方向に緩和される。このときコイルに発生する微弱な交流電流を増幅して周波数を求めると外部磁界の強さを測定できる。
2πf = rp |B|
rp: 原子核回転磁気率
※オーバーハウザー磁力計
励磁を共鳴周波数の交流パルスで行う
◆ファラデー効果
磁気旋光
ある物質に磁場をかけ、それと平行な方向に直線偏光を透過させたときに偏光面が回転する現象
⇒ファラデー回転(Faraday Rotation)
α=V*H*l
α:旋光度
V: ベルデ定数(物質の種類と偏光の波長、温度に依存する)
H:磁場の強さ
l:偏光が通過する物質の長さ
◆磁気光学カー効果
Magneto-optical Kerr effect
直線偏光を磁化した材料の表面にあてると、反射光が楕円偏光となる現象
☆ラマン分光
◆ラマン効果
物質に光を入射したとき、物質内の分子や結晶の振動準位や回転準位、電子準位によって、光が変調され、入射光と異なる波長の光が含まれる現象。光電場の振動と物質側の分極率の振動を掛け合わせた結果の「うなり」である。
※レイリー散乱の振動数より低いストークス成分と高い反ストークス成分があり、それぞれ基底から励起への遷移とその逆に対応しており、両成分の強度比から確率比が分かる。
※中間状態で入射光のエネルギー近傍に対応する電子状態が多いと、ラマン散乱強度が著しく増大する共鳴ラマン散乱が起こる。
◆レイリー散乱
光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱。散乱係数は波長の4乗に反比例する。
※光の波長と同程度以上のサイズの粒子による散乱はミー散乱と呼ばれる。
α=πD/λ
D:粒子直径
λ:波長
α<0.4 レイリー散乱領域
0.4<α<3 ミー散乱領域
α>3 回折散乱領域
☆ライダー
レーザ光によるレーダ
①空に向かってパルス光を撃ち出す
②逆散乱光を望遠鏡で観測
※物質の光吸収特性やラマン散乱などから、上空の有害微粒子やガス濃度を調べるのに利用
※ドップラー効果によって流れを観測するライダー
※飛行機の機首に搭載して、気流の乱れを知る
☆EO結晶
Electro-Optic
非線形光学結晶
EO効果