☆温度、熱計測
◆温度
※物質の物理的性質はほとんどすべて温度の影響を受ける
①物体の体積、圧力
②電気抵抗
③接触電位差
④物体の発する光の強さ、色
⑤気体、液体、固体の状態
⇒定量的に知りうる
※熱平衡
2つの物体を熱的に接触させ、十分長い時間放置
⇒温度が等しくなる
⇒測定対象と温度計を熱平衡に到らせることが必要
(測定対象の熱的状態が温度計に乱されないことがのぞましい)
◆温度センサの選定のポイント
※熱電対、白金測温抵抗体、サーミスタについては共通
(1) 測定対象物の温度範囲に近い測定範囲のセンサを選定し、むやみに測定範囲の広いものを選定しない。
(2) 用途と目的に合った精度と階級のものを選定する。
(3) 使用環境を調べ、特に腐食性・耐熱性などを考慮する。
(4) 機械的強度や応答性を考慮して、形状やサイズを選択する。
(5) 温度センサのメーカは、用途別に多くの商品を用意しているが、特殊用途ではメーカに相談することが望ましい。
(6) 計測器はそれぞれのセンサに適合するものを選定する。
(7) 取付けるときには、感温部を測定対象物に密着させて保持する。
※放射温度計の場合、
(1) 必要以上に測定範囲の広いものは選択しない。通常、低温になるほど感度が悪く、誤差が大きくなる。
(2) 高温測定の場合には短い波長、低温測定の場合には長い波長の放射温度計が用意されているが、放射率を考慮すれば、温度が許す限り波長が短いものを選択する。
(3) 放射温度計と測定対象物間の距離と測定対象物の大きさを確認して選定する。 固定焦点形の放射温度計では、標的のサイズと距離の関係図を参考にし、可動焦点形の放射温度計では、距離係数を考慮する。
(4) 取付けおよび使用する場合には、光路に障害物やちりほこりがないように清掃・保守する。
◆ニュートンの冷却の法則
「物体が放射によって失う熱量は、その物体と周囲との温度差に比例する」
※経験則であり、媒質と固体との温度差が極端に大きい場合には成り立たないことがある
媒質中の固体から媒体に熱が伝わる速度は、固体の表面積および固体と媒質の温度差に比例する。熱量Q,時刻t、固体の表面積S、固体の温度T、媒質の温度Tmの間には
dQ
---=α*S*(T-Tm)
dt
比例定数α:表面熱伝導率
物体の熱容量をCとすれば
dQ dT
--=C--
dt dt
これを冷却の法則に適用すると
dT
-C--=α*S*(T-Tm)
dt
Tについて解けば
T=(T0-Tm)e^{(-α*S/C)t}+Tm
T0:t=0における固体の温度
◆温度測定法のまとめ
※接触式
①膨張式
気圧温度計、蒸気圧温度計
水銀温度計、アルコール温度計
バイメタル
②電気式
白金抵抗温度計
熱電対
サーミスタ
ダイオード
③計数式
発振周波数(水晶温度計)
④その他
サーモペインド
液晶
※非接触式
①輝度検出方式
光高温用
2色式温度計
自動輝度温度計
②放射エネルギー検出方式
熱型
抵抗型
サーモパイル
焦電型
量子型
光伝導
光起電力
◆温度計
_◇水銀温度計
ガラスで出来たキャピラリーに水銀を封じこめたもの
液体温度:-38.87℃~356.58℃
_◇熱電対温度計
銅とコンスタンタン
白金と白金ロジウム合金
_◇バイメタル温度計
_◇水晶温度計
_◇放射エネルギー検出型
①淡色放射温度計
赤外線の強度を測定する
※物体の温度と放射される赤外線の波長とは比例関係がある。
②全放射温度計
全放射エネルギーを測定する
◆熱電対と熱電効果
_◇ゼーベック効果
種類の異なる2本の金属線の端同士を接続したとき、二つの接続点に温度差があれば、その差に応じて起電力(熱起電力)が発生する ┌───────┐
T2○ ○T1
┗━━━━━━━┛
⇒この熱起電力を利用するセンサの代表が熱電対
⇒実際には、片側の接続点を開いて電圧を計測する
T2○───────┐
↑ │
│v ○T1
│ ┃
↓ ┃
T2○━━━━━━━┛
v = R * (T2-T1)
R:金属の組み合わせにより決まる定数
T1,T2:各接点の温度
⇒金属の種類と両端温度に依存するが、形状や大きさには無関係
※接触電位差
金属内部の自由電子の熱運動による「圧力差」
⇒接触電位差の代数和を熱起電力、流れる電流を熱電流
例)
鉄と銅の場合
高温接点では銅から鉄
低温接点では鉄から銅
_◇ペルチェ効果
異種金属の接点を通し電流を流せば、接点で熱の吸収、発生を生ずる現象。
⇒熱量は全電気量に比例
⇒電流の向きにより吸収と発生は逆となる
※ゼーベック効果によって生ずる熱電流も高温接点での熱の吸収、低温接点での熱の放出を起こす
⇒ゼーベック効果+ペルチェ効果は一種の熱機関として働く
_◇トムソン効果
接点に限らず、導線各部に温度勾配があり、電流がながれれば熱の吸収、発生を生ずる
※銅線
温度勾配と同方向に電流を流すと発熱する⇒温度勾配なだらかに
※鉄線
温度勾配と同方向に電流を流すと吸熱する⇒温度勾配急となる
_◇熱起電力の性質
※回路に電流がながれるとペルチェ効果、トムソン効果により接点の温度が変化する可能性があるので、温度の測定に際しては、回路に電流を流さないようにして起電力を測定することが望ましい
i) 単一均質の線からなる回路については各部の温度分布、線の太さに関わらず回路に熱起電力を生じない
⇒熱起電力は異種金属の接点の温度のみで定まる
ii)中間に第3の金属線をつないだ場合、すべての接点温度が等しければ熱起電力は生じない
⇒途中に第3の金属をはさんでもその両端の温度が等しければその影響はない。
金属AとCとの回路の熱起電力が Eac
金属BとCとの回路の熱起電力が Ecb
であれば、金属AとBとの回路の熱起電力Eabは
Eab=Eac+Ecb
⇒白金線を基準とし、他種の金属線の熱起電力を温度の関数として求めておけば、各種金属組み合わせの熱起電力を知ることができる
iii)中間の温度
2接点の温度がそれぞれT1, T2のときに熱起電力 E1
2接点の温度がそれぞれT2, T3のときに熱起電力 E2
⇒
2接点の温度がそれぞれT1, T3のときに熱起電力 E1+E2
⇒中間の温度T2を0℃にとって熱起電力を求めておけば、任意の温度差に対する熱起電力を知ることができる
_◇熱電対の特徴
低温域から高温域まで(-200℃~+1800℃)測定可能
経済的
工業用として広く使用
=選定ポイント=
1. 用途に適した温度特性をもった熱電対を選択する
2. 使用環境により耐振性や腐食性を考慮して選択する
3. 応答速度や機械的強度を考慮した形状とサイズを選択する
=特徴=
1. 起電力が小さい
⇒微小電圧を測定する技術が必要
2. 比較的高い温度まで測れる
(JIS C1602、1610、Z8704、8710)
3. 素線を裸で用いると熱容量が小さい
⇒小物体や表面温度の測定ができる
4. 基準接点の温度の影響を受ける
_◇熱電対種類
※JISで定められている熱電対の素線の組合わせ
熱電対の種類記号にK、J、E、Tなどがある
※一般的な熱電対
K クロメル アルメル -200℃~1000℃
J 鉄 コンスタンタン 0℃~600℃
T 銅 コンスタンタン -200℃~300℃
※特徴のある熱電対
E クロメル コンスタンタン -200℃~700℃
⇒熱起電力大
N ナイクロシル ナイシル -200℃~1200℃
⇒熱起電力安定
※白金素材
⇒精度良、ハラツキ、劣化少、高温、酸化雰囲気に耐える
R 白金-ロジ13 白金 0℃~1400℃
S 白金-ロジ10 白金 0℃~1400℃
B 白金-ロジ30 白金-ロジ6 0℃~1500℃
⇒ロジ=ロジウム(Rh)
クロメル
クロム・ニッケル合金 Ni 90% Cr 10%
アルメル
ニッケル合金 NI 95% Al 2% Mn 2% Si 1%
コンスタンタン
銅・ニッケル合金 Cu 55% Ni 45%
ナイクロシル
ニッケル・クロム・Si合金
ナイシル
ニッケル・Si合金
_◇シース熱電対
絶縁材料
マグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)は磁性材より熱伝導率がよく、また固く充填されているため応答時間が速く、防食、耐熱、機械的にもすぐれる
_◇補償導線
熱電対の測温接点と記録計や調節計などの計測器間が長い場合、熱電対素線の代用線を用いると安価になる
⇒補償導線は、熱電対素線の代用として用いる
⇒補償接点での温度特性が熱電対素線に近いものを用い、測定器の位置を基準接点とする。
⇒熱電対の種類に合わせて専用の補償導線を使用
⇒補償導線以外の導線は誤差の原因となる
◆金属測温抵抗体センサ
銅やアルミニウムなどの金属は、温度にほぼ比例して抵抗値が増大する。
※白金は抵抗値が安定で温度以外の要因で変化しない
⇒白金測温抵抗体素子
温度 t(℃)と抵抗値 R (Ω)の関係
R = R0 * (1 + α*t)
R0 温度0における抵抗値
α 温度係数(金属の種類により異なる)
_◇抵抗温度計
◆サーミスタ
温度によって抵抗の値が変化する酸化物半導体材料でできた感温抵抗
※「thermal (sensitive) resistor」
→サーミスタ(thermistor)
※利点
実装面積が小
安価
※欠点
抵抗値の温度特性が非線形
→広範囲にわたって温度を測定したい場合にはサーミスタのリニアライズ(直線化)が必要
※用途
体温計、液晶パネルや2次電池の保護回路,プリンタ・ヘッドの温度検出,パソコンのメイン・ボードでの温度検出、比較的狭い温度範囲で,ある温度を超えたか否かで切り替えるスイッチ
※抵抗体として、セラミック半導体の電気抵抗の温度特性を利用したもので、温度変化による抵抗値変化が極めて大きいことが特徴
⇒一般に、指数関数的に減少する
_◇NTC: Negative Temperature Coefficient thermistor
負の温度特性を持つサーミスタ
ある温度以下では温度上昇につれて抵抗さがる
負の温度係数を有するサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)の総称
_◇PTC: Potive Temperature Coefficient thermistor
正の温度特性を持つサーミスタ
ある温度以上では抵抗値が指数関数的に増加する
PTCサーミスタは、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分とし微量の希土類を添加して導電性を持たせた半導体。
PTCサーミスタは、キューリー点という特定の温度で起こる相転移によって、抵抗値が急激に増大する性質を持ち、電流制限素子,定温度発熱体,あるいは温度センサとして利用される
_◇CTC Critical temperature Coefficient
NTCタイプより大きく指数関数的に抵抗値が減少する。
(ある温度を境に急激に抵抗値が減少する)
_◇サーミスタの温度係数式
α=(1/R)dR/DT=B/T^2
B はサーミスタ定数
温度に対する抵抗変化の目安となる
通常3000~4000K
※温度T [K]の抵抗値をR T とすると、R T はT を関数として、 T 0 [K]のときの抵抗値R 0 とB 定数によって
RT=R0 exp ( B * (1/T – 1/T0) )
※サーミスタの温度特性式
t [℃]における抵抗値R [Ω]は近似的に次式となる
R = R25exp{B (1/T-1/T25)}[Ω]
T (K)=t [℃] + 273.15
R :温度T(K)における抵抗値[Ω]
R25:温度T25(K)=273.15 + 25[℃]における抵抗値[Ω]
B :素子の温度係数(K)
B >0~正特性、B <0~負特性
◆サーモパイル(thermopile)
熱電対を多数直列に接続することによって、熱電対としての感度を向上させたもの。放射式温度計や電子体温計の感温素子として広く利用される。
※特殊なもの
P型とN型の半導体をくし型に切断し、これを蒸着技術で多数を一度に接続し、体温と外気温の差で発生する電圧を腕時計の電源として実用化
※サーモパイル
thermopile
熱電効果を利用。分光感度特性が広い範囲で平坦。光パワーの標準器、温度検出に応用。
ほとんど黒体とみなせる物質に光を照射して、温度上昇を熱電素子で検出、電圧に変換する。
※光パワーメータは温度検出精度を上げるために熱電対を多数直列接続した構造(パイル)をとる。
※環境温度の影響を受けやすい
◆焦電センサ
焦電効果により赤外線を含む光を検出
_◇焦電効果
pyroelectric effect
温度変化により誘電体(PZTなど)の分極が変化
→焦電体。(焦電体は圧電効果も示す。強誘電体は必ず焦電体でもある。)
※ただし、通常は表面にイオンなどを吸着してしまい分極は観測できない。温度変化により分極が変化した場合に、それを検出できる。
_◇センサ原理
通常複数のレンズを持ち、このレンスが赤外線を集光し、これを焦電素子にあつめている。この赤外線により焦電素子は暖められるが、一様な温度で変化がなければ焦電効果は見えない。人体が入ってくると、周囲より高い熱源であり、赤外線量に変化が起こる。このときの焦電効果を検出する。
※レンズ材料としては、ポリエチレンが使われることが多い。(人体からの赤外線を透過させやすいため)
_◇NaPiOn
人検知センサMPモーションセンサ。パナソニック電工
内部にレンズ、焦電素子、アンプ+安定化電源一体化ICを持つ。
※デジタル信号出力型
※アナログ信号出力型
感度調整が可能。
※標準、微動検出、スポット検出、10m検出など
◆静電容量式温度センサ
コンデンサの比誘電率変化を利用
※原理
1) 平板型コンデンサに電圧を印加すると、コンデンサ電極端から電気力線がはみ出る
2) 付近の液体に漏れた電気力線が印加される
3) 比誘電率変化が起こり、コンデンサ容量が変化
4) 液体の比誘電率は温度に依存
5) よって、液温が測定できる
◆熱感知器
_◇作動式スポット型感知器
周囲温度の急上昇により、感知器に内部の空気が急膨張する現象をダイアフラムで感知する。穏やかな上昇の場合にはリーク孔からの空気漏れにより感知しない。
◆炎感知器
_◇赤外線式炎感知器
炎は高温の二酸化炭素ガスから放射される4.3μmにピークを持つ赤外線を多く照射し、しかもそれが2~15Hzの範囲でちらつくという特徴がある。このような赤外線を検知する。
_◇紫外線式炎感知器
◆赤外線サーモグラフィ
光学系により対象物体の表面温度分布を測定する
⇒温度分布から遠隔で異常などが分かる
ゲルマニュウムレンズ
↓
赤外線センサ(焦電センサ、ボロメータの微小アレイ)
↓
AD変換(以下信号処理)
※30℃程度の物体表面から放射される赤外線は10μm付近にピークを持つ。
◆極低温と高温度測定用計器、放射温度計
※超電導現象機器用極低温用センサ
ゲルマニウム測温抵抗体
カーボン測温抵抗体
Pt-Co合金測温体 (4K程度まで測定できる)
※高温用温度計
検出素子にSiやInGaAsを用いた放射温度計で3500℃程度まで
※放射温度計は、物体から出る電磁波のエネルギーを測定して温度を得る。
※光高温計
物体が放射する熱放射を標準の比較用光源と比較して、測温対象物の熱放射のレベルを知り、温度を知る
物体からの熱放射[m]と標準ランプからの光[s]を光切換機構で周期的に切換え、検出素子である光導電セルに当てる
このとき[m]と[s]に差がある場合には、増幅回路に入る信号は交流となる
信号演算処理部では、信号の交流部分がなくなるように、ランプ電源の電流を制御。このときの標準ランプの電源電流から物体の熱放射量を知ることができる
◆熱流量計
W/m^2
京都電子工業 http://www.kyoto-kem.com
◆カーボンナノ温度計
カーボンナノチューブで作ったナノオーダのキャピラリー細管の中にガリウムを封じ込めたもの。原理的には水銀温度計やアルコール温度計と同じ。
液体温度:29.78℃~2403℃
◆熱膨張計
炉内の熱膨張を「やとい」により炉外に取り出して測定しようとしても温度分布が不明なので、やといの熱膨張分を計算できない
⇒同一材料(石英)を同一方向にならべることで温度分布の効果をキャンセルし、試験片の正味の膨張だけを取り出す。この長さの変化を光学テコで測定する
☆湿度
◆湿度の定義
①一定体積に含まれる水分量
②飽和水蒸気量に対する割合(相対湿度)rh
relative humidity
※飽和水蒸気量
気温℃ g/m^2
5 6.8
10 9.4
15 12.8
20 17.3
25 23.1
30 30.4
◆湿度計
_◇乾湿球湿度計
_◇毛髪式
◆湿度センサ
_◇高分子センサー
湿度により電気抵抗が変化
_◇高分子膜湿度センサー
湿度により誘電率が変化し、静電容量が変化