連載小説 第184回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品の営業に携わってきました。10年近くに及ぶ海外赴任(アメリカ、ドイツ)を経て、今は東京勤務。インターネット、IT機器、携帯電話など新しい技術や製品が日々生まれ、それらをサポートする我々の電子デバイスビジネス(半導体、液晶表示体、水晶デバイス)も大忙しだったのですが、世界は激変。出身母体の半導体は縮小整理事業になって、リストラされてしまいましたが、まだその次にデバイス応用ビジネスという手があったのでした。

 

(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら

 

第184話 BuBeeという名のキラーテク?

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の27年生。文系ですが技術製品(半導体などの電子部品)の営業に携わってきました。10年にわたる海外赴任生活(アメリカ、ドイツ)を経て東京勤務中。2000年にはサイコー!だった我々の半導体の売上げは年々下がり続け、2007年、私とトム君はリストラされちゃいました。新たなお仕事は、デバイスビジネス開拓です。

 

前回、「ジョブズ君たら」の中で、当時の開発ネタの一つ「アウトドア先生」のお話しをしましたが、それ以外にもデバイス応用製品のネタはいくつかありまして、それらのビジネス化を追い求めていました。2007年初頭の事です。

iPhoneという世紀の大発明は2007年6月にリリースされましたので、そんなとてつもないゲームチェンジャーを知る前の事、また、Facebookの日本語版リリースがその翌年2008年の事ですから、まだ、ソーシャルメディアなど殆ど誰も活用できていない頃の事、そして、AIという言葉はありましたが、それが一般的に普及するのはまだまだ10数年先という頃のお話しです。

そんな未来の潮流を予見できていなかった我々が考えついた新規事業テーマは、全く時代を先取りできておらず、今になって思うと、有望なネタは極めて少なかったと言わざるを得ません。それでも、皆一生懸命に知恵を振り絞り、デバイス単独ではなしえない、デバイス複合の応用ビジネスを模索していたのです。そこには以下のようなテーマがありました。

    • ペンギン(既出):カメラの手ぶれ補正システム、モックアップサンプルの形はペンギンのよう
    • アウトドア先生(既出):前回のお話しのとおりで、登山者などが携帯するGPS内蔵機器
    • 健康管理生体測定システム: 脈拍、血圧などのバイタルデータを測定し、健康管理に役立てる。特に糖尿病予防や治療に着目し、腕時計などの端末で血糖値を測定するシステムを実現する。血を採ると痛いので、血を採らなくても(非侵襲で)測定できるのがベスト。
    • BuBeeワイヤレスIDシステム: 小型IDタグとリーダーシステムを用いて、人々の入退場の管理や、物品がどこにあるかなどの把握ができるシステム

その他にもネタは沢山ありましたが、それはまたおいおいお話ししていく事としましょう。大河小説なので・・・。

テーマはどれも面白いものでしたが、一番面白そうだと思ったのは、BuBeeワイヤレスIDシステムでした。BuBeeって何だ?と思われるでしょうが、簡単に言えば、低周波数の無線を使った通信システムの名前です。ただ、一般のRFIDと違い、差別化できるいくつかの利点をもっていました。それは、

    • アクティブタイプ(電池あり)のタグなので、SuicaやPasmoのような超至近距離ではなく、広い範囲で複数同時に使える。
    • 低周波数でアクティブゆえに、無線通信する際に水、土、金属などの影響を受けにくい。

つまり、水中で通信できたり、浜辺の砂の中とも通信できたりする。

といったところです。

BuBeeはブビーと発音しますが、日本人にはBが二回続くと発音しにくいですね(笑)。しかし、これは我々が命名したものではないので仕方ありません。BuBeeは、アメリカはマサチューセッチュ州ボストンのスタートアップ企業であるBBI社(BuBee Business Inc)が開発したものでした。

BBI社は元々彼らのIDタグを構成する主要部品として我々サイコーエジソン株式会社のマイコンを使ってくれており、長いつきあいがありました。

我々のデバイス応用ビジネスの一つの可能性として、BuBeeを使った通信システムが候補に挙がった訳ですが、BuBeeは自前の技術ではないので、BBI社からライセンスを受けて使用するというビジネスモデルを考えていました。この方式はとてもユニークなので、ビジネスチャンスも数多く創造できると思われました。

BBI社はBuBeeのIEEE認証も特許も取得しており、様々なノウハウも含めて技術を固めていましたので、なかなか他の企業がマネをするのは難しい状況でした。

我々は一からBuBeeの技術をひもとき、咀嚼して自分たちが使えるレベルにしていかなくてはなりませんでしたが、BBI社は我々に対して好意的に技術開示もしてくれていました。我々のビジネスが立ち上がれば、彼らにライセンス料が入る仕組みですから、好意的にもなる筈です。ただ、契約の締結には至っておらず、どのような条件でビジネスができるか固まっていない状況のまま、技術開発だけは進んでいる状況でした。

我々のBuBee技術開発を進めていたのは、一人の天才科学者でした。デバイスビジネス開拓部の超重要人物にして最終秘密兵器な人(?)とはどのような人物なのか?

それは、次回お話ししますね。うふっ。

第185話につづく

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