土木でエレキ(9) ボルトの検査調べてみた

JosephHalfmoon

まったく土木・建築分野とは縁遠い人が知っていたくらいなので、未だに「高力ボルト需給ひっ迫」問題は続いているのでしょう。本日は需給を調べるつもりはまったくないのですが、参考までに、昨年、その問題を明らかにした国土交通省の調査へのリンクを張っておきます。

建設現場の高力ボルト需給ひっ迫を受け緊急調査を実施 8割強で工期に影響

ありふれたものを言うときに「ネジ、くぎ」みたいな表現をすることがありますが、今回はまさに「ネジ」の供給が律速になっていて、今の世の中の仕組みの不思議さの一端を見せてくれているようです。

さて、本題は「ネジ」の検査の方です。過去何回か橋梁の検査方法、といっても主にコンクリート側の検査を調べさせてもらってきましたが、そろそろ「鋼」の方にも調べを進めたい、と思っております。

「鋼」には「鋼」の流儀がある

に違いありません。

例によって維持管理支援サイトへ行って「ボルト」で検索してみましたが、ヒットは6件でした。思ったより少ない。土木系に限らず、機械系でもボルトのメンテナンスは必要なので、範囲を広げていろいろ調べてみました。

  • ボルトの製造にかかわる試験方法、これは土木分野には直接関係ない
  • ボルトの締め付けに関する測定方法は、「維持管理」とはちょっと遠い。
  • 機械系の場合、分解してボルトを外して試験できるケースがあり、その場合、ネジ部の表面からも検査できる手法が使える。
  • 土木分野では「分解」して試験はまずありえない。
  • 土木系では、「アンカーボルト」(コンクリートに打ち込んで使うボルト)の「見守り」が重要

といった条件が分かってきました。機械系でボルトを検査する方法のうち、表面を探査するいくつかの方法は土木分野の保守作業にはあまり向きそうにない、と思われました。じゃ、どんな手法があるの、というと

  1. 目視
  2. 打音検査(またしても)
  3. 超音波検査
  4. 負荷の力を測る

といったところのようです。

目視は、「なんだ」という感じではありますが、塩分含む環境などで、ボルトの頭が腐食して減肉して如何にも頼りなくなっているような状態が、環境によってはまま見られるようです。そういう「ボルトの頭付近」を調べるときには一番役に立つということだと思います。腐食で丸くなってしまっているようなボルトの頭の写真を見ていると、表面の微妙なクラックなどを計測するような精緻な方法をとるまでもなく、

見れば分かる

ということなのだと思います。ただし、どのくらい腐食が進んでいたら、ボルトとしての「力」がどれだけ残っているのかという評価は別問題です。ちょうどいい論文を見つけたのでリンクを張っておきます。

腐食劣化した高力ボルトの残存軸力評価に関する研究

表面の腐食の進行具合は「見れば」分かりますが、ボルトの「首下」部分からネジ部など、隠れて見えない部分の破断とか、腐食などの検出は問題だと思います。特にアンカーボルトのようなコンクリート内部に深く打ち込まれて固定されているものは、内部の腐食などが進行すると大問題。

見えない部分を調べることが「老朽化」の判断のキモ

にも思われます。

そこでまず登場するのが、コンクリートの検査でも多用されていていた打音検査のようです。既にコンクリートの検査の打音検査の回で述べたとおり、

熟練者でないと音を聞き分けられない、人によって検査結果違う

といった問題を低減するため、打音の信号処理から、AI活用した判断などが使えることは言うまでもありません。ようやく電子デバイスが出てきましたが、ハンマーと人間の耳という、電子デバイス抜きの「ソリューション」の方が打音検査ではまだ、一般的ではないかと想像します。

さて、打音検査でなにかオカシイということになって「どの辺がどうなっているの?」という段階まで進むと、

現状の主流は超音波

のようです。先にでたアンカーボルトのケースだと、超音波を使ったアンカーボルトの長さの計測については、「測定要領」というものが出ていました。これも引用しておきます。

超音波パルス反射法によるアンカーボルト長さ測定要領(案)

これを読むと、機材の準備、校正、そしてボルトの頭を綺麗にして、接触媒質を塗って探触子を密着させ、そして、こうしてああしてと、超音波を用いた計測、なかなか簡単でないことが分かります。こうしてみると、単純な超音波パルスを発して、端面やキズで跳ねかえてくるものを捉えるという方法ではネジ部分などのギザギザした側面などに適用するのは難しそうに思えます。でも考えている人はやっぱりいますね。そこで登場するのが

フェーズドアレイ技術

です。ようやく、電子デバイスと制御ソフトウエアに本格的な出番です。この辺の技術を深掘りしている会社の資料を読んでいるとなかなか面白いのですが、今日はこの辺で。

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