連載小説 第6回             4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

ItohTakamitsu
ペンネーム    桜田ももえ

 

 

 

 

 

 

<これまでのあらすじ>上諏訪時計舎に就職した詠人舞衣子(よんびとまいこ)。わけあって4ビットAI内蔵の新人OLです。心理学科卒文系女子なのに、半導体営業課マイコンチームに配属。どうやら、この会社は4ビットマイコンを開発中らしいです。

 

 

 

 

第6話  マイコンとエジソンとドラえもん 

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、文系なのに半導体営業課マイコンチームに配属されちゃいました。心理学専攻なので、技術にはあまり明るくありません。でも、同期のトム君とマイコンの勉強を始めました。

IC検査課の今隆太郎(こん りゅうたろう)さんから一通りの事を教えてもらったので、マイコンがどんな物なのかは大体分ったつもりになっていたのですが、営業のチームリーダーからのレクチャーではこんな質問が。

「舞衣子クン、マイコンってどんな物か大体分かったと思うけど、このICはどんなアプリケーションに使われると思いますかぁ?」

「えっと、家電とか計測器とかでしょうか?」

「そうだねぇ」

・・・ほら、正解じゃん。うふふ。

「まだまだ他にもありますよ、舞衣子クン」

「あ、そうですね・・・ロボットとか計算機とかですか?」

「それも正解です。他にはどうでしょう、トム君」

「えっと・・・、もしもボックスとか人生やり直し器とか」

何言ってんの、この人。また、可笑しな事言ってる。と思ったのですが、リーダーの反応は予想外でした。

「おお、素晴らしい! その発想が大事ですぅ」

「あの、ドラえもんですけどね」

「それですぅ!これからはドラえもんの時代ですぅ!」

え、ドラえもんの時代? どうしちゃったのリーダーも。と思いつつ、私は聞いてみました。

「あの、リーダー、ドラえもんに出てくるひみつ道具はマイコン使うんですか?」

「まあ、架空の道具ですけど、実際にそういう道具を作ろうと思ったらマイコンは必ず必要になります。ただ、皆さんに考えてほしいのは、そういう発想なのです。必要は発明の母なんですぅ。そうトーマス・エディソンも仰っていましたぁ」

なるほど、そういう事か。という事はトム君の発想も悪くないのかも。まさかドラえもんのひみつ道具を出してくるとは思いもよりませんでしたが、必要は発明の母という本質をついているかも、とちょっと見直しました。でも、ここで受け狙いっぽい回答をしたトム君を褒めてくれたチームリーダーも面白い人だな、と思いました。普通なら、もっと真面目に答えなさいと言われそうなところだと思ったのです。

ドラえもんはご存じの通り、藤子不二雄先生たちの傑作であり、代表作です。これだけ国民的に支持され、長期的に子どもへ夢を届け、世界の発明に貢献した作品は少ないのではないかと思います。例えば、携帯電話とか、世界言語の翻訳機など、ドラえもんが予測して、その後の世界で具現化された製品は数多く存在します。技術的な実現性について全く分からないような時代に、未来の世界で当たり前のように活用される事になった製品を予見していた藤子不二雄先生方にはスゴイとしか言いようがありません。

そんなわけで、これからの時代はドラえもんなんだそうなので、私ももう少しドラえもんに注目しようと考えました。

その時はその程度にしか思っていませんでしたが、ドラえもん的発想が、長い半導体営業人生の中でどれだけ役だったか分かりません。

それと、エジソンが多くの発明をした事は知っていましたが、その根底に必要は発明の母という意識があった事を始めて知りました。因みに英語では、“Necessity is the mother of invention.” というらしいのですが、それは元々、スウィフトさんが書いた「ガリバー旅行記」の一節なのだと知ったのはもっと後になってからです。

文系女子の私ですが、マイコンが身近な生活の場面など、色々なところで使われている事が段々分かってきました。そういえば、任天堂のゲームウォッチにもマイコンが使われていると聞いた時は、スゴイなあ、と思ったものです。1980年4月の発売開始だったので、私たちの社会人デビューと同じ時期でした。その後、ゲームウォッチに似た商品は多くの玩具メーカーなどから発売され、世界市場で爆発的な大ヒットとなりました。

そこで、上諏訪時計舎が開発した4ビットマイコンも数多く売れる事になるのですが、そのお話は次回以降で。

 

 

 

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