データのお砂場(144) R言語、pluton、プルトニウム同位体混合比、{cluster}

Joseph Halfmoon

前回は心休まる?植物の特徴データでしたが、今回は心休まらない?プルトニウムの同位体の混合比です。プルトニウムには非常に多くの同位体が存在するみたい。すべて放射性核種で半減期いろいろ。超微量天然にも存在する他は全て人工物のようです。元になった燃料の素性やら、原子炉の運転条件、その他によって同位体の混合比もバラバラ。

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※使用させていただいている Rのversionは 4.3.1。RStudioは 2024.04.2+764 “Chocolate Cosmos” です。

Isotopic Composition Plutonium Batches

今回のサンプルデータセットの解説ページが以下に。

https://stat.ethz.ch/R-manual/R-patched/library/cluster/html/pluton.html

原子番号94番元素、プルトニウムに関するサンプル・データ・セットです。”Plutonium batches”という表現なので、プルトニウムの「ある処理単位」についての同位体の組成を測定したデータみたいです。プルトニウムには安定な同位体はないそうで、全て崩壊する定めにあると。その中でも以下に列挙するものどもがこのデータセットのターゲットです。

    • プルトニウム238
    • プルトニウム239
    • プルトニウム240
    • プルトニウム241

上記には5つめの「隠された」同位体あり。プルトニウム242は上記4つの「あまり」ということでパーセンテージが求まるみたいです。それ以外は無視。

『日本原子力研究開発機構(JAEA)』様の原子力百科事典 ATOMICAの中に、代表的な同位体の半減期が記されてました。

代表的なプルトニウム同位体の性質

同位体の中でもっとも「幅をきかせている」プルトニウム239の場合、24100年とな。一方、外惑星を旅する探査機に使われている原子力電池のプルトニウム238は87.7年とあります。

さて、ごくごくごく僅かな量の「天然」プルトニウムを除けば、地球上にあるプルトニウムのほぼほぼ全量は人工的に作られたもののようです。原子炉の中の核燃料の中で生成され、再処理されてまた燃料として使われているか、管理下で貯蔵されているもの。あるいは核兵器の中に封じられているか、はたまた、過去の核実験や、核の事故などで大気、海洋に放出されたものみたいです。

同位体の組成は、生成条件によっていろいろみたいですが、先ほどのATMICAの中に以下のページがありました。

核兵器級と原子炉級プルトニウム同位体重量比の例

上のページを拝見すると、プルトニウム239が主であることは変らないものの、原子炉級は「いろいろ混じって」おり、核兵器級は239の割合が9割超えていて、のこりのほとんどは240であるようです。割合みれば、どっちの用途なのか分かる感じね。ホントか? 多分、今回のデータセットは、原子炉級の燃料用途で保管されているもののデータではないかと想像されます。

ただし、原子炉級といってもいろいろある、みたいです。元の燃料にもよるし、どれだけの期間、どのような条件でどのような「燃やし方」をしたのか、経緯によって割合は千差万別であるようです。そこについては『経済産業省』様の以下の文書に

https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/kosokuro_kaihatsu/kosokuro_kaihatsu_wg/pdf/012_02_00.pdf

「使用済み燃料中のプルトニウム同位体重量組成のグラフ」が掲げられておりました。

なお、燃料とは関係ないのですが、『日本温泉科学会』様の以下の論文は、なかなか興味深かったです。目立たぬところに立派な御研究が隠されている?違うか?

海洋におけるプルトニウム同位体の挙動について

まずは生データ

まずはサンプルデータのロード。今回も clusterパッケージの中のデータなので、パッケージをロードしておかなければなりませぬ。plutonRawData

このデータについて、先ほどの通商産業省様のページにあった「使用済み燃料中のプルトニウム同位体重量組成のグラフ」的なグラフを描いてみたいと思いました。描いてみるオペレーションが以下に。

pluton.w <- pluton;
pluton.w$Pu242 <- 100.0 - apply(pluton,1,sum);
work <- t(pluton.w);
barplot(work, 
    ylab="persentages", xlab="Batch", main="Isotopic Composition Plutonium Batches",
    legend = rownames(work),
    args.legend = list(x=50, y=40));

上記コードによって描いたグラフが以下に。BatchesBarPlot

似たようなもん、にも見えるし、結構バラツキもある、ようにも見えるし。。。

処理例

今回のサンプルデータセットには処理例が含まれてます。ただし、さらっとした処理だけね。

まずはアカラサマに割合が列挙されている4種の核種に限った積算「濃度」のヒストグラム。

hist(apply(pluton,1,sum), col = "gray")

そのグラフが以下に。plutoHist

上記の横軸数字を100から減ずれば、それすなわちプルトニウム242のパーセンテージであります。なんとなく2群に分かれる感じ。知らんけど。

一方、プルトニウム242にも1列設けてペアプロットもするべしと。

pairs(pluton.w)

その結果が以下に。plutonPairs

上をつらつら眺めるに、Pu239が増えると、他の4種は凹み、他の4種の間では正の相関あるやに見えるのですが、どうざんしょ。こうして数字を眺めているだけなら危険もなく、お楽。現物はちょっと恐ろしいデス。

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