<これまでのあらすじ>
サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品の営業に携わっています。10年近くに及ぶ海外赴任(アメリカ、ドイツ)を経て、今は東京から海外市場をサポートしています。インターネット、IT機器、携帯電話など新しい技術や製品が日々生まれ、それらをサポートする我々の電子デバイスビジネス(半導体、液晶表示体、水晶デバイス)も大忙しだったのですが、世界は激変していきます。乗り遅れると大変な事になっちゃうんだけど、もう乗り遅れてる?
(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら)
第167話 イナバウアーの頃
私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の26年生。文系ですが技術製品(半導体などの電子部品)の営業に携わっています。10年にわたる海外赴任生活(アメリカ、ドイツ)を経て東京勤務中。世界のIT産業はどんどん進歩していくので、我々の半導体の売上げも伸び続け、2000年にはサイコー!だったのですが、その後、年々売上げは下がり続けていました。どうなっちゃうの私たち?
私たちの半導体事業は、来年度の売上げ計画値を確定できないまま、年を越す事になりました。嬉しくても悲しくても2006年は勝手にやってくるのでした。
2006年はどんな年だったかと言いますと、何と言っても、荒川静香選手がイナバウアーという必殺技を披露し、日本人としてフィギュアスケート史上初のオリンピック金メダルに輝いた年でございます。それまでのメダルは、1992年アルベールビル大会において、トリプルアクセルで転倒し、しかし、再度挑戦した2回目で見事成功させた伊藤みどり選手の銀メダルだけでしたので、荒川静香さんの金メダルは本当に偉業と言って良いでしょう。
因みに、これまでのところ、日本人女子で金メダルは荒川静香さん、ただお一人です。あの真央ちゃんでさえ、オリンピックではバンクーバーでの銀メダル一つだけです。トリプルアクセルをショート、フリーあわせて3回とも成功させた真央ちゃんです。はい、浅田真央ちゃんです!
覚えていらっしゃる方々も多いのではないかと思いますが、あの年は、金妍児(キム・ヨナ)という韓国のエースが絶好調で、真央ちゃんのようにはトリプルアクセルを跳べないものの、その他の3回転ジャンプやスピンなどが完璧で、点数としては真央ちゃんを大きく上回る結果になりました。
しかしながら、真央ちゃんのあの愛らしさと、どんなに失敗してもトリプルアクセルに挑戦し続けるあのケナゲさは、世界中の誰にも負けない金メダル相当のインパクトで、「真央ちゃん大好き!」という気持ちを私たちに抱かせてくれたのでした。
あ、すみません。フィギュアスケートの話になると、少々熱が入ってしまいますので、この辺で冷静になりたいと思います(笑)
さて、冷静に考えてみて、フィギュアスケートというのは、従来、欧米が上位を争うという構図が長きに渡って当たり前のようになっていました。あ、ちっともフィギュアスケートの話から抜け出ていませんねえ(笑) ま、お許しください。
ジャネット・リン選手の事を覚えていらっしゃる方は、相当なコアファンでいらっしゃいますが、そうです、あの1972年札幌オリンピックにおいて、尻餅をつきながらも銅メダルを獲得した愛くるしい妖精さんでした。彼女が演技前に息をのむ姿は、女性の私から見てもトキメイてしまう程の可愛さで、トム君は「あの時、♡ハート♡がずっきゅーんってなってしまった」と言っていましたね(笑)
今のスケート界は、女子は3回転ジャンプが当たり前で、4回転を跳ぶ選手(真央ちゃんって同じ名前の女の子です)まで出現しているのですが、1972年当時のスケート界では、2回転が普通、アクセルは1回転半なんて時代でしたから、隔世の感があります。そして、もっとびっくりなのは、ショートとフリーではなく、コンパルソリー(規定演技)という種目があった事でした。
ご存知ない方のために、ちょっとだけ申し上げておきますと、Compulsoryというのは、強制的なとか義務的なという意味で、日本語では規定演技と言われていました。規定された円状の通り道をゆっくりとトレースして滑るのですが、クロート的には興味深くても、シロート的にはかなり退屈に見える競技だったのです。
そんな理由で、1990年頃からはコンパルソリー(規定演技)がなくなって、ショート・プログラムとフリー・スケーティングという構成に変わっていったのですが、くだんのジャネット・リンちゃんはその規定演技がイマイチ苦手だったため、自由演技で結構高得点を出しても、合計で金メダルには届かなかったのです。
「でも、ジャネット・リンちゃんの笑顔は金メダルだよ」
とトム君は、札幌オリンピックの話で盛り上がった時に言っていましたっけ。
そう言えば、工作君も
「尻餅ついても芸術点で6.0をつけたジャッジいたんだよ。ボクもそう思うなあ」
なんて言っていました。全く、男子ってね~(笑)
あれ、今日は2006年の話してたんだけど、なんで1972年へタイムスリップしちゃったのかって?
やっぱり、私もフィギュアスケート大好きなので・・・。
それに、半導体、全然関係ないですね。ま、いっか(笑)
第168話につづく